魔王をするのにも飽きたので神をボコって主人公に再転生!

コメッコ

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第3章 聖竜襲来編

第64話 朗報

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勇者がいなくなったシラルークの町の人々は迫りくる脅威に不安を感じつつも信じていた。

——アリアス率いる勇者パーティーがシラルークを救ってくれると。

アリアスが出発してからすぐにシラルークの町で大々的な発表があったのだ。

大広場に集められた町の人々の前に現れたのは都市長と冒険者協会のギルドマスターだった。

仮設で設けられた高台に登壇したギルドマスターはシラルークの人々に向けて、真実を伝えたのだ。


「人間界に魔人が侵入しました——」


ギルドマスターの言葉を聞いたシラルークの人々に大きなどよめきが起こる。

一体で町を滅ぼす存在。それが魔人という存在だ。

そんな魔人が人間界に侵入したというのだ。

ここから魔界は数百キロは離れているか魔人相手ではそんな距離は大した問題ではないという事はシラルークの町の者であれば誰もが知る事だった。

だが、ギルドマスターの宣言はこれで終わりではなかった。


「ですがご安心ください。只今、S級冒険者にして勇者である世界最強のアリアス様が率いる勇者パーティー『光の剣』が魔人討伐に向かっています。それに加え、シラルーク所属の多くのA級~C級冒険者による大部隊も作戦に参加しています。魔人討伐は時間の問題でしょう」


そんな発表があったのが昨日。

町の人々は魔人に警戒しつつも普段通りの生活を行っていた。

冒険者協会には未だ魔人討伐の報告はきていない。

ギルドマスターは都市長やその他のシラルークの要人たちと共に冒険者協会に籠っていた。

魔人の討伐の報を待つ者。シラルークの外で警戒する冒険者に外に異常がないか監視させる者。

その役割は様々だったが、全ての者は仮眠で交代しながら24時間の警戒を続けていた。

そしてその時は訪れたのだ。

連絡を寄こしてきたのは勇者パーティーではなく勇者パーティーの後方を進んでいたA級冒険者ギランディーからであった。

連絡を受けたギルドマスターはギランディーからの報告を頷きながら静かに聞いていた。


「そうか、分かった。ご苦労だったな」


ギルドマスターは最後にそう言うと、ギランディーとの連絡を終えたのだった。

ギルドマスターの周りには作戦の成否を問う者たちが殺到した。


「どうなったのですか? 勇者様達は!?」


「……魔人は倒された。作戦は成功だ……」


ギルドマスターの疲れた表情から出た言葉に冒険者協会内が一瞬静寂に包まれた後——


うぉぉぉー!!


多くの者が己の立場を忘れ、近くにいた人々と抱き合い、歓声と喜びの声で溢れかえった。


「か、勝ったのですか?」


「えぇ、しかも全員が無傷だそうです」


ギルドマスターの言葉を聞いた都市長は驚きで一瞬言葉を失うが、すぐに冷静さを取り戻し、ギルドマスターに再度問う。


「無傷ですって? そんな馬鹿な? 相手は少数だったのですか?」


「いえ、ギランディーがシステア殿から聞いた話によると敵は魔人20体。しかもその内ブリガンティス軍軍団長ゾデュスに部隊長ガデュスという者も含まれていたそうです」


「魔人が20体など都市どころか複数の国が亡ぶレベルではないですか!? しかも軍団長ですと!? 四天王に次ぐ幹部ではないですか!?」


ギルドマスターの耳が痛くなるほどの大声で騒ぐ都市長。

まぁギルドマスターも気持ちは分かる。

普通であれば太刀打ちのしようがない大戦力である。

仮に勝利できたとして勇者パーティーが壊滅に追い込まれたとしてもおかしくはないと思えるほどのだ。


「落ち着いてください、都市長。驚くのはまだ早いです。……それが魔人ゾデュスと魔人ガデュスを討ったのがE級冒険者パーティー『魔王』所属のクドウとアールという冒険者だったらしいのです」


それを聞いた都市長の目が点になった。


「何を言っている? ギルドマスター。E級冒険者だと?」


そんなことはギルドマスターが言いたいくらいだった。

こんなことを言ってはなんだが、なぜE級冒険者が魔人を——しかもその中でもかなりの強さを誇る魔人を倒せるというのか。

そもそもシステアが止めていなければギルドマスターが冒険者協会から追い出していたはずの冒険者だったのだ。


(真の最功労者はシステア様かもしれないな)


実際その通りである。

システアがギルドマスターを止めなければシラルークの町は今頃どうなっていたか分からない。

勇者パーティーが負けなかったとしても魔人の部隊を止めきれず、シラルークと付近の町への侵入を許していたに違いなかったはずだ。

仮に一体でも町への侵入を許してしまえばその町は滅びから逃れることはできなかったことだろう。

それは人間と魔人の歴史が既に証明している事なのだ。


(さて、後で会長に連絡を取るか……)


勇者昇格は冒険者協会支部のギルドマスター1人の権限では行えない。

勇者昇格には冒険者協会会長を含むギルドマスターもしくは勇者、A級冒険者など複数の推薦が必要となる。

冒険者協会内の喧騒はしばらく続き、その10数分後にシラルークの町は再び更なる窮地に陥る事になるのだが、この場にいる全ての者はそんなことは知る由もなかったのである。
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