魔王をするのにも飽きたので神をボコって主人公に再転生!

コメッコ

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第2章 魔人侵攻編

第58話 雑魚はお前だ

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「なんだぁ~? あいつはぁ~?」


ガデュスはアルジールと睨み合いを続けながら部下の魔人とアリアスの戦いを眺めていた。

先程のアルジールの動きもそうだが、今部下達と戦っている人間も明らかにE級冒険者の実力から逸脱している。

そもそも、E級冒険者などでは魔人数体はおろか魔人1体相手ですら傷一つつけることすらできないだろう。

一方、アルジールもアリアスの戦いを見て、少なからず感心していた。


「ほぅ、アリアスのやつ中々やるではないか。最初に使った魔法は第2級魔法か? なかなか使い勝手の良さそうな魔法だ」


アルジールが得意とする魔法は高威力広範囲のものが多い。アリアスが使ったような高威力で範囲は狭いが連続攻撃できる魔法はあまり得意ではないのだ。

別にそれで特段困ったこともないのだが、オールマイティーにあらゆる魔法を使いこなす敬愛するクドウにアルジールが劣っている点の1つでもある。


(まぁそれを別にしてもあの方と私では隔絶した実力差があるのだがな)


そもそもの魔力の容量。魔法を使う時の瞬発力。体の動き。

ありとあらゆる点でアルジールがクドウに勝っている点は何一つないとアルジールは思っている。

だからこそ、自身の全てを捧げるに相応しい相手なのだ。


「今までやってきた勇者とは違うという事か」


アルジールがそう呟くと、ガデュスは敏感に反応した。


「何ぃ~? あいつ勇者なのかぁ~? E級冒険者ってのは嘘かぁ~?」


「E級冒険者はこの場では私だけだ。勇者がいるからと心配することはない。すぐにお前は私に倒されるのだからな」


「それは無理だろぉ~。それにこんだけドンパチやってんだぁ~。兄貴がすぐ駆けつけてお前ら全員皆殺しだぜぇ~」


「ほぉ、その兄貴とやらは誰だ? 強いのか?」


その兄貴とやらが恐らく軍団長の誰かだとアルジールは当たりをつけていた。とはいえ、その軍団長は十中八九——。


「聞いて驚けぇ~。俺の兄貴はぁ~ブリガンティス軍軍団長ゾデュスだぁ~」


「やはりな。人間界侵攻を命令したのはブリガンティスか。相変わらずあの方の言う事を聞かぬ愚か者め」


「てめぇ~、やっぱ死にてぇみて~だなぁ~」


ガデュスはゾデュスよりもブリガンティスに対する忠誠心はやや低いがそれでもアルジールに攻撃を仕掛けるには十分な理由となった。

ガデュスの傍の地面から大きな土の塊が形成され、凄まじいスピードでアルジールに向けて飛翔する。
第3級魔法アースロック。

自身の周りの土や岩を任意の形に形成し敵に飛ばす魔法である。術者次第で巨石を飛ばしたり刃に形成することも可能な比較的万能な魔法である。


「雑魚に相応しい魔法だな」


アルジールは自ら土の塊に突進し、拳を放つと、空中で爆散した。

土の塊と言っても魔法で強度を強化されているので見た目通りの硬さではなくそれは普通の岩かそれ以上の強度だったはずだが、アルジールの拳によって難なく破砕された。


「てめぇ、格闘家かぁ~? 腰に下げている剣はなんだぁ~?」


アルジールは見た目だけ見れば剣士である。細身の体から見てもそう考えるのが普通である。

だが、最初にガデュスを殴った時も今のアースロックへの対処も拳によるものだった。


「なに、貴様程度の雑魚にこの剣はもったいないだけの事だ」


アルジールはそう言うが、アルジールの持つ剣はそんなに大層な品ではない。

クドウから賜ったというだけでメイヤに折られた剣よりは良いものをもらっていたが、それでもB級かC級冒険者クラスが普通に使うレベルの剣である。

それをガデュスも見抜いたのかアルジールに言う。


「そんな大した剣には見えねぇんだがぁ~」


「殺すぞ、貴様」


アルジールがガデュスに凄まじい勢いで迫るがガデュスはアルジールとの間に第3級魔法アースウォールで土壁を築く。

そんなことはかまわずアルジールは拳でアースウォールを粉砕し大穴を開け、侵入を試みるが、その穴からはアースロックで生成した無数のこぶし大の土の塊が一斉に降り注ぐ。

アルジールも負けじとその土塊を全て拳で粉砕する。


「雑魚がちょこまかと!」


アルジールは第4級魔法サンダーボルトでガデュスに攻撃するが、それもやはりガデュスのアースウォールで防がれる。


「サンダーボルトぉ? 第4級魔法だったよなぁ~それぇ~」


ガデュスの言う通りサンダーボルトは第4級魔法でアルジールが得意とする雷属性の魔法だが、その威力は大したことはない。


「雑魚はお前だろぉ~?」


ガデュスはニヤニヤと笑みを浮かべながらアルジールに大小さまざまな岩や土塊を飛ばし続ける。

時折、アルジールもガデュスに迫る事もあるが基本的には防戦一方の様相となった。


「アールさん、大丈夫っスか~?」


流石に心配になってきたのか遠くからガランがアルジールに声をかける。


「問題はない……が」


確かに決め手にかけているのは事実だ。

クドウの命令とはいえ流石に第3級魔法も無しではなかなか辛いものがある。いくら魔力で圧倒出来ていても高位の魔法が使えないのならば意味はない。

クドウは知る由もない事だったがここにきてもアルジールは第3級魔法以上の魔法を使うなというクドウの命令に従い続けていた。——クドウは単に言い忘れていただけなのだが。

クドウから借りている剣を使っていないのにも理由があった。

前回の駄剣を折られた時の話だ。


「次は折るなよ、そのレベルの剣あんまり持ってないんだからな」


とクドウに言われたのだ。

クドウ的には人間界で一般冒険者が使う程度の剣はあまりないという意味で言ったのだが、アルジールの解釈は違った。

これほどの魔剣はクドウですらあまり持ってはいない。——そう解釈したのだ。

どんな名剣も使わなければ意味はないのだが、万が一またクドウから賜った剣を折ってしまった時の事を考えると、アルジールは怖かったのだ。

そこらへんの魔物に使う分には問題はない。

だが、相手は曲がりなりにも魔人なのだ。メイヤにへし折られた事から考えるとその可能性は否定しきれない。


「ガラン!」


アルジールはガデュスの攻撃を避けつつ大きな声でガランを呼んだ。


「へっ、なんすか? 加勢っスか?」


「いや、それはいい。剣を貸せ!」


「え、いや、アールさん腰に下がってるっスよぉ~」


ガランからすれば眼鏡を頭にかけているのに「メガネ、メガネ」と言われているような感じである。


「これはクドウ様から賜った物だ。折るわけにはいかないのだ」


「えっ、いや、俺のも折られちゃ困るんっスけど」


ガランの持つ剣も人間界においては中々の名剣でガランの大事な相棒である。予備はあるにはあるが折られては困る。


「ガラン! アールさんの言う通りに!」


魔人達と戦いを繰り広げているアリアスにも会話が聞こえてきたのかガランにそう叫んだ。

余裕あるなぁ~とガランは思ったが、アリアスにそう言われては従うしかなく。


「絶対折らないでくださいッスよ! フリとかじゃないっスからね!」


「いいからそのまま投げろ」


ガランが愛剣をアルジールに向けて思いっきりぶん投げると剣はクルクルと宙を舞った。
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