1 / 3
母父サファラタ、母ウパニャース、父?
しおりを挟む
《母父 サファラタ》
ヒンディー語で成功を意味するサファラタという馬がいた。
インドの馬主が輸入したサラブレッドで、ドバイのG1に勝利し、世界中から注目された。
『成功』という名前にふさわしい大活躍、圧倒的なスピードとパワーを見せつけて自身の強さをアピールした。堂々の種牡馬入りである。
米国ではあまり見られない血統だったため、米国のある牧場が大金を払い輸入することとなったが……『もう名前の分は十分仕事しただろう?』と言っているような結果になった。
サファラタが二年で病死したのだ。
そして残された産駒達が走り始める。
「はずれだったな……」
米国の老舗サラブレッド牧場、カストリオ牧場の主は苦々しい顔をしてそう語った。
サファラタにより、カストリオ牧場は大きな借金を抱える事となった。
新しい血統を残そうと大金を出したのに産駒はどれも小柄で、パワーが求められる厳しい米国の競馬界で活躍できる強さを持った馬は一頭も生まれなかった。
産駒の八割が未出走、二割が未勝利のまま終わる事になる。
サファラタ産駒は一度も新聞に乗らず、しばらくの間、競馬界から忘れられていく。
『成功の産駒は失敗ばかり』と新聞社がコラムを書かれたくらいである。
《母 ウパニャース》
カストリオ牧場持ちのその産駒はヒンディー語で『小説』と名付けられた。
父、サファラタにあやかってヒンディー語の名前を付けた。
「牡馬でサファラタの血統を受け継ぐ者は恐らく繁殖入りできないだろう。サファラタの仔は小柄で身体が弱い。父の遺志だ、ウパニャースは繁殖入りさせて血統を守ろう」
成績1戦0勝。
牝馬のウパニャースは新馬戦二着という成績で繁殖入りすることとなる。
勝ててもおかしくないタイムで新馬戦を競り負けたウパニャースを無理に走らせて悲劇が起こったら。カストリオ牧場のサファラタを買った父はただの愚か者になってしまう。
血としては悪くないはずだと、ウパニャース産駒に期待をする事になる。
《父……米国エクリプス賞(年度代表馬、リーディングサイアー) ヘイルストーム予定》
ヘイルストームはサファラタのより一歳年下の競走馬だ。サファラタと違い産駒はどれも米国競馬界に適応したパワーを持ったタフな産駒が生まれる。
「ヘイルストームは予約が埋まってるんだよ」
「そんな、前々から約束していた事じゃないですか!」
借金まみれのカストリオ牧場がなぜこんな名馬をつけられるか。
ヘイルストームは牧場交流の際にサファラタの種付権と交換していたのだ。
サファラタの産駒が繁殖入りした後に、ヘイルストームをつける、と。
「しかし、サファラタ産駒はどれも小柄で非力だと聞く。ヘイルストームをつけても走らないんじゃないか?」
「だが、約束は守っていただきたい」
産駒が悪ければそのままヘイルストームの悪評にも繋がる。そう考えたヘイルストームの牧場主はある提案をした。
「エクリプス賞にこだわるなら、こっちをつけてはどうだ?気性難はあるが、初年度産駒だし、こいつの予定は空いている」
「ナイスマークスか」
ナイスマークス自身は勝ったレースも低人気からのまぐれ勝ちという評価。
それが数回続き、なぜか三冠馬となった。
年度代表馬には選ばれたものの、その年は不作の年だと揶揄されていた。
大手新聞社は「ツキがあっただけ」だと言う。
一年から三年早く生まれていれば勝てなかったし、一年から三年遅く生まれていても勝てなかっただろう。
また、その年でもその距離のスペシャリストがちょうどG1前に故障すると言う強運で選ばれた三冠馬の年度代表馬だった。
「不運な成功の産駒もコイツのまぐれ勝ち、強運で良くなるかもしれんよ?こいつの最初の種付になる。成功の牝馬ならこいつのゲン担ぎにもなるだろう」
バカにされるように、笑いながら言われる。
「お前さんとこの息子、騎手になったらしいじゃないか。三年目なのになかなかいい騎乗をするって聞いてるよ。うちのお得意様にお前の所の息子を宣伝しといてやるから、今回はこれで泣いてくれ」
種付はどこも予約で埋まっている。
空胎で年をあけるよりは……とカストリオ牧場の主は初年度の交配にナイスマークスを選んだ。
《父 米国エクリプス賞(年度代表馬) ナイスマークス》
この頃はまだ無名の種牡馬に過ぎないナイスマークス。
だが、フロックといわれたナイスマークスはその強運からか。
はたまた最初の種付が成功の牝馬だったからか。
気性に難はあるものの、ナイスマークス産駒はいくつものG1を勝つ事になる。
ナイスマークスは以降十数年に渡ってリーディングサイアーを取り続け、ナイスマークス産駒の種牡馬は、二十年後に二十頭を超える。
