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第2章 魔人侵攻編
第57話 くっちゃべってないでお前ら仕事しろよ
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ガデュスとその部下の魔人が迫りくる中、アリアスは冷静だった。
「アールさん、あの魔人お任せしても?」
本来なら2対1で相手にしなければいけない魔人だろう。
だが、アリアスとアルジールがあの魔人を相手にすればニアとガランで他の魔人全てを相手にしなくてはならなくなる。
ガランは魔人相手でも問題なく戦えるだろうが、ニアは聖女の性質上多少の攻撃魔法は使えても基本的には後方の回復や支援がメインである。先陣を切って戦えるタイプではない。
「かまわない。本来ならば全員を相手にしたい所だが、私を無視してそちらに突っ込んでいく魔人の相手までするのは少々面倒ではあるな」
「ふふ、流石にそこまで面倒はかけられません。システアさんの目に狂いはなかったようですね。あなた達と共に戦えることを光栄に思います」
「そうか、では任せるぞ」
どっちか勇者でどっちがE級冒険者か分からない会話だが、アリアスは不思議と違和感も嫌悪感も覚えなかった。
パーティーメンバー以外で初めて対等の仲間を得た。——そんな感覚を覚えたのだ。
「ガラン、『狂戦士化』は使わなくていい! 君はニアを守りながら戦ってくれ」
「えー、あっちのが楽なんっスけど……」
「……それでもしニアがケガの一つでも負ったら……」
アリアスがガランを睨む。普段あまり見ない光景だからこそ怖い。
「わ、分かったっスよ。だからそんなに睨まないでッス」
ガランが納得した所でアリアスは迫りくる魔人達に1つの魔法を放った。
「光槍乱舞!」
アリアスの周囲に展開された十数本の光の槍が魔人達に向けて掃射される。
凄まじい速度で打ち出された光の槍の一本一本が魔人達へと迫りその内の何本かが魔人達に突き刺さった。
「くっ!」
光の槍をなんとか避けた魔人の一体がアリアスに突撃しようとするが、アリアスの攻撃に気を取られた所為か姿を見失っている。
「どこだ!」
魔人はキョロキョロとアリアスの姿を探すが、見つける事ができない。
「遅い!」
アリアスの声に気づいた時には既に手遅れだった。
跳躍していたアリアスの聖剣による斬撃によりその魔人は一刀両断される。
味方の一人がやられた魔人もただ黙っているわけではなかった。
アリアスの攻撃直後を狙い、手負いながらも数人でアリアスを取り囲んで剣や魔法による攻撃を仕掛けるが、そのどれもがアリアスをかすめる事すらできない。
アルジールでいう所のとても雑魚な魔人とアリアスの戦いはアリアスの優勢に進んでいった。——のをガランはニアと共に後方で眺めていた。
「守る必要なくないっスか? ていうか激強っス。あんなのに喧嘩を売ってた自分が恥ずかしいっス」
「ですね。私を守るためにあんなに勇ましく戦って……」
ニアはポーっとしながらアリアスの戦いを見つめている。
もはや完全に戦いに参加しておらず2人は完全に観客者である。
「さっさと告っちゃえばいいっスのに」
ガランはやることもないのでお節介を言ってみる。ガランの見た限りではアリアスとニアは相思相愛だ。さっさとくっつけ状態である。
「えっ、でもそういうのは男性からだと思うのですが……」
「……甘いっス。アリアスは戦闘力こそ化け物っスけど超奥手っス。このまま待ってても嫁に行き遅れるのが明白っスよ。それに横からかっさわれる可能性もあるっス。なんたって勇者っスからね。狙ってる子というかファンが大勢いるっスよ」
「……そうなのですか?」
それはそうだろう。ガランでさえ勇者パーティーというだけでラブレターをもらうことは少なくない。
それが勇者本人ならばガランの比ではないだろう。今は相思相愛でもいつ心変わりするかは分からない。
いくら強いと言ってもアリアスはまだ15歳なのだから。
「それにほら、システアさんが行った方にいるメイヤさん。あれは要注意っスよ。大人の色香プンプンっス」
「えっ、いや、でもあの人は?」
明らかにアルメイヤがアルジール狙いなのは勇者パーティーから見ても明らかだった。
あれで狙っていないのだとしたらただのビッチ以外の何物でもない。
だがそれでも、ガランはメイヤの危険性をニアに説く。
「メイヤさんはそうでしょうっスけどアールさんはそうでもなさそうっスよ。あれは妹とかそういう何かを見る目っス。一緒にいすぎて異性に見れなくなったとかそんな感じに違いないっスよ。横でじっくりと観察してた俺が言うんっスから間違いないっス」
「そ、そうなんですか?」
ニアはずっとアリアスと2人でいたからガラン程あの2人には詳しくないのでガランがそういうのならそうなのかもしれない。
「そして、アールさんとは結ばれないと悟ったメイヤさんがふと近くを見るとアリアスがいるんっス。そして2人は……なんてことになる可能性が高いっスね」
完全にガランの妄想だが、ニアはその話に聞き入っていた。
ガランにとっては結局他人事だが、ニアにとってはそうではない。
「わ、私頑張ります!」
「そうするといいっスよ。2人の幸せを願っているっス」
となんかいい風にまとめたガランは内心ニヤニヤが止まらないのであった。
「あ、アリアス様はともかくアールさんの援護はしなくて大丈夫なんでしょうか?」
遠くを見ると、アルジールとガデュスはにらみ合っている。明らかにアリアスが相手にしている魔人よりも格上と予想される魔人だ。
