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第4章 魔界編
第127話 最初は「死ね」とか言ってたのになんか楽しくなってきたザラスさん
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「……はぁ? どこだ?」
聞きなれない地名にザラスは男に聞き返した。
魔界ならともかく人間界ならフィーリーアの目は届きにくいはずである。
「人間界でいえば東部方面ですね。魔界西方の四天王ブリガンティス領との境界に近い——」
「……ブリガンティス? 誰だ?」
聞きなれない名に更にザラスは聞き返すと、男は少し呆れたような気持ちになったが、それを表に出すことなく冷静にザラスの問いに答えた。
「3人いる魔王軍現四天王の一人です」
「代替わりか? ていうか四天王なのに3人なのか?」
1000年以上引き籠っていたので当然といえば当然だがザラスは現在の魔界と人間界の事情に疎かった。
ザラスは魔王ギラスマティアの先代の魔王が死んだことさえ知らないのだ。
「四天王アルジールが先日死んで今は3人ですね。あとあなたがいた1000年前の四天王は一人も残っていませんよ。代替わりした魔王も数日前に死んで今は空席になっています」
「マジか! まぁ確かにあいつら弱かったもんな!」
現在の魔界の状況を聞いて面白くなったのかザラスは高笑いを上げたが、途中で何かに気付いて男に聞き返した。
「……だが、弱いって言っても誰が殺ったんだ? あのババアのヒステリックに巻き込まれでもしたか?」
ザラスが弱いと言ったのはザラスと比べたらの話であり、この世界で相対的に見れば数人の規格外の化け物を除けば絶対強者と言っても大袈裟ではなかった魔人達だった。
ならばそれを倒したとするのならその規格外の化け物の一人であるフィーリーア辺りが怪しいとザラスは当たりをつけていたが男の口から出た言葉はザラスの予想どころかまったく聞いた事すら言葉だった。
「人間界の勇者です」
「ゆうしゃ? けったいな名前だな。つか適当な事言うんじゃねぇよ。人間が魔人に勝てるかよ。魔法もロクに使えねぇ竹槍一本で戦うゴミじゃねぇか」
流石にザラスが知る1000年前の人間でも竹槍で戦うなどということはなかったが、ザラスから見れば竹槍も金属製の剣も大差がないかと男は竹槍の事は流してもう一方だけを訂正した。
「勇者は名前ではありません。役職……いや、魔界で言う所の魔王のような人間界最強の者を呼ぶ呼称のようなものです」
「で、その竹槍勇者がどうやって魔王を倒したって?」
ザラスは腰の辺りをポリポリと掻きながらそう男に尋ねる。
「ザラス様、勇者が使っていたのは竹槍ではありません。魔王は第一級魔法を人間界で初めて習得した勇者に倒されたのですよ」
「——はぁぁぁ? 第一級魔法だと? 魔界でも使えるやつほとんどいなかったじゃねぇか? 誰が教えたっつんだよ」
ザラスの驚きも当然と言えた。
1000年以上前は人間界と魔界の境界線ももっと曖昧で人間はただただ魔界にいる魔人に怯え暮らすだけの存在だったからである。
第一級魔法以前に魔法の研究すらおぼつかず、稀にたまたま魔法を習得出来た者が現れても技術の継承なども行われる事もなかった。
そんなザラスの驚きの叫びに男はニコッと微笑んで答えてみせる。
「あなたの大嫌いなあの方ですよ」
男にそう言われたザラスはフィーリーアの姿を思い浮かべて吐き捨てるように言った。
「……あのクソババアか。なんでまた」
「あの御方に頼まれたのでは?」
「何!? ティアが来たのか?」
「知りませんよ。使者を送ったか手紙でではないですか?」
これは男の単なる想像だったが、少なくともこの1000年間、彼女はこの世界に訪れた事はないはずである。
仮に彼女がこの世界に現れていたのなら何を置いてでも男は彼女の前に馳せ参じただろう。
だが、男がどれだけ探知の目を広げても彼女の痕跡一つ見つけられなかったのだから、やはり彼女は1000年以上に渡ってこの世界には現れていないのだ。
