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第6話 メリエス様、つんつんする
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俺とメリエス様が転移門を潜った先は広大に広がる見事な草原だった。
「ほぅ、綺麗な所じゃな~。おっ、スライムじゃ」
メリエス様が見つめる先には一体のスライムがいた。
この世界におけるスライムは最弱モンスターに位置づけられており、人間界の初心者冒険者でも気軽に狩れる事でも知られている。
可愛い系特化魔王のメリエス様にとってもなんら危機感を覚えないそんな相手である。
メリエス様は近くに落ちていた木の棒を拾い、ちょっと青みがかった透明スライム君をつんつんし始めた。
「スライムなんて久しぶりに見たのぅ~。つんつん」
メリエス様がこう言うのも無理はない。
魔界は人間界などと比べれば生息する魔物は強く、魔界の中では比較的弱い魔物しか生息していないフェアリーメルト領でさえスライムと遭遇することはほとんどない。
理由は至ってシンプルでスライムのような弱いモンスターが屈強な魔物がいる魔界では生きてはいけないのだ。
つまりスライムと普通に遭遇したという事はこの草原がフェアリーメルト領よりも相対的に弱いモンスターしか生息していない土地だという事を意味している。
知らない土地だというのに、メリエス様が呑気にスライムをつんつんしていたのはそれを知っているからである。
そんな警戒心0のメリエス様を見て俺は毎度の事だが思った。
むっふ、かわええ。
超絶美少女がスライムをつんつんと無邪気に突きまくる光景の破壊力と言ったら常人の精神力ならばむふむふ不可避なのだが、それでも俺は最後の精神力を使ってギリギリの所で耐えることに成功した。
「ハァハァ……メ、メリエス様、そろそろ向かいませんと」
そう、デートがメイン目的とはいえ一応四天王候補の勧誘としてこの地にやってきたのである。
流石にここで永遠にスライム相手につんつんさせておくほど時間的余裕はないのである。
「そうじゃったな。私としたことが目的を忘れておった。それにしてもここは良い所じゃなぁ」
メリエス様は名残惜しそうに持っていた木の棒をポイっと投げ捨て立ち上がった。
「じゃあの、スライムよ。悪い魔物にやられるんじゃないぞ」
スライム君もスライム君でつんつんがまんざらではなかったのか名残惜しそうにメリエス様を見上げていた。
まぁ目がないから分かんないんだけども。
「スライムはいいから早く行きましょう」
いつまでも経ってもスライム君と見つめ合っているメリエス様を見かねて俺は移動を促した。
「そうじゃの」
「あっちです」
そうして俺とメリエス様は草原の向こうに見える街へと歩き出したのだった。
町へと向かう途中、エリエス様が俺に話しかけてきた。
「そういえば結局ここはどこなんじゃ? とても空気が綺麗で出てくる魔物もあまり強くない者達ばかりじゃが」
ここまでの道中魔物はいたが、その大半はスライムや小型の魔物ばかりで俺を警戒してかあまり近寄ってこない。
エリエス様的には安全に越したことはないのだろうが、流石にここまで弱い魔物ばかりだと流石に疑問に思ったようだ。
だが時としてその油断から強者が敗れる事もあるのがこの世界の理である。多分。
だからこそ俺はエリエス様に手を差し伸べなければならなかった。
「慢心は危険ですよ、エリエス様。さっ、お手を」
「お前はそればっかりじゃのー。もう私は子供じゃないというのに」
エリエス様は呆れたように俺を見上げて、俺が差し伸べた手は軽く払われてしまう。
だが俺はそんなことで諦める男ではない。
チャンスはまだまだそれはもうたっぷりと残されているのだから。
「ほぅ、綺麗な所じゃな~。おっ、スライムじゃ」
メリエス様が見つめる先には一体のスライムがいた。
この世界におけるスライムは最弱モンスターに位置づけられており、人間界の初心者冒険者でも気軽に狩れる事でも知られている。
可愛い系特化魔王のメリエス様にとってもなんら危機感を覚えないそんな相手である。
メリエス様は近くに落ちていた木の棒を拾い、ちょっと青みがかった透明スライム君をつんつんし始めた。
「スライムなんて久しぶりに見たのぅ~。つんつん」
メリエス様がこう言うのも無理はない。
魔界は人間界などと比べれば生息する魔物は強く、魔界の中では比較的弱い魔物しか生息していないフェアリーメルト領でさえスライムと遭遇することはほとんどない。
理由は至ってシンプルでスライムのような弱いモンスターが屈強な魔物がいる魔界では生きてはいけないのだ。
つまりスライムと普通に遭遇したという事はこの草原がフェアリーメルト領よりも相対的に弱いモンスターしか生息していない土地だという事を意味している。
知らない土地だというのに、メリエス様が呑気にスライムをつんつんしていたのはそれを知っているからである。
そんな警戒心0のメリエス様を見て俺は毎度の事だが思った。
むっふ、かわええ。
超絶美少女がスライムをつんつんと無邪気に突きまくる光景の破壊力と言ったら常人の精神力ならばむふむふ不可避なのだが、それでも俺は最後の精神力を使ってギリギリの所で耐えることに成功した。
「ハァハァ……メ、メリエス様、そろそろ向かいませんと」
そう、デートがメイン目的とはいえ一応四天王候補の勧誘としてこの地にやってきたのである。
流石にここで永遠にスライム相手につんつんさせておくほど時間的余裕はないのである。
「そうじゃったな。私としたことが目的を忘れておった。それにしてもここは良い所じゃなぁ」
メリエス様は名残惜しそうに持っていた木の棒をポイっと投げ捨て立ち上がった。
「じゃあの、スライムよ。悪い魔物にやられるんじゃないぞ」
スライム君もスライム君でつんつんがまんざらではなかったのか名残惜しそうにメリエス様を見上げていた。
まぁ目がないから分かんないんだけども。
「スライムはいいから早く行きましょう」
いつまでも経ってもスライム君と見つめ合っているメリエス様を見かねて俺は移動を促した。
「そうじゃの」
「あっちです」
そうして俺とメリエス様は草原の向こうに見える街へと歩き出したのだった。
町へと向かう途中、エリエス様が俺に話しかけてきた。
「そういえば結局ここはどこなんじゃ? とても空気が綺麗で出てくる魔物もあまり強くない者達ばかりじゃが」
ここまでの道中魔物はいたが、その大半はスライムや小型の魔物ばかりで俺を警戒してかあまり近寄ってこない。
エリエス様的には安全に越したことはないのだろうが、流石にここまで弱い魔物ばかりだと流石に疑問に思ったようだ。
だが時としてその油断から強者が敗れる事もあるのがこの世界の理である。多分。
だからこそ俺はエリエス様に手を差し伸べなければならなかった。
「慢心は危険ですよ、エリエス様。さっ、お手を」
「お前はそればっかりじゃのー。もう私は子供じゃないというのに」
エリエス様は呆れたように俺を見上げて、俺が差し伸べた手は軽く払われてしまう。
だが俺はそんなことで諦める男ではない。
チャンスはまだまだそれはもうたっぷりと残されているのだから。
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