Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第一章 ハジメマシテ、【犯罪者】

Episode 13

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--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス
■【リッパーA】ハロウ

「ってことでデスペナルティになったのよ」
「おや、それは大変だ。打撃系の武器作った方がいいかい?」
「んーいや、どちらかというとCNVLにはハサミを作ってほしいのよね」
「……ハサミ?」
「そう、ハサミ。切るのはナイフがあるから、どちらかというと挟み潰す用ね」
「成る程」

翌日。
CNVLがログイン中だったため、適当に呼び出し昨日の話をしていた。
いつもならば彼女は『じゃあ行こうか!』とでも言うかと思っていたのだが、意外な事に今日は大人しい。
どうしたのかと聞いてみれば、

「ん?あぁ、普通にレベル不足だから行きたくても……ってね。ほら、私今ちょっとアレじゃないか」
「……あぁ、成程。どうなの?使い心地は」
「良いね。腐った肉片が回復アイテムに変わったよ」

今の彼女は【ゲイン】ではなく【食人鬼】。
ランクアップしたために、彼女の今の系統レベルは全て1。初期も初期だ。
流石に彼女もその状態で【劇場作家の洋館】のハードモードにはいく気にはならないらしく。

「成程ねぇ。とりあえずノーマルモードでレベルでもあげていきましょうか。手伝うわよ?貴女にハサミの作成依頼出すなら素材必要だし」
「あは、助かるよ。ちなみに今日はメアリーちゃんは?」
「私のナイフ作成中かしらね。一応ログインはしてるみたいだから、あとで連絡はくるんじゃないかしら。そういう貴女は、今日はマギ連れてないのね」
「彼は今日、バイトがあるってさ。忙しいねぇ」

そんな会話をした後、適当に道端で話していただけだったために移動を開始した。
途中、CNVLに【人革】で防具を作れないか聞いた所、『それもうほぼ裸と変わらなくないかい?』と言われてしまった。



--第二区画ダンジョン 【劇場作家の洋館】 Normal 1F

「思ったんだけどさ」
「なぁに?」
「私達って、ノーマルモードいくなら他の区画のダンジョンに挑んだ方が良いんじゃないかな?って思ってね」
「あー……」

ダンジョンに辿り着き、適当にアクターゾンビや、フリューブックを倒しながら進んでいるとCNVLはそう言って腕を組んで考えこんでいた。
最初はこの2人で苦労しながら1体倒していたフリューブックも、今では話しながら、考えながら適当に倒せるくらいには、こちらのレベルも練度も上がったようだ。

「んー、いや。そうとも言えないわね」
「?なんでだい?」
「このゲームって、所属区画とかそういうのがあるでしょう?だから色々といざこざが起きる気がするのよね。特にこういう初クリア!とかいうのは」
「……成程?言ってしまえば、自分の国の資源を他の国が勝手に持って行ったのと同じってことかな?」

似たようなものよ、と苦笑いしながら答える。
事実、私やCNVL、マギ、メアリーは【劇場作家の洋館】を初クリアしたプレイヤーということで掲示板の方では今でも時々話題に上がったりもしている。
それはもちろん、他の区画所属のプレイヤーの間でもだ。
……流石に他の区画から恨みを買って、区画順位戦の時に結託されるのは嫌だしねぇ。

一種のPvP要素である区画順位戦。
公式からは特に何も言われてないが、恐らくはプレイヤー間できちんと交渉さえすれば区画同士での結託や不可侵条約のようなものも結ぶことが可能だろう。
システムとしてあるかは兎も角として、そういう空気が出来てしまえばそれを考えた者達にとっては成功なのだから。

「いやぁ、アクターゾンビが回復薬にしか見えないなぁ。あは、ここなら死ぬ気がしないぜ」
「ハードモードだとそう言ってられないわよ。私普通に即死判定貰ったし」
「あは、どうだろうね。……とりあえず、3Fまで下りてみようか。ソルジャーゾンビは置いといて、ムービーゾンビの方が寄ってきてくれるから楽なんだよ」
「大丈夫……って聞くまでもないわね。本当に狡いわそのスキル」

