1 / 68
第1話 異世界転生!
しおりを挟む
俺の名前は片上勇二(かたがみゆうじ)。
本来なら高校2年生。
肩書きも、一応まだ高校2年生。
いわゆる不登校児というやつで、次の進級は危ういかもしれない。
キッカケは、ほんの些細なことだった。
ちょっと、可愛い女子のリコーダーを持っていただけ。
その現場を目撃されてしまった。
見られたのは、まさにリコーダーの持ち主。
あんなに可愛かった顔が、般若の面のようになり、キモいだの変態だの、謂われのない言葉を浴びせられた。
(まだ舐めてもいないのに……)
全く、ひどい言いがかりだ。
しかして、俺が住むのはドがつくほどのド田舎。
根も葉もない噂はあっという間に広がり、ついに俺は学校に通えなくなった。
こんな肩身の狭い思いをして、通学など出来やしない。
今日も今日とて、朝に寝て夜に起き、ネトゲをして過ごす毎日。
いつも通りにログインしようと思ったが、そこにはいつもの画面ではなく、警告画面が出てきた。
「あれ……課金切れか?」
このご時世、珍しい月額課金制。
その期間が切れているとのお達しだ。
「仕方ない、コンビニ行くかぁ……」
財布一つだけ持つと、重い腰を上げて久々の外出となった。
コンビニに行くと言って、侮る無かれ。
その距離は、片道徒歩30分。
しかも舗装もされていない真っ暗な農道という近道を通ってのタイム。
(まぁ、それでも近いほうなんだけど)
人によっては、車でなければ来れない人間も多い。
自転車でも行けるが、夜の農道は想像以上に危険だからやめておく。
真っ暗な中、自転車で駆け抜けたことがあるが、見事にすっころび、肥溜めに落ちたことがある。
以来、夜に自転車は使っていない。
コンビニが近づいてきた頃、正面から軽トラが来ているのが分かる。
別に特別な光景じゃない。
さっさと脇道に反れた、その瞬間。
(あれって……子犬か?)
ヘッドライトに当てられ、おびえているように見える子犬。
その場から全く動こうとしていない。
(軽トラは……ダメだ、ぜんぜん気づいてないぞ!)
思わず駆け出し、飛び出す。
その瞬間。
ヘッドライトが目の前に迫ると、俺の視界はたちまち真っ白に染まっていった。
◆ ◆ ◆
「ここは……?」
俺は、小さな円の上に立っていた。
周囲には真っ白な霧が立ちこめ、よく見えない。
(まさか、死後の世界なのか?)
急に不安になり、周囲をキョロキョロ見渡す。
すると。
「落ち着きなさい、愚か者」
綺麗な女性の声。
優しい口調で言っているが……
愚か者ってどうよ?
俺の正面にスポットライトのように明かりが照らされ、そこの部分だけ霧が晴れていく。
真っ赤な髪。
それが強く印象に残る。
その真紅の髪が、地面スレスレまで伸びており、風に棚引くように揺れている。
年齢は、ちょうど俺と同じくらいだろうか。
服装がかなり奇抜で、ギリシャ神話の神様たちみたいな、白いローブを着ている。
右手には太陽を象った杖。
大きさは、身長と同じくらいと、かなり大きい。
「私は輪廻転生を司る女神フォイニー。早速ですが、ボンクラ。貴方は死んでしまいました」
「うっ、やっぱりそうなのか……てかボンクラて」
なんか、漫画やアニメではよくある展開だが、いざ自分に降りかかると実感なんて微塵も無いな。
っと、そういえば!
