魔王をするのにも飽きたので神をボコって主人公に再転生!

コメッコ

文字の大きさ
上 下
67 / 255
第3章 聖竜襲来編

第67話 聖竜が世界で最も愛したもの

しおりを挟む
ギルドマスターと都市長が聖竜に事情を聞きに行くと言っても、実際に聖竜がいるシラルークの東の端まで走っていくという事ではなかった。

いくら比較的近くにいたとはいえ、町の端まで走るとなればそれなりに距離がある。

ギルドマスター1人ならそれでもどうにかなったかもしれないが都市長はそれなりに歳も食った上にもともと体力がある方でもない。

ギルドマスターは冒険者協会近くにあった大広場へと都市長と共に走りながら、魔力を使い直接、聖竜へと語り掛けた。

システアが冒険者協会に冒険者を集めた時に使ったアレだ。


「聖竜様、聞こえますか?」


ギルドマスターが聖竜にそう問いかけると、聖竜はすぐに広場へと走るギルドマスターに気づいた。


「なんだ、貴様らは?」


綺麗に澄んだ女の声なのに重い声がギルドマスターの身体中に響いた。

まるで会ったことすらない魔王でも相手にしている気分になる。


「私はこのシラルーク冒険者協会ギルドマスターをしている者です。名は——」


「貴様らの名などどうでもいい! それで隣を走っている明らかに弱そうな者はなんだ?」


アンタが聞いたんだろ?——とギルドマスターはそんな事は考えない。

ちなみに隣を走っている都市長はなんとかついて来てはいるがかなり息が上がってしまっている。

偉そうなことを言っていた割に情けない限りである。


「都市長です」

「そうか、……で勇者はどこにいる?」


会話の途中でギルドマスターと息絶え絶えな都市長は大広間へと到着した。

あとは聖竜がこちらに来ればいいのだが、一向に向かってくる気配はない。

それどころか地上にゆっくりと降下を始めたのだ。

そして——。

いきなり聖竜はギルドマスター達がいる大広場に出現し、その後に続きエレメンタルドラゴンも次々と出現した。


(……まさか転移門! あの巨大な体を覆いこむほどのか!)


ギルドマスターが知る限り人間界で転移門の魔法を使用できるのはシステアただ一人だ。

そのシステアでさえ、複数回の連続行使には魔力をかなり消耗すると言っている。

それをこの聖竜はたった1kmほどの距離を移動するためだけにあれほど巨大な転移門を行使したのである。

恐らく、シラルーク東に突然現れた時にも使用したのだろう。

光の超遠距離魔法を放ってからここに到着した時間から考えると、高速飛行中の空中に転移門を展開し、次々と転移してきたとギルドマスターは予測する。


(……化け物め)


ギルドマスターは転移門を使ったことがないので具体的にどれほどの難易度があるのかは想像するしかないが、それでも高速飛行中に簡単に使用できる魔法ではない事くらいわかる。


「もう一度聞く。勇者はどこにいる?」


「その前に、事情を聞かせてもらえませんか? 勇者があなたに何をしたというのですか?」


「知れた事。勇者は私のこの世で一番愛する大事なモノを奪っていった。今すぐ、出さねば、手始めにこの街を滅ぼす!」


聖竜の優美だが重い声が町に響き渡り、シラルークの町の人々に緊張が走った。

だがそれでもギルドマスターは引かなかった。


「その大事な物とはなんでしょう? アリアス様はここ最近、冒険者協会本部の町付近でずっと依頼を行ってきました。貴方の大事な物を奪う事などできなかったと思われますが」


そう、今はここシラルークの町の東で魔人討伐の作戦に従事していたアリアス達だったが、その直前まではここからずっと離れた冒険者協会本部がある町を拠点に活動していた。

聖竜の大事なモノとやらの正体は分からないが、ずっと東の魔界方面から飛んで来た聖竜がいた場所とはまったくの正反対の方向なのだ。

聖竜の手から離れていたのならば可能性はなくないのかもしれないが、ギルドマスターからすればアリアスがその聖竜の大事な何かを奪っていったという話は納得のできない話だった。
しおりを挟む
感想 124

あなたにおすすめの小説

友人Aの俺は女主人公を助けたらハーレムを築いていた

山田空
ファンタジー
友人Aに転生した俺は筋肉で全てを凌駕し鬱ゲー世界をぶち壊す 絶対に報われない鬱ゲーというキャッチコピーで売り出されていたゲームを買った俺はそのゲームの主人公に惚れてしまう。 ゲームの女主人公が報われてほしいそう思う。 だがもちろん報われることはなく友人は死ぬし助けてくれて恋人になったやつに裏切られていじめを受ける。 そしてようやく努力が報われたかと思ったら最後は主人公が車にひかれて死ぬ。 ……1ミリも報われてねえどころかゲームをする前の方が報われてたんじゃ。 そう考えてしまうほど報われない鬱ゲーの友人キャラに俺は転生してしまった。 俺が転生した山田啓介は第1章のラストで殺される不幸の始まりとされるキャラクターだ。 最初はまだ楽しそうな雰囲気があったが山田啓介が死んだことで雰囲気が変わり鬱ゲーらしくなる。 そんな友人Aに転生した俺は半年を筋トレに費やす。 俺は女主人公を影で助ける。 そしたらいつのまにか俺の周りにはハーレムが築かれていて

【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。 メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。 しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

毎日スキルが増えるのって最強じゃね?

七鳳
ファンタジー
異世界に転生した主人公。 テンプレのような転生に驚く。 そこで出会った神様にある加護をもらい、自由気ままに生きていくお話。 ※ストーリー等見切り発車な点御容赦ください。 ※感想・誤字訂正などお気軽にコメントください!

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

処理中です...