異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ！ のんびり冒険者 (仮)

本編

過保護なお父さん ギルドマスターSide

｢エミリー、少しいいか？｣

｢はい。なんでしょう？ ギルドマスター｣

｢今のは、ロイだよな。何か依頼でもしたのか？｣

ロイがギルドに来ることは、マリアが冒険者になってから少しずつ増えていた。
だからいることにたいしては、いつもなら特に気には止めないのだが、今日はちがった。

ふと見たとき。受付で何か手続きをしているように見え、思わず視線をそこに定めた。

結局何をしていたかまでは見えず、聞こえもしなかったため、聞くのがはやいと思い、エミリーを呼び止めた。


｢いえ、冒険者への再登録とマリアちゃんとのパーティー申請をしていきました｣

ーエミリーの発した言葉に驚き、そして己の耳を疑った。

｢ロイが、再登録？冒険者に？ 騎士団は副業禁止だっただろう｣

｢迷宮での訓練を最後に、騎士団をやめたそうです｣

｢……………エミリー。儂の耳がおかしくなったのか？ さっきからありえん言葉の連発なのだが｣

｢ギルドマスターの耳は正常です。私もさっき初めて聞いたとき、同じようなリアクションになりましたわ｣

｢……パーティー申請ということは、マリアのためか？｣

｢恐らくそうだと思います。詳しいことは今夜、ゆっくり聞かせてもらうことになりましたけど……｣

そう言ったときのエミリーの顔は黒かった。 
ーその顔は、ギルド受付嬢としてどうかと思うが。まぁ今はギルドの職員たちにしか見えてないから特になにも言わないがな。


｢旅にでもでちゃうんですかねぇ……｣

そう思っていたらいつのまにか少し寂しそうな表情になっていたエミリーが、そう声をもらした。

｢そりゃあ冒険者ですから、いつかは旅にでるとは思ってましたけど、想像よりだいぶはやかったなぁ、と｣

｢……そうだな｣

エミリーの言う通りだ。マリアはまだ10歳。異例の速さでDランクになったしたとはいえ、期間だけでいえばまだまだ新米冒険者だ。
そんな彼女が冒険者として旅にでるまで数年はあると、この街ここにいると、自然と決めつけていた気がする。


｢どうにかできることでもないと分かってはいるんですけどね……｣

｢そうだな。……まぁ、あの2人なら旅にでても大丈夫だろう。他から見たらだいぶ謎の2人組になるがな｣

冒険者には到底見えない獣娘こどもと、鍛えられた体躯の男の2人組……
大丈夫なのか？(いろんな意味で。)


｢たしかに。どう頑張っても、親子には見えませんからね。そうなるとなんなんだってなりそうですね｣

それを思い浮かべたのか、エミリーの顔に笑みが浮かんだ。

｢たしかにな｣

｢まぁ、大丈夫ですよ。ロイ、マリアちゃんに関してだけは、超がつくほど過保護なお父さんと化してますんで。危険が及ぶことはないと思います。
それにマリアちゃんもマリアちゃんで、いろんな意味で強いですからね～。ルイス曰く、過保護なお父さんモードなロイをそれなりに雑に扱ってかわしてるそうです｣

｢……そうか｣

過保護なお父さん、か……。

｢………似合わないな｣

儂のその呟きはエミリーの耳には入らなかったが、
きっと聞こえてても納得するのだろうな、と思ったー……。