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第6章 退散
第30話 種明かし
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「うん? そりゃ、状況証拠だけはいっぱい残ってたしね」
「状況証拠?」
訝しげに聞くミリスに、メイプルはため息を一つついてから。
「そうね。例えば、犯人のターゲットの絞り方。あなた、私に言ったわよね? 犯人は「魔力の器の大きい生徒を狙ってる」って。でもね、その事実は、私や医務室の先生も知らなかった事実なのよ。そう、あんたは勝手に尻尾を出したわけね。裏をとったら、あなたの言う通り、魔力の器の大きい子ばかりを狙っていたわ。殺人はさすがにまずい、でも魔力の供給はしたい。そこで取った苦肉の策だったわけよね?」
そう推理を披露する。
それが合っているのを物語るかのごとく、ミリスは親指の爪を噛む。
「尻尾を出すことになってしまったのは、私が犯人探しをしていると分かったから。あんたは、私の個人講義の中で、上手く呪い魔法を使えるようになり、悪魔召還すらも出来るようになった。そして、シロップが失踪したその日。あんたはシロップを呪い魔法で操り人形にしていた。仮にシロップが捕まっても、他の人間なら出し抜ける。でも、私では逆に足が付くかもしれない。そしてマリアンナお嬢様の戦いを見て、恐ろしくもなった。あんたは、私を恐れるが故に、自分の身の潔白を証明したかった。そこで提案したのが、自分を囮にする囮捜査」
饒舌に喋るメイプル。
ミリスは、それを黙って聞いている。
「自分が囮になっているうちに、犯人が事を起こせば、少なくとも自分に疑惑の視線を向けられない。でも、ちょっと焦りすぎたわね。不用意な発言だけじゃない。囮になってる自分と、シロップを操って事件を起こす位置が、あまりに対角線上すぎて単純だったわよ。もう少し考えてやるべきだったわね」
「企業秘密って、そういうことだったのですね」
当時のことを思い出す。
遠く離れて監視すると言うメイプル。
ところが実際は、すでにミリスの近くになどいなかったのだ。
事件が起きそうな、ミリスの居る位置とは正反対の場所に、メイプルは張り込んでいた。
そして、シロップを拘束した上でミリスの元へ戻る。
企業秘密というより、むしろミリスに対しての秘密だった。
ミリスに話すことはありえない。
「じゃあ、裁判のときの質問は何ですか? 一般的な魔封じがどうとかっていう」
「あぁ、あれも引っかかったの? さすがに鋭いわね」
「お褒めに与り、光栄ですわ」
お互いニヤリと笑う。
「あの魔封じは意味が無いのが分かったのよ。であれば、あんたに操られたシロップがどんな行動を取るか分かったものじゃないからね」
「魔封じに効果が無い?」
「あら、あんたも気づいてなかったんだ。呪い魔法使い(カーズキャスター)にしては抜けてるわね。呪い魔法は「悪魔の魔力」と「人間の魔力」によって生成される。つまり、マナの吸収を妨げる魔封じなんて、意味が無いのよ。まぁ、あそこで変な真似を起こせば、シロップの操り糸を断ち切った上で、あんたを引きずり出すことくらいは出来たかもしれないけどね」
「ふふ、だから怖いんですよ、あなたは」
ミリスとメイプル、2人笑い合う。
実のところ、先のメイプルの言葉はハッタリである。
呪い魔法については、今回初めて相対する。すべての対処は、全てメイプルのその場の「思いつき」であり、絶対の自信を持って行っているものではない。
その点、相手がミリスでホッとしている部分がある。
ミリスは、メイプルの実力を心得ている。
メイプルの魔力の高さを知っている。
だからこそ行動に制限が掛かっているのだ。
メイプルの内心は、決して穏やかなものではなかった。
「状況証拠?」
訝しげに聞くミリスに、メイプルはため息を一つついてから。
「そうね。例えば、犯人のターゲットの絞り方。あなた、私に言ったわよね? 犯人は「魔力の器の大きい生徒を狙ってる」って。でもね、その事実は、私や医務室の先生も知らなかった事実なのよ。そう、あんたは勝手に尻尾を出したわけね。裏をとったら、あなたの言う通り、魔力の器の大きい子ばかりを狙っていたわ。殺人はさすがにまずい、でも魔力の供給はしたい。そこで取った苦肉の策だったわけよね?」
そう推理を披露する。
それが合っているのを物語るかのごとく、ミリスは親指の爪を噛む。
「尻尾を出すことになってしまったのは、私が犯人探しをしていると分かったから。あんたは、私の個人講義の中で、上手く呪い魔法を使えるようになり、悪魔召還すらも出来るようになった。そして、シロップが失踪したその日。あんたはシロップを呪い魔法で操り人形にしていた。仮にシロップが捕まっても、他の人間なら出し抜ける。でも、私では逆に足が付くかもしれない。そしてマリアンナお嬢様の戦いを見て、恐ろしくもなった。あんたは、私を恐れるが故に、自分の身の潔白を証明したかった。そこで提案したのが、自分を囮にする囮捜査」
饒舌に喋るメイプル。
ミリスは、それを黙って聞いている。
「自分が囮になっているうちに、犯人が事を起こせば、少なくとも自分に疑惑の視線を向けられない。でも、ちょっと焦りすぎたわね。不用意な発言だけじゃない。囮になってる自分と、シロップを操って事件を起こす位置が、あまりに対角線上すぎて単純だったわよ。もう少し考えてやるべきだったわね」
「企業秘密って、そういうことだったのですね」
当時のことを思い出す。
遠く離れて監視すると言うメイプル。
ところが実際は、すでにミリスの近くになどいなかったのだ。
事件が起きそうな、ミリスの居る位置とは正反対の場所に、メイプルは張り込んでいた。
そして、シロップを拘束した上でミリスの元へ戻る。
企業秘密というより、むしろミリスに対しての秘密だった。
ミリスに話すことはありえない。
「じゃあ、裁判のときの質問は何ですか? 一般的な魔封じがどうとかっていう」
「あぁ、あれも引っかかったの? さすがに鋭いわね」
「お褒めに与り、光栄ですわ」
お互いニヤリと笑う。
「あの魔封じは意味が無いのが分かったのよ。であれば、あんたに操られたシロップがどんな行動を取るか分かったものじゃないからね」
「魔封じに効果が無い?」
「あら、あんたも気づいてなかったんだ。呪い魔法使い(カーズキャスター)にしては抜けてるわね。呪い魔法は「悪魔の魔力」と「人間の魔力」によって生成される。つまり、マナの吸収を妨げる魔封じなんて、意味が無いのよ。まぁ、あそこで変な真似を起こせば、シロップの操り糸を断ち切った上で、あんたを引きずり出すことくらいは出来たかもしれないけどね」
「ふふ、だから怖いんですよ、あなたは」
ミリスとメイプル、2人笑い合う。
実のところ、先のメイプルの言葉はハッタリである。
呪い魔法については、今回初めて相対する。すべての対処は、全てメイプルのその場の「思いつき」であり、絶対の自信を持って行っているものではない。
その点、相手がミリスでホッとしている部分がある。
ミリスは、メイプルの実力を心得ている。
メイプルの魔力の高さを知っている。
だからこそ行動に制限が掛かっているのだ。
メイプルの内心は、決して穏やかなものではなかった。
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