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第1章~夢魔の王とアーク城
笑っている方がいいな
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アーク魔城の出窓からヴィータから渡されたスピーチを読み上げる。
「陛下!」
「夢魔王陛下!」
「アーク魔王様!」
老若男女、兵士も子供も。色々な人が俺に歓声を送ってくれる。
「お疲れさまでした、ミライ様」
ヴィータがスポーツドリンクのような甘い物を手渡してくれる。
スピーチで疲れた喉が潤い、俺は飲み終えたボトルを笑顔で返した。
「ヴィータ、ありがとな」
俺の笑顔に固まったヴィータは、顔を赤くしてボトルを受け取った。
「やっと目が覚めたかと思ったら、すぐにヴィータに色目を使って。解ってるのか?お前は僕の婚約者なんだぞ」
「いやいや、婚約者って。俺記憶無いし」
俺は苦笑いして、ベルに手を振る。ベルが美人なのは解るけど、前の俺はどうしてベルと婚約したんだろう。
「なぁ、ベル。ここでは男同士の婚約者って普通なのか?」
「お前は馬鹿か?どこの世界で男同士で婚約するのが普通な国があるんだ」
馬鹿よばわりするベル。
「でも、お前が俺と婚約してるって言うから」
「違う、僕がお前と婚約してやってるんだ!あと僕は絶対教えないからな」
ささいな所で噛みつくベル。まあどっちでもいいけどさぁ。
」
「僕とお前が気にかかってるなら思い出せ、ヴィータや母上から聞き出すような軟弱な事はするなよ?」
軟弱な考えが一番に浮かんだのだが、まさか、と笑い飛ばした。
「あ、そういえばここってアーク魔国と夢魔国って二つの呼び名があるけど、どうしてなんだ?」
そんな事も覚えてないのか、とベルは溜息を付き、説明をする。
「僕の姓がアーク、なのは知っているな」
ベルフェルト=アーク、ベルの名前を思い出し、俺は頷く。
「夢魔国は昔、三つの国があった。アーク、ウィズマ、フェリ」
三つの国が一緒になり、一つの国となった。
そしてアーク地方が一番領土が広かったため、アーク・夢魔国と呼ばれるようになった、という。
「アーク魔国というのは、アーク・夢魔国の略称だ」
「そして、ベルはアークという姓から、この国の王族って事か」
「……お前も王族だぞ?あと、ヴィータも王族だ」
王族?と首を傾げる俺にベルが補足する。
「この国は、三家に王位継承権があるんだ。
ミライ=フェリ。ヴィータ=ウィズマ。ベルフェルト=アーク。
その三家の子で、最も魔力が高い者が王となる。
今の王はお前だ、ミライ=フェリ」
…… …… ……
「納得できません」
悔しそうな顔をするベル。
「どうしてアークである僕が、こんな奴なんかの下に」
現王のミレンは、そんなベルの発言を笑い飛ばした。
「ベルはおかしな事を言うわね、ミライの方が魔力が高いじゃない」
「ですが、魔力以外では僕の方が優秀なはずです。剣も、魔法も僕の方が上手く扱える」
「決まりは決まり。剣の腕と魔法の腕と言うけれど、剣術の腕だけならヴィータの方が上でしょう?」
そして、俺の傍でヴィータはニコニコしていた。
「ミライ様が王なら、このヴィータ、命をかけてお守りします」
悔しそうな顔をするベル。
「納得できない。ミライ、勝負だ。勝負しろ!」
…… …… ……
「なあ、ベル。お前はもう王になりたくないのか?」
「王になりたくても、お前の方が魔力が高い。僕は身の程を弁えている」
そういうベルの顔をじっと見る。
「ミライ、僕の顔がどうかしたか?」
「いや、何でもない」
勝負に勝ち、押さえつけた俺。
綺麗な目で僕を睨みながら、無表情で涙を零すベルの姿が重なり、俺は視線を逸らした。
