13 / 19
第13話 メリエス様、魔王みたいなことを言う
しおりを挟む
ともあれ、疑いが晴れ俺は自由の身となった。
マリーへの遺恨はこれからもずっと続くだろうが、俺はそれを表に出すほど子供ではないので全く問題はないだろう。多分な。
「ふっ、勇者共め。私の力に恐れたか」
変なテンションになっているメリエス様も可愛いのでプラマイ0と考えよう。
「さっきからメリエス様、勇者が勇者がって仰っていますけどまさか勇者のファンか何かですか?」
と裏切者——じゃなかったマリーがそんな事を言ってきた。
当たり前だが、この世界でも勇者は基本的に魔王とは敵対関係にある。
つまり勇者はメリエス様にとってみれば敵以外の何物でもないのだ。
案の定メリエス様はフンと鼻を鳴らすとマリーに宣言した。
「ファン? とんでもない。やつは私の宿命のライバルにして最大の敵じゃ」
冒険者が消えてから威勢が良くなったメリエス様。
なんか今まで幾度も死闘を繰り返してきたような物言いだが、メリエス様にとって勇者とは一回も会った事もなければ名を聞いただけでぷるぷるモードに移行するようなそんな相手である。
「なんかメリエス様、魔王みたいな事言いますね」
みたいなではなくメリエス様は正真正銘の魔王である。
どうせ今この場で言っても信じなさそうだし、また騒ぎになっても面倒なのだし今はまだ言わないが。
「そんな事よりもお前に話がある」
「なんでしょう?」
「ここではまずいな。ちょっと移動するぞ?」
そう言って俺はメリエス様とマリーを路地裏へと誘い込む。
別に如何わしい事をするためではない。
あ、いや、メリエス様が望むならやぶさかではないが、まぁとにかく俺の今の目的はそうではない。
そして俺は魔力探知で周囲に誰もいないのを確認してから、ちょうど3人を包み込むくらいの防音魔法を展開してからマリーに話を切り出した。
「これくらいで充分か。さて、マリー、さっきも言ったが今日お前に頼みがあってここまで来たんだ」
そうして俺がマリーに話をしようとした所に横やりが入る。
「おい、まさかこの娘を四天王に迎えるのではあるまいな?」
横やりを入れてきたのはメリエス様だった。
メリエス様はそう言うと、吟味するような視線でマリーの周囲をクルクルと回った。
「うーむ、兄上より強いようには見えんがのう。じゃが偽装魔法はなかなかじゃな。どう見ても人間にしか見えん」
それはそうでしょう。だってマリーは人間だもの。
メリエス様は未だに人間界に隠れ住む強大な魔人を四天王に勧誘しに来たと勘違いしているようだが、俺の目的は最初からB級冒険者マリーを四天王に勧誘する事なのだ。
「やっぱりメリエス様、魔王みたいなこと言いますね」
互いにトンチンカンな事を言い合うメリエス様とマリー。
このままどちらが先に気付くか観察するのも面白そうだが、あまり時間もないことだし、ネタバラシすることにした。
「メリエス様、マリーは人間です。メリエス様は聞いていなかったかもしれませんが先程言った通り冒険者協会ベーンヘルク支部所属のB級冒険者です」
俺がそう言うと「はぁ?」というメリエス様の声が聞こえた気がしたが、ネタバラシはまだ終わっていないので今度はマリーの方を向いてネタバラシを続ける。
「マリー、メリエス様は正真正銘の魔王だ。今日はお前を四天王へ勧誘する為にここに来た」
「はぁ? 何を言っているのですか? 師匠」
またもマリーは死んだゴブリンのような目で俺を見てきた。
こいつのこの目は本当に信じていない時の目だ。
ホントこいつ俺の言う事信じないな。
真実を言っているだけだというのに2人共俺の言う事を冗談か何かだと思っているようである。
(まぁメリエス様はどうとでもなりそうだからまずマリーの攻略からだな)
「マリーよ、そもそもなんだが、お前は俺の事を何だと思っている?」
「えっ? 隠居した元A級冒険者ですよね?」
「違うぞ」
そんなことは一度も言っていない。
ていうか俺はマリーに一言も「僕は人間です」と自己紹介したこともないのだ。
「マリー、人を自分の常識に当てはめるのはお前の悪い癖だ」
「じゃあ師匠はいったい何者なんですか? 何度聞いても教えてくれなかったではありませんか?」
いや、だって知り合って間もない冒険者に「魔人です」なんて言ったら絶対斬りかかってくるじゃん?