男もザラスもそしてあのフィーリーアでさえ彼女に会う事は叶っていないのが今のこの世界の現状だった。
聞きなれない地名にザラスは男に聞き返した。
魔界ならともかく人間界ならフィーリーアの目は届きにくいはずである。
「人間界でいえば東部方面ですね。魔界西方の四天王ブリガンティス領との境界に近い——」
「……ブリガンティス? 誰だ?」
聞きなれない名に更にザラスは聞き返すと、男は少し呆れたような気持ちになったが、それを表に出すことなく冷静にザラスの問いに答えた。
「3人いる魔王軍現四天王の一人です」
「代替わりか? ていうか四天王なのに3人なのか?」
1000年以上引き籠っていたので当然といえば当然だがザラスは現在の魔界と人間界の事情に疎かった。
ザラスは魔王ギラスマティアの先代の魔王が死んだことさえ知らないのだ。
「四天王アルジールが先日死んで今は3人ですね。あとあなたがいた1000年前の四天王は一人も残っていませんよ。代替わりした魔王も数日前に死んで今は空席になっています」
「マジか! まぁ確かにあいつら弱かったもんな!」
現在の魔界の状況を聞いて面白くなったのかザラスは高笑いを上げたが、途中で何かに気付いて男に聞き返した。
「……だが、弱いって言っても誰が殺ったんだ? あのババアのヒステリックに巻き込まれでもしたか?」
ザラスが弱いと言ったのはザラスと比べたらの話であり、この世界で相対的に見れば数人の規格外の化け物を除けば絶対強者と言っても大袈裟ではなかった魔人達だった。
ならばそれを倒したとするのならその規格外の化け物の一人であるフィーリーア辺りが怪しいとザラスは当たりをつけていたが男の口から出た言葉はザラスの予想どころかまったく聞いた事すら言葉だった。
「人間界の勇者です」
「ゆうしゃ? けったいな名前だな。つか適当な事言うんじゃねぇよ。人間が魔人に勝てるかよ。魔法もロクに使えねぇ竹槍一本で戦うゴミじゃねぇか」
流石にザラスが知る1000年前の人間でも竹槍で戦うなどということはなかったが、ザラスから見れば竹槍も金属製の剣も大差がないかと男は竹槍の事は流してもう一方だけを訂正した。
「勇者は名前ではありません。役職……いや、魔界で言う所の魔王のような人間界最強の者を呼ぶ呼称のようなものです」
「で、その竹槍勇者がどうやって魔王を倒したって?」
ザラスは腰の辺りをポリポリと掻きながらそう男に尋ねる。
「ザラス様、勇者が使っていたのは竹槍ではありません。魔王は第一級魔法を人間界で初めて習得した勇者に倒されたのですよ」
「——はぁぁぁ? 第一級魔法だと? 魔界でも使えるやつほとんどいなかったじゃねぇか? 誰が教えたっつんだよ」
ザラスの驚きも当然と言えた。
1000年以上前は人間界と魔界の境界線ももっと曖昧で人間はただただ魔界にいる魔人に怯え暮らすだけの存在だったからである。
第一級魔法以前に魔法の研究すらおぼつかず、稀にたまたま魔法を習得出来た者が現れても技術の継承なども行われる事もなかった。
そんなザラスの驚きの叫びに男はニコッと微笑んで答えてみせる。
「あなたの大嫌いなあの方ですよ」
男にそう言われたザラスはフィーリーアの姿を思い浮かべて吐き捨てるように言った。
「……あのクソババアか。なんでまた」
「あの御方に頼まれたのでは?」
「何!? ティアが来たのか?」
「知りませんよ。使者を送ったか手紙でではないですか?」
これは男の単なる想像だったが、少なくともこの1000年間、彼女はこの世界に訪れた事はないはずである。
仮に彼女がこの世界に現れていたのなら何を置いてでも男は彼女の前に馳せ参じただろう。
だが、男がどれだけ探知の目を広げても彼女の痕跡一つ見つけられなかったのだから、やはり彼女は1000年以上に渡ってこの世界には現れていないのだ。
男もザラスもそしてあのフィーリーアでさえ彼女に会う事は叶っていないのが今のこの世界の現状だった。
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