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6.礼拝堂
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少し進むと深い茶色で統一されている古びた礼拝堂に出た。
2人は机の陰から要人に用心を重ね、そっと中の様子をのぞき込む。
祭壇を背にして神父の他に10人ほどの人が1か所にかたまって怯えている姿が見えた。小さな子供もいる。
敵は、…2人?大柄と小柄な男がライフルと小銃を持っているのが見える。
どちらの男もイライラしているのが見て取れる。
おそらく、想像以上に早く多くの兵士に囲まれてしまった今の状況にイラついているようだ。
「とりあえず、中の状況を伝えに…」
ロジィがそう言いかけたとき、母親に抱きかかえられていた小さな男の子が、これ以上我慢できなかったのだろう、恐怖のあまり大声で泣き出してしまった!
ただでさえ、自分たちの陥った不利な状況に苛立っていた大柄の男の方が、ライフルの柄をその男の子に向かって振り上げた!
ッガン!!
その瞬間、大きな音と共にライフルが振り下ろされるのを何かが阻止した!
ダニエルが小銃を盾にしてライフルの柄を受け止め、母親と男の子の前に立ち塞がっている。
「なんだ?!お前!どこから…」
パンッ!
刹那!もう一人の小柄の男の方が躊躇なく小銃を放った!
弾がダニエルの肩をかすめ、後ろのステンドグラスを貫く!
パラパラと色とりどりに光を反射させながら、ガラスの破片が床へと降り注ぐ。
小柄な男は、狙いが外れた事に舌打ちし、もう一度、今度は正確にダニエルにしっかりと銃口を向け、トリガーにかかった指に力を込める!
ダニエルは、目を見開いたまま自分に向けられた銃口を見つめた。…が、ふいに何かに視界を遮られた。
次の瞬間、ふわりと自分の上に何かがもたれかかり、続いて、ズシッと重さを感じた。
じわりと手のひらに生暖かいものを感じ取った。
ダニエルは、自分に覆いかぶさった目の前のものにしっかりと焦点を合わせた。
「っ!!ロジィ!」
ダニエルの腕の中には、痛みで目をしかめ、どんなに声をかけても返事をしないロジィがいた。
ロジィの腹部から止めどなく血が流れ続ける。
「ロジィ!ロジィ!!」
そう叫ぶダニエルの声をロジィは、かすかに遠くに聞いたような気がした・・・。
どれくらいだったのだろうか、ロジィはふと周りの明るさに目に染み、軽い痛み軽い痛みとめまいを覚えた。
しばらくじっとして、そのめまいが収まるとゆっくりと目を開けた。
・・・高い天井が見える。
少しの間、ぼぅっとしていたが、自分が今、何かしら柔らかな物の上に横たわっているのがだんだんと分かってきた。
ゆっくりと目線を横に移すと、いくつかのパイプのベッドがあり、その上に包帯にまかれた人が横たわっているのが見えた。
…病院?
ふと自分の胸の辺りに見慣れた黒髪があるのに気付き、無意識に「それ」に触る。
と、ふいに「それ」が起き上がり、ロジィをのぞき込む。
「・・・ダニエル様?」
ロジィは「それ」の名前を小さな声で呟いた。
一瞬、ホッとしたようなそれでいて泣きそうな表情を見せたダニエルだったが、次の瞬間にはロジィをキッと睨んだ!
「お前!何やってるんだ!」
病室内の数名の看護婦が驚いてダニエルの方を見た。しかし、それにお構いなくダニエルは続ける。
「分かってんのか?!死ぬところだったんだぞ!」
・・・そうか、あの時。
ロジィは、ダニエルに銃口が向けられた瞬間、そう、その時には無意識に身体が動いたことを思い出した。
「・・ダニエル様、お怪我を」
ロジィは、ダニエルの左肩から腕にかけて巻かれている包帯を見て言った。
「っ!どうしてお前は!僕のことはいいんだ、大したことはない。それより、分かってるのか?!お前の方が・・」
ダニエルは、そこまで言って俯き、少し間を開けてから俯いたまま口を開いた。
「・・・お前は僕の横に立っていれば良いんだ。僕の前に立つんじゃない」
「・・申し訳ございません」
ロジィはダニエルのその言葉を受け、心の奥の方からじわりと何か暖かな物が感じられた気がした。
「やぁ、気がついたんだね」
聞き覚えのある声がダニエルの背後から聞こえた。
「マシュー様・・」
そこに立っていたのは、サマースクールで出会ったマシューだった。
その姿はあの頃のひ弱さを感じさせず、その背丈も2人よりも高く伸びているのではないだろうか?
