14 / 192
第一章 ハジメマシテ、【犯罪者】
Episode 13
しおりを挟む--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス
■【リッパーA】ハロウ
「ってことでデスペナルティになったのよ」
「おや、それは大変だ。打撃系の武器作った方がいいかい?」
「んーいや、どちらかというとCNVLにはハサミを作ってほしいのよね」
「……ハサミ?」
「そう、ハサミ。切るのはナイフがあるから、どちらかというと挟み潰す用ね」
「成る程」
翌日。
CNVLがログイン中だったため、適当に呼び出し昨日の話をしていた。
いつもならば彼女は『じゃあ行こうか!』とでも言うかと思っていたのだが、意外な事に今日は大人しい。
どうしたのかと聞いてみれば、
「ん?あぁ、普通にレベル不足だから行きたくても……ってね。ほら、私今ちょっとアレじゃないか」
「……あぁ、成程。どうなの?使い心地は」
「良いね。腐った肉片が回復アイテムに変わったよ」
今の彼女は【ゲイン】ではなく【食人鬼】。
ランクアップしたために、彼女の今の系統レベルは全て1。初期も初期だ。
流石に彼女もその状態で【劇場作家の洋館】のハードモードにはいく気にはならないらしく。
「成程ねぇ。とりあえずノーマルモードでレベルでもあげていきましょうか。手伝うわよ?貴女にハサミの作成依頼出すなら素材必要だし」
「あは、助かるよ。ちなみに今日はメアリーちゃんは?」
「私のナイフ作成中かしらね。一応ログインはしてるみたいだから、あとで連絡はくるんじゃないかしら。そういう貴女は、今日はマギ連れてないのね」
「彼は今日、バイトがあるってさ。忙しいねぇ」
そんな会話をした後、適当に道端で話していただけだったために移動を開始した。
途中、CNVLに【人革】で防具を作れないか聞いた所、『それもうほぼ裸と変わらなくないかい?』と言われてしまった。
--第二区画ダンジョン 【劇場作家の洋館】 Normal 1F
「思ったんだけどさ」
「なぁに?」
「私達って、ノーマルモードいくなら他の区画のダンジョンに挑んだ方が良いんじゃないかな?って思ってね」
「あー……」
ダンジョンに辿り着き、適当にアクターゾンビや、フリューブックを倒しながら進んでいるとCNVLはそう言って腕を組んで考えこんでいた。
最初はこの2人で苦労しながら1体倒していたフリューブックも、今では話しながら、考えながら適当に倒せるくらいには、こちらのレベルも練度も上がったようだ。
「んー、いや。そうとも言えないわね」
「?なんでだい?」
「このゲームって、所属区画とかそういうのがあるでしょう?だから色々といざこざが起きる気がするのよね。特にこういう初クリア!とかいうのは」
「……成程?言ってしまえば、自分の国の資源を他の国が勝手に持って行ったのと同じってことかな?」
似たようなものよ、と苦笑いしながら答える。
事実、私やCNVL、マギ、メアリーは【劇場作家の洋館】を初クリアしたプレイヤーということで掲示板の方では今でも時々話題に上がったりもしている。
それはもちろん、他の区画所属のプレイヤーの間でもだ。
……流石に他の区画から恨みを買って、区画順位戦の時に結託されるのは嫌だしねぇ。
一種のPvP要素である区画順位戦。
公式からは特に何も言われてないが、恐らくはプレイヤー間できちんと交渉さえすれば区画同士での結託や不可侵条約のようなものも結ぶことが可能だろう。
システムとしてあるかは兎も角として、そういう空気が出来てしまえばそれを考えた者達にとっては成功なのだから。
「いやぁ、アクターゾンビが回復薬にしか見えないなぁ。あは、ここなら死ぬ気がしないぜ」
「ハードモードだとそう言ってられないわよ。私普通に即死判定貰ったし」
「あは、どうだろうね。……とりあえず、3Fまで下りてみようか。ソルジャーゾンビは置いといて、ムービーゾンビの方が寄ってきてくれるから楽なんだよ」
「大丈夫……って聞くまでもないわね。本当に狡いわそのスキル」
彼女が【食人鬼】になって手に入れたスキル。
それは【あなたを糧に生きていく】という、腐った肉片に始まる肉系の素材アイテムや、それこそアクターゾンビなどといった人型の肉があるモンスターたちを食すことによって、自身のHPを回復させることが出来るというものだ。
言ってしまえば、ゾンビ系の敵性モブが出てくる場所では彼女は隙を見つけることさえできれば、ずっと回復し続けることもできる。
元々の戦闘センスも合わせて、対人型での戦闘では今でもかなりの結果を残すことが出来るだろう。
テレポーターで3Fに移動した後、適当にムービーゾンビやソルジャーゾンビ、たまにワザとフリューブックをゴーレムにしたりなどして遊んでいると、ポーンという音と共にメアリーからのメッセージが届いたという通知が表示された。
内容を見てみれば、『ナイフが完成したから確認しにきてくれる?( ˘ω˘)』と、私の頼んだ物が出来上がったという連絡だった。
現在ダンジョンに居ること、すぐに向かうことを伝えた後に近くでムービーゾンビと戯れていたCNVLを呼ぶ。
「どうかした?」