彼女が【食人鬼】になって手に入れたスキル。
それは【あなたを糧にカニバ生きていくリズム】という、腐った肉片に始まる肉系の素材アイテムや、それこそアクターゾンビなどといった人型の肉があるモンスターたちを食すことによって、自身のHPを回復させることが出来るというものだ。

言ってしまえば、ゾンビ系の敵性モブが出てくる場所では彼女は隙を見つけることさえできれば、ずっと回復し続けることもできる。
元々の戦闘センスも合わせて、対人型での戦闘では今でもかなりの結果を残すことが出来るだろう。


テレポーターで3Fに移動した後、適当にムービーゾンビやソルジャーゾンビ、たまにワザとフリューブックをゴーレムにしたりなどして遊んでいると、ポーンという音と共にメアリーからのメッセージが届いたという通知が表示された。

内容を見てみれば、『ナイフが完成したから確認しにきてくれる?( ˘ω˘)』と、私の頼んだ物が出来上がったという連絡だった。
現在ダンジョンに居ること、すぐに向かうことを伝えた後に近くでムービーゾンビと戯れていたCNVLを呼ぶ。

「どうかした?」
「メアリーからナイフが完成したって連絡がきてね。私はこのまま向かうけどどうする?」
「あー、面白そうだからいこうか」

そうして私達2人はそのままテレポーターへと移動、出口からメアリーの露店のあるメディウスへと移動することにした。
そういえば、彼女はほぼ毎日のように露店を出しているものの繁盛しているのだろうか。



--浮遊監獄都市 カテナ 中央区 メディウス

「お待たせ」
「あは、こんにちはメアリーちゃん」
『待ってないよー!こんにちはCNVLさん!(゜∀゜)』

やはりというかなんというか。
周りはある程度人がいるというのに、メアリーの露店の周りだけぽっかりとスペースが空いていた。
こちらからすれば見つけやすいのだが……。

「まぁ、いいか。……できたのよね?」
『?うん、完成したよ。一応見てもらっていい?』
「了解っと、これね?」

そうやって渡されたナイフは、今まで使っていたナイフよりも一回り大きく、見た目は一般的なハンティングナイフのように見える。

――――――――――
【HL・ナイフ】 武器:短剣
装備可能レベル:5
制作者:メアリー
効果:人型敵性モブに対し+2%のダメージ補正
説明:人革が使われた鉄製のナイフ。
   手に馴染むため、使いやすい。
――――――――――

「基礎ダメージとかはやっぱり出ないのね」
『なんでだろね……(;'∀')もしかしたらそれを知るのにもスキルがいるかも?(´・ω・)』
「これが普通かと思ってたけどそうじゃないんだねぇ」
「『これがレアケースなだけだよ』」

もしかしたら、私の義眼に付いているスキルである【目利き】の上位互換にはそういった情報を表示させる能力があるのかもしれない。
メアリーに礼を言い、そのまま3人で再びダンジョンに移動することにした。
先ほどまで潜っていたのはノーマルモードだが、今回潜るのはメアリーもいるためハードモード。

結果から言えば、1Fに出現するコマンダーはメアリーのクロスボウによって瞬殺される程度のステータスしかなく。
経験値稼ぎに1Fは最適だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


後日。
Festival in Crimeの公式サイトが更新された。
区画順位戦の日程が公開されたのだ。

次の週末を使い行われるらしいそれを見たプレイヤーたちは、少しでも力をつけるためダンジョンに潜り。

そしていつの間にやら開催日当日になっていた。


ーーーーーーーーーー
PLName:ハロウ Level:7
【犯罪者】:【リッパ―A】
所属区画:第二区画 デンス

・所持スキル
【切裂衝動】、【シャープエッジ】、【霧の外套】、【ディア・ボス】

・装備品
【HL・ナイフ】、平凡な囚人服【上】、平凡な囚人服【下】、【人革の手帳】、【人革の腕輪】、【革造りの網】、劇場作家の炯眼

・称号
【第二区画所属】、【娯楽を解放した者】
ーーーーーーーーーー
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