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第2章 ドラゴン襲来編
第39話 エリシアの出立
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玉座の間でのベルゼス様の報告が終わってとりあえず解散になりました。
もちろん、ベルゼス様の報告とアッシュという者の交渉に関すること以外にも話し合う事は山積しているので、父上は重臣や騎士達から報告を聞いたり命令を出したりと忙しそうでしたが、私達は一刻も早くアッシュという者の元へと向かわなければなりませんから。
部屋でゆっくりと話し合う時間も惜しいので私達4人は王宮の大きな廊下を歩きながら父から付けられた文官ガルドからアッシュの現在地点とこれからの予定などの確認をすることになりました。
「現在、アッシュ一行は恐らく南の村ルベリに滞在しています。高速馬車を使えば3時間ほどの距離にある村ですが、何が起きるか分かりませんのですぐに出発致しましょう」
私がガルドの持つドレアス王国の地図を見ると確かにそれほど離れていない村のようでした。
「ですけどなぜ南なのですか? アッシュという者は交渉が失敗したドレアスに代わる大国を探しているのですよね?」
私はガルドの説明とドレアス王国の地図を見て疑問に思い、ガルドに尋ねました。
聞いた話ではアッシュと言う男はこの世界へとやってくる悪魔討伐の報酬を交渉する為にドレアスへとやってきたらしいのです。
どこからツッコめばいいか分からない話ですが、アッシュという者が求めていたのは莫大な資金力と兵力を持つ大国なのは間違いないらしくて、それであれば南へと向かうのはおかしいと私は思ったのです。
地図を見ても分かる通り、ドレアスの南にはドレアスに所属する村や町はあってもドレアス以外の国はないはずですから。
ずっと南に行けば今回ドレアスへと襲来してきたドラゴンが住まう広大な神獣の領域が広がっているだけで、その向こう側は古代の文献によれば海になっているはずです。
あくまで古い文献に書かれているだけで実際に神獣の領域の向こう側が本当に海になっているのかはよく分かってはいませんが、少なくても国が存在するという話は聞いた事がありません。
大国を目指すというのなら少なくても南は選択肢から外すべきで、普通に考えれば大陸北方にある帝国か大陸東方にあるハルア共和国を目指すはずなのです。
ハルア共和国はドレアスと同盟関係にあるので、実質北の帝国が一番の有力候補になるのかもしれませんが。
「協力者であるルベリの商店主の家にとりあえず身を寄せるつもりなのでしょう。異世界から来た……という事の真偽は定かではありませんが、アッシュは地理や国家の関係性に疎いのかもしれません。アッシュはそれらの情報整理をしてから北の帝国なりハルアなりかに向かうつもりなのかもしれません」
私の疑問を察したのかガルドがそう説明してくれました。
更に話を聞いてみると、アッシュという者はどうやら馬車でこの王都までやってきたらしく、その馬車の持ち主がルベリ村の商店主であるグレイスという者らしいです。
グレイスとアッシュの関係性はよく分かっていないらしいですが、父上直属の情報分析官の調べによるとアッシュという者には他にも行動を共にする2人の女性がいるようです。
「それにしても丸1日も経っていないのによくここまで調べましたね」
父上直属の情報分析官と諜報員を総動員したとはいえ、流石にここまで情報を素早く得られた事に私が驚いていると、ガルドは小さく笑いながら言いました
「どうやらアッシュという者はセシル商会でも騒ぎを起こしていたそうで」
セシル商会? 確か兄上が無茶な要求をした大商会だったでしょうか?
兄上がぞっこんの西の小国の姫にピンクエンパールがついた指輪を贈るから用意しろとか無茶を言っていたと文官が噂していたのを聞いた記憶があります。
ピンクエンパールはこの世でもっとも珍しい宝石され、この大陸を見渡しても装飾品として使われている物は5個に満たないと言われるほど目にすることすら難しい宝石です。
父の儀式用の王冠の中央に小さなピンクエンパールがついているので私は見たことがありますが、それ以外で見たことは王族である私でもありません。
大国の第一王子であるルシードの求婚を真っ向から断る事が難しいと悟った小国の姫が遠回しに断るためにピンクエンパールの指輪を兄上にねだったのが発端だったらしいですが、遠回しに断られているのに気付かない兄上は今も躍起になって探しているそうです。
兄上がその小国の姫の偽りの願いを叶えるには父上の王冠からピンクエンパールを抜き取るくらいしか方法はないと思っていましたが、ガルドは思いがけもしない事を言い始めました。
「どうやらピンクエンパールを売りに出したそうですよ。そのアッシュという者は」
「えぇ!?」
どうやらセシル商会長が兄上から提示されていた予算の上限は150白金貨だったらしいのですが、その2倍に当たる300白金貨まで買い取り価格を吊り上げられたそうです。
その時点で既に赤字ですが、そこから更に加工費など諸経費もかかるらしく、その事を諜報員へと語ったセシル商会の商会長は引きつった笑顔を浮かべていたようです。
「殿下からかなり圧力がかかっていた商会長が引くに引けないのを感じ取ったようですね。少し話が脱線しましたが、アッシュとはそういう男のようです。姫様も気を引き締めて交渉に当たってください」
「そ、そうですね」
とは言ってみたものの、私——つまりドレアス王国もセシル商会長以上に引くに引けない状況なのです。
どう私が完璧に取り繕った所でドラゴンの話をしなければいけないのですから、ドレアスが滅亡寸前なことなど小さな子供でも分かる事です。
本当になんでこのようなドレアスの命運を左右させる重要な交渉を父上は私なんかに任せる事にしたのか今でも分かりません。
私はお茶会に出る事はあっても交渉らしい交渉などした事のないのですから。
