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本編

出発前夜 02

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「………何だ、これ」

「へっ?」

お皿によそったものを見て、数秒の間のあと。

ルイスが声を出した。

「何、ってクリームスープだけど?」

「「「くりーむスープ?」」」

ルイスだけでなく、ロイさんもエミリーさんも、不思議そうに声をあげた。

「牛乳を使ったスープだよ」

「牛乳を?  ……それ、うまいのか?」

怪訝な顔のまま、誰一人手をつけようとしない。
どことなくルイスはクリームスープを睨んでるようにも見える。

「美味しいよ。……見たことない? こういうの」

「初めて見る」

「獣人独特の食文化か?」

「…………そうかも」

ーここでようやく、私がまたやらかしたことに気づいた。

“この世界にある材料で比較的簡単に作れるものは何か” ってことしか考えてなくて、
“この世界でも食べられてるもの(見た目的な意味を含む)” は一切考慮にいれてなかった。

思い返してみたら、この10年で1度もクリームスープを見てない。
だから作りたくなったのかもしれない。

ーというか、クリームスープどころか、牛乳を使った食事自体、見たことないかも……?


ここからどう誤魔化そう?って内心焦りだしたとき、
何かを察したらしいロイさんから、助け舟が入った。


「獣人は牛乳を飯に使うのか?」

「初めて聞くわね~」

「匂いは悪くない。いただきます。


ーうまいな。 見た目と違って、牛乳以外にもいろいろな味がする」

「あら、本当ね。とっても美味しいわ」

「………悪くは、ねぇな。見た目ほど」

「ルイスったら素直じゃないんだから。 どうして素直に美味しいって言えないのよ」

「……チッ。     うまいよ」

「ありがとう」

見た目的忌避感があったみたいだけど、無事お鍋の中はすっからかんになった。


◇  ◇  ◇

「明日、お仕事で見送りには行けないけど、気をつけて行ってらっしゃい」

「うん。エミリーさん。本当にありがとうございました!」

「また戻ってきてね?」

「うん。国内外含めていろんなところを見て周りたいとは思ってるけど、たまに戻ってくるよ」

「約束よ?」

「うん!」

「気をつけて、な。ロイがいればある程度は大丈夫だろうけど、な。」

「うん。 ……ルイスも、いろいろありがとう」

「ん」


「ロイ。マリアちゃんのこと、しっかり守りなさいよ」

「あぁ」

「それから……最低でもあと5年は我慢が必要なんだから そのへんはしっかりしなさいよ」

「……だからちげえつってんだろ」

「……気をつけてね」

「あぁ」

「じゃあまたね、マリアちゃん。ロイ」

「いってきまーすっ!」
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