「そ、そうだ。あの子犬は助かったのか?」
「子犬……? あぁ、貴方が助けようとした、あの子犬ですね。はい、無事でしたよ」
「そうか。よかった……」
これで格好いい死に方が出来たというもんだ。
命を使っての汚名返上と言ったところか。
「ぷっ…………あははははははははっ!」
と、思っていると、女神が急に吹き出した。
そして、その場でうずくまり、地面を叩きながら腹を抱えての大笑い。
ひーひー言いながら、なおも笑い続ける。
「あのー、何が面白いんすか」
思わず白い目で見てしまう。
女神は、腹をよじらせながらも事情を説明してくれる。
「だってだって、あのトラックは何もしなくても子犬に気づいて止まってたし! あんたは、助けるつもりで飛んでいったら、ショックで気を失って、そのまま肥溜めに顔突っ込んで! それでそのまま窒息死とか! この仕事やってて長いけど、こんな死に方見たこと無いわー! マジひどいわー! おめでとう、ダーウィン賞!」
「ウワーソウナンダー」
棒読みで返す。
汚名返上どころか、恥の上塗りです本当にありがとうございました。
……まぁ、もう終わった人生か。
もう振り返らずにいよう。
しばらく笑い続ける女神を、俺は白い目で見続けた。
時間にして約1分。
ようやく落ち着いてきたのか、ゆっくりと立ち上がり、さっきの優しげな声に戻した。
「さて、愚人。貴方に選択肢を与えましょう」
「ハイ」
愚人と言われて、否定する気も無くなってくる。
そんなしらけた俺を差し置いて、なおも続ける女神。
「貴方は、再び人として転生したいですか?」
「いや、イイっす」
即答だ。
もう人間なんて真っ平ごめんだ。
輪廻転生するなら、ころっころの豆柴にでもなりたい。
そして、どうせなら一人暮らしの可愛い女子大生に飼われて「私のパートナーはあなただけよ♪」などと言われ、辛い時、苦しい時にはいつでも寄り添い、心も体も、時にはあっちの方も慰めてあげたい。
そのまま社会人になっても、俺が寿命を全うするまで、結婚は愚か彼氏も作らないような、そんな女子大生に飼われたい。
「では、貴方を人として転生させましょう」
「おいまてこら」
反射的に口が動いた。
俺のさっきまでの要望……もとい、妄想はどうなるんだと。
一方の女神は、相変わらず声だけは優しく続ける。
「残念ながらド変態な痴れ者に選択権などありませんわ。決めるのは、わ・た・し」
「じゃあ何で聞いたんだ?」
「一応聞いてみようかな、と。よかったですね、再び人間に転生出来るんなんて」
「いや、人の話聞いてますー?」
俺の声に、怒りの感情は無く、むしろ呆れている。
ちなみに、なおも女神の声はどこまでも慈悲深いような声だ。
声だけは。
「まったく、我が儘な愚物ですね。では、仕方ないので私から妥協案を一つ提案しましょう」
「妥協案?」
「今の世界にではなく、異世界へ転生させましょう。白痴な貴方にも分かりやすく言えば、ファンタジー世界です。そこで、貴方は魔王を倒してもらいます」
「いや、余計に嫌なんですケド」
まだ今の世界に戻ったほうが、勝手が分かるってもの。
それに、何かさりげに無理難題押しつけて来てるぞ?
そんなもの、絶対にお断りだ。
しかし、女神は笑顔で首を傾げて。
「承諾しない場合、貴方の次の転生はミジンコで決定します。なお、転生先で魔王を倒せなかった場合も、ミジンコです」
「職権濫用すぎませんかねー!」
「拒否権などありません」
「ですよねー!」
いい加減、この呼吸にも慣れてきた。
結局、このクソ失礼な女神の思うがままにされるしかないらしい。
だったら、さっさと終わらせてもらったほうが有益というもの。
適当に返事をしておこう。
「では、この転生に快諾いただいたお礼として、私から最後にプレゼントを差し上げます」
「プレゼント?」
女神が地面を杖で叩くと、俺の目の前にガラポンが現れる。
あの、100円入れて、取っ手をグルグル回すと、カプセルが出てくるアレだ。
「これは?」
「さっさと回しなさい、ヌケサク」
「はぁ……」
取っ手を回そうとするも、お金が入っていない時のように、全く動かない。
「あの、これ動かすのにお金いるんじゃ」
「100円くらい出しなさい。うつけものでも、そのくらいは持ち合わせているでしょう?」
「無理言いなさんな」
こちとら死んでるんだ。
金なんか持ってるはずがない。
「はぁ、これは本当に鈍物ですね。こんなのが世界を救えるのかしら。ちょっと待ってなさい」
なにやら背を向け、屈んで何かを探している。
形のいいお尻がこちらに向けられるが、どうにも興奮する気分にはなれそうにない。
「はい、これで回しなさい」
指で弾いたと思うと。
バキューン!