私は心の中でそんな疑問を抱きながら、王宮の外に待機させてある高速馬車へと向かう事にしました。
もちろん、ベルゼス様の報告とアッシュという者の交渉に関すること以外にも話し合う事は山積しているので、父上は重臣や騎士達から報告を聞いたり命令を出したりと忙しそうでしたが、私達は一刻も早くアッシュという者の元へと向かわなければなりませんから。
部屋でゆっくりと話し合う時間も惜しいので私達4人は王宮の大きな廊下を歩きながら父から付けられた文官ガルドからアッシュの現在地点とこれからの予定などの確認をすることになりました。
「現在、アッシュ一行は恐らく南の村ルベリに滞在しています。高速馬車を使えば3時間ほどの距離にある村ですが、何が起きるか分かりませんのですぐに出発致しましょう」
私がガルドの持つドレアス王国の地図を見ると確かにそれほど離れていない村のようでした。
「ですけどなぜ南なのですか? アッシュという者は交渉が失敗したドレアスに代わる大国を探しているのですよね?」
私はガルドの説明とドレアス王国の地図を見て疑問に思い、ガルドに尋ねました。
聞いた話ではアッシュと言う男はこの世界へとやってくる悪魔討伐の報酬を交渉する為にドレアスへとやってきたらしいのです。
どこからツッコめばいいか分からない話ですが、アッシュという者が求めていたのは莫大な資金力と兵力を持つ大国なのは間違いないらしくて、それであれば南へと向かうのはおかしいと私は思ったのです。
地図を見ても分かる通り、ドレアスの南にはドレアスに所属する村や町はあってもドレアス以外の国はないはずですから。
ずっと南に行けば今回ドレアスへと襲来してきたドラゴンが住まう広大な神獣の領域が広がっているだけで、その向こう側は古代の文献によれば海になっているはずです。
あくまで古い文献に書かれているだけで実際に神獣の領域の向こう側が本当に海になっているのかはよく分かってはいませんが、少なくても国が存在するという話は聞いた事がありません。
大国を目指すというのなら少なくても南は選択肢から外すべきで、普通に考えれば大陸北方にある帝国か大陸東方にあるハルア共和国を目指すはずなのです。
ハルア共和国はドレアスと同盟関係にあるので、実質北の帝国が一番の有力候補になるのかもしれませんが。
「協力者であるルベリの商店主の家にとりあえず身を寄せるつもりなのでしょう。異世界から来た……という事の真偽は定かではありませんが、アッシュは地理や国家の関係性に疎いのかもしれません。アッシュはそれらの情報整理をしてから北の帝国なりハルアなりかに向かうつもりなのかもしれません」
私の疑問を察したのかガルドがそう説明してくれました。
更に話を聞いてみると、アッシュという者はどうやら馬車でこの王都までやってきたらしく、その馬車の持ち主がルベリ村の商店主であるグレイスという者らしいです。
グレイスとアッシュの関係性はよく分かっていないらしいですが、父上直属の情報分析官の調べによるとアッシュという者には他にも行動を共にする2人の女性がいるようです。
「それにしても丸1日も経っていないのによくここまで調べましたね」
父上直属の情報分析官と諜報員を総動員したとはいえ、流石にここまで情報を素早く得られた事に私が驚いていると、ガルドは小さく笑いながら言いました
「どうやらアッシュという者はセシル商会でも騒ぎを起こしていたそうで」
セシル商会? 確か兄上が無茶な要求をした大商会だったでしょうか?
兄上がぞっこんの西の小国の姫にピンクエンパールがついた指輪を贈るから用意しろとか無茶を言っていたと文官が噂していたのを聞いた記憶があります。
ピンクエンパールはこの世でもっとも珍しい宝石され、この大陸を見渡しても装飾品として使われている物は5個に満たないと言われるほど目にすることすら難しい宝石です。
父の儀式用の王冠の中央に小さなピンクエンパールがついているので私は見たことがありますが、それ以外で見たことは王族である私でもありません。
大国の第一王子であるルシードの求婚を真っ向から断る事が難しいと悟った小国の姫が遠回しに断るためにピンクエンパールの指輪を兄上にねだったのが発端だったらしいですが、遠回しに断られているのに気付かない兄上は今も躍起になって探しているそうです。
兄上がその小国の姫の偽りの願いを叶えるには父上の王冠からピンクエンパールを抜き取るくらいしか方法はないと思っていましたが、ガルドは思いがけもしない事を言い始めました。
「どうやらピンクエンパールを売りに出したそうですよ。そのアッシュという者は」
「えぇ!?」
どうやらセシル商会長が兄上から提示されていた予算の上限は150白金貨だったらしいのですが、その2倍に当たる300白金貨まで買い取り価格を吊り上げられたそうです。
その時点で既に赤字ですが、そこから更に加工費など諸経費もかかるらしく、その事を諜報員へと語ったセシル商会の商会長は引きつった笑顔を浮かべていたようです。
「殿下からかなり圧力がかかっていた商会長が引くに引けないのを感じ取ったようですね。少し話が脱線しましたが、アッシュとはそういう男のようです。姫様も気を引き締めて交渉に当たってください」
「そ、そうですね」
とは言ってみたものの、私——つまりドレアス王国もセシル商会長以上に引くに引けない状況なのです。
どう私が完璧に取り繕った所でドラゴンの話をしなければいけないのですから、ドレアスが滅亡寸前なことなど小さな子供でも分かる事です。
本当になんでこのようなドレアスの命運を左右させる重要な交渉を父上は私なんかに任せる事にしたのか今でも分かりません。
私はお茶会に出る事はあっても交渉らしい交渉などした事のないのですから。
私は心の中でそんな疑問を抱きながら、王宮の外に待機させてある高速馬車へと向かう事にしました。
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