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第3章 聖竜襲来編
第84話 腹減った、帰ろう
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「そう、そうなのね、ギー君は良いお友達を持ったのね……ぐすっ」
俺の冒険の話を聞き終えたフィーリーアはなぜか涙を浮べ、どこからか取り出したハンカチで目に浮かんだ涙を拭いていた。
(えっ? 今の話に泣くとこあった?)
俺がした話のほとんどは誰かが誰かをボコった話ばかりである。
あとはアルジール兄妹の奇行くらいだろうか。
それだというのに今もフィーリーアは鼻をずびずびとすすっている。
「う、うん、そうだね」
そうだねとは微塵も思ってないが、フィーリーアの今の姿を見て「違います」などと言えるわけがない。
俺がフィーリーアの言葉を仕方なく肯定するとフィーリーアはうんうんと頷き、「今度アルジール君も家に連れてきなさいね」とオカンみたいな事を言い出す。
いや、まぁ母さんなんだけど。
「まぁ機会があればね」
「絶対よ! 絶対だからね!」
「はいはい」
仕方なく約束したが、俺はあまり気が進まなかった。
俺の予想だが、恐らくアルジールとフィーリーアの相性はかなり良いと思う。
だが、それがまずいのだ。
アルジールとフィーリーアを対面させると、確実に意気投合し馬鹿な事を言い出すだろう。
酒が入ればなおまずい。
どうせ2人で世界征服しようとかそんな馬鹿な事を言い出すに決まっている。
そして、その尻拭いをするのは俺と姉さん達だ。
アルジール一人ならともかくフィーリーアまで入るとなれば話は別なのだ。
酔って俺達の制止を振り切って、人間界を火の海に——。
なんてことにもなりかねない。
とりあえず俺はフィーリーアがこの話を忘れてくれるように願い、問題を先送りすることにした。
そうこうしているうちに時刻は夕方に差し掛かり日が暮れかけ始めていた。
「さて、いい加減戻るよ。母さんも気も付けてね」
俺がそう言うとフィーリーアは名残惜しそうに俺を見つめている。
「やっぱり家に帰らない?」
「帰りません!」
もちろん即答である。
ただでさえ昼飯を食い損ねているのだ。
さっさと帰って飯にしたい。
「そう、名残惜しいけど私も帰るわね、帰るからね? 本当に帰るよ?」
ふわっと宙に浮いたフィーリーアは未練たらしく何度も俺に聞き返して来るが俺はそれを華麗にスルーし、言っておかないといけない事だけをフィーリーアに伝えた。
「姉さん達には俺から帰るように言っておくよ」
「そ、そう……グスン。じゃあね、ギー君」
そう言い残すと、フィーリーアは転移魔法で竜の都に帰っていった。
神と元魔王と始祖竜の戦いの激しい爪痕を残した戦場を見渡して、俺は溜息を吐く。
「ふぅ、なんとかなったけど俺もまだまだだな」
正直相手がフィーリーアで助かったが今回は今までで一番やばかった。
これが本当の敵相手だったらクドウはこの場にもう立ってはいなかっただろう。
「とはいえ、母さん程の相手と戦う事なんてもうないだろうけどな」
クドウの当面敵となりうる可能性はあるのはアルジール以外の魔王軍四天王だろう。
いずれも魔界にその名を轟かせる猛者揃いだが、流石にフィーリーアと比べればまだ戦いになるはずである。
今回の敵は規格外過ぎたのだ。
「まぁ今考えても仕方ないな、腹減ったし帰って飯にするかな」
俺もフィーリーアと同じく転移魔法でシラルークへ帰還するのだった。
俺の冒険の話を聞き終えたフィーリーアはなぜか涙を浮べ、どこからか取り出したハンカチで目に浮かんだ涙を拭いていた。
(えっ? 今の話に泣くとこあった?)
俺がした話のほとんどは誰かが誰かをボコった話ばかりである。
あとはアルジール兄妹の奇行くらいだろうか。
それだというのに今もフィーリーアは鼻をずびずびとすすっている。
「う、うん、そうだね」
そうだねとは微塵も思ってないが、フィーリーアの今の姿を見て「違います」などと言えるわけがない。
俺がフィーリーアの言葉を仕方なく肯定するとフィーリーアはうんうんと頷き、「今度アルジール君も家に連れてきなさいね」とオカンみたいな事を言い出す。
いや、まぁ母さんなんだけど。
「まぁ機会があればね」
「絶対よ! 絶対だからね!」
「はいはい」
仕方なく約束したが、俺はあまり気が進まなかった。
俺の予想だが、恐らくアルジールとフィーリーアの相性はかなり良いと思う。
だが、それがまずいのだ。
アルジールとフィーリーアを対面させると、確実に意気投合し馬鹿な事を言い出すだろう。
酒が入ればなおまずい。
どうせ2人で世界征服しようとかそんな馬鹿な事を言い出すに決まっている。
そして、その尻拭いをするのは俺と姉さん達だ。
アルジール一人ならともかくフィーリーアまで入るとなれば話は別なのだ。
酔って俺達の制止を振り切って、人間界を火の海に——。
なんてことにもなりかねない。
とりあえず俺はフィーリーアがこの話を忘れてくれるように願い、問題を先送りすることにした。
そうこうしているうちに時刻は夕方に差し掛かり日が暮れかけ始めていた。
「さて、いい加減戻るよ。母さんも気も付けてね」
俺がそう言うとフィーリーアは名残惜しそうに俺を見つめている。
「やっぱり家に帰らない?」
「帰りません!」
もちろん即答である。
ただでさえ昼飯を食い損ねているのだ。
さっさと帰って飯にしたい。
「そう、名残惜しいけど私も帰るわね、帰るからね? 本当に帰るよ?」
ふわっと宙に浮いたフィーリーアは未練たらしく何度も俺に聞き返して来るが俺はそれを華麗にスルーし、言っておかないといけない事だけをフィーリーアに伝えた。
「姉さん達には俺から帰るように言っておくよ」
「そ、そう……グスン。じゃあね、ギー君」
そう言い残すと、フィーリーアは転移魔法で竜の都に帰っていった。
神と元魔王と始祖竜の戦いの激しい爪痕を残した戦場を見渡して、俺は溜息を吐く。
「ふぅ、なんとかなったけど俺もまだまだだな」
正直相手がフィーリーアで助かったが今回は今までで一番やばかった。
これが本当の敵相手だったらクドウはこの場にもう立ってはいなかっただろう。
「とはいえ、母さん程の相手と戦う事なんてもうないだろうけどな」
クドウの当面敵となりうる可能性はあるのはアルジール以外の魔王軍四天王だろう。
いずれも魔界にその名を轟かせる猛者揃いだが、流石にフィーリーアと比べればまだ戦いになるはずである。
今回の敵は規格外過ぎたのだ。
「まぁ今考えても仕方ないな、腹減ったし帰って飯にするかな」
俺もフィーリーアと同じく転移魔法でシラルークへ帰還するのだった。
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