弾丸よろしく、俺の頭を掠めていった。
「取り損ねたわね、役立たず」
「取れるかボケ! 殺す気か!」
「死んでますって」
呆れ顔になり、今度は軽く硬貨を1枚こちらに投げる。
見たことのない変なオッサンが彫られた硬貨だが、まぁこれで回せるらしい。
「ほいほいっと。最初からそうやって渡せばいいんだっての」
ガチャコンガチャコン。
特有の音が響くと、カプセルが一つ落ちてくる。
そいつを開けると、中には一枚の紙が入っていた。
「強化?」
「おめでとうございます、たわけ者。貴方は、強化スキルを特化した状態で転生します」
「おぉ、何か凄そうだな!」
「そうですね。私も初めて見ました。そんなものがあるんだと」
声の若干トーンが下がった気がするが……
気のせいだろうか。
だが、それ以上に気になったことがある。
「……ってことは、何人かは、こうやって転生してるってことか」
「はい」
「ちなみに、他の人はどんなものが当たってるんだ?」
「伝説の聖剣とか、生まれ持った特別な魔法の才能などがありますね」
「なるほど」
つまり、それに匹敵するだけの能力、ということか!
「では、私の仕事はここまでです。貴方の身体は、基本的に今の身体をそのままに、転生先の環境に順応させた上で、先ほどの強化スキル特化が付与されます」
つまり、基本スペックは今の俺のまま、ということか。
ちぇっ、そっちもチート級にしてもらって無双したかったな。
「あぁ、それと、最初は冒険者ギルドに行きなさい。それじゃ、私は忙しいからこの辺で」
言い終えると、急に視界が真っ白になり、意識がゆっくり落ちていく。
しかし、最後の最後まで、表面上はめっちゃ優しい声色だけは変えなかったな、あの女神……
まあ、そんなことはどうでもいい。
また人として転生することになったけど、今度は異世界だ。
男なら、誰もが憧れる世界に、俺は実際に足を踏み入れる。
魔王討伐が出来なければ次の転生はミジンコらしいが……
そんなもの、俺の強化スキルとやらで何とかしてやるぜ!
意気揚々としている中……
真っ白だった視界が、少しずつ輪郭を露わにしてきた。
本来なら高校2年生。
肩書きも、一応まだ高校2年生。
いわゆる不登校児というやつで、次の進級は危ういかもしれない。
キッカケは、ほんの些細なことだった。
ちょっと、可愛い女子のリコーダーを持っていただけ。
その現場を目撃されてしまった。
見られたのは、まさにリコーダーの持ち主。
あんなに可愛かった顔が、般若の面のようになり、キモいだの変態だの、謂われのない言葉を浴びせられた。
(まだ舐めてもいないのに……)
全く、ひどい言いがかりだ。
しかして、俺が住むのはドがつくほどのド田舎。
根も葉もない噂はあっという間に広がり、ついに俺は学校に通えなくなった。
こんな肩身の狭い思いをして、通学など出来やしない。
今日も今日とて、朝に寝て夜に起き、ネトゲをして過ごす毎日。
いつも通りにログインしようと思ったが、そこにはいつもの画面ではなく、警告画面が出てきた。
「あれ……課金切れか?」
このご時世、珍しい月額課金制。
その期間が切れているとのお達しだ。
「仕方ない、コンビニ行くかぁ……」
財布一つだけ持つと、重い腰を上げて久々の外出となった。
コンビニに行くと言って、侮る無かれ。
その距離は、片道徒歩30分。
しかも舗装もされていない真っ暗な農道という近道を通ってのタイム。
(まぁ、それでも近いほうなんだけど)
人によっては、車でなければ来れない人間も多い。
自転車でも行けるが、夜の農道は想像以上に危険だからやめておく。
真っ暗な中、自転車で駆け抜けたことがあるが、見事にすっころび、肥溜めに落ちたことがある。
以来、夜に自転車は使っていない。
コンビニが近づいてきた頃、正面から軽トラが来ているのが分かる。
別に特別な光景じゃない。
さっさと脇道に反れた、その瞬間。
(あれって……子犬か?)
