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本編
素朴な疑問 ギルドマスターSide
しおりを挟むマリアという獣人の娘。
10歳になったからと冒険者登録をしに来て、そしてそのままゴブリンを討伐しに行ったが、どうやらそのまま帰ってこなかったようだ。
まさか、と最悪の事態が頭を過ぎったが、門も閉まってしまった以上、例えギルドマスターといえど、どうすることもできない。ーそうでなくても、ギルドマスターが1人の冒険者、それも今日登録したばかりの新人相手になど、何もできないのにー……だからなるべく考えないように過ごした。
翌日朝一番。執務室で溜めてしまった書類を整理していた。 その後、珍しくエミリーが部屋に来たかと思えば、マリアがロイと共にやってきたと言うから驚いた。
ーロイの生い立ちは少々複雑で。 それでも腐ることなく、驕ることもなく、堅実に自分のことも周辺環境も、すべてを受け入れ生きている、見所のある男だ。
そんなロイとマリアという獣人のちびっこが知り合いだということにまず驚いた。
そんな驚きは、次にエミリーが口にした言葉に比べれば、微々たるものだったと儂はすぐに思い知る。
「倒し方は?魔法か?剣か?」
「魔力枯渇はしなかったのか?」
「倒したあとはどうした」
ゴブリンソルジャーとメイジが合わせて30体もいて、少ないと表現したことにも驚いたが、魔力が枯渇しても戦い続けたその覚悟を、齢10歳にして持てるものなのかと少し怖くなった。
ーー魔法に頼った戦闘の仕方をする者は、体術や剣術を疎かにしていることが多く、戦闘中に魔力が枯渇し使えなくなったとき、頭に死がよぎるらしい。
集落を殲滅したあとの処理の仕方はロイに教わったし、ちゃんとしたから大丈夫だと言っているが……わずかな回復で再び魔法を使い、400もの死体を適切に処理したというのか?どうにも信じられんな。
正確な場所はわからないかもしれないが……念の為 調査をだしてみるか。
「すまんが、ロイも席を外してくれるか?」
買取金を取りに行かせると名目でごく自然に、エミリーを退室させることができた。
残るはロイだが……。
「理由をお聞きしても?」
やはりこいつは、一筋縄じゃいかないか。
「マリアと2人で話がしたい。聞きたいことがあってな……いろいろとな」
“いろいろ”の部分をほとんど無意識のうちに強調してしまったが……。
…………気づかれたか?
「ダメ。ロイさんがいないなら話さない」
そう言ってマリアは逃がさない、とばかりにロイの服の裾を掴んでいた。
「ということですがいかがなさいますか、マルクスさ……ギルドマスター」
「……構わん、いろ。聞きたいのはマリアにだ。そこはわかっているな?」
「もちろんわかっていますよ、ギルドマスター」
「ではマリア。まず聞きたいのは魔法についてだ。どこで習った?」
「ロイさんが教えてくれました」
「そうなのか?」
「基本的なことは一通り。つっても会ったときに既にいくつか魔法は使えてたから、(知識的な意味で)聞かれたら教える、とか どんな名称の魔法があるか、とかを暇な時に」
「では、最初は?どうやって魔法を使えるようになった?誰か他に教えてくれた者がいたのか?」
「体内での魔力感知と循環は両親が。初級魔法のいくつかは、両親の目を盗んで兄が教えてくれました」
「家族がいるのか?」
ストリートチルドレンだと思っていたが、違ったのか。
「前は、ですけど。今はもう……」
「悪かった、嫌なことを思い出させたな」
「へ?あ、いえ、そういうのじゃないですよ? ちょっといろいろあって……家を追い出されたんです。両親も兄妹も健在、だと思います」
この話はロイも聞いたことがなかったのか、驚いていた。
そのあともいくつか質問を重ねたが、どれもはっきりしない回答ばかりで、結局マリアという人物像を捉えることは叶わなかった。
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