魔王討伐後のゴージャスかつ優雅な生活を邪魔された。俺様一人異世界転移させられるのもなんか癪なので他の奴らも異世界転移に巻き込むことにする

コメッコ

文字の大きさ
上 下
39 / 43
第2章 ドラゴン襲来編

第39話 エリシアの出立

しおりを挟む
玉座の間でのベルゼス様の報告が終わってとりあえず解散になりました。



もちろん、ベルゼス様の報告とアッシュという者の交渉に関すること以外にも話し合う事は山積しているので、父上は重臣や騎士達から報告を聞いたり命令を出したりと忙しそうでしたが、私達は一刻も早くアッシュという者の元へと向かわなければなりませんから。





部屋でゆっくりと話し合う時間も惜しいので私達4人は王宮の大きな廊下を歩きながら父から付けられた文官ガルドからアッシュの現在地点とこれからの予定などの確認をすることになりました。





「現在、アッシュ一行は恐らく南の村ルベリに滞在しています。高速馬車を使えば3時間ほどの距離にある村ですが、何が起きるか分かりませんのですぐに出発致しましょう」





私がガルドの持つドレアス王国の地図を見ると確かにそれほど離れていない村のようでした。





「ですけどなぜ南なのですか? アッシュという者は交渉が失敗したドレアスに代わる大国を探しているのですよね?」





私はガルドの説明とドレアス王国の地図を見て疑問に思い、ガルドに尋ねました。



聞いた話ではアッシュと言う男はこの世界へとやってくる悪魔討伐の報酬を交渉する為にドレアスへとやってきたらしいのです。

どこからツッコめばいいか分からない話ですが、アッシュという者が求めていたのは莫大な資金力と兵力を持つ大国なのは間違いないらしくて、それであれば南へと向かうのはおかしいと私は思ったのです。



地図を見ても分かる通り、ドレアスの南にはドレアスに所属する村や町はあってもドレアス以外の国はないはずですから。

ずっと南に行けば今回ドレアスへと襲来してきたドラゴンが住まう広大な神獣の領域が広がっているだけで、その向こう側は古代の文献によれば海になっているはずです。

あくまで古い文献に書かれているだけで実際に神獣の領域の向こう側が本当に海になっているのかはよく分かってはいませんが、少なくても国が存在するという話は聞いた事がありません。



大国を目指すというのなら少なくても南は選択肢から外すべきで、普通に考えれば大陸北方にある帝国か大陸東方にあるハルア共和国を目指すはずなのです。

ハルア共和国はドレアスと同盟関係にあるので、実質北の帝国が一番の有力候補になるのかもしれませんが。





「協力者であるルベリの商店主の家にとりあえず身を寄せるつもりなのでしょう。異世界から来た……という事の真偽は定かではありませんが、アッシュは地理や国家の関係性に疎いのかもしれません。アッシュはそれらの情報整理をしてから北の帝国なりハルアなりかに向かうつもりなのかもしれません」





私の疑問を察したのかガルドがそう説明してくれました。

更に話を聞いてみると、アッシュという者はどうやら馬車でこの王都までやってきたらしく、その馬車の持ち主がルベリ村の商店主であるグレイスという者らしいです。

グレイスとアッシュの関係性はよく分かっていないらしいですが、父上直属の情報分析官の調べによるとアッシュという者には他にも行動を共にする2人の女性がいるようです。





「それにしても丸1日も経っていないのによくここまで調べましたね」





父上直属の情報分析官と諜報員を総動員したとはいえ、流石にここまで情報を素早く得られた事に私が驚いていると、ガルドは小さく笑いながら言いました





「どうやらアッシュという者はセシル商会でも騒ぎを起こしていたそうで」





セシル商会? 確か兄上が無茶な要求をした大商会だったでしょうか?





兄上がぞっこんの西の小国の姫にピンクエンパールがついた指輪を贈るから用意しろとか無茶を言っていたと文官が噂していたのを聞いた記憶があります。

ピンクエンパールはこの世でもっとも珍しい宝石され、この大陸を見渡しても装飾品として使われている物は5個に満たないと言われるほど目にすることすら難しい宝石です。

父の儀式用の王冠の中央に小さなピンクエンパールがついているので私は見たことがありますが、それ以外で見たことは王族である私でもありません。





大国の第一王子であるルシードの求婚を真っ向から断る事が難しいと悟った小国の姫が遠回しに断るためにピンクエンパールの指輪を兄上にねだったのが発端だったらしいですが、遠回しに断られているのに気付かない兄上は今も躍起になって探しているそうです。



兄上がその小国の姫の偽りの願いを叶えるには父上の王冠からピンクエンパールを抜き取るくらいしか方法はないと思っていましたが、ガルドは思いがけもしない事を言い始めました。





「どうやらピンクエンパールを売りに出したそうですよ。そのアッシュという者は」





「えぇ!?」





どうやらセシル商会長が兄上から提示されていた予算の上限は150白金貨だったらしいのですが、その2倍に当たる300白金貨まで買い取り価格を吊り上げられたそうです。

その時点で既に赤字ですが、そこから更に加工費など諸経費もかかるらしく、その事を諜報員へと語ったセシル商会の商会長は引きつった笑顔を浮かべていたようです。





「殿下からかなり圧力がかかっていた商会長が引くに引けないのを感じ取ったようですね。少し話が脱線しましたが、アッシュとはそういう男のようです。姫様も気を引き締めて交渉に当たってください」





「そ、そうですね」





とは言ってみたものの、私——つまりドレアス王国もセシル商会長以上に引くに引けない状況なのです。

どう私が完璧に取り繕った所でドラゴンの話をしなければいけないのですから、ドレアスが滅亡寸前なことなど小さな子供でも分かる事です。



本当になんでこのようなドレアスの命運を左右させる重要な交渉を父上は私なんかに任せる事にしたのか今でも分かりません。

私はお茶会に出る事はあっても交渉らしい交渉などした事のないのですから。



私は心の中でそんな疑問を抱きながら、王宮の外に待機させてある高速馬車へと向かう事にしました。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

処理中です...