ヘッドライトに当てられ、おびえているように見える子犬。
その場から全く動こうとしていない。
(軽トラは……ダメだ、ぜんぜん気づいてないぞ!)
思わず駆け出し、飛び出す。
その瞬間。
ヘッドライトが目の前に迫ると、俺の視界はたちまち真っ白に染まっていった。
◆ ◆ ◆
「ここは……?」
俺は、小さな円の上に立っていた。
周囲には真っ白な霧が立ちこめ、よく見えない。
(まさか、死後の世界なのか?)
急に不安になり、周囲をキョロキョロ見渡す。
すると。
「落ち着きなさい、愚か者」
綺麗な女性の声。
優しい口調で言っているが……
愚か者ってどうよ?
俺の正面にスポットライトのように明かりが照らされ、そこの部分だけ霧が晴れていく。
真っ赤な髪。
それが強く印象に残る。
その真紅の髪が、地面スレスレまで伸びており、風に棚引くように揺れている。
年齢は、ちょうど俺と同じくらいだろうか。
服装がかなり奇抜で、ギリシャ神話の神様たちみたいな、白いローブを着ている。
右手には太陽を象った杖。
大きさは、身長と同じくらいと、かなり大きい。
「私は輪廻転生を司る女神フォイニー。早速ですが、ボンクラ。貴方は死んでしまいました」
「うっ、やっぱりそうなのか……てかボンクラて」
なんか、漫画やアニメではよくある展開だが、いざ自分に降りかかると実感なんて微塵も無いな。
っと、そういえば!
「そ、そうだ。あの子犬は助かったのか?」
「子犬……? あぁ、貴方が助けようとした、あの子犬ですね。はい、無事でしたよ」
「そうか。よかった……」
これで格好いい死に方が出来たというもんだ。
命を使っての汚名返上と言ったところか。
「ぷっ…………あははははははははっ!」
と、思っていると、女神が急に吹き出した。
そして、その場でうずくまり、地面を叩きながら腹を抱えての大笑い。
ひーひー言いながら、なおも笑い続ける。
「あのー、何が面白いんすか」
思わず白い目で見てしまう。
女神は、腹をよじらせながらも事情を説明してくれる。
「だってだって、あのトラックは何もしなくても子犬に気づいて止まってたし! あんたは、助けるつもりで飛んでいったら、ショックで気を失って、そのまま肥溜めに顔突っ込んで! それでそのまま窒息死とか! この仕事やってて長いけど、こんな死に方見たこと無いわー! マジひどいわー! おめでとう、ダーウィン賞!」
「ウワーソウナンダー」
棒読みで返す。
汚名返上どころか、恥の上塗りです本当にありがとうございました。
……まぁ、もう終わった人生か。
もう振り返らずにいよう。
しばらく笑い続ける女神を、俺は白い目で見続けた。
時間にして約1分。
ようやく落ち着いてきたのか、ゆっくりと立ち上がり、さっきの優しげな声に戻した。
「さて、愚人。貴方に選択肢を与えましょう」
「ハイ」
愚人と言われて、否定する気も無くなってくる。
そんなしらけた俺を差し置いて、なおも続ける女神。
「貴方は、再び人として転生したいですか?」
「いや、イイっす」
即答だ。
