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第4話 メリエス、ベテラン刑事になる

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「もしもし、私、旧ドランゼス国のフェアリーメルト領領主のメリエス=フェアリーメルトの代理の者ですけどー。メリエス様は先日の件お許しになるそうだから魔王交代に際して必要な書類関係とかこちらに送っといてもらえますー? え? 違う違う。俺はメリエス様じゃなくて四天王のジレです。……あ? 違うってんだろ! しつけぇな! ——分かればいいんだよ! よろしく頼むぞ!」


とそんな感じで俺は通信魔法を切って横を見ると、ジト目で俺を覗き込んでいるメリエス様と目が合った。


「なにやらお前を私だと勘違いしておったようじゃが? あと「ひぃぃぃ」とかいう声も聞こえたが」


「無礼な奴でした。メリエス様の可愛い声と私の声を聞き間違えるとは」


俺が今魔法通信をかけていたのは旧魔王城ドランゼス城だった。

魔王になれば国内を治める為に必要な書類関係の物や資金等々をこちらに送ってもらう必要があった為連絡を取ったのだ。

通話に出たのはドランゼス本人ではなく四天王の男だったが、その男が俺とメリエス様の声を聞き間違えたのである。

まぁ今回ジレと名乗ったので次回からは間違えられることはないだろう。

だが、今の通話で何か勘違いしたのかメリエス様は執務室にあったテーブルをバンッと叩くと俺に詰め寄ってきた。


「やっぱお前じゃろ! さぁ吐け! お前がやったんじゃろ!」


ベテラン刑事風の追及を仕掛けてくるメリエス様だったが、やはり俺には何のことを言っているのか分からない。

追及にさえ屈しなければそれは無罪なのである。

疑わしきは罰せず。

俺は何も知らない。やってないと言い続けるのが大事なのである。

そう、無罪を勝ち取るその時まで。


「お止め下さい! 魔王様! 主様は何も悪いことはやってません!」


黙秘権を行使し、ゆっさゆっさとメリエス様に揺さぶられている俺をアールワンは必死で弁護し始めた。
そう、そもそも俺は何も悪い事はやってないのだ。

アールワンからすれば俺はドランなんとかさんの呪縛から救ったヒーローなのだから当然と言えば当然の行動である。

裁判員は既に買収済み。

勝負は始まる前から決まっているのですよ。メリエス様。

俺は揺すられながらも勝ち誇った顔でニヤニヤする。


「むぐぐぐ……、えぇい分かったわい!」


メリエス様は自身を人質に取っていたアールワンの言葉を気にしたのか悔しそうな表情でそう言うと、俺をゆっさゆっさから解放した。

あぁ、もうちょっとメリエス様と戯れていたかったが、悔しい表情もGOODだからまぁよし。


「さて、ではそろそろ行きましょうか? 四天王の勧誘に。じゃあ後は任せたぞ、アールワン」


そう言って俺は愛しのメリエス様の小さな手を引こうとした所でアールワンが申し訳なさそうに俺を引き留めた。


「お待ちください。主様。私、都市建設のスキルなんて持っていないのですが……」


うん。だろうね。逆に持ってたらお兄さんびっくりだわ。

まぁ四天王勧誘の旅という名のメリエス様とのデートでウキウキしてて、何も言わなかった俺にも非がないでもない。


「あ、そうそう、伝えるのを忘れてた。俺の部屋の机の上に業者の名簿と業者に伝える内容が書いた紙が置いてあるからあとは適当にやっておいてくれ。通信魔法は使えるだろ?」


俺も鬼ではない。

既に粗方の準備は済ませておいたのである。

後は俺の指示通りの動けば何も問題はないはずだ。


「使える事は使えますが……」


それでもなおも心配そうなアールワンに俺は魔法の言葉を授けることにした。


「俺に挑んできた時の根性を見せてみろ。お前は自分が思っている以上に有能だ。期待しているぞ、アールワン」


すると思った以上に効果てきめんだったのかアールワンは輝くような笑顔で「はい!」と答えた。

さて、ぶっちゃけちょっと心配だが、俺は一刻も早くメリエス様とのデートという名の四天王勧誘……じゃなかった。四天王勧誘という名のデート?

まぁどっちでもいいや。

とにかくデートに向かいたい俺はアールワンに後の事を全て押し付けたのだった。
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