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冒険者登録とパーティー登録と反感 02
しおりを挟む「はぁーやっと終わったなー。
疲れた」
「同じく」
「依頼受けるには時間が足りないが、ぼんやり過ごすには長すぎるな」
「……ね、本当によかったの?これで」
「何言ってるんだよ、良いに決まってんだろ」
「でも……」
「アリスはもう仲間だから。パーティーメンバーとして堂々としてなきゃ」
「………うん」
レオンハルトたちと、一緒にいたいとは思う。その気持ちは変わらない。
だが、あそこまでしっかり反対されてしまうと、本当にいいのかという気持ちがわいてくるのは、アリスはまだ己の力を知らないからだろう。
知れば少しは、自分に自信が持てるだろうに。
──受付嬢は、ギルドマスターを連れて、戻ってきた。
当然受付にギルドマスターが現れるなんて目立つことこの上ないため、アリスとレオンハルトたち一向は、個室へと通された。
そして、アリスをパーティーメンバーとして今すぐ追加することを考え直すように説得され続けた。
2時間ほど経過したあたりで、アリスは街や国を移動する際に提示して通れる身分証さえ貰えるなら、パーティーメンバーに入るどころか、冒険者登録もしなくても構わないと言い出そうと思ったのだが、それを3人は誰一人として許してはくれなかった。
無言だが、“黙っていろ”と言わんばかりに、アリスが何か言おうとするのを制され続けたのだった。
──実のところ、なぜこんなにもアリスが冒険者になることに、パーティーメンバーに加わることに、
レオンハルトたちがこだわっているのか、アリスにはまるでわからなかったのだがー…。
そして同じ話が延々と続くのだ。
それからさらに3時間が経とうとしていたときだった。
とうとう、ジュードがキレた。
態度にあからさまにだしたのはジュードだけだったが、レオンハルトとライムも、ジュードに負けず劣らず、激昴していた。
「何度言われても、俺らの意思は変わらない。
それでも反対するって言うなら俺らにも考えがある。
冒険者登録しなおして、俺たち全員、Fランクに戻ったっていいんだぞ?」
初め、ジュードのその言葉を ギルドマスターは面白くない冗談だと思い、軽く受け流そうとした。
たかだか小娘1人のために、Aランク冒険者をわざとやめるなどありえない、と思ったのだ。
だが、それは冗談なんかではなく本気なのだと、レオンハルトとライムもジュードと同じように険しい顔になっているのを見て、ギルドマスターは瞬時に考えを改めたのだ。
──彼らは本気だ。このまま反対し続ければ、ギルドカードを紛失したといい登録をしなおすこと間違いない。
ギルドカードを紛失した場合、再登録となり、ランクは最低のFからに戻るのだ。そこに例外は存在しない。
それが規則だ。
紛失はあくまでも自己申告制のため、わざと無くしたことにして、再登録することは容易い。そんなことをするやつなんて普通はいない。ましてや彼らはAランクだ。Aランク冒険者の肩書きを、この小娘1人のために捨てようとしているのだ。
この小娘の何がそうさせるのか、ギルドマスターはまるでわからなかった。
ただの幼い子供にしか、見えないのだ。
「……わかった。パーティーメンバーの追加を認めよう。サリス、登録してくれ」
これ以上反対の言葉を口にしたら、彼らは本当に冒険者登録をし直すだろう。それだけは是非とも避けたい。避けなくてはならない。
全員がAランクのパーティーなんて、世界にもたった5つ、この国では彼らしかいないのだ。
たとえ1人の子供が入ろうとも、パーティーランクが下がろうとも、再登録により無くなるよりはいい。
認める以外の選択肢など、存在しない。
「………かしこまりました」
──こうして半ば強引に、
アリスがパーティーメンバーとして加わることが認められたのだった。
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