もしナイスマークスの産駒能力が解っていれば、こういう提案は出なかっただろう。
産駒の仔馬が産声をあげた。
《父ナイスマークス、母ウパニャス》
そのやや小柄な仔馬は米国競馬で競走馬となり、《ノイジーナイス》と名付けられる事になる。
ヒンディー語で成功を意味するサファラタという馬がいた。
インドの馬主が輸入したサラブレッドで、ドバイのG1に勝利し、世界中から注目された。
『成功』という名前にふさわしい大活躍、圧倒的なスピードとパワーを見せつけて自身の強さをアピールした。堂々の種牡馬入りである。
米国ではあまり見られない血統だったため、米国のある牧場が大金を払い輸入することとなったが……『もう名前の分は十分仕事しただろう?』と言っているような結果になった。
サファラタが二年で病死したのだ。
そして残された産駒達が走り始める。
「はずれだったな……」
米国の老舗サラブレッド牧場、カストリオ牧場の主は苦々しい顔をしてそう語った。
サファラタにより、カストリオ牧場は大きな借金を抱える事となった。
新しい血統を残そうと大金を出したのに産駒はどれも小柄で、パワーが求められる厳しい米国の競馬界で活躍できる強さを持った馬は一頭も生まれなかった。
産駒の八割が未出走、二割が未勝利のまま終わる事になる。
サファラタ産駒は一度も新聞に乗らず、しばらくの間、競馬界から忘れられていく。
『成功の産駒は失敗ばかり』と新聞社がコラムを書かれたくらいである。
《母 ウパニャース》
カストリオ牧場持ちのその産駒はヒンディー語で『小説』と名付けられた。
父、サファラタにあやかってヒンディー語の名前を付けた。
「牡馬でサファラタの血統を受け継ぐ者は恐らく繁殖入りできないだろう。サファラタの仔は小柄で身体が弱い。父の遺志だ、ウパニャースは繁殖入りさせて血統を守ろう」
成績1戦0勝。
牝馬のウパニャースは新馬戦二着という成績で繁殖入りすることとなる。
勝ててもおかしくないタイムで新馬戦を競り負けたウパニャースを無理に走らせて悲劇が起こったら。カストリオ牧場のサファラタを買った父はただの愚か者になってしまう。
血としては悪くないはずだと、ウパニャース産駒に期待をする事になる。
《父……米国エクリプス賞(年度代表馬、リーディングサイアー) ヘイルストーム予定》
ヘイルストームはサファラタのより一歳年下の競走馬だ。サファラタと違い産駒はどれも米国競馬界に適応したパワーを持ったタフな産駒が生まれる。
「ヘイルストームは予約が埋まってるんだよ」
「そんな、前々から約束していた事じゃないですか!」
借金まみれのカストリオ牧場がなぜこんな名馬をつけられるか。
ヘイルストームは牧場交流の際にサファラタの種付権と交換していたのだ。
サファラタの産駒が繁殖入りした後に、ヘイルストームをつける、と。
「しかし、サファラタ産駒はどれも小柄で非力だと聞く。ヘイルストームをつけても走らないんじゃないか?」
「だが、約束は守っていただきたい」
産駒が悪ければそのままヘイルストームの悪評にも繋がる。そう考えたヘイルストームの牧場主はある提案をした。
「エクリプス賞にこだわるなら、こっちをつけてはどうだ?気性難はあるが、初年度産駒だし、こいつの予定は空いている」
「ナイスマークスか」
ナイスマークス自身は勝ったレースも低人気からのまぐれ勝ちという評価。
それが数回続き、なぜか三冠馬となった。
年度代表馬には選ばれたものの、その年は不作の年だと揶揄されていた。
大手新聞社は「ツキがあっただけ」だと言う。
一年から三年早く生まれていれば勝てなかったし、一年から三年遅く生まれていても勝てなかっただろう。
また、その年でもその距離のスペシャリストがちょうどG1前に故障すると言う強運で選ばれた三冠馬の年度代表馬だった。
「不運な成功の産駒もコイツのまぐれ勝ち、強運で良くなるかもしれんよ?こいつの最初の種付になる。成功の牝馬ならこいつのゲン担ぎにもなるだろう」
バカにされるように、笑いながら言われる。
「お前さんとこの息子、騎手になったらしいじゃないか。三年目なのになかなかいい騎乗をするって聞いてるよ。うちのお得意様にお前の所の息子を宣伝しといてやるから、今回はこれで泣いてくれ」
種付はどこも予約で埋まっている。
空胎で年をあけるよりは……とカストリオ牧場の主は初年度の交配にナイスマークスを選んだ。
《父 米国エクリプス賞(年度代表馬) ナイスマークス》
この頃はまだ無名の種牡馬に過ぎないナイスマークス。
だが、フロックといわれたナイスマークスはその強運からか。
はたまた最初の種付が成功の牝馬だったからか。
気性に難はあるものの、ナイスマークス産駒はいくつものG1を勝つ事になる。
ナイスマークスは以降十数年に渡ってリーディングサイアーを取り続け、ナイスマークス産駒の種牡馬は、二十年後に二十頭を超える。
もしナイスマークスの産駒能力が解っていれば、こういう提案は出なかっただろう。
産駒の仔馬が産声をあげた。
《父ナイスマークス、母ウパニャス》
そのやや小柄な仔馬は米国競馬で競走馬となり、《ノイジーナイス》と名付けられる事になる。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
迷い込んだ先で獣人公爵の愛玩動物になりました(R18)
るーろ
恋愛
気がついたら知らない場所にた早川なつほ。異世界人として捕えられ愛玩動物として売られるところを公爵家のエレナ・メルストに買われた。
エレナは兄であるノアへのプレゼンとして_
発情/甘々?/若干無理矢理/
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
騎士団長の欲望に今日も犯される
シェルビビ
恋愛
ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。
就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。
ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。
しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。
無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。
文章を付け足しています。すいません
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
♪イキイキさん ~インフィニットコメディー! ミラクルワールド!~ 〈初日 巳よっつの刻(10時30分頃)〉
神棚 望良(かみだな もちよし)
ファンタジー
「♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~
♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~
♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~」
「みんな、みんな~~~!今日(こお~~~~~~んにち~~~~~~わあ~~~~~~!」
「もしくは~~~、もしくは~~~、今晩(こお~~~~~~んばん~~~~~~わあ~~~~~~!」
「吾輩の名前は~~~~~~、モッチ~~~~~~!さすらいの~~~、駆け出しの~~~、一丁前の~~~、ネコさんだよ~~~~~~!」
「これから~~~、吾輩の物語が始まるよ~~~~~~!みんな、みんな~~~、仲良くしてね~~~~~~!」
「♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~
♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~
♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~」
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話
もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。
詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。
え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか?
え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか?
え? 私、アースさん専用の聖女なんですか?
魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。
※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。
※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。
※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。
R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる