魔王をするのにも飽きたので神をボコって主人公に再転生!

コメッコ

文字の大きさ
上 下
127 / 255
第4章 魔界編

第127話 最初は「死ね」とか言ってたのになんか楽しくなってきたザラスさん

しおりを挟む
「……はぁ? どこだ?」


聞きなれない地名にザラスは男に聞き返した。

魔界ならともかく人間界ならフィーリーアの目は届きにくいはずである。


「人間界でいえば東部方面ですね。魔界西方の四天王ブリガンティス領との境界に近い——」


「……ブリガンティス? 誰だ?」


聞きなれない名に更にザラスは聞き返すと、男は少し呆れたような気持ちになったが、それを表に出すことなく冷静にザラスの問いに答えた。


「3人いる魔王軍現四天王の一人です」


「代替わりか? ていうか四天王なのに3人なのか?」


1000年以上引き籠っていたので当然といえば当然だがザラスは現在の魔界と人間界の事情に疎かった。

ザラスは魔王ギラスマティアの先代の魔王が死んだことさえ知らないのだ。


「四天王アルジールが先日死んで今は3人ですね。あとあなたがいた1000年前の四天王は一人も残っていませんよ。代替わりした魔王も数日前に死んで今は空席になっています」


「マジか! まぁ確かにあいつら弱かったもんな!」


現在の魔界の状況を聞いて面白くなったのかザラスは高笑いを上げたが、途中で何かに気付いて男に聞き返した。


「……だが、弱いって言っても誰が殺ったんだ? あのババアのヒステリックに巻き込まれでもしたか?」


ザラスが弱いと言ったのはザラスと比べたらの話であり、この世界で相対的に見れば数人の規格外の化け物を除けば絶対強者と言っても大袈裟ではなかった魔人達だった。

ならばそれを倒したとするのならその規格外の化け物の一人であるフィーリーア辺りが怪しいとザラスは当たりをつけていたが男の口から出た言葉はザラスの予想どころかまったく聞いた事すら言葉だった。


「人間界の勇者です」


「ゆうしゃ? けったいな名前だな。つか適当な事言うんじゃねぇよ。人間が魔人に勝てるかよ。魔法もロクに使えねぇ竹槍一本で戦うゴミじゃねぇか」


流石にザラスが知る1000年前の人間でも竹槍で戦うなどということはなかったが、ザラスから見れば竹槍も金属製の剣も大差がないかと男は竹槍の事は流してもう一方だけを訂正した。


「勇者は名前ではありません。役職……いや、魔界で言う所の魔王のような人間界最強の者を呼ぶ呼称のようなものです」


「で、その竹槍勇者がどうやって魔王を倒したって?」


ザラスは腰の辺りをポリポリと掻きながらそう男に尋ねる。


「ザラス様、勇者が使っていたのは竹槍ではありません。魔王は第一級魔法を人間界で初めて習得した勇者に倒されたのですよ」


「——はぁぁぁ? 第一級魔法だと? 魔界でも使えるやつほとんどいなかったじゃねぇか? 誰が教えたっつんだよ」


ザラスの驚きも当然と言えた。

1000年以上前は人間界と魔界の境界線ももっと曖昧で人間はただただ魔界にいる魔人に怯え暮らすだけの存在だったからである。

第一級魔法以前に魔法の研究すらおぼつかず、稀にたまたま魔法を習得出来た者が現れても技術の継承なども行われる事もなかった。

そんなザラスの驚きの叫びに男はニコッと微笑んで答えてみせる。


「あなたの大嫌いなあの方ですよ」


男にそう言われたザラスはフィーリーアの姿を思い浮かべて吐き捨てるように言った。


「……あのクソババアか。なんでまた」


「あの御方に頼まれたのでは?」


「何!? ティアが来たのか?」


「知りませんよ。使者を送ったか手紙でではないですか?」


これは男の単なる想像だったが、少なくともこの1000年間、彼女はこの世界に訪れた事はないはずである。

仮に彼女がこの世界に現れていたのなら何を置いてでも男は彼女の前に馳せ参じただろう。

だが、男がどれだけ探知の目を広げても彼女の痕跡一つ見つけられなかったのだから、やはり彼女は1000年以上に渡ってこの世界には現れていないのだ。

男もザラスもそしてあのフィーリーアでさえ彼女に会う事は叶っていないのが今のこの世界の現状だった。
しおりを挟む
感想 124

あなたにおすすめの小説

友人Aの俺は女主人公を助けたらハーレムを築いていた

山田空
ファンタジー
友人Aに転生した俺は筋肉で全てを凌駕し鬱ゲー世界をぶち壊す 絶対に報われない鬱ゲーというキャッチコピーで売り出されていたゲームを買った俺はそのゲームの主人公に惚れてしまう。 ゲームの女主人公が報われてほしいそう思う。 だがもちろん報われることはなく友人は死ぬし助けてくれて恋人になったやつに裏切られていじめを受ける。 そしてようやく努力が報われたかと思ったら最後は主人公が車にひかれて死ぬ。 ……1ミリも報われてねえどころかゲームをする前の方が報われてたんじゃ。 そう考えてしまうほど報われない鬱ゲーの友人キャラに俺は転生してしまった。 俺が転生した山田啓介は第1章のラストで殺される不幸の始まりとされるキャラクターだ。 最初はまだ楽しそうな雰囲気があったが山田啓介が死んだことで雰囲気が変わり鬱ゲーらしくなる。 そんな友人Aに転生した俺は半年を筋トレに費やす。 俺は女主人公を影で助ける。 そしたらいつのまにか俺の周りにはハーレムが築かれていて

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

【コピペ】を授かった俺は異世界で最強。必要な物はコピペで好きなだけ増やし、敵の攻撃はカットで防ぐ。え?倒した相手のスキルももらえるんですか?

黄舞
ファンタジー
 パソコンが出来ない上司のせいでコピーアンドペースト(コピペ)を教える毎日だった俺は、トラックに跳ねられて死んでしまった。 「いつになったらコピペ使えるようになるんだ―!!」  が俺の最後の言葉だった。 「あなたの願い叶えました。それでは次の人生を楽しんでください」  そういう女神が俺に与えたスキルは【コピペ(カット機能付き)】  思わぬ事態に最初は戸惑っていた俺だが、そのスキルの有用性に気付き、いつのまにやら異世界で最強の存在になっていた。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

異世界でスキルを奪います ~技能奪取は最強のチート~

星天
ファンタジー
 幼馴染を庇って死んでしまった翔。でも、それは神様のミスだった!  創造神という女の子から交渉を受ける。そして、二つの【特殊技能】を貰って、異世界に飛び立つ。  『創り出す力』と『奪う力』を持って、異世界で技能を奪って、どんどん強くなっていく  はたして、翔は異世界でうまくやっていけるのだろうか!!!

処理中です...