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第2章 ドラゴン襲来編
第42話 変ですねー
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「た、退避ぃー!」
敬語を使う暇もなかったのかガルドは馬車内にいた私達に向け大きな声を上げました。
そんな言葉を聞くまでもなく私達4人は馬車から飛び出した直後、天馬を避ける様にして数発の火の玉が馬車へと着弾し、小さな爆発が数回連続して起こってから馬車は激しく燃え上がり始めます。
カレンは全員が回避したのを確認してから燃え盛る馬車から天馬を逃がすため、天馬と馬車が繋がれていた金属製の鎖をミスリル製の剣で勢いよく断ち切りました。
普通の馬だったら確実に逃げ出していたのでしょうが、天馬は少し動じた様子こそ見せたもののその場から逃げ出す事はありませんでした。
とはいえこのまま私達の傍においておくと攻撃を受けてどうなるかもわからなかったので、近くの林まで退避させるよう私は指示を出します。
すぐに天馬を退避させるよう動き出したガルドの後ろ姿を見送ってから、私達は攻撃を仕掛けてきたアッシュへと視線を向けると、アッシュはこちらの事など見ておらす隣にいた女性と向かい合っています。
「こぉら、いきなり人に向かってファイヤーボールを放ってはいけません」
女性はそんな言葉をアッシュにかけていますが、その言葉には真剣味は感じません。
まるで溺愛する我が子の小さな悪戯を注意するようなそんな親バカを見ているようでした。
その間もこちらではメラメラと馬車が大きな火柱を上げ、燃え上がっているのですが、あの女性にはそれが見えていないのでしょうか?
「でもあの人達はあのクソ王子の仲間なのですよね? 師匠は言っていました。気に食わん奴は力で黙らせてしまえばいいって」
幼い言葉の節々に汚い言葉と暴力的は発言が入り混じったそんなアッシュの言葉に私に思わず恐怖を覚えました。
やはりアッシュはとても危険な思想の持ち主だったのです。
「ケイン君、クソとかそういう言葉は使っちゃダメですよー。アッシュ様曰くアッシュ様のアレは覇者の言葉遣いらしいです。世界最強の偉大過ぎる勇者になって初めて許されるのですよ。多分ですけどー」
「ふふ、僕も早く師匠のような偉大な勇者になりたいです」
少年の言葉をユルめに窘めるように女性がよく分からない事を言うと、少年は目をキラキラさせながらそんなことを言いました。
どうやら少年はアッシュではなかったようです。
ケインというの少年はアッシュの弟子という事だけはなんとか理解できましたが、それ以外の事は正直、私にはまったく分かりません。
私が混乱する中、ようやく私達がじっと見ているのに気付いたのか女性がこちらへ視線を戻し、こちらへとやってきます。
「大丈夫ですかー? 王都からやってきた方ですよねー?」
まるで何事無かったかのように女性はそう言って更に近づいてきます。
私達のすぐ後ろで馬車が今にも燃え尽きそうなのが見えないのでしょうか?
かといってこちらとしてもあまりあちらを刺激したくはありません。
天馬はともかく馬車の車体自体はそれなりに高額ではあるのでしょうが、替えなどいくらでも効くのですから。
「危険です!エリシア様」というカレンとエミュラを抑えて、こちらからも彼女の方へと向かいます。
ちょうど話しやすい距離にまで近づいた私は勇気を振り絞って言いました。
「私はエリシア=ユーディーン=ドレアスと申します。本日はこちらに滞在中とお聞きしたアッシュ様にお願いがありやって参りました」
できるだけ相手に好印象を持ってもらえるよう丁寧に挨拶し、私は小さく頭を下げると彼女は少し驚いた表情で私を見ます。
「よくここが分かりましたねー。エリシア様と言うとドレアス王国の第一王女様でしょうか?」
「はい、私がドレアス王国第一王女のエリシアです」
「後ろの方たちは?」
なぜか彼女は不思議そうに私の顔を見た後、エミュラ達の事も気になったのかそう言いました。
王族が王都の外に出るのに護衛はいて当然なのですが、警戒されてしまっているのでしょうか?
