魔王討伐後のゴージャスかつ優雅な生活を邪魔された。俺様一人異世界転移させられるのもなんか癪なので他の奴らも異世界転移に巻き込むことにする

コメッコ

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第2章 ドラゴン襲来編

第35話 エリシアの憂鬱

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私が玉座の間の会議から自室へ戻ると、私直属の親衛隊騎士のエミュラ、アイル、カレンが待っていた。

昨日起きた騒動の詳細を確認した後の対応と状況説明する為にあらかじめ私が呼んでおいたのです。



私は3人をテーブルにつかせてから、玉座の間で聞いた全てをエミュラ達に説明し終えると、呆気に取られたのか3人共絶句する。



そんな中、最初に口を開いたのはエミュラだった。





「その男、頭おかしいんじゃないですか?」





「私もそう思います。馬鹿な兄上とはいえドレアスの第一王子の手に風穴を開け、4000人の兵とレイを倒してしまう戦士がいるなんて」





今、聞いても信じられない話の連続でした。

しかもどれ一つをとっても国家反逆罪に処されそうな行いをしたその戦士をドレアスに迎えるというのだから父上は本当に思い切った事をしたと思います。

確かにドレアスの取り巻く情勢を考えたらこれが最善なのかもしれませんが、それ以上に父上はその男に興味を持っているようでした。

もしかしたら父上にはあの場で話した以上の思惑があるのかもしれません。





「でもちょっと憧れちゃいますよねー」





「なにがよ?」





私が頭を悩ませているというのになぜか笑みを浮かべそんな事を言い出したアイラにエミュラが鋭い視線を向け問いかけると、騎士アイルは笑みを深め答えた。





「だって要は剣だけの力でのし上がっちゃったってことですよねー? 陛下の対応から考えれば最低でも騎士団長ですし、【剣聖】に続く新たな称号が誕生しそうですよね」





アイラが言う剣聖とはもちろんレイの事です。

レイは役職上は騎士ですが、ドレアス王国に数名いる騎士団長にすら命令を下す事ができ、軍団長であるベルゼスですらレイには命令を出す事は出来きません。



それが【剣聖】という称号が持つ力であり、剣聖であるレイに実際に命令を下す事が出来るのはドレアス王国の頂点である国王ユーディーン=パブロ=ドレアスただ一人なのです。





「まぁ剣聖であるレイを倒してしまったわけですから可能性はありますね。利益とかそういう以前に父上はかなりその戦士を気に入っているようですし」





称号は実力はもちろんですが、国王であるユーディーンにのみその任命権が与えられているので、父上が首を縦に振らなければどれだけの偉業を達成したとしても与えられることはありません。

ですが、今日の父上の様子から考えると十分にその可能性はあるように私には思えました。



私がそんな考えを伝えると、アイラはキャーキャーと黄色い悲鳴を上げ始めた。





「陛下のお気に入りなんですかー! 早くお会いしたいですー!」





まるでアイドルに会う前の熱狂的なファンのような反応をするアイラの事を私は理解できません。



だって、2000人の兵士とレイを倒して玉座の間に乱入するような男なのですよ?

確かに強いのかもしれませんがどんな野蛮人か分かったものではないではありませんか。



なんでそんな野蛮な男への交渉を行うのが私なのでしょうか?

国王である父上や単純に頭の悪い兄上が無理だとしてもベルゼス様やレイがいるではありませんか。



父上が何に期待してそんな物騒な役目を私に任せたのか理解が出来ません。





「ですが、なぜそのような命令を陛下はエリシア様に出されたのでしょうか? 言ってはなんですが、他に適任者がいると思うのですが」





カレン、それ今、私が言おうとしていました。



どうせなら、玉座の間でそれを誰かが父上に進言してくれればよかったのに、ベルゼス様もレイも何も言ってはくれませんでした。



ベルゼス様はともかくとしてレイは私の一番の友人だと思っていたのに、見捨てられたような気がします。





「しかも、交渉へと向かうエリシア様の護衛が我々3人だけとはどういうことでしょう? 相手は2000人の兵とレイ様を倒してしまうような化け物なのでは?」





そんなことは私が聞きたいです。



カレンの真っ当な意見に心の中で愚痴を溢しつつ、私は父上から伝えられた事をそのまま説明する。





「先方を刺激したくないそうです。それに兵をいくら連れて行ったとしても意味はないそうですし、大勢で押しかけて逃げられても困るので私達4人でと父上は仰っていました」





「はぁ、私らはその野蛮な戦士への生贄ですか。折角エリシア様の親衛隊騎士に選ばれたというのに。陛下はエリシア様が可愛くはないのですかね」





「まぁまぁ神狼に出会った時もどうにかなったじゃないですかー。それにこんなに可愛い女の子が4人もいるのです。私達の中の誰かがその戦士様のハートを射止めてきゃっきゃうふふな事になるかもしれませんよー」





「あの時はレイ様がいたからどうにかなっただけでしょ。私達だけじゃどうなっていたか。ていうかあなたはいつまで経っても変わらないね」





エミュラが呆れたようにアイラを見て、そう言った。



アイラが言った神狼とは私達が15歳になるまで通っていた貴族学院時代に行ったピクニックで遭遇した狼型の神獣の事です。

私達4人と剣聖であるレイは同じ学院で学んだ学友でした。

当時は第一王女である私が強大な神獣に襲われたと大変な騒動になりましたが、私を除く騎士科の4人が騎士団でも勝つことが難しい神狼を倒したと凄まじいニュースとしてドレアス王国全土に駆け巡る事になったのです。



そしてその件で4人に目を付けた父上が卒業時すでに全ての騎士団長よりも力をつけていたレイを【剣聖】に、そして残るエミュラ達を私の直属親衛隊騎士に任命しました。

エミュラ達3人は念願の——しかも王族専属の親衛隊騎士となり、私は気安く話せる上に実力も確かな3人の私専属の親衛隊騎士を得た。



仮に私につけられた新鋭騎士がエミュラ達でなければもっと今回の父上の命令はもっと不安なものになっていたと思います。





そんなことを思いながら私達はアッシュという者の情報を探っていた文官がやってくるのを待つことにした。

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