異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ！ のんびり冒険者 (仮)

本編

街の門番で一応騎士 ロイSide ‐出会い編

俺の名前はロイ。
この街で門番をやっている、一応騎士だ。一応ってのはこの街はだいぶ田舎で平和だから騎士としての仕事はもうずいぶんとしていなく、騎士と名乗るのがおこがましい気がするからだ。


そんな平和な街で久々に事件が起こった。
この街に滞在する騎士団のメンバーの中で2番目に若くて動ける俺が犯人を追っていたのだが、相手が思っていた以上に身のこなしが軽やかな奴で、なかなか捕まえられずにいた。もうちょっと、ってところでまた距離を置かれて、また追いついて……ってイタチごっこの繰り返し。
そんなときに奴の逃げる先に子供が1人、いた。ストリートチルドレンだろう。衣服はボロボロに破れ汚れていて、痩せ細った獣人の子供だった。
まだその子と奴の間には逃げるのに十分な距離があったにも関わらず、その子供はなぜかこちらをしっかりと見据えていたことに違和感を覚えた。

｢退けっ！！｣

しかも奴は凶器を所持していた。なんとなく、それにビビって動けないってわけではないような気がした。

｢ストーンバレット｣

｢うぐぅっ!?｣

その子供は魔法を放ち、奴はその場に倒れた。

｢おいっ!?｣

｢大丈夫。殺してない。失神させただけ｣

慌てて確認しに行くと確かに奴は失神しているだけのようだった。

｢捕まえてくれてありがとうな。でもな、今回はたまたま大丈夫だったけど、危ないから次からはすんなよ｣

｢…………｣

あんなに苦労した捕物劇が 獣人の子供の魔法1発で終わったことに気を取られていたが、コイツ……無詠唱で魔法使ったよな？

｢ちょっと待て。お前、孤児か？名前は？｣

｢……マリア｣

怖がられないように笑顔を見せ、声も高めにして聞く。

｢俺は門番をしている騎士のロイって言うんだ。今から騎士団の詰所にきてくれるか？捕まえてくれたお礼がしたい｣

お礼だけじゃねぇけどな。したいのは。

｢…………｣

｢腹、減らねぇか？飯くらいなら出してやるよ｣

そんな俺の思惑に気づいたかはわからないが、警戒はされている。

飯で釣れないようなら今日のところは諦めようと思う。

｢……行く｣


ーーこの日をきっかけに、俺はマリアと親しくなった。