マシューは、あいかわらずメガネをかけているが、白衣をまとい見るからに医者の風貌をしていた。
「マシューがお前の手当てをしてくれたんだ。・・ありがとうマシュー」
ダニエルにお礼を言われ、少し照れながらマシューは返答をした。
「いやいや、弾は急所をそれていたけど、出血はかなりあってね。でも、応急処置が的確に出来ていたから、それがよかったんだよ」
家系を継ぎ、軍医となったマシュー。
日々の戦闘による患者を必死に手当てをする緊迫の日々の中、久しぶりに会った友人達とこうしてまた話せるのが嬉しいようだった。
その後しばらくして、多少紛争も小康状態になってきたことと、ロジィとダニエルの怪我のこともあり、帰郷することになった。
2人は机の陰から要人に用心を重ね、そっと中の様子をのぞき込む。
祭壇を背にして神父の他に10人ほどの人が1か所にかたまって怯えている姿が見えた。小さな子供もいる。
敵は、…2人?大柄と小柄な男がライフルと小銃を持っているのが見える。
どちらの男もイライラしているのが見て取れる。
おそらく、想像以上に早く多くの兵士に囲まれてしまった今の状況にイラついているようだ。
「とりあえず、中の状況を伝えに…」
ロジィがそう言いかけたとき、母親に抱きかかえられていた小さな男の子が、これ以上我慢できなかったのだろう、恐怖のあまり大声で泣き出してしまった!
ただでさえ、自分たちの陥った不利な状況に苛立っていた大柄の男の方が、ライフルの柄をその男の子に向かって振り上げた!
ッガン!!
その瞬間、大きな音と共にライフルが振り下ろされるのを何かが阻止した!
ダニエルが小銃を盾にしてライフルの柄を受け止め、母親と男の子の前に立ち塞がっている。
「なんだ?!お前!どこから…」
パンッ!
刹那!もう一人の小柄の男の方が躊躇なく小銃を放った!
弾がダニエルの肩をかすめ、後ろのステンドグラスを貫く!
パラパラと色とりどりに光を反射させながら、ガラスの破片が床へと降り注ぐ。
小柄な男は、狙いが外れた事に舌打ちし、もう一度、今度は正確にダニエルにしっかりと銃口を向け、トリガーにかかった指に力を込める!
ダニエルは、目を見開いたまま自分に向けられた銃口を見つめた。…が、ふいに何かに視界を遮られた。
次の瞬間、ふわりと自分の上に何かがもたれかかり、続いて、ズシッと重さを感じた。
じわりと手のひらに生暖かいものを感じ取った。
ダニエルは、自分に覆いかぶさった目の前のものにしっかりと焦点を合わせた。
「っ!!ロジィ!」
ダニエルの腕の中には、痛みで目をしかめ、どんなに声をかけても返事をしないロジィがいた。
ロジィの腹部から止めどなく血が流れ続ける。
「ロジィ!ロジィ!!」
そう叫ぶダニエルの声をロジィは、かすかに遠くに聞いたような気がした・・・。
どれくらいだったのだろうか、ロジィはふと周りの明るさに目に染み、軽い痛み軽い痛みとめまいを覚えた。
しばらくじっとして、そのめまいが収まるとゆっくりと目を開けた。
・・・高い天井が見える。
少しの間、ぼぅっとしていたが、自分が今、何かしら柔らかな物の上に横たわっているのがだんだんと分かってきた。
ゆっくりと目線を横に移すと、いくつかのパイプのベッドがあり、その上に包帯にまかれた人が横たわっているのが見えた。
…病院?
ふと自分の胸の辺りに見慣れた黒髪があるのに気付き、無意識に「それ」に触る。
と、ふいに「それ」が起き上がり、ロジィをのぞき込む。
「・・・ダニエル様?」
ロジィは「それ」の名前を小さな声で呟いた。
一瞬、ホッとしたようなそれでいて泣きそうな表情を見せたダニエルだったが、次の瞬間にはロジィをキッと睨んだ!
「お前!何やってるんだ!」
病室内の数名の看護婦が驚いてダニエルの方を見た。しかし、それにお構いなくダニエルは続ける。
「分かってんのか?!死ぬところだったんだぞ!」
・・・そうか、あの時。
ロジィは、ダニエルに銃口が向けられた瞬間、そう、その時には無意識に身体が動いたことを思い出した。
「・・ダニエル様、お怪我を」
ロジィは、ダニエルの左肩から腕にかけて巻かれている包帯を見て言った。
「っ!どうしてお前は!僕のことはいいんだ、大したことはない。それより、分かってるのか?!お前の方が・・」
ダニエルは、そこまで言って俯き、少し間を開けてから俯いたまま口を開いた。
「・・・お前は僕の横に立っていれば良いんだ。僕の前に立つんじゃない」
「・・申し訳ございません」
ロジィはダニエルのその言葉を受け、心の奥の方からじわりと何か暖かな物が感じられた気がした。
「やぁ、気がついたんだね」
聞き覚えのある声がダニエルの背後から聞こえた。
「マシュー様・・」
そこに立っていたのは、サマースクールで出会ったマシューだった。
その姿はあの頃のひ弱さを感じさせず、その背丈も2人よりも高く伸びているのではないだろうか?
マシューは、あいかわらずメガネをかけているが、白衣をまとい見るからに医者の風貌をしていた。
「マシューがお前の手当てをしてくれたんだ。・・ありがとうマシュー」
ダニエルにお礼を言われ、少し照れながらマシューは返答をした。
「いやいや、弾は急所をそれていたけど、出血はかなりあってね。でも、応急処置が的確に出来ていたから、それがよかったんだよ」
家系を継ぎ、軍医となったマシュー。
日々の戦闘による患者を必死に手当てをする緊迫の日々の中、久しぶりに会った友人達とこうしてまた話せるのが嬉しいようだった。
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