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本編
お父さんかよ
しおりを挟む冒険者登録した翌日に、2ランクアップしてDランクにはなったものの、“依頼をこなす”ことに慣れる意味でも、1ヶ月くらいはF、Eランクの低ランク依頼を受けて慣れろ、とロイさんに耳にタコができそうなほどしつこく言われたので、低ランク依頼を1日に少なくとも5件はこなしながら冒険者としての日々を送っていた。
「マリアちゃん、もう終わったの?」
低ランク依頼は子供のお使い程度のものも多くて、依頼の内容に日によって差はあれど、1週間もすれば要領を掴み、 5件なんてあっという間に終わるようになった。
半日もしないで戻ってきた私にエミリーさんが驚きつつ聞いてくる。
「うん。思った以上にはやくおわったから、今日はもう少し依頼受けようかなって」
5件の依頼分の報酬を受け取ったあと、また依頼が貼ってあるボードを眺める。
「Dランクのは受けないの? F、Eランクのじゃ報酬少ないでしょ」
「うんまぁそうなんだけど……ロイさんが、慣れるって意味でも1ヶ月は低ランクの受けてろって。
それで1ヶ月経ったらロイさんが非番の日にDランクの依頼受けて、“俺が見て 大丈夫だと思ったら、好きに依頼受けていい”って言うんだよ」
いくらなんでも過保護すぎない? そう言われたとき思わず、お父さんかよ、ってツッコミそうになったからね。
Dランクの依頼っていうのがどれくらいなのかはわかんないけどさぁ……大丈夫だと思うんだよね。たぶん。
「……ロイは、父親かなにかなのかしら?」
エミリーさんも同じことを思ったようだ。顔が引きつってる。
「過保護だよねぇ……」
「最近ルイスが、ロイがおかしい って言いまくる理由はこれかぁ……」
「ん?何か言った?エミリーさん」
「なんでもないわ~ あ、そうだマリアちゃん。 この依頼とかどうかしら?低ランクのわりに報酬も良いわよ」
渡された依頼書を見ると、言ってた通り報酬が低ランクの中では断トツって言えるほどよかった。
「こんなに報酬良いやつはほかの人に回してよ。一応Dランクなのに低ランクの依頼を大量にこなしてて、悪いなーって思ってるのにこれ以上はちょっと……」
遠慮したい、かなぁ。
これでも選ぶ時は、貼り出されてからなかなかなくならないやつと報酬が超少ないヤツを選んでる。
……まぁ見た目が見た目だから、低ランク依頼見てることに疑問は持たれないから ヒンシュク買ってるとかはないだろうけどね。
「それがね、これなるべくはやくってことでこの報酬なんだけど……Dランク向けにだせる魔物じゃない上に報酬少ないし、かといって低ランクとして出すにはちょっと難しいのよね~ それで受けてくれる人がいないのよ」
「そういうことなら……どんな内容なんですか?」
「簡単に言うと、大量発生したスライムの殲滅ね」
「スライム?それなら低ランクでも人数がそこそこいれば可能なんじゃ……?」
「それだけならいいんだけど……ちょーっとめんどくさいことになってるのよねぇ……」
スライムか…… あいつらって、核を仕留めない限りいくらでも再生するんだよね…… だから魔法で倒すのは結構めんどくさいんだよね…… しかもそれが大量ってなると……うん、ちょっと考えただけでうわぁーってなるかな。まぁやってできないことはないからいいけど。
「めんどうなことってなんですか?」
「特殊個体のスライムが大量発生したみたいなの」
「……スライムの、特殊個体??
それって何か普通のスライムとちがうんですか?」
「でかいのよ、とにかく」
……それだけ?
「それだけですか?」
「大きいってことはそれだけ弾力もあってね、剣とか矢とか弾かれちゃうのよ。魔法も効きにくいし。大きさの割に動きがはやいってのも厄介なのよね~ それになにより、核の場所がわかりづらい上にだいぶ深くまで刺さないと届かないのよ」
たしかにそれだと、人数がいたとしても低ランクには難しそうだ。
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