魔王をするのにも飽きたので神をボコって主人公に再転生!

コメッコ

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第4章 魔界編

第222話 ユリウスの記憶⑯ 全てを知ったユリウス

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「これが私の知っている全てかな」





リティスリティアは1時間ほどかけて全ての話を終えると、ティーカップに少しだけ残っていた紅茶を飲み干した。

そんなリティスリティアとは対照的にユリウスは出された紅茶を一口も手を付けることなく、ただ彼女の話を黙って聞いていた。



ようやく彼女の話が終わったのを見て、ユリウスは1時間ぶりに口を開いた。





「……そんな、全て本当の話なのですか?」





彼女が話した全てがあまりに現実離れした話でユリウスはそう彼女に問い返す事しかできなかった。



6体の始まりの者と呼ばれる超常者が存在するという事。

世界が複数存在していて、ユリウスがいる世界はその一つにしか過ぎないという事。

なぜこの世界の魔人と人類が戦っていたか。

魔人や神の存在がどうやって生まれたか。



そしてこれから起こるであろう戦いとそれに対処する為にリティスリティアが立てたいくつかの計画。



それら全てが信じられない話ばかりでここで「嘘でした」と言われればどれだけいいかとユリウスは思った。

そんなユリウスの心境すらも瞬時に感じ取ったリティスリティアは苦笑を浮かべた。





「ごめんね、嘘だったらよかったんだけど全て本当の話。だからあの子のこれからの行動が世界の行く末にとってもとても重要になるの」





リティスリティアが言うあの世界とはユリウスがいる世界の事だ。

ユリウスはあの世界で魔王を倒し、世界を魔人達の手から救ったが、それは戦いの終わりなどではなく、まだ始まってすらいなかった。

ユリウスのいた世界で人類を恐怖に陥れていたあの魔王でさえ、全世界から見ればちっぽけな存在であり、なんら影響を与える存在ではないとユリウスは彼女の話から知った。



全ての世界に影響を与え、その行く末すらも左右させる存在。

そんな存在がいるとするならユリウスには一つしか心当たりはなかった。





「……フィーリーアさんですか?」





ユリウスはかつて自身に魔法を教えたフィーリーアも始まりの者の一人だとリティスリティアから聞いた。

だが仮に聞かされていなかったとしてもユリウスはフィーリーアが始まりの者の一人だと気付いただろう。



それほどまでにユリウスから見た彼女はあまりにも美しく、あまりにも異質であまりにも強すぎた。

彼女が今の話を知った時、どう行動するかで全ての世界の行く末すらも左右する重要な存在であると、ユリウスは悟ってしまったのだ。





「うん。正直戦力的にリアがいないと厳しいと思う。でも今、リアには話せない。私の所為でリアは世界に興味を無くしてしまったから」





ユリウスの問いにリティスリティアはそう答えて、少し悲しそうに笑った。

仮にあの日、始まりの楽園で袂を分かつ事が無ければフィーリーアは今のようにならなかった。



だがあの日、全てを話していれば恐らく世界は現状を超える混沌とした時代を迎えていただろう。

6人の始まりの者達が激しく争い合う姿などリティスリティアは見たくなかった。

だからこそ、リティスリティアはあの日、全員を集めた場で何も言わず、全ての計画を実行に移す事にした。



全ては世界を正しい形へと戻し、救う為に。





「他に仲間はいないのですか?」





始まりの者は全員で6人いる。

だから他にも助けてくれる者がいるのではないかとユリウスは期待したのだが、リティスリティアの答えは芳しくないものだった。





「うん、今の所はラー君だけ。多分レナ君はなんだかんだで助けてくれるとは思うけど、他の子たちは少し難しいと思う」





そう思ったからこそ、リティスリティアはあの日、4人の始まりの者と袂を分かつ決断をするしかなかった。

5人の始まりの者の中で唯一、リティスリティアの苦悩に気付いたのが始祖天翅ラーだ。



そしてラーはリティスリティアと共に全ての計画を考え、今もそれを成す為に自分の世界で頑張ってくれている。



だがそれ以外の4人。



始祖竜フィーリーア。

始祖竜ザラス

始祖悪魔ウラド。

始祖エルフレナザード。



この4人はリティスリティアが何に悩んでいるのか気付くことができなかった。

だがそれを責める事はリティスリティアにはできなかった。



4人に気付かれないよう常に笑顔を絶やさず、隠し通したのはリティスリティア自身なのだから。





「僕はなにをすればいいですか? なんでもします。僕は世界を救いたい」





これが全てを聞いたユリウスの決断だった。

ユリウスにとって人々を救う事が全てであり、どんな敵でも退く理由になりはしなかった。

だからこそユリウスはリティスリティアの計画に乗り、その力の全てをリティスリティアに捧げる事に決めた。



だがリティスリティアがユリウスのいる世界で立てた計画はかなり抽象的なものだった。

単純に何かを守ったり何かを倒すという話ならユリウスとしても自身の考えで動きようがあるが、話はそう単純な話ではない。





だからこそユリウスはリティスリティアに指示を仰いだのだが、彼女から出た言葉はユリウスにとって意外なものだった。





「ユリウス、君にはセルトが世界の敵になった時、止めて欲しいんだ」





「セルト? 先程の話に出た最高神ですか?」





リティスリティアはユリウスに話す上で、6人の始まりの者以外にも何人かの重要人物の名を出していた。

その中の一人がユリウス達のいる世界の天界に君臨しているという最高神セルトだ。

だが、そんな重要人物だと言うのにリティスリティアはセルトの事について詳しくは話してはくれなかった。

ユリウスは話の流れ上、深く追求しなかったのだが、ようやくここでリティスリティアがセルトについて語り始める。





「あの子にはこの世界の事を任せていたんだけどうまくやっていないみたいなんだ。本当ならこの世界に魔法を伝える役目もあの子に任せていたんだけどあの子は何もしなかった。多分、あの子は私がやろうとしている事に薄々感づいているんだと思う」





「なぜ解任しないのですか? そんな役立たずを」





ユリウスの疑問と怒りは当然だった。



本来人類に伝えておかないといけなかった魔法をセルトは伝えていなかったと彼女が言ったからだ。



人類が魔王にずっと苦渋を飲まされてきた元凶とも言える存在だ

この場にマリアがいたら怒り狂っていただろうとユリウスは思う。





「それがね、あんなことになった所為で今、私には使える子がいないんだ。本当ならラー君の所から一人借りないといけないんだろうけど」





「……そうなのですか」





彼女にとってそれは只の言い訳だった。

ユリウスはあえて言わなかったが、リティスリティアはその気になればいつでもセルトを粛正することはできた。

だがリティスリティアにはそれができなかった。



セルトはリティスリティアが自らの魔力を分け与え作り出した唯一の使徒であり、自身の子に等しい存在だったからだ。

セルトと過ごした時間は他の始まりの者よりも長く、たった2人で長い時を過ごしていた事もある。

そんなセルトをリティスリティアは最後まで信じたかった。





「だからね、どうしてもあの子が止まらない時、君があの子を終わらせてあげて。その時私は何もできないと思うから」
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