「変なミライだな」
何に比べてかは解らなかったが、
微笑むベルを見て、笑っている方がいいな、と思った。
「陛下!」
「夢魔王陛下!」
「アーク魔王様!」
老若男女、兵士も子供も。色々な人が俺に歓声を送ってくれる。
「お疲れさまでした、ミライ様」
ヴィータがスポーツドリンクのような甘い物を手渡してくれる。
スピーチで疲れた喉が潤い、俺は飲み終えたボトルを笑顔で返した。
「ヴィータ、ありがとな」
俺の笑顔に固まったヴィータは、顔を赤くしてボトルを受け取った。
「やっと目が覚めたかと思ったら、すぐにヴィータに色目を使って。解ってるのか?お前は僕の婚約者なんだぞ」
「いやいや、婚約者って。俺記憶無いし」
俺は苦笑いして、ベルに手を振る。ベルが美人なのは解るけど、前の俺はどうしてベルと婚約したんだろう。
「なぁ、ベル。ここでは男同士の婚約者って普通なのか?」
「お前は馬鹿か?どこの世界で男同士で婚約するのが普通な国があるんだ」
馬鹿よばわりするベル。
「でも、お前が俺と婚約してるって言うから」
「違う、僕がお前と婚約してやってるんだ!あと僕は絶対教えないからな」
ささいな所で噛みつくベル。まあどっちでもいいけどさぁ。
」
「僕とお前が気にかかってるなら思い出せ、ヴィータや母上から聞き出すような軟弱な事はするなよ?」
軟弱な考えが一番に浮かんだのだが、まさか、と笑い飛ばした。
「あ、そういえばここってアーク魔国と夢魔国って二つの呼び名があるけど、どうしてなんだ?」
そんな事も覚えてないのか、とベルは溜息を付き、説明をする。
「僕の姓がアーク、なのは知っているな」
ベルフェルト=アーク、ベルの名前を思い出し、俺は頷く。
「夢魔国は昔、三つの国があった。アーク、ウィズマ、フェリ」
三つの国が一緒になり、一つの国となった。
そしてアーク地方が一番領土が広かったため、アーク・夢魔国と呼ばれるようになった、という。
「アーク魔国というのは、アーク・夢魔国の略称だ」
「そして、ベルはアークという姓から、この国の王族って事か」
「……お前も王族だぞ?あと、ヴィータも王族だ」
王族?と首を傾げる俺にベルが補足する。
「この国は、三家に王位継承権があるんだ。
ミライ=フェリ。ヴィータ=ウィズマ。ベルフェルト=アーク。
その三家の子で、最も魔力が高い者が王となる。
今の王はお前だ、ミライ=フェリ」
…… …… ……
「納得できません」
悔しそうな顔をするベル。
「どうしてアークである僕が、こんな奴なんかの下に」
現王のミレンは、そんなベルの発言を笑い飛ばした。
「ベルはおかしな事を言うわね、ミライの方が魔力が高いじゃない」
「ですが、魔力以外では僕の方が優秀なはずです。剣も、魔法も僕の方が上手く扱える」
「決まりは決まり。剣の腕と魔法の腕と言うけれど、剣術の腕だけならヴィータの方が上でしょう?」
そして、俺の傍でヴィータはニコニコしていた。
「ミライ様が王なら、このヴィータ、命をかけてお守りします」
悔しそうな顔をするベル。
「納得できない。ミライ、勝負だ。勝負しろ!」
…… …… ……
「なあ、ベル。お前はもう王になりたくないのか?」
「王になりたくても、お前の方が魔力が高い。僕は身の程を弁えている」
そういうベルの顔をじっと見る。
「ミライ、僕の顔がどうかしたか?」
「いや、何でもない」
勝負に勝ち、押さえつけた俺。
綺麗な目で僕を睨みながら、無表情で涙を零すベルの姿が重なり、俺は視線を逸らした。
「変なミライだな」
何に比べてかは解らなかったが、
微笑むベルを見て、笑っている方がいいな、と思った。
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