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第2章 霧島杏奈

第12話(現世界)因果断截へ

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「昨日はご両親がいらっしゃらなかったそうです。今朝、戻ってきたら、霧島さんが亡くなっているのを発見したそうです」

 それからも、淡々と語ってくれた先生。
 さらに、その後のニュースで得た情報。

 霧島杏奈は、悲惨な最期を迎えていることが分かった。



 ラーメンを食べた後、僕らと別れると、委員長はまっすぐ家に帰ったようだ。

 帰宅しても、今日は両親共に仕事のため不在。
 鍵を開け、家に入るその瞬間……
 暴漢5人が押し入り、乱暴された挙げ句、殺された。
 計画的な犯行だったという。
 沢本先生の言い回しから察するに、遺体はとても見られる状態ではないらしい。


「こんなの、嘘だよね……」

「…………」

 今日は臨時休校になった。

 その帰り道、僕は榛名と家路を共にしている。
 榛名は、まだ信じられないという顔で、呆然とした表情を浮かべていた。

 僕は、何も言えなかった。

 昨日まで元気だった委員長。
 消極的な性格なのに、しっかりと仕事をしていた委員長。
 大人しい感じなのに、大盛りラーメンを平らげてしまう委員長。
 今までも見られた委員長のいいところ。

 見られなかった意外な一面。
 それを知って、なお霧島杏奈という女性は素敵だと思った。
 面白いと思った。

 そんな委員長が、とても輝いて見えていたのに。

(その委員長は、もういない……)

 喪失感。
 その感覚に落ちていると。


 ブルルルル……ブルルルル……


 携帯に着信。
 相手は……?

(知らない番号だ)

 とりあえず取ってみる。

「もしもし……」

「もしもし……」

 それからお互い、沈黙が続く。
 黙してから30秒。
 いい加減僕も切り返す。

「……誰ですか?」

「…………」

 何か言っているようだが、かなり遠い。

「すみません、かなり遠いんですが……どなたですか」

「葛城大和」

「……!」

 分かった。
 これは六道だ。
 というか、フルネームで呼んでくる奴など、あいつしかいない。

「化学準備室で待つ」

「あ、ちょっと。おい!」

 そのまま切られてしまう。

「どうしたの、大和ちゃん」

「あ、あぁ……悪い。先に帰っててくれるか。ちょっと呼び出し食らった」

「えっ、誰に?」

「誰でもいいだろ。ちょっと行ってくるからな。先に帰ってろ」

「う、うん」

 僕は、榛名を置いて、来た道を引き返した。





 化学準備室。

 ここに入ったのは2回目だ。
 扉を開けた瞬間。
 六道は僕を迎えるように、こちらを向き、部屋の中央あたりで佇立していた。

「お前、僕の携帯番号、どうやって知ったんだ?」

「因果の流れから」

「へぇ……そんなことまで出来るのか」

「嘘」

「……は?」

 思わず素で返してしまう。
 威圧も含めてしまったかもしれない。
 その証拠に、六道は少し身体を強ばらせている。

「あ、いや悪い。お前がそんな冗談言うとは思わなくて……」

 謝罪として、思ったことを正直に言う。
 それは不服と言わんばかりに、頬を膨らませる六道。

「その意見は不服。私は、冗談は好き」

「そ、そうなのか」

 そう言われても、誰がどう見たって、六道は冗談を言うようには見えないと思うのだが。
 まぁ、そんな蛇足は置いておこう。
 こいつが呼びつけるということは、つまりそういうことなんだ。

「で……本題だ、六道」

「私は、葛城大和と冗談を交わしたいから呼び出しただけ」

「六道」

「嘘。本題……つまり、因果の話」

「そいつだ」

 六道は、改めるように間を空ける。

「予想は粗方ついていると思う。今回は、クラス委員長、霧島杏奈に異世界の因果が注ぎ込まれた。結果として、霧島杏奈は死んだ」

「で、また僕が助けに行くわけか」

「それは葛城大和、君次第。征くなら手伝う」

 まあ、その選択肢はあって無いようなものだ。
 僕は、ゆっくりと椅子に座る。

「ま、一丁頼むわ」

「分かった。そのままじっとしてるといい」

 首筋に焼けるような感覚。
 そして、僕は落ちていった…………
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