「メアリーからナイフが完成したって連絡がきてね。私はこのまま向かうけどどうする?」
「あー、面白そうだからいこうか」
そうして私達2人はそのままテレポーターへと移動、出口からメアリーの露店のあるメディウスへと移動することにした。
そういえば、彼女はほぼ毎日のように露店を出しているものの繁盛しているのだろうか。
--浮遊監獄都市 カテナ 中央区 メディウス
「お待たせ」
「あは、こんにちはメアリーちゃん」
『待ってないよー!こんにちはCNVLさん!(゜∀゜)』
やはりというかなんというか。
周りはある程度人がいるというのに、メアリーの露店の周りだけぽっかりとスペースが空いていた。
こちらからすれば見つけやすいのだが……。
「まぁ、いいか。……できたのよね?」
『?うん、完成したよ。一応見てもらっていい?』
「了解っと、これね?」
そうやって渡されたナイフは、今まで使っていたナイフよりも一回り大きく、見た目は一般的なハンティングナイフのように見える。
――――――――――
【HL・ナイフ】 武器:短剣
装備可能レベル:5
制作者:メアリー
効果:人型敵性モブに対し+2%のダメージ補正
説明:人革が使われた鉄製のナイフ。
手に馴染むため、使いやすい。
――――――――――
「基礎ダメージとかはやっぱり出ないのね」
『なんでだろね……(;'∀')もしかしたらそれを知るのにもスキルがいるかも?(´・ω・)』
「これが普通かと思ってたけどそうじゃないんだねぇ」
「『これがレアケースなだけだよ』」
もしかしたら、私の義眼に付いているスキルである【目利き】の上位互換にはそういった情報を表示させる能力があるのかもしれない。
メアリーに礼を言い、そのまま3人で再びダンジョンに移動することにした。
先ほどまで潜っていたのはノーマルモードだが、今回潜るのはメアリーもいるためハードモード。
結果から言えば、1Fに出現するコマンダーはメアリーのクロスボウによって瞬殺される程度のステータスしかなく。
経験値稼ぎに1Fは最適だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後日。
Festival in Crimeの公式サイトが更新された。
区画順位戦の日程が公開されたのだ。
次の週末を使い行われるらしいそれを見たプレイヤーたちは、少しでも力をつけるためダンジョンに潜り。
そしていつの間にやら開催日当日になっていた。
ーーーーーーーーーー
PLName:ハロウ Level:7
【犯罪者】:【リッパ―A】
所属区画:第二区画 デンス
・所持スキル
【切裂衝動】、【シャープエッジ】、【霧の外套】、【ディア・ボス】
・装備品
【HL・ナイフ】、平凡な囚人服【上】、平凡な囚人服【下】、【人革の手帳】、【人革の腕輪】、【革造りの網】、劇場作家の炯眼
・称号
【第二区画所属】、【娯楽を解放した者】
ーーーーーーーーーー
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説

異世界コンビニ
榎木ユウ
ファンタジー
書籍化していただきました「異世界コンビニ」のオマケです。
なろうさん連載当時、拍手に掲載していたものなので1話1話は短いです。
書籍と連載で異なる部分は割愛・改稿しております。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

異端の紅赤マギ
みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】
---------------------------------------------
その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。
いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。
それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。
「ここは異世界だ!!」
退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。
「冒険者なんて職業は存在しない!?」
「俺には魔力が無い!?」
これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・
---------------------------------------------------------------------------
「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。
また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・
★次章執筆大幅に遅れています。
★なんやかんやありまして...
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる