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第4章 魔界編
第195話 幼女連れ去り事件
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「んー、いませんねー」
「いないっスね」
「いないのぅ」
結局、1時間ほどリルの友達だというフィーナの事を探し続けたアリアス達だったが、結局セラフィーナを見つけるには至らなかった。
というのも当然の話で、リルの友達フィーナちゃんことセラフィーナがこのエルナシティアへとやってきたのはついさっきの事だったからだ。
アリアス達は冒険者協会本部や衛士がいる詰め所などにセラフィーナという冒険者がやって来ていないかなど、聞いて回ったり、町中を探し回ったりしていたが見つかるわけはなかったのだ。
流石に黙ってセラフィーナ捜索を手伝っていたシステアの我慢の限界が近かった。
「そろそろ向かわないと不味いんじゃないか?」
そもそもアリアス達がこのエルナシティアへとやってきた目的は試練の塔を攻略だ。
ひょんなことからリルの保護者探しを買って出ることになったのだが、流石にこれ以上の時間を浪費するのは3日後にやってくる魔王軍の事を考えれば、システアが言った通り少し不味いことになる。
アリアス達がそんな話をしている中、リルはアリアスに買ってもらった鳥肉の串焼きを頬張っていた。
リルとしてはセラフィーナが見つからないのは何もおかしい事ではなく、自分の事だというのに半ば他人事のように考えていた。
それでもアリアス達と同行していたのは、リルに心配させないように常に心がけていたアリアスとニアが話してくれた人間界の事や町での暮らし、冒険者としての生活などの話がとても楽しいと感じていたからだ。
だが、システアの発言でそんな楽しかった時間の終わりを悟り、リルは笑顔で切り出した。
「もういいよ、ニアお姉ちゃん。あとは自分で探すから! みんなありがとね! また遊ぼうね!」
そう言って、リルは笑顔でアリアス達と別れようとした。
リルとしては本当の目的を果たせなかったが、あと数時間エルナシティアを周り、時間が遅くなる前に魔界のブリガンティス城へと帰ろうと思っていた。
だが、そう言って笑顔で去ろうとするリルの手をアリアスが掴む。
「リル、君みたいな小さな子が一人じゃ危ないよ。さっき行った衛士の詰め所に行こう」
「えっ?」
リルからすれば意味不明な話だが、普通に考えればアリアスの言う事が正しい。
いくら人間界の中では比較的治安が良いエルナシティアといえど、迷子の少女が一人で保護者を探し続けて何も起きないと断言できないわけがない。
そんな常識をブリガンティス城でそんな危険があるはずもなく暮らしてきたリルにはそれが理解できるわけがなかった。
「いいよ! 大丈夫だよ! 一人で探せるから」
そう言って、リルは再度この場を離れようとしたが、アリアスはリルを掴んだ手を離さない。
事実、リルがそんなならず者に攫われる心配は皆無なのだが、見た目は只の10歳くらいの少女なのだから、アリアスの心配はもっともな話だ。
「アリアスの言う通りですよ。リルちゃんみたいな可愛い子、すぐ悪い人に攫われちゃいますよ」
ニアもアリアスの援護に回り、ガランはもちろんシステアでさえアリアスの言葉に同意するような仕草を見せている。
「えっ、ホントに大丈夫だよ? うん、私こう見えて結構強いんだから!」
アリアス達を説得する為にそう言って、リルは服の袖を捲り上げ、力こぶを見せつけるような仕草を見せつけるが、誰がどう見ても筋肉が盛り上がっているような様子はなく、ぷにぷにの腕がそこにあるだけだ。
事実として、上位冒険者数人に囲まれた所で逃げおおす事くらいわけがないリルだが、そんな事がアリアス達に分かるはずもない。
「ひゃー、可愛い! でもダメですよ! お姉さんは騙されませんからね!」
リルの力こぶの仕草を見て、そんな感想を漏らしながらニアがリルを抱きしめた。
だが、そんな話に騙されるほどニアも他のメンバー達も甘くはない。
「行くよ! ついてきてね」
そう言って、遂にアリアスはリルの手を引きながら、先程、セラフィーナを探す為に一度寄った衛士がいる詰め所へと歩き出す。
「嫌だー! あんなつまらないとこ行きたくなーい!」
——そんなリルとアリアス達の様子を建物の陰から見ている者達がいた。
いうまでもなくセラフィーナ、ゾデュス、ガデュスの3人だ。
リルが強引に連れていかれる様子を見ながらガデュスが手を口元に当てながら言う。
「あわわわ、リルちゃんが悪い奴らに連れていかれるよぉ~」
そんなガデュスの言葉を聞いてセラフィーナがヤレヤレといった表情でガデュスの言葉に答える。
「……詰んだわね。リルには悪いけど諦めましょう。あー、今からでも偉そうなあのアンタらのボスへの言い訳を考えておいた方がいいわね。くく、殺されないといいわね、アンタ」
「そんな冗談言ってる場合か! 目の前でリル様を見捨てたなんて事がバレたら間違いなく俺達全員ブリガンティス様に殺される。……ってあいつらよく見たらアリアスとかいう勇者だぞ。クドウとかいう勇者達はいないようだ。あれならば」
そう言って、物陰から出ようとするゾデュスをセラフィーナが引き留める。
「やめた方がいいわ。あの4人とアンタら2人ならいい勝負するかもしれないけど、周りからうじゃうじゃ他の冒険者が集まってくるわよ。もう少し様子を……ってガデュス?」
ゾデュスと対応について話し合っているとセラフィーナはガデュスがプルプルと震えている事に気付いた。
「おいっ、どうした? ガデュス」
ゾデュスもセラフィーナと同じくガデュスの異変に気付き、声をかけるが、返事はない。
そして——。
「うぉぉぉ~! リルちゃんは俺の嫁ぇぇぇ~!」
「おいっ!」
ガデュスはゾデュスの制止を振り切って、謎の奇声を上げながら、リルの手を引くアリアス達の元へと飛びだして行くのだった。
「いないっスね」
「いないのぅ」
結局、1時間ほどリルの友達だというフィーナの事を探し続けたアリアス達だったが、結局セラフィーナを見つけるには至らなかった。
というのも当然の話で、リルの友達フィーナちゃんことセラフィーナがこのエルナシティアへとやってきたのはついさっきの事だったからだ。
アリアス達は冒険者協会本部や衛士がいる詰め所などにセラフィーナという冒険者がやって来ていないかなど、聞いて回ったり、町中を探し回ったりしていたが見つかるわけはなかったのだ。
流石に黙ってセラフィーナ捜索を手伝っていたシステアの我慢の限界が近かった。
「そろそろ向かわないと不味いんじゃないか?」
そもそもアリアス達がこのエルナシティアへとやってきた目的は試練の塔を攻略だ。
ひょんなことからリルの保護者探しを買って出ることになったのだが、流石にこれ以上の時間を浪費するのは3日後にやってくる魔王軍の事を考えれば、システアが言った通り少し不味いことになる。
アリアス達がそんな話をしている中、リルはアリアスに買ってもらった鳥肉の串焼きを頬張っていた。
リルとしてはセラフィーナが見つからないのは何もおかしい事ではなく、自分の事だというのに半ば他人事のように考えていた。
それでもアリアス達と同行していたのは、リルに心配させないように常に心がけていたアリアスとニアが話してくれた人間界の事や町での暮らし、冒険者としての生活などの話がとても楽しいと感じていたからだ。
だが、システアの発言でそんな楽しかった時間の終わりを悟り、リルは笑顔で切り出した。
「もういいよ、ニアお姉ちゃん。あとは自分で探すから! みんなありがとね! また遊ぼうね!」
そう言って、リルは笑顔でアリアス達と別れようとした。
リルとしては本当の目的を果たせなかったが、あと数時間エルナシティアを周り、時間が遅くなる前に魔界のブリガンティス城へと帰ろうと思っていた。
だが、そう言って笑顔で去ろうとするリルの手をアリアスが掴む。
「リル、君みたいな小さな子が一人じゃ危ないよ。さっき行った衛士の詰め所に行こう」
「えっ?」
リルからすれば意味不明な話だが、普通に考えればアリアスの言う事が正しい。
いくら人間界の中では比較的治安が良いエルナシティアといえど、迷子の少女が一人で保護者を探し続けて何も起きないと断言できないわけがない。
そんな常識をブリガンティス城でそんな危険があるはずもなく暮らしてきたリルにはそれが理解できるわけがなかった。
「いいよ! 大丈夫だよ! 一人で探せるから」
そう言って、リルは再度この場を離れようとしたが、アリアスはリルを掴んだ手を離さない。
事実、リルがそんなならず者に攫われる心配は皆無なのだが、見た目は只の10歳くらいの少女なのだから、アリアスの心配はもっともな話だ。
「アリアスの言う通りですよ。リルちゃんみたいな可愛い子、すぐ悪い人に攫われちゃいますよ」
ニアもアリアスの援護に回り、ガランはもちろんシステアでさえアリアスの言葉に同意するような仕草を見せている。
「えっ、ホントに大丈夫だよ? うん、私こう見えて結構強いんだから!」
アリアス達を説得する為にそう言って、リルは服の袖を捲り上げ、力こぶを見せつけるような仕草を見せつけるが、誰がどう見ても筋肉が盛り上がっているような様子はなく、ぷにぷにの腕がそこにあるだけだ。
事実として、上位冒険者数人に囲まれた所で逃げおおす事くらいわけがないリルだが、そんな事がアリアス達に分かるはずもない。
「ひゃー、可愛い! でもダメですよ! お姉さんは騙されませんからね!」
リルの力こぶの仕草を見て、そんな感想を漏らしながらニアがリルを抱きしめた。
だが、そんな話に騙されるほどニアも他のメンバー達も甘くはない。
「行くよ! ついてきてね」
そう言って、遂にアリアスはリルの手を引きながら、先程、セラフィーナを探す為に一度寄った衛士がいる詰め所へと歩き出す。
「嫌だー! あんなつまらないとこ行きたくなーい!」
——そんなリルとアリアス達の様子を建物の陰から見ている者達がいた。
いうまでもなくセラフィーナ、ゾデュス、ガデュスの3人だ。
リルが強引に連れていかれる様子を見ながらガデュスが手を口元に当てながら言う。
「あわわわ、リルちゃんが悪い奴らに連れていかれるよぉ~」
そんなガデュスの言葉を聞いてセラフィーナがヤレヤレといった表情でガデュスの言葉に答える。
「……詰んだわね。リルには悪いけど諦めましょう。あー、今からでも偉そうなあのアンタらのボスへの言い訳を考えておいた方がいいわね。くく、殺されないといいわね、アンタ」
「そんな冗談言ってる場合か! 目の前でリル様を見捨てたなんて事がバレたら間違いなく俺達全員ブリガンティス様に殺される。……ってあいつらよく見たらアリアスとかいう勇者だぞ。クドウとかいう勇者達はいないようだ。あれならば」
そう言って、物陰から出ようとするゾデュスをセラフィーナが引き留める。
「やめた方がいいわ。あの4人とアンタら2人ならいい勝負するかもしれないけど、周りからうじゃうじゃ他の冒険者が集まってくるわよ。もう少し様子を……ってガデュス?」
ゾデュスと対応について話し合っているとセラフィーナはガデュスがプルプルと震えている事に気付いた。
「おいっ、どうした? ガデュス」
ゾデュスもセラフィーナと同じくガデュスの異変に気付き、声をかけるが、返事はない。
そして——。
「うぉぉぉ~! リルちゃんは俺の嫁ぇぇぇ~!」
「おいっ!」
ガデュスはゾデュスの制止を振り切って、謎の奇声を上げながら、リルの手を引くアリアス達の元へと飛びだして行くのだった。
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