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白石さんの苦労

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 朝比奈乃愛……——。
 若い女の子たちの憧れの的であり、男性からの人気も根強いモデルだ。しかし、当の本人は芸能界には、未練もなく、依頼された仕事だけを私生活に支障がない程度でこなしている。
 そして、目の前にいる人物は彼女の夫。

「ああ、家に帰れないとか苦痛でたまらない」
 
 忙しくて帰宅できない彼女の夫は、彼女に会えなくて苦痛だと訴えている。そんな水成に乃愛ちゃんが載っている雑誌を投げつけ、これでも読んでいろと吐き捨てた。投げつけられた雑誌を手に水成はこういう仕事してますみたいなのは嫌だと言った。食堂のテレビを見れば、コスメの新作のコマーシャルに彼女が出演していた。

「どうして、直接会えないんだ!!!俺の奥さんなのに!!!」

 と、不満を漏らす水成だったが、その2日後には帰宅が叶った。


 がしかし、水成から突然、乃愛ちゃんが実家に帰っていて会えないという電話がかかってきた。
 昔は女遊びが激しかっただけに、これだけ水成を振り回せるなんて面白い。言い換えれば、水成は彼女に惚れ込んでいる。だから、高校卒業と同時に結婚し、芸能界の仕事も減らさせている。

 水成の家に行くと、げっそりした様子で出迎えてくれた。

「乃愛が電話にも出てくれないし、メッセージも返してくれない」

「もう実家に迎えにいけばええやん」

「それだ!!!!!!!!」

 勢いよく彼は家を飛び出して行き、俺は部屋に取り残された。


 頭はいいはずなのに、女慣れもしているはずなのに、どうして思いつかないのかと呆れた。




 二時間後、夫婦揃って仲良く帰宅し、俺はお役御免となった。
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