もう人間なんて真っ平ごめんだ。
輪廻転生するなら、ころっころの豆柴にでもなりたい。
そして、どうせなら一人暮らしの可愛い女子大生に飼われて「私のパートナーはあなただけよ♪」などと言われ、辛い時、苦しい時にはいつでも寄り添い、心も体も、時にはあっちの方も慰めてあげたい。
そのまま社会人になっても、俺が寿命を全うするまで、結婚は愚か彼氏も作らないような、そんな女子大生に飼われたい。
「では、貴方を人として転生させましょう」
「おいまてこら」
反射的に口が動いた。
俺のさっきまでの要望……もとい、妄想はどうなるんだと。
一方の女神は、相変わらず声だけは優しく続ける。
「残念ながらド変態な痴れ者に選択権などありませんわ。決めるのは、わ・た・し」
「じゃあ何で聞いたんだ?」
「一応聞いてみようかな、と。よかったですね、再び人間に転生出来るんなんて」
「いや、人の話聞いてますー?」
俺の声に、怒りの感情は無く、むしろ呆れている。
ちなみに、なおも女神の声はどこまでも慈悲深いような声だ。
声だけは。
「まったく、我が儘な愚物ですね。では、仕方ないので私から妥協案を一つ提案しましょう」
「妥協案?」
「今の世界にではなく、異世界へ転生させましょう。白痴な貴方にも分かりやすく言えば、ファンタジー世界です。そこで、貴方は魔王を倒してもらいます」
「いや、余計に嫌なんですケド」
まだ今の世界に戻ったほうが、勝手が分かるってもの。
それに、何かさりげに無理難題押しつけて来てるぞ?
そんなもの、絶対にお断りだ。
しかし、女神は笑顔で首を傾げて。
「承諾しない場合、貴方の次の転生はミジンコで決定します。なお、転生先で魔王を倒せなかった場合も、ミジンコです」
「職権濫用すぎませんかねー!」
「拒否権などありません」
「ですよねー!」
いい加減、この呼吸にも慣れてきた。
結局、このクソ失礼な女神の思うがままにされるしかないらしい。
だったら、さっさと終わらせてもらったほうが有益というもの。
適当に返事をしておこう。
「では、この転生に快諾いただいたお礼として、私から最後にプレゼントを差し上げます」
「プレゼント?」
女神が地面を杖で叩くと、俺の目の前にガラポンが現れる。
あの、100円入れて、取っ手をグルグル回すと、カプセルが出てくるアレだ。
「これは?」
「さっさと回しなさい、ヌケサク」
「はぁ……」
取っ手を回そうとするも、お金が入っていない時のように、全く動かない。
「あの、これ動かすのにお金いるんじゃ」
「100円くらい出しなさい。うつけものでも、そのくらいは持ち合わせているでしょう?」
「無理言いなさんな」
こちとら死んでるんだ。
金なんか持ってるはずがない。
「はぁ、これは本当に鈍物ですね。こんなのが世界を救えるのかしら。ちょっと待ってなさい」
なにやら背を向け、屈んで何かを探している。
形のいいお尻がこちらに向けられるが、どうにも興奮する気分にはなれそうにない。
「はい、これで回しなさい」
指で弾いたと思うと。
バキューン!
弾丸よろしく、俺の頭を掠めていった。
「取り損ねたわね、役立たず」
「取れるかボケ! 殺す気か!」
「死んでますって」
呆れ顔になり、今度は軽く硬貨を1枚こちらに投げる。
見たことのない変なオッサンが彫られた硬貨だが、まぁこれで回せるらしい。
「ほいほいっと。最初からそうやって渡せばいいんだっての」
ガチャコンガチャコン。
特有の音が響くと、カプセルが一つ落ちてくる。
そいつを開けると、中には一枚の紙が入っていた。
「強化?」
「おめでとうございます、たわけ者。貴方は、強化スキルを特化した状態で転生します」
「おぉ、何か凄そうだな!」
「そうですね。私も初めて見ました。そんなものがあるんだと」
声の若干トーンが下がった気がするが……
気のせいだろうか。
だが、それ以上に気になったことがある。
「……ってことは、何人かは、こうやって転生してるってことか」
「はい」
「ちなみに、他の人はどんなものが当たってるんだ?」
「伝説の聖剣とか、生まれ持った特別な魔法の才能などがありますね」
「なるほど」
つまり、それに匹敵するだけの能力、ということか!
「では、私の仕事はここまでです。貴方の身体は、基本的に今の身体をそのままに、転生先の環境に順応させた上で、先ほどの強化スキル特化が付与されます」
つまり、基本スペックは今の俺のまま、ということか。
ちぇっ、そっちもチート級にしてもらって無双したかったな。
「あぁ、それと、最初は冒険者ギルドに行きなさい。それじゃ、私は忙しいからこの辺で」
言い終えると、急に視界が真っ白になり、意識がゆっくり落ちていく。
しかし、最後の最後まで、表面上はめっちゃ優しい声色だけは変えなかったな、あの女神……
まあ、そんなことはどうでもいい。
また人として転生することになったけど、今度は異世界だ。
男なら、誰もが憧れる世界に、俺は実際に足を踏み入れる。
魔王討伐が出来なければ次の転生はミジンコらしいが……
そんなもの、俺の強化スキルとやらで何とかしてやるぜ!
意気揚々としている中……
真っ白だった視界が、少しずつ輪郭を露わにしてきた。
0
お気に入りに追加
251
あなたにおすすめの小説
主人公を助ける実力者を目指して、
漆黒 光(ダークネス ライト)
ファンタジー
主人公でもなく、ラスボスでもなく、影に潜み実力を見せつけるものでもない、表に出でて、主人公を助ける実力者を目指すものの物語の異世界転生です。舞台は中世の世界観で主人公がブランド王国の第三王子に転生する、転生した世界では魔力があり理不尽で殺されることがなくなる、自分自身の考えで自分自身のエゴで正義を語る、僕は主人公を助ける実力者を目指してーー!
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
異世界で俺はチーター
田中 歩
ファンタジー
とある高校に通う普通の高校生だが、クラスメイトからはバイトなどもせずゲームやアニメばかり見て学校以外ではあまり家から出ないため「ヒキニート」呼ばわりされている。
そんな彼が子供のころ入ったことがあるはずなのに思い出せない祖父の家の蔵に友達に話したのを機にもう一度入ってみることを決意する。
蔵に入って気がつくとそこは異世界だった?!
しかも、おじさんや爺ちゃんも異世界に行ったことがあるらしい?
落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!
酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。
スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ
個人差はあるが5〜8歳で開花する。
そのスキルによって今後の人生が決まる。
しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。
世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。
カイアスもスキルは開花しなかった。
しかし、それは気付いていないだけだった。
遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!!
それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
最弱テイマーの成り上がり~役立たずテイマーは実は神獣を従える【神獣使い】でした。今更戻ってこいと言われてももう遅い~
平山和人
ファンタジー
Sランクパーティーに所属するテイマーのカイトは使えない役立たずだからと追放される。
さらにパーティーの汚点として高難易度ダンジョンに転移され、魔物にカイトを始末させようとする。
魔物に襲われ絶体絶命のピンチをむかえたカイトは、秘められた【神獣使い】の力を覚醒させる。
神に匹敵する力を持つ神獣と契約することでスキルをゲット。さらにフェンリルと契約し、最強となる。
その一方で、パーティーメンバーたちは、カイトを追放したことで没落の道を歩むことになるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる