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ノイジーナイス、未勝利戦の三戦目で初勝利
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カストリオ=ノイジーが騎乗を決め、ノイジーナイスの三戦目。
父からはこれでノイジーナイスは引退すると言われている。
ノイジーが乗らなければ、他に乗ってくれる騎手は居ないのだから。
「迷惑をかけてごめんな。勝ち負けは考えてない。ノイジーナイスと気楽に走ってきてくれないか」
そう言う寂しそうな父に、頷いた。
「今日はよろしくな」
そう言ってノイジーはノイジーナイスを撫でる。ウパニャースに似た栗毛の可愛い小柄な馬だった。
ノイジーナイス最後のレースが始まる。
《1と4分の1マイルの未勝利戦(2000メートル)まもなく開始です。》
ゲートが開くと、ノイジーナイスはいきなり全速力で駆けだした。
「ちょ、ちょっと待て!」
そしてノイジーは抑えようとするが、少し考えて止めた。
《おっと、三番ノイジーナイス。今回は逃げましたね。騎手はリーディングジョッキーのノイジーです。ノイジーナイスは、彼の実家の牧場の生産馬ですね。プッククク》
ラジオでは解説がそんな事を言っている事など知らず、ノイジーは手綱を引くか迷う。
《速い速い、大逃げだ。後続との差は十馬身以上離れていますね》
「手綱を引いたら、抑えたら機嫌を損ねて下手すりゃ落馬や減速、コースアウト?親父はなんて馬を育てたんだよ!」
そして、もうなるようになれと。
どうせ最後だ、馬の走りたいように走らせてやろうと、ノイジーは考えるのを辞めた。
《速い速い、さらに加速。ノイジーナイス、大逃げだ。後続との差は十五馬身》
そして1200メートルまで加速し続けるノイジーナイスに、ノイジーはふと思う。
「これ、短距離戦なら勝ててるんじゃないか?」
ノイジーは、騎手の経験から大体のタイムが身体に刻まれている。短距離戦ならレコードかもしれない。
これ未勝利馬が出していいタイムじゃないぞ、と。
そう思うと競馬場からどよめきが聞こえめた。
《さらに、さらに加速!ノイジーナイス、後続との差を広げていく。その差は二十馬身はあるでしょうか》
まるで空を飛んでいるかのように、美しいフォームでぐんぐん加速していくノイジーナイス。
マイルを超えたあたりから、ノイジーは夢でも見ているんじゃないか、と思い始めた。
「重賞級でも出していいタイムじゃない。マイルならG1級、それもかなり上位の……」
《そろそろバテるか、残り400メートル。ノイジーナイス、さらに加速していく!》
一旦息を入れ、そしてまた加速を始めるノイジーナイス。
「まだ加速するのか!?10年に1頭、いや……歴史に残るような強さだ」
《差を詰めるどころか開いていきます。今、ノイジーナイス一着でゴール。レコード記録です。レースレコード、コースレコードの両方を更新するあっという間の決着でした。二着とのタイム差は五秒の大差でした》
そして手綱を引くと、ノイジーナイスは減速し、ゆっくりコースから外れていく。
「もしかしてこいつ、抑えたらレースが終わったと思って走らなかったんじゃないか?」
そう言うとノイジーナイスは、そうだよ?と言うように鼻を鳴らした。
レース後、ぽかんとしている父に、ノイジーは頷いた。
「引退だとか、他の騎手に頼めるだろう、とか言うなよ?今、俺の手持ちの馬がG1を取れる馬でも。もしG1があっても、そっちを断る事にする。ノイジーナイスには俺が乗る、ノイジーナイスは誰にも渡さない」
父からはこれでノイジーナイスは引退すると言われている。
ノイジーが乗らなければ、他に乗ってくれる騎手は居ないのだから。
「迷惑をかけてごめんな。勝ち負けは考えてない。ノイジーナイスと気楽に走ってきてくれないか」
そう言う寂しそうな父に、頷いた。
「今日はよろしくな」
そう言ってノイジーはノイジーナイスを撫でる。ウパニャースに似た栗毛の可愛い小柄な馬だった。
ノイジーナイス最後のレースが始まる。
《1と4分の1マイルの未勝利戦(2000メートル)まもなく開始です。》
ゲートが開くと、ノイジーナイスはいきなり全速力で駆けだした。
「ちょ、ちょっと待て!」
そしてノイジーは抑えようとするが、少し考えて止めた。
《おっと、三番ノイジーナイス。今回は逃げましたね。騎手はリーディングジョッキーのノイジーです。ノイジーナイスは、彼の実家の牧場の生産馬ですね。プッククク》
ラジオでは解説がそんな事を言っている事など知らず、ノイジーは手綱を引くか迷う。
《速い速い、大逃げだ。後続との差は十馬身以上離れていますね》
「手綱を引いたら、抑えたら機嫌を損ねて下手すりゃ落馬や減速、コースアウト?親父はなんて馬を育てたんだよ!」
そして、もうなるようになれと。
どうせ最後だ、馬の走りたいように走らせてやろうと、ノイジーは考えるのを辞めた。
《速い速い、さらに加速。ノイジーナイス、大逃げだ。後続との差は十五馬身》
そして1200メートルまで加速し続けるノイジーナイスに、ノイジーはふと思う。
「これ、短距離戦なら勝ててるんじゃないか?」
ノイジーは、騎手の経験から大体のタイムが身体に刻まれている。短距離戦ならレコードかもしれない。
これ未勝利馬が出していいタイムじゃないぞ、と。
そう思うと競馬場からどよめきが聞こえめた。
《さらに、さらに加速!ノイジーナイス、後続との差を広げていく。その差は二十馬身はあるでしょうか》
まるで空を飛んでいるかのように、美しいフォームでぐんぐん加速していくノイジーナイス。
マイルを超えたあたりから、ノイジーは夢でも見ているんじゃないか、と思い始めた。
「重賞級でも出していいタイムじゃない。マイルならG1級、それもかなり上位の……」
《そろそろバテるか、残り400メートル。ノイジーナイス、さらに加速していく!》
一旦息を入れ、そしてまた加速を始めるノイジーナイス。
「まだ加速するのか!?10年に1頭、いや……歴史に残るような強さだ」
《差を詰めるどころか開いていきます。今、ノイジーナイス一着でゴール。レコード記録です。レースレコード、コースレコードの両方を更新するあっという間の決着でした。二着とのタイム差は五秒の大差でした》
そして手綱を引くと、ノイジーナイスは減速し、ゆっくりコースから外れていく。
「もしかしてこいつ、抑えたらレースが終わったと思って走らなかったんじゃないか?」
そう言うとノイジーナイスは、そうだよ?と言うように鼻を鳴らした。
レース後、ぽかんとしている父に、ノイジーは頷いた。
「引退だとか、他の騎手に頼めるだろう、とか言うなよ?今、俺の手持ちの馬がG1を取れる馬でも。もしG1があっても、そっちを断る事にする。ノイジーナイスには俺が乗る、ノイジーナイスは誰にも渡さない」
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