魔王をするのにも飽きたので神をボコって主人公に再転生!

コメッコ

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第4章 魔界編

第130話 門限です、いい子はすぐに帰ってこい

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「……お前達、今何時だと思っている?」


「町の方々に色々説明して回ったりしていましたら遅くなってしまいまして、今夜はこっちに泊まろうかなと思ったりー……」


「ほぅ、いい度胸だ。お前は明日からの仕事をすべて私に押し付けて、ギー君とあんなことをしたりこんなことをしたりするつもりなのか?」


アクアはピンチだった。

ギー君の尾行中にフィーリーアから突如通話魔法がかかってきたのである。

内容はいたってシンプル。

こんな時間までどこをほっつき歩いている? さっさと帰ってこい。
というもの。

嘘の言い訳をしたのにはちゃんと理由があった。

いつものアクアであれば即座に城に直帰する所だが、今はタイミングがとても悪かったのである。


「……うぅ、今とっても良い所なのにぃー」


今現在、アクアが物陰から覗いていた小さな広場のベンチにはギー君を含む、2勇者パーティーがベンチに座り談笑していた。

騒ぎを起こして酒場から追い出された時にはアクアもハラハラさせられたが、今から考えればあれでよかったのだ。

なぜなら席替えタイムが発生したからである。

恐らくギー君じゃない方の勇者パーティーのメンバーが気を使ってギー君とシステアという少女が自然と隣同士になるように計算して先に座って席を埋めてしまったのだろう。

流石に勇者パーティーは伊達ではないとアクアは素直にアリアス達の仕事を心の中で称賛していた。


(今、良い所なんですよ! これは絶対に何かが起きるわ。なにがなんでも見届けないと!)


そう強い決意を抱いたアクアだったが、興奮の所為か気づいていなかった。

アクアは先程の呟きをフィーリーアに聞こえないようにボリュームで呟いた気でいたが、フィーリーアの耳にははっきりと聞こえていたのである。


「——良い所だと? お前本当に何をしている? 今、ギー君と一緒なのか?」


静かだが、はっきりと分かる威圧的なフィーリーアの声色でアクアは自らの失態に気付くが、時はすでに遅し。


「い、いえ、一緒ではありません。先程説明回りを終えまして、今から宿を取ろうとしていた所で——」


確かに一緒ではないと言えば一緒ではないが、それ以外は殆ど嘘。

そんな嘘まみれの言葉をフィーリーアが信じるはずもなかった。


「お前やっぱり、ギー君といるな! この私を差し置いて、ギー君と楽しい事をしようなどとは絶対に許さん! 今すぐ帰ってこい! さもないと——」


「わ、分かりました! すぐ帰ります! 帰りますから!」


強く決意したばかりのアクアだったが、それ以外に選択肢はなかった。

フィーリーアがギー君の事になるとどんな些細な事でも何をやらかすか分からないのはこれまでの経験で嫌というほどわかっている。

素直に指示に応じようとしたアクアにフィーリーアは威圧感のある声で更に付け加える。


「時間稼ぎなどするなよ? ……そうだな、3分。3分で戻ってこい」


「いや、流石にそれは……」


あまりの無茶ぶりに流石のアクアは抵抗感を示す。

というのもここからフィーリーアがいる宮殿までどう頑張ってもアクアは一回の転移で帰還することはできない。

2回もしくは3回の転移が必要でしかもフィーリーアのいる宮殿の周囲には転移魔法阻害の結界が張り巡らされてあるので、そもそもそこからは普通に飛んでいく必要があるのだ。

恐らくフィーリーアならば少しの余裕をもって到着する事も可能だが、アクアとシルフィルの速さでは今すぐに転移を開始したとしても間に合うか微妙なライン。

「4分なら間に合います」とアクアがフィーリーアに譲歩を引き出そうとするが、その前に無情にもフィーリーアのカウントアップが開始されたのだった。


「いーち、にぃーい、さーん……」


こうなってしまえば、最早交渉はただ時間を無駄にするだけと悟ったアクアはすぐさま通信魔法を切ると、振り返りながら大きな声でシルフィルに合図する。


「シルフィル! 聞いていましたね? 今すぐ帰るわ……よ?」


と振り返ったが、そこには既にシルフィルの姿はなく、シルフィルの魔力の気配は遥か彼方。

今この時も転移を繰り返しているようだった。


「シルフィル! 私を見捨てましたねー!」


と言いながらもアクア自身、シルフィルに恨み節を吐いている暇などなかった。

アクアも考える間もなくすぐさま転移を開始し、宮殿へと急いだが結局間に合わず、アクアだけフィーリーアにこっぴどく罵られる事となったのである。

この時、もしフィーリーアから連絡が入らずに次の日もシラルークに滞在していたとすれば、アクアとシルフィルは異世界からの同胞と再会できた可能性も残されていたのだが、それは仮定の話になった。
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