「彼女たちは私の親衛隊騎士でこちらからエミュラ、カレン、アイルといいます。彼女たちにはここに来るまでの護衛をお願いしました」
あくまで町の外の獣に対する警護だという事を強調しつつ、私はエミュラ達を軽く自己紹介させました。
こうゆう場であまり護衛について尋ねられることはないので私が少し不思議に思っていると、彼女はよく分からないことを言い始めます。
「あ、私も自己紹介しないといけませんね。私はセラ。グレスデン大教会の聖……って言っても分かりませんか。えーとぉ……アッシュ様の仲間です。ところで変な事を聞きますが、エリシア様は国王陛下から溺愛されていたりします?」
本当に変な質問です。
ここでするような質問でしょうか?
話をした限り、噂で聞いているアッシュと比べるとかなり友好的な女性に思えますが、少し変わった人なのかもしれません。
「溺愛ですか? 嫌われているという事はないと思うのですが溺愛まではされていないと思います」
仮に溺愛されているのだとしたら私は今この場に立っていないと思います。
質問の意図が全く分かりません。
「そうですかー。変ですねー」
はい、私も変だと思います。よく分かりませんが。
大事な交渉の前哨戦だというのに私は一体なにをやらされているのでしょうか?
このままセラさんのペースに飲まれると始まるものも始まらないと思った私は単刀直入に切り出す事にしました。
「あの!」
「はい、なんでしょう?」
「既にご存知かもしれませんが、ドレアスは現在神獣ドラゴンの脅威により滅亡の危機にあります。そこでどうか一騎当千の戦士であるアッシュ様のお力をお借りしたいのです。出来得る限り最大限の報奨金をご用意させていただきます。アッシュ様に会わせていただきませんか?」
私をそう言って大きく頭を下げました。
本来であれば第一王女である私が頭を下げるのはドレアス王国の王である父上ただ一人ですが、なりふりなど構ってはいられません。
私と同じように後ろに立つエミュラ達も私を止めることなく一緒に頭を下げているのが私の体ごしに見えます。
「頭を上げてください。やっぱり昨日、北に向かっていったドラゴンの群れは王都を目指していたのですか」
セラさんの声で私達は顔を上げると、そこには少し考えこんだ様子のセラさんの顔がありました。
あれだけ大群の移動だったのでやはりアッシュ達はドラゴンの存在に気付いていたみたいです。
考え込んでいるもののそんなドラゴンの大群を見ていたはずのセラさんの顔には恐れのようなものは見えません。
そんなセラさんの表情に期待してしまったのも一瞬の事でした。
「無理ですね」
セラさんは無情にもそう私に告げるのでした。
敬語を使う暇もなかったのかガルドは馬車内にいた私達に向け大きな声を上げました。
そんな言葉を聞くまでもなく私達4人は馬車から飛び出した直後、天馬を避ける様にして数発の火の玉が馬車へと着弾し、小さな爆発が数回連続して起こってから馬車は激しく燃え上がり始めます。
カレンは全員が回避したのを確認してから燃え盛る馬車から天馬を逃がすため、天馬と馬車が繋がれていた金属製の鎖をミスリル製の剣で勢いよく断ち切りました。
普通の馬だったら確実に逃げ出していたのでしょうが、天馬は少し動じた様子こそ見せたもののその場から逃げ出す事はありませんでした。
とはいえこのまま私達の傍においておくと攻撃を受けてどうなるかもわからなかったので、近くの林まで退避させるよう私は指示を出します。
すぐに天馬を退避させるよう動き出したガルドの後ろ姿を見送ってから、私達は攻撃を仕掛けてきたアッシュへと視線を向けると、アッシュはこちらの事など見ておらす隣にいた女性と向かい合っています。
「こぉら、いきなり人に向かってファイヤーボールを放ってはいけません」
女性はそんな言葉をアッシュにかけていますが、その言葉には真剣味は感じません。
まるで溺愛する我が子の小さな悪戯を注意するようなそんな親バカを見ているようでした。
その間もこちらではメラメラと馬車が大きな火柱を上げ、燃え上がっているのですが、あの女性にはそれが見えていないのでしょうか?
「でもあの人達はあのクソ王子の仲間なのですよね? 師匠は言っていました。気に食わん奴は力で黙らせてしまえばいいって」
幼い言葉の節々に汚い言葉と暴力的は発言が入り混じったそんなアッシュの言葉に私に思わず恐怖を覚えました。
やはりアッシュはとても危険な思想の持ち主だったのです。
「ケイン君、クソとかそういう言葉は使っちゃダメですよー。アッシュ様曰くアッシュ様のアレは覇者の言葉遣いらしいです。世界最強の偉大過ぎる勇者になって初めて許されるのですよ。多分ですけどー」
「ふふ、僕も早く師匠のような偉大な勇者になりたいです」
少年の言葉をユルめに窘めるように女性がよく分からない事を言うと、少年は目をキラキラさせながらそんなことを言いました。
どうやら少年はアッシュではなかったようです。
ケインというの少年はアッシュの弟子という事だけはなんとか理解できましたが、それ以外の事は正直、私にはまったく分かりません。
私が混乱する中、ようやく私達がじっと見ているのに気付いたのか女性がこちらへ視線を戻し、こちらへとやってきます。
「大丈夫ですかー? 王都からやってきた方ですよねー?」
まるで何事無かったかのように女性はそう言って更に近づいてきます。
私達のすぐ後ろで馬車が今にも燃え尽きそうなのが見えないのでしょうか?
かといってこちらとしてもあまりあちらを刺激したくはありません。
天馬はともかく馬車の車体自体はそれなりに高額ではあるのでしょうが、替えなどいくらでも効くのですから。
「危険です!エリシア様」というカレンとエミュラを抑えて、こちらからも彼女の方へと向かいます。
ちょうど話しやすい距離にまで近づいた私は勇気を振り絞って言いました。
「私はエリシア=ユーディーン=ドレアスと申します。本日はこちらに滞在中とお聞きしたアッシュ様にお願いがありやって参りました」
できるだけ相手に好印象を持ってもらえるよう丁寧に挨拶し、私は小さく頭を下げると彼女は少し驚いた表情で私を見ます。
「よくここが分かりましたねー。エリシア様と言うとドレアス王国の第一王女様でしょうか?」
「はい、私がドレアス王国第一王女のエリシアです」
「後ろの方たちは?」
なぜか彼女は不思議そうに私の顔を見た後、エミュラ達の事も気になったのかそう言いました。
王族が王都の外に出るのに護衛はいて当然なのですが、警戒されてしまっているのでしょうか?
「彼女たちは私の親衛隊騎士でこちらからエミュラ、カレン、アイルといいます。彼女たちにはここに来るまでの護衛をお願いしました」
あくまで町の外の獣に対する警護だという事を強調しつつ、私はエミュラ達を軽く自己紹介させました。
こうゆう場であまり護衛について尋ねられることはないので私が少し不思議に思っていると、彼女はよく分からないことを言い始めます。
「あ、私も自己紹介しないといけませんね。私はセラ。グレスデン大教会の聖……って言っても分かりませんか。えーとぉ……アッシュ様の仲間です。ところで変な事を聞きますが、エリシア様は国王陛下から溺愛されていたりします?」
本当に変な質問です。
ここでするような質問でしょうか?
話をした限り、噂で聞いているアッシュと比べるとかなり友好的な女性に思えますが、少し変わった人なのかもしれません。
「溺愛ですか? 嫌われているという事はないと思うのですが溺愛まではされていないと思います」
仮に溺愛されているのだとしたら私は今この場に立っていないと思います。
質問の意図が全く分かりません。
「そうですかー。変ですねー」
はい、私も変だと思います。よく分かりませんが。
大事な交渉の前哨戦だというのに私は一体なにをやらされているのでしょうか?
このままセラさんのペースに飲まれると始まるものも始まらないと思った私は単刀直入に切り出す事にしました。
「あの!」
「はい、なんでしょう?」
「既にご存知かもしれませんが、ドレアスは現在神獣ドラゴンの脅威により滅亡の危機にあります。そこでどうか一騎当千の戦士であるアッシュ様のお力をお借りしたいのです。出来得る限り最大限の報奨金をご用意させていただきます。アッシュ様に会わせていただきませんか?」
私をそう言って大きく頭を下げました。
本来であれば第一王女である私が頭を下げるのはドレアス王国の王である父上ただ一人ですが、なりふりなど構ってはいられません。
私と同じように後ろに立つエミュラ達も私を止めることなく一緒に頭を下げているのが私の体ごしに見えます。
「頭を上げてください。やっぱり昨日、北に向かっていったドラゴンの群れは王都を目指していたのですか」
セラさんの声で私達は顔を上げると、そこには少し考えこんだ様子のセラさんの顔がありました。
あれだけ大群の移動だったのでやはりアッシュ達はドラゴンの存在に気付いていたみたいです。
考え込んでいるもののそんなドラゴンの大群を見ていたはずのセラさんの顔には恐れのようなものは見えません。
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「無理ですね」
セラさんは無情にもそう私に告げるのでした。
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