とはいえ、マリーを魔王軍四天王に勧誘しなければならないのだ。
それにマリーとは知り合ってからそれなりに時間も立っているし、飯をおごってやったりもした。
今ならば俺の正体を明かすこともできるだろう。
マリーへの遺恨はこれからもずっと続くだろうが、俺はそれを表に出すほど子供ではないので全く問題はないだろう。多分な。
「ふっ、勇者共め。私の力に恐れたか」
変なテンションになっているメリエス様も可愛いのでプラマイ0と考えよう。
「さっきからメリエス様、勇者が勇者がって仰っていますけどまさか勇者のファンか何かですか?」
と裏切者——じゃなかったマリーがそんな事を言ってきた。
当たり前だが、この世界でも勇者は基本的に魔王とは敵対関係にある。
つまり勇者はメリエス様にとってみれば敵以外の何物でもないのだ。
案の定メリエス様はフンと鼻を鳴らすとマリーに宣言した。
「ファン? とんでもない。やつは私の宿命のライバルにして最大の敵じゃ」
冒険者が消えてから威勢が良くなったメリエス様。
なんか今まで幾度も死闘を繰り返してきたような物言いだが、メリエス様にとって勇者とは一回も会った事もなければ名を聞いただけでぷるぷるモードに移行するようなそんな相手である。
「なんかメリエス様、魔王みたいな事言いますね」
みたいなではなくメリエス様は正真正銘の魔王である。
どうせ今この場で言っても信じなさそうだし、また騒ぎになっても面倒なのだし今はまだ言わないが。
「そんな事よりもお前に話がある」
「なんでしょう?」
「ここではまずいな。ちょっと移動するぞ?」
そう言って俺はメリエス様とマリーを路地裏へと誘い込む。
別に如何わしい事をするためではない。
あ、いや、メリエス様が望むならやぶさかではないが、まぁとにかく俺の今の目的はそうではない。
そして俺は魔力探知で周囲に誰もいないのを確認してから、ちょうど3人を包み込むくらいの防音魔法を展開してからマリーに話を切り出した。
「これくらいで充分か。さて、マリー、さっきも言ったが今日お前に頼みがあってここまで来たんだ」
そうして俺がマリーに話をしようとした所に横やりが入る。
「おい、まさかこの娘を四天王に迎えるのではあるまいな?」
横やりを入れてきたのはメリエス様だった。
メリエス様はそう言うと、吟味するような視線でマリーの周囲をクルクルと回った。
「うーむ、兄上より強いようには見えんがのう。じゃが偽装魔法はなかなかじゃな。どう見ても人間にしか見えん」
それはそうでしょう。だってマリーは人間だもの。
メリエス様は未だに人間界に隠れ住む強大な魔人を四天王に勧誘しに来たと勘違いしているようだが、俺の目的は最初からB級冒険者マリーを四天王に勧誘する事なのだ。
「やっぱりメリエス様、魔王みたいなこと言いますね」
互いにトンチンカンな事を言い合うメリエス様とマリー。
このままどちらが先に気付くか観察するのも面白そうだが、あまり時間もないことだし、ネタバラシすることにした。
「メリエス様、マリーは人間です。メリエス様は聞いていなかったかもしれませんが先程言った通り冒険者協会ベーンヘルク支部所属のB級冒険者です」
俺がそう言うと「はぁ?」というメリエス様の声が聞こえた気がしたが、ネタバラシはまだ終わっていないので今度はマリーの方を向いてネタバラシを続ける。
「マリー、メリエス様は正真正銘の魔王だ。今日はお前を四天王へ勧誘する為にここに来た」
「はぁ? 何を言っているのですか? 師匠」
またもマリーは死んだゴブリンのような目で俺を見てきた。
こいつのこの目は本当に信じていない時の目だ。
ホントこいつ俺の言う事信じないな。
真実を言っているだけだというのに2人共俺の言う事を冗談か何かだと思っているようである。
(まぁメリエス様はどうとでもなりそうだからまずマリーの攻略からだな)
「マリーよ、そもそもなんだが、お前は俺の事を何だと思っている?」
「えっ? 隠居した元A級冒険者ですよね?」
「違うぞ」
そんなことは一度も言っていない。
ていうか俺はマリーに一言も「僕は人間です」と自己紹介したこともないのだ。
「マリー、人を自分の常識に当てはめるのはお前の悪い癖だ」
「じゃあ師匠はいったい何者なんですか? 何度聞いても教えてくれなかったではありませんか?」
いや、だって知り合って間もない冒険者に「魔人です」なんて言ったら絶対斬りかかってくるじゃん?
とはいえ、マリーを魔王軍四天王に勧誘しなければならないのだ。
それにマリーとは知り合ってからそれなりに時間も立っているし、飯をおごってやったりもした。
今ならば俺の正体を明かすこともできるだろう。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説


(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる