22 / 43
第1章 異世界転移編
第22話 剣聖の実力
しおりを挟む
レイが斬りかかってくるのを確認した俺様はすぐに剣を抜き、その場で構えた。
俺様から斬りかかるつもりはない。
とりあえずは様子見をするつもりだ。
レイの実力がどの程度かはまだ分からないが、俺様が本気を出してしまえばレイの実力を見る前に戦いが終わってしまう可能性が高い。
まぁその時は剣聖がその程度だったというだけの話だが、あとでエメルにグチグチ言われるのも面倒だからな。
そんなことを考えている間の一瞬でレイは俺様との距離を詰めてきて——
キィーン
レイが振った剣を俺様の剣が受け止めると、周囲に大きな金属音を鳴り響かせた。
そして、レイは少し驚いたように俺に言う。
「これを止めますか。やはり手を抜いて倒せる相手ではありませんね。貴方は」
「手を抜こうが抜くまいがお前じゃ俺様は倒せんよ。いいから本気でかかってこい」
「ふ、そうですか、では!」
レイはそう言ってどこか嬉しそうに俺様へと目にも止まらぬ(一般人目線では)連撃を放ってくる。
恐らく周りにいる騎士連中には剣の衝突音が聞こえるのみで何が起こっているかすら分かっていないだろう。
だが、それでもこの程度の剣で俺様の事を捕らえる事などできるわけがない。
とはいえ、なかなかやるではないか。
今も剣を振るってくるレイを前に俺様はそう評した。
確かに俺様の敵ではないのは間違いない。
だが、そんなことはやる前から分かりきっていた事だし、正直この世界の最強はもっと弱いものかと思っていた。
確かにこれ程の腕があるのならドラゴンを倒したというのも満更嘘でもないように思えるし、仮に俺達がいた世界の基準に当てはめたとしても、相当に名を馳す剣士となっただろう。
「しかし、惜しいな」
「何がです!」
俺様の言葉にレイは剣戟と共に言葉を返す。
「まさか知りもしない肉体強化魔法を使える事には驚きだが、使い方がなってない。魔力を体に巡らせる技術が未熟だな。まぁ俺様程の偉大過ぎる勇者になればそんなもの教えずとも自然にできてしまうものなのだがな」
「魔法? なんですか? それは!」
やはりこの世界の人間は魔法に関する知識を有していないらしい。
つまりレイは無意識のうちに肉体へと魔力を供給し強化していることになる。
普通それは師を得て学ぶか、独学で学ぶにしても指導書に基づいて会得していくものだが、こいつは魔法という概念がない世界でそれを無意識に会得してしまったというのだ。
天才という奴か。まぁ俺様程ではないがな。
恐らく、師を得て魔法を完全なものにすればガインの野郎以上に使えるくらいにはなる可能性をこいつは秘めている。
さて。
「もうお前の実力も分かったし、そろそろ終わらせていいか?」
俺様はレイの剣戟を受け流し、後ろに飛んで距離を取ると、レイに大きな声でそう尋ねた。
すると、何を勘違いしたのかレイではなくルシードが喚くように叫んできた。
「ふはは、馬鹿め。レイの猛攻に手も足も出なかった分際で終わらせるだと? 終わるのは貴様の方だ! さっさと死ぬがいい」
どうやらルシードには俺様がレイ相手に手も足も出ないように映っていたらしい。
そもそもルシードが俺とレイの戦いを見る事ができたとも思えないから、恐らくレイが負けるはずがないと適当な事を言っているようである。
「ここまで馬鹿だと笑えてくるな。お前みたいな馬鹿がいるドレアス王族に仕えているそいつに同情するぞ」
俺様が率直に思った事を思わず口に出すとルシードがなにやらキーキーとまた叫び始めたが、俺様はまったく興味がないので聞き流す事にする。
そんなルシードとは対照的にレイは無言で俺の方を見つめていた。
俺様はルシードを無視して改めてレイに向けて言う。
「本当はお前に合わせて剣でと行きたい所だったが、うっかり殺してしまってはかなわんからな。悪く思うなよ。——ウィンドストーム」
俺様はそう言って第3級魔法『ウィンドストーム』行使する。
第3級魔法と言えば、強力な魔法に思えるかもしれないが、目では視認困難な風の渦を前方へと飛ばすだけの魔法で同格の魔法の中ではかなり殺傷力が低い部類の魔法である。
「なにを?」
俺様が『ウィンドストーム』を行使した瞬間、レイは俺様が何をしたのか分からなかったのかそう呟いたが、次の瞬間。
「えっ、きゃあああ!」
レイはそんな叫び声を上げた後、俺様のウィンドストームを受けた風圧によって凄まじい勢いで後方へと吹き飛んでいった。
俺様から斬りかかるつもりはない。
とりあえずは様子見をするつもりだ。
レイの実力がどの程度かはまだ分からないが、俺様が本気を出してしまえばレイの実力を見る前に戦いが終わってしまう可能性が高い。
まぁその時は剣聖がその程度だったというだけの話だが、あとでエメルにグチグチ言われるのも面倒だからな。
そんなことを考えている間の一瞬でレイは俺様との距離を詰めてきて——
キィーン
レイが振った剣を俺様の剣が受け止めると、周囲に大きな金属音を鳴り響かせた。
そして、レイは少し驚いたように俺に言う。
「これを止めますか。やはり手を抜いて倒せる相手ではありませんね。貴方は」
「手を抜こうが抜くまいがお前じゃ俺様は倒せんよ。いいから本気でかかってこい」
「ふ、そうですか、では!」
レイはそう言ってどこか嬉しそうに俺様へと目にも止まらぬ(一般人目線では)連撃を放ってくる。
恐らく周りにいる騎士連中には剣の衝突音が聞こえるのみで何が起こっているかすら分かっていないだろう。
だが、それでもこの程度の剣で俺様の事を捕らえる事などできるわけがない。
とはいえ、なかなかやるではないか。
今も剣を振るってくるレイを前に俺様はそう評した。
確かに俺様の敵ではないのは間違いない。
だが、そんなことはやる前から分かりきっていた事だし、正直この世界の最強はもっと弱いものかと思っていた。
確かにこれ程の腕があるのならドラゴンを倒したというのも満更嘘でもないように思えるし、仮に俺達がいた世界の基準に当てはめたとしても、相当に名を馳す剣士となっただろう。
「しかし、惜しいな」
「何がです!」
俺様の言葉にレイは剣戟と共に言葉を返す。
「まさか知りもしない肉体強化魔法を使える事には驚きだが、使い方がなってない。魔力を体に巡らせる技術が未熟だな。まぁ俺様程の偉大過ぎる勇者になればそんなもの教えずとも自然にできてしまうものなのだがな」
「魔法? なんですか? それは!」
やはりこの世界の人間は魔法に関する知識を有していないらしい。
つまりレイは無意識のうちに肉体へと魔力を供給し強化していることになる。
普通それは師を得て学ぶか、独学で学ぶにしても指導書に基づいて会得していくものだが、こいつは魔法という概念がない世界でそれを無意識に会得してしまったというのだ。
天才という奴か。まぁ俺様程ではないがな。
恐らく、師を得て魔法を完全なものにすればガインの野郎以上に使えるくらいにはなる可能性をこいつは秘めている。
さて。
「もうお前の実力も分かったし、そろそろ終わらせていいか?」
俺様はレイの剣戟を受け流し、後ろに飛んで距離を取ると、レイに大きな声でそう尋ねた。
すると、何を勘違いしたのかレイではなくルシードが喚くように叫んできた。
「ふはは、馬鹿め。レイの猛攻に手も足も出なかった分際で終わらせるだと? 終わるのは貴様の方だ! さっさと死ぬがいい」
どうやらルシードには俺様がレイ相手に手も足も出ないように映っていたらしい。
そもそもルシードが俺とレイの戦いを見る事ができたとも思えないから、恐らくレイが負けるはずがないと適当な事を言っているようである。
「ここまで馬鹿だと笑えてくるな。お前みたいな馬鹿がいるドレアス王族に仕えているそいつに同情するぞ」
俺様が率直に思った事を思わず口に出すとルシードがなにやらキーキーとまた叫び始めたが、俺様はまったく興味がないので聞き流す事にする。
そんなルシードとは対照的にレイは無言で俺の方を見つめていた。
俺様はルシードを無視して改めてレイに向けて言う。
「本当はお前に合わせて剣でと行きたい所だったが、うっかり殺してしまってはかなわんからな。悪く思うなよ。——ウィンドストーム」
俺様はそう言って第3級魔法『ウィンドストーム』行使する。
第3級魔法と言えば、強力な魔法に思えるかもしれないが、目では視認困難な風の渦を前方へと飛ばすだけの魔法で同格の魔法の中ではかなり殺傷力が低い部類の魔法である。
「なにを?」
俺様が『ウィンドストーム』を行使した瞬間、レイは俺様が何をしたのか分からなかったのかそう呟いたが、次の瞬間。
「えっ、きゃあああ!」
レイはそんな叫び声を上げた後、俺様のウィンドストームを受けた風圧によって凄まじい勢いで後方へと吹き飛んでいった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる