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第3話 メリエス、暗殺されかける

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突然の事態にメリエス様は固まってしまったがそれでもなんとか俺に助けを求めるように声を出した。


「ジ、ジレ……」


んー、実に可愛い限りではあるが、邪悪な魔王に囚われた姫を助け出す勇者様って展開でもなければ、そもそもメリエス様は魔王だし、そもそもメリエス様の首筋にナイフを添えているこいつも俺の味方である。


「やめんか、馬鹿たれ」


俺はそう言ったとほぼ同時にこの部屋に侵入した闖入者というか俺が呼んだ女の横に瞬時に飛んで、ナイフを素手でポキッと根本からへし折ると、「カラン」と音を立ててナイフの刃が部屋の床に転がった。

飛んだと言っても別に転移魔法的なものを行使したわけではなく純粋な身体能力を以って、女の横に移動し、そして単純な指の力でナイフをへし折ったのである。

だというのに——いやだからこそかもしれないが、女は輝くような笑顔で俺を見ながら呟いた。


「流石は我が主様、凄まじい技のキレ。私もまだまだですね。……ですが分かりません。なぜ主様は私の仕事の邪魔をされたのですか?」


いやいや、この娘は何を言っているのだろうか?

誰が我が愛しの女神を暗殺しろって命令した?

そんな事を思う俺を差し置いて、女は独自の理論を展開し始めた。


「私はアサシン。つまりこの場に呼ばれたという事はターゲットを殺せという事。この部屋には主様とこの少女しかいなかった。つまりターゲットはこの少女」


はっはっは、やばいな、この娘。

クーリングオフってまだ効くのかな?

魔界の中でも中々ヤバメの思考を持つ女に俺は少し後悔感を持ちながら女に言い聞かせるように話しかけた。


「お前の今着ている服はなんだ? 忍び装束に見えるのか?」


女が今、身につけている服は女の口調にはとても似合わない見事なまでのメイド服であった。

これでもかというほどにフリフリを施したメイド服である。

ちなみに完全なる俺の趣味だ。

いつかはメリエス様に着せて遊ぶのが俺の野望の一つでもある。


「うー、主様動きづらいです。私の服返してはもらえませんか?」


俺の指摘で自分の服装を思い出したのかフリフリメイド服をチラチラと見ながら女は唸り声を上げた。

60点。

黒髪クールビューティー大いに結構。

だが俺の好みドンピシャはメリエス様のような愛らしい美少女である。

やはりメイド服はメリエス様にこそ相応しいと俺はこの時、再確認した。

あとついでに言うとお前を着替えさせた後、あの黒くて地味なクソみたいな忍び装束は俺の魔法でそれはもう跡形もなく燃やしたので返す事はできない。

なぜならあんなものは女の子が着るものではないからだ。

稀に忍者っ娘萌え~とか抜かす頭のおかしい変態もいるが、俺は変態ではないので燃やしてやはり正解だっただろう。


「よく聞け、アールワン。あの日、アサシンとしてのお前は死んだ。そして生まれ変わったのだ俺……じゃなかったメリエス様専用護衛兼世話係メイドとしてなぁぁぁ!」


俺が完璧にキメると、アールワンから解放されたメリエス様がなぜか俺を可哀想な物を見るような目で見てきた気もするがそれはきっと気のせいである。

ちなみに俺がアールワンと知り合ったのは数日前、ドランなんとかっていう前の魔王とよく似た名前の魔人の城に遊びに行った時の事である。

すると、どうだろう。

遊びに行っただけのはずなのに、ドランなんとかさんは俺と遊ぶのが嫌だったのか数人のアサシンを差し向けてきたのである。

とりあえず俺はドランなんとかさんとの下らない遊びに付き合い、アサシン達とひとしきり遊んだ後、遊び疲れたアサシンの一人に事情を聞いてみた。

話を聞いてみた所、アサシン達はドランなんとかさんの部下だったらしいのだが、ドランなんとかさんの日頃の行いに嫌気を差し、部下を抜けようと試みたのだが失敗し、幽閉されていたのだという。

そんな時に俺が遊びに来たらしい。

そして、俺と遊びたくなかったドランなんとかさんは卑怯にもアサシンの仲間数人を人質に取り、強制的にアサシン達を俺との遊びに付き合わせたというのだ。

まぁ最初に「遊ぼう」と言ったのは俺だし遊ぶことにはなんら抵抗感はなかったのだが、俺はその遊び方が気に食わなかった。

だから、俺は徹底的にドランなんとかさんと遊ぶことにしたのだ。

途中で疲れたからやめようよーというドランなんとかさんを無視し俺はドランなんとかさんと遊び続けた。

そして、最終的にドランなんとかさんは途中で遊び疲れたのか俺に言ってきた。


「魔王なんかやめるからもうやめようよ」と。


俺には意味がよく分からなかったが、そんなに遊び疲れたならもうやめようかと、フェアリーメルト領へと帰ってきたのである。

その時に俺と遊んだのがそんなに楽しかったのか1人ついてきたのがアサシン達のリーダーであるアールワンだったのである。


「……メイドですか? できるでしょうか? 私に」


心配そうにアールワンは俺に尋ねた。

なんだ。案外素直だな。

私は主様のアサシン! とか言いそうなのに。


「まぁ大丈夫だろ? 意外とお前筋良さそうだし。……まぁ常識はなさそうだけど」


「ガーン」


ガーンとか口に出す奴初めて見た。

あっ、そうそう、これは伝えておかなければな。

俺はアールワンの耳元に顔を近づけると、ビクッとアールワンが体を震わした気がしたが、俺はそのままアールワンへと耳打ちした。


「さっきお前が殺しかけた愛らしい女性が俺の主にして、ドランゼスに変わる新魔王メリエス様だ。どうだ? 可愛かろう?」


「確かに可愛いお方ですね。ドランゼスとは大違いです」


当たり前だ。

こんなにかわええメリエス様をあんなむさっ苦しいおっさんと一緒にするでない。


「お前はこれからこの方にお仕えするんだ。しっかりやれよ」


そういうと俺はわしゃわしゃと犬を撫でるような調子でアールワンの頭を撫でると、メリエス様が俺にジト目を向けてきた。


「ジレ、貴様、まさか私の暗殺の相談をしておるわけじゃなかろうな!」


「私がそんな事をするわけがないではありませんか。メイドとしての心構えを教えたのですよ」


俺とメリエス様がそんな言い合いをしている中、アールワンは俺の事をじっと見つめていた
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