上 下
19 / 19

第19話 超即再生

しおりを挟む
「ぎゃぁぁぁぁぁぁー! 耳がぁぁぁぁぁぁー! ヤりおった! こやつ遂にヤりおったぞぉぉぉぉぉぉー!」


俺がリビエラの頭から引き千切った猫耳を片手にメリエス様の様子を窺っているとメリエス様は絶叫しながらリビエラの元へ駆け寄った。


「すまぬー! うちのバカがとんでもない事をー! 誰か医者を! 医者を呼んでくれぇー!」


メリエス様が周りに助けを求めるが、俺を含め店にいる客、店員はその様子をただ見ているだけだった。

そんな中、最初に言葉を発したのは猫耳を引き千切られた当人、リビエラだった。


「ジレ様、酷いですー! 乙女の猫耳を引っこ抜くなんてー」


まるで軽く頭を小突かれたくらいのテンションで俺に抗議するリビエラ。

普通であれば生身の猫耳を引き千切られようものならメリエス様のような絶叫を上げた後、痛みとショックで失神してもおかしくはなさそうなものだが、俺が猫耳メイドの猫耳を引き千切るというショッキングな出来事を目の当たりにしたメリエス様は動揺でそんな事にすら気付きもしなかった。


「お、お、おい。安静にしておるんじゃ! 今すぐ医者が来るから!」


もちろん、誰も医者など呼んでいないのでいくら待っても医者など来ない。

メリエス様の謎の行動にきょとんとした顔でメリエス様を見たリビエラだったがすぐに俺に向き直り抗議した。


「ジレ様、猫耳返してくださいよー」


「そうじゃ、今すぐ返すのじゃ! 今ならまだくっつくかもしれん!」


確かに引き千切った猫耳をずっと返さないのも悪いと思った俺は素直に返す事にした。


「はい、どうぞ」


メリエス様に。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁー! なぜ私に返すのじゃー! 無理じゃ! 無理じゃ! わしには荷が重すぎる!」


そう言われ俺はメリエス様に返却を拒否された。

返せと言われたから返そうとしただけなのに、メリエス様はなんと我儘な人だ。

俺がメリエス様とそんなお遊びをしていると、いつまで経っても猫耳を返却しない俺に見かねたリビエラに引き千切った猫耳をぶんどられた。


「もう、人の猫耳で遊ばないでください!」


プンスカするリビエラは引きちぎられた猫耳を頭の元の位置に戻すと、何事もなかったかのように元通り。


そんな光景を見ていたメリエス様は俺の想像すらも遥か上を行く行動に出た。


「うぉぉぉぉぉー、凄い! 元通りになったのじゃ! 見たか! ジレ! 凄まじいまでの再性能力じゃ! この娘じゃ! この娘こそ、四天王に相応しい! あの変な娘なぞやめてこのメイドを四天王に迎えよう! それがいい!」


一見すると物騒に聞こえなくもないメリエス様渾身のシャウトに店内の視線が一瞬集まったがすぐに何事もなかったかのように店は通常営業へと戻る。

変な子が変な事を言っただけだと思われたらしい。

まぁメリエス様はこの店に入ってから変な事しか発信していないのでそれは当然の反応と言える。


強いて言うならそろそろ店の奥にいる猫耳の女店長がブチ切れる可能性があることを除けば全く問題なさそうである。


「メリエス様?は何を仰っているのですか?」


不思議そうに俺に問うリビエラに俺は笑顔で言った。


「ちょっぴりお茶目なメリエス様、可愛いだろう?」
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで

一本橋
恋愛
 ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。  その犯人は俺だったらしい。  見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。  罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。  噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。  その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。  慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...