異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた

文字の大きさ
上 下
34 / 121
本編

素朴な疑問 ギルドマスターSide

しおりを挟む


マリアという獣人の娘。
10歳になったからと冒険者登録をしに来て、そしてそのままゴブリンを討伐しに行ったが、どうやらそのまま帰ってこなかったようだ。


まさか、と最悪の事態が頭を過ぎったが、門も閉まってしまった以上、例えギルドマスターといえど、どうすることもできない。ーそうでなくても、ギルドマスターが1人の冒険者、それも今日登録したばかりの新人相手になど、何もできないのにー……だからなるべく考えないように過ごした。


翌日朝一番。執務室で溜めてしまった書類を整理していた。 その後、珍しくエミリーが部屋に来たかと思えば、マリアがロイと共にやってきたと言うから驚いた。

ーロイの生い立ちは少々複雑で。 それでも腐ることなく、驕ることもなく、堅実に自分のことも周辺環境も、すべてを受け入れ生きている、見所のある男だ。


そんなロイとマリアという獣人のちびっこが知り合いだということにまず驚いた。
そんな驚きは、次にエミリーが口にした言葉に比べれば、微々たるものだったと儂はすぐに思い知る。



「倒し方は?魔法か?剣か?」
「魔力枯渇はしなかったのか?」
「倒したあとはどうした」

ゴブリンソルジャーとメイジが合わせて30体もいて、少ないと表現したことにも驚いたが、魔力が枯渇しても戦い続けたその覚悟を、齢10歳にして持てるものなのかと少し怖くなった。

ーー魔法に頼った戦闘の仕方をする者は、体術や剣術を疎かにしていることが多く、戦闘中に魔力が枯渇し使えなくなったとき、頭に死がよぎるらしい。


集落を殲滅したあとの処理の仕方はロイに教わったし、ちゃんとしたから大丈夫だと言っているが……わずかな回復で再び魔法を使い、400もの死体を適切に処理したというのか?どうにも信じられんな。

正確な場所はわからないかもしれないが……念の為 調査をだしてみるか。



「すまんが、ロイも席を外してくれるか?」

買取金を取りに行かせると名目でごく自然に、エミリーを退室させることができた。
残るはロイだが……。


「理由をお聞きしても?」

やはりこいつは、一筋縄じゃいかないか。

「マリアと2人で話がしたい。聞きたいことがあってな……いろいろとな」

“いろいろ”の部分をほとんど無意識のうちに強調してしまったが……。

…………気づかれたか?

「ダメ。ロイさんがいないなら話さない」

そう言ってマリアは逃がさない、とばかりにロイの服の裾を掴んでいた。

「ということですがいかがなさいますか、マルクスさ……ギルドマスター」

「……構わん、いろ。聞きたいのはマリアにだ。そこはわかっているな?」

「もちろんわかっていますよ、ギルドマスター」

「ではマリア。まず聞きたいのは魔法についてだ。どこで習った?」

「ロイさんが教えてくれました」

「そうなのか?」

「基本的なことは一通り。つっても会ったときに既にいくつか魔法は使えてたから、(知識的な意味で)聞かれたら教える、とか どんな名称の魔法があるか、とかを暇な時に」

「では、最初は?どうやって魔法を使えるようになった?誰か他に教えてくれた者がいたのか?」

「体内での魔力感知と循環は両親が。初級魔法のいくつかは、両親の目を盗んで兄が教えてくれました」

「家族がいるのか?」

ストリートチルドレンだと思っていたが、違ったのか。

「前は、ですけど。今はもう……」

「悪かった、嫌なことを思い出させたな」

「へ?あ、いえ、そういうのじゃないですよ? ちょっといろいろあって……家を追い出されたんです。両親も兄妹も健在、だと思います」

この話はロイも聞いたことがなかったのか、驚いていた。


そのあともいくつか質問を重ねたが、どれもはっきりしない回答ばかりで、結局マリアという人物像を捉えることは叶わなかった。
しおりを挟む
感想 107

あなたにおすすめの小説

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

処理中です...