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第14話 メリエス様、もごもごする
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そして俺は遂に正体をマリーに明かす事にした。
「マリー、実はな。俺は魔人なんだ」
「ははは、今日の師匠は冗談ばかり言いますね。どうしたのですか?」
どうやら冗談だと思われたようだ。
逆に何を言えば信じるのだろうかこの女は。
マリーの事を魔人だと思っているメリエス様も不思議そうにお前の事を見ているぞ。
「お前が何者かと聞いたんだろ? 俺はそれに答えただけだ」
俺としてはそう言う他ない。
そもそも普段から俺はまったく嘘の吐かない紳士で通っているのだ。
だというのにマリーはなおも俺の事を死んだゴブリンのような目でみつめている。
「ふふ、分かりました。ではそういうことにしておきます」
いやいや、そういうことにしておくとかじゃなくそうなんだけど。
「師匠。お誘いは嬉しいのですが、私にはやらねばならない事があるのです。貴族様の騎士というのも捨てがたいですが、今はまだ冒険者を続けていこうと思います」
そう言うとマリーは俺に小さく頭を下げた。
やはり全く信じていないようである。
このままではいくら話しても無駄だろう。埒が明かない。
全然諦めてなどはいないが俺は素直に諦めたふりをして、次の話題に移る事にした。
「分かった。ところで今日はもう依頼は受けたのか?」
「いえ、まだですが」
「それはよかった。悪い事は言わない。今日は依頼を受けずに休養日にしておけ」
「??? なぜですか?」
俺の助言にマリーは不思議そうな表情で問い返す。
いいから素直に聞いておけよと思いつつ、マリーに依頼を受けさせないように俺は適当な理由をつけた。
「久々に会ったんだ。今夜飯でもどうだ?」
「それは別に構いませんが、それならば依頼の後でも構わないのでは?」
俺がこんなにも言っているのに意地でも依頼を受けたいのかマリーはそう主張をした。
だが、それだと俺が困るのだ。
「いいや、ダメだ。お前どうせまた高難度で時間がかかる依頼ばかり受けているのだろう? ご飯が遅くなってメリエス様が泣いたらどうしてくれるんだ」
俺がそう言った瞬間、メリエス様が何か言いだそうとしたので俺は手のひらを使って物理的に口を塞ぐ。
メリエス様がもごもごむがむが言っている気がするが可愛いのでまったく以ってなんの問題はない。
「メリエス様何か言いたそうですけど」
「なに、気にするな。メリエス様は俺の手のひらの匂いが大好物なのだ。こうしていると心安らぐらしくいつもねだってくるのだ。どうだ、可愛かろう?」
「えっ、いや、まぁ確かに可愛いですが」
当たり前だ。
もごもごむがむがしているメリエス様を見て可愛いと思えない人類など存在する訳がないのだから。
「とにかくいいな、今日は休みだ。メリエス様を泣かす者は誰だろうと許さん」
俺が決意に満ちた目でそう言うと、流石のマリーもやっと折れたのか溜息を吐いて俺に言った。
「分かりましたよ。師匠。まぁここの所、依頼続きでしたね。それでまだ昼前ですけどどこか行きますか?」
「えっ? なんで?」
まさかマリーは夕食まで俺達と行動を共にする気でいるのだろうか?
そんなことをしたら俺の真の目的であるメリエス様との2人きりのイチャイチャデートができないではないか。
俺は真の目的を忘れるほど愚かな男ではないのだ。
「マリー、実はな。俺は魔人なんだ」
「ははは、今日の師匠は冗談ばかり言いますね。どうしたのですか?」
どうやら冗談だと思われたようだ。
逆に何を言えば信じるのだろうかこの女は。
マリーの事を魔人だと思っているメリエス様も不思議そうにお前の事を見ているぞ。
「お前が何者かと聞いたんだろ? 俺はそれに答えただけだ」
俺としてはそう言う他ない。
そもそも普段から俺はまったく嘘の吐かない紳士で通っているのだ。
だというのにマリーはなおも俺の事を死んだゴブリンのような目でみつめている。
「ふふ、分かりました。ではそういうことにしておきます」
いやいや、そういうことにしておくとかじゃなくそうなんだけど。
「師匠。お誘いは嬉しいのですが、私にはやらねばならない事があるのです。貴族様の騎士というのも捨てがたいですが、今はまだ冒険者を続けていこうと思います」
そう言うとマリーは俺に小さく頭を下げた。
やはり全く信じていないようである。
このままではいくら話しても無駄だろう。埒が明かない。
全然諦めてなどはいないが俺は素直に諦めたふりをして、次の話題に移る事にした。
「分かった。ところで今日はもう依頼は受けたのか?」
「いえ、まだですが」
「それはよかった。悪い事は言わない。今日は依頼を受けずに休養日にしておけ」
「??? なぜですか?」
俺の助言にマリーは不思議そうな表情で問い返す。
いいから素直に聞いておけよと思いつつ、マリーに依頼を受けさせないように俺は適当な理由をつけた。
「久々に会ったんだ。今夜飯でもどうだ?」
「それは別に構いませんが、それならば依頼の後でも構わないのでは?」
俺がこんなにも言っているのに意地でも依頼を受けたいのかマリーはそう主張をした。
だが、それだと俺が困るのだ。
「いいや、ダメだ。お前どうせまた高難度で時間がかかる依頼ばかり受けているのだろう? ご飯が遅くなってメリエス様が泣いたらどうしてくれるんだ」
俺がそう言った瞬間、メリエス様が何か言いだそうとしたので俺は手のひらを使って物理的に口を塞ぐ。
メリエス様がもごもごむがむが言っている気がするが可愛いのでまったく以ってなんの問題はない。
「メリエス様何か言いたそうですけど」
「なに、気にするな。メリエス様は俺の手のひらの匂いが大好物なのだ。こうしていると心安らぐらしくいつもねだってくるのだ。どうだ、可愛かろう?」
「えっ、いや、まぁ確かに可愛いですが」
当たり前だ。
もごもごむがむがしているメリエス様を見て可愛いと思えない人類など存在する訳がないのだから。
「とにかくいいな、今日は休みだ。メリエス様を泣かす者は誰だろうと許さん」
俺が決意に満ちた目でそう言うと、流石のマリーもやっと折れたのか溜息を吐いて俺に言った。
「分かりましたよ。師匠。まぁここの所、依頼続きでしたね。それでまだ昼前ですけどどこか行きますか?」
「えっ? なんで?」
まさかマリーは夕食まで俺達と行動を共にする気でいるのだろうか?
そんなことをしたら俺の真の目的であるメリエス様との2人きりのイチャイチャデートができないではないか。
俺は真の目的を忘れるほど愚かな男ではないのだ。
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