「大丈夫っすよ、……多分。ていうか余計な事してニアさんが怪我したら俺がアリアスに殺されちゃうっス」
そうしてガランはその場でニアの守りを固めるのであった。
「アールさん、あの魔人お任せしても?」
本来なら2対1で相手にしなければいけない魔人だろう。
だが、アリアスとアルジールがあの魔人を相手にすればニアとガランで他の魔人全てを相手にしなくてはならなくなる。
ガランは魔人相手でも問題なく戦えるだろうが、ニアは聖女の性質上多少の攻撃魔法は使えても基本的には後方の回復や支援がメインである。先陣を切って戦えるタイプではない。
「かまわない。本来ならば全員を相手にしたい所だが、私を無視してそちらに突っ込んでいく魔人の相手までするのは少々面倒ではあるな」
「ふふ、流石にそこまで面倒はかけられません。システアさんの目に狂いはなかったようですね。あなた達と共に戦えることを光栄に思います」
「そうか、では任せるぞ」
どっちか勇者でどっちがE級冒険者か分からない会話だが、アリアスは不思議と違和感も嫌悪感も覚えなかった。
パーティーメンバー以外で初めて対等の仲間を得た。——そんな感覚を覚えたのだ。
「ガラン、『狂戦士化』は使わなくていい! 君はニアを守りながら戦ってくれ」
「えー、あっちのが楽なんっスけど……」
「……それでもしニアがケガの一つでも負ったら……」
アリアスがガランを睨む。普段あまり見ない光景だからこそ怖い。
「わ、分かったっスよ。だからそんなに睨まないでッス」
ガランが納得した所でアリアスは迫りくる魔人達に1つの魔法を放った。
「光槍乱舞!」
アリアスの周囲に展開された十数本の光の槍が魔人達に向けて掃射される。
凄まじい速度で打ち出された光の槍の一本一本が魔人達へと迫りその内の何本かが魔人達に突き刺さった。
「くっ!」
光の槍をなんとか避けた魔人の一体がアリアスに突撃しようとするが、アリアスの攻撃に気を取られた所為か姿を見失っている。
「どこだ!」
魔人はキョロキョロとアリアスの姿を探すが、見つける事ができない。
「遅い!」
アリアスの声に気づいた時には既に手遅れだった。
跳躍していたアリアスの聖剣による斬撃によりその魔人は一刀両断される。
味方の一人がやられた魔人もただ黙っているわけではなかった。
アリアスの攻撃直後を狙い、手負いながらも数人でアリアスを取り囲んで剣や魔法による攻撃を仕掛けるが、そのどれもがアリアスをかすめる事すらできない。
アルジールでいう所のとても雑魚な魔人とアリアスの戦いはアリアスの優勢に進んでいった。——のをガランはニアと共に後方で眺めていた。
「守る必要なくないっスか? ていうか激強っス。あんなのに喧嘩を売ってた自分が恥ずかしいっス」
「ですね。私を守るためにあんなに勇ましく戦って……」
ニアはポーっとしながらアリアスの戦いを見つめている。
もはや完全に戦いに参加しておらず2人は完全に観客者である。
「さっさと告っちゃえばいいっスのに」
ガランはやることもないのでお節介を言ってみる。ガランの見た限りではアリアスとニアは相思相愛だ。さっさとくっつけ状態である。
「えっ、でもそういうのは男性からだと思うのですが……」
「……甘いっス。アリアスは戦闘力こそ化け物っスけど超奥手っス。このまま待ってても嫁に行き遅れるのが明白っスよ。それに横からかっさわれる可能性もあるっス。なんたって勇者っスからね。狙ってる子というかファンが大勢いるっスよ」
「……そうなのですか?」
それはそうだろう。ガランでさえ勇者パーティーというだけでラブレターをもらうことは少なくない。
それが勇者本人ならばガランの比ではないだろう。今は相思相愛でもいつ心変わりするかは分からない。
いくら強いと言ってもアリアスはまだ15歳なのだから。
「それにほら、システアさんが行った方にいるメイヤさん。あれは要注意っスよ。大人の色香プンプンっス」
「えっ、いや、でもあの人は?」
明らかにアルメイヤがアルジール狙いなのは勇者パーティーから見ても明らかだった。
あれで狙っていないのだとしたらただのビッチ以外の何物でもない。
だがそれでも、ガランはメイヤの危険性をニアに説く。
「メイヤさんはそうでしょうっスけどアールさんはそうでもなさそうっスよ。あれは妹とかそういう何かを見る目っス。一緒にいすぎて異性に見れなくなったとかそんな感じに違いないっスよ。横でじっくりと観察してた俺が言うんっスから間違いないっス」
「そ、そうなんですか?」
ニアはずっとアリアスと2人でいたからガラン程あの2人には詳しくないのでガランがそういうのならそうなのかもしれない。
「そして、アールさんとは結ばれないと悟ったメイヤさんがふと近くを見るとアリアスがいるんっス。そして2人は……なんてことになる可能性が高いっスね」
完全にガランの妄想だが、ニアはその話に聞き入っていた。
ガランにとっては結局他人事だが、ニアにとってはそうではない。
「わ、私頑張ります!」
「そうするといいっスよ。2人の幸せを願っているっス」
となんかいい風にまとめたガランは内心ニヤニヤが止まらないのであった。
「あ、アリアス様はともかくアールさんの援護はしなくて大丈夫なんでしょうか?」
遠くを見ると、アルジールとガデュスはにらみ合っている。明らかにアリアスが相手にしている魔人よりも格上と予想される魔人だ。
「大丈夫っすよ、……多分。ていうか余計な事してニアさんが怪我したら俺がアリアスに殺されちゃうっス」
そうしてガランはその場でニアの守りを固めるのであった。
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