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助けてくれたのは……
しおりを挟む「おーい。生きてるなら顔上げろ~」
「この体勢のまま気絶してるとか?」
「いや、それはない。最初に声掛けたときビクッてしてた。少なくとも、意識はある」
「こんだけ狼に囲まれてりゃ、怖かったよな。
でももう大丈夫だぞ。狼の死体も仕舞ったからな」
──聞こえてくる話の内容から、危険性はない、もしくは少ないだろうと判断したアリスは、恐る恐る顔をあげた。
「見たところ大丈夫そうだが……
どこか痛いところはあるか?」
「……っっ…………」
あげた顔の先にいた、3人を視界に捉えた途端、アリスはもう一度顔を伏せたい感情に駆られた。が、助けて貰っといてそれは失礼にあたると思い、寸でのところで思い留まった。
──彼らは3人が3人とも、とてつもなく整った顔立ちをしていたー……。
「おーい。聞こえてるか? 聞こえてるなら返事しろよ」
「ジュード、無茶を言うな。怖い思いをしたばかりなんだぞ」
「……ハイハイ」
「君は1人なの?迷子?」
「こんなところで迷子はねぇだろ」
「ジュードは1回黙って?」
「……チッ。 わかったよ」
「聞こえてる……よね? せめてなんか反応してくれると助かるんだけど……」
「あ、ありがとう…ございます……。助けて、くれて……」
「「お、しゃべった」」
──反応してくれ、と言ったにも関わらず、いざ声を出したら驚いた様子を見せる男たち。
「てか何この子ー。めちゃくちゃ可愛いんだけど! 抱っこしたい!」
「あ、お前 ちょっと待てって!」
ジュードを黙らせた男が急に、目をキラキラさせながら近づいてこようとした。それをすぐさま隣にいた、一番最初にアリスに声をかけてきた男が、首根っこを掴んで止める。
そしてジュードにその男を預け、動きを制したのを確認したのち、アリスに再び声をかけてくる。
「だ、抱っこ……?」
突然の、笑顔で 変態ともとれる発言にアリスは反射的に、後ずさった。
「あーごめんね。大丈夫だよ。変なことは言うけど悪いやつじゃないから。逃げないで~」
「コイツ、ライムっつーんだけど、異常なほどの可愛いもの好きなんだよ。物だけじゃなくて子供にも当てはまっちまうから変態臭すげぇんだけど。
あ、ちなみに俺はジュードな」
「俺は、レオンハルト。長いからレオって呼ばれてる」
「あ、アリス……」
「アリスは誰かと一緒じゃないのか?」
「1人……」
「こんなところに1人って……」
ジュードとレオンハルト、そして落ち着いたらしいライムがアリスの返事を聞いた途端、顔を顰めた。
──その心情は声にこそ出さないが一貫して、
“こんなところに1人置き去りにされるなんて……”という同情だったのは間違いない。
内心で同情されているのはアリスも気づいていた。
それでも、とりあえず街までは連れて行ってもらわないとまた魔物に襲われたら今度こそ死んでしまうだろう。
さすがにそれくらいならお願いしても断られることはないだろうと、口を開きかけた、そのときだった。
グゥゥゥ……
──腹の鳴る音が、響いた。
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