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本編
犬と大人
しおりを挟む「ではロイ、明朝ギルドにてお待ちしてます。
マリアさんとリルくんも一緒に お願いしますね。
今日中に ファーナやここにいた職員たちにもう少し詳しい話と、サルヴィンくんにルシエルくんにも話を聞きますから、みなさんそのつもりでお願いします。
それからファーナ、急ですが 今日の迷宮に滞在する職員の手配をお願いします。急ですから待機組は最低限の数で構いませんので」
「はい! 了解しました!」
その返事をきっかけに 周囲にいたギルド職員達は急遽変更された仕事への対応へと動き出し、その場には私たちだけになった。
◇ ◇ ◇
「さてと......... これで一段落しましたね。時間をとらせてしまいすみませんでした。
話は変わりますが ロイ、宿は取っていますか?」
「いや、まだだ」
「そうですか。でしたら 我が家でいいですね。
行きましょう」
「.........えっ?」
「おや、マリアさんは我が家ではご不満ですか?」
「あ、別にそういうわけじゃ.........」
「では、構いませんか?我が家で」
「.............(コクリ)」
──人は 気になることしかない状況になると逆に冷静になれる。
そんなことを思いながら、私たちは迷宮をあとにしたー.....。
◇ ◇ ◇
「ロイはこちらの部屋、マリアさんはこの部屋を使ってください。リルくんも一緒に。ベットに上げちゃってかまいませんので滞在中好きに使ってください。
......あぁでも、そうですね。家具に齧り付いたりはしないでいただけると助かります」
「きゃうん!」
「.........承諾、ととっていいんでしょうか?」
「きゃふぅん」
「......随分と賢い子のようですね」
「きゃん!」
「では、よろしくお願いしますね」
しゃがんで視線を合わせながら犬(ホントは狼だけど)と真面目にしゃべる大人。
シュールだなぁ......... と思っていると、
「犬と会話する大人、ってなんかおもしろいな」
隣で見ていたロイさんも同じことを思っていたらしく、ボソッとつぶやいた。
「うん。リルは鳴き声なのに それでもちゃんと成り立ってるから余計ね......」
「とりあえずもう時間も時間だし、寝るぞ」
「んーでも今から寝たら朝イチでなんて起きられないと思うよ。ロイさんが」
「なんでそんな早朝に起きんだよ」
「え、ギルド行くんじゃないの?説明に」
「それは明日の話だろ。明朝つってただろ」
「あ、今日は今日カウントなんだ」
「は?」
夜中に今日とか明日とかって話になるとちょっとよくわかんなくなるよね。
なんなら地球と違って 日が出たら動き出して 日が沈んだら終わり っていう生活様式だし。
「なんでもない。じゃあ今日はのんびりできるのね。とりあえずお昼くらいまでは寝そう.........」
「あぁ」
「ギルドマスターさん、お部屋借りますね。おやすみなさい」
「あぁ、すみません。リルくんは随分と賢いのですね」
「よかったねリル、褒められてるよ」
「きゃふぅん」
「あぁ、それから 昼間は仕事でいませんから、好きに使ってください。お風呂でも台所でも どこでもお好きなように」
「わかりました。ありがとうございます」
「では、おやすみなさい」
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