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女を黙らせるにはこうするんだろ? 前編 朝乃宮千春SIDE
2/4 前半
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「ええっ、緊急家族会議を開始します」
午後五時。
おじさまを除くウチら全員、リビングに集まっていた。
ウチの膝には……。
「マァマ……」
小さな女の子がすやすやと眠っとる。ウチはそっと頭を撫でる。
宇佐美桜花。
昨日おじさまが連れてきた女の子。
この子の両親は交通事故にあい、意識不明の重体。
桜花ちゃんの父親はおじさまの警察学校の教え子で、桜花ちゃんの祖父母が引き取りにくるまで二週間ほどかかるみたい。
その為、二週間預かることになった。
気になるのは、教え子やからって、その子供を預かること。
どうして、血のつながりもないのに、この子を預かるの?
おじさまは何かを隠している。そんな気がする。
けど、今の問題はそこやなくて、桜花ちゃんはとんでもない爆弾を抱えていて……。
「すぴー」
こうしてみると天使のように可愛ええんやえけど……。
「マァマ……だいすき……」
「……」
ウチのこと、ママって呼ぶし……ウチに子なんておらん。
それだけでも大問題なのに……。
「パパァ……パパァ……」
「……」
藤堂はんのこと、父親と勘違いしてる……んやな? そうなんやな?
事もあろうに藤堂はんを父親と誤解するとか……これでは、その……ウチと……が……夫婦……。
ちゃうちゃう! 絶対にちゃう!
あかん! 頬が緩みそう!
我慢せな!
目をつぶって心を無に……。
「ママ……」
桜花ちゃんがギュッとウチに抱きついてきた。
可愛らしい反応に、我慢が……頬が緩むのが止められへん!
これって何の拷問なん!
「ええっ~議題は言うまでもなく、桜花ちゃんのことですが、このままだと、騒音でご近所との関係が悪化してしまう可能性があります! 至急対策を講じる必要があります!」
信吾はんはああ言ってるけど、本音は別のところにある。
それは……。
「皆様! 温かいご声援ありがとうございます! 岸和田、皆様の声を市政に必ず届けます!」
「ううっ……」
選挙カーから流れてくる声に桜花が目を覚まして……。
「あ~~~~~~~~~~~~ん!」
泣き出した。
「ワンワンワンワンワンワン!」
シュナイダーはんが吠え出す。
この二重奏にウチらは昨日の夜から苦しめられてる。
昨日の夜はとりあえず、おばさまが預かることになったんやけど、
「パァパァアアアアア~~! マァマアァアアアアア!」
「パパ? ママ? えっ、お父さんとお母さんの子供?」
「いやぁあああああああああ! パパァアアアアアアア! マァマアァアアアアア!」
「あ、あの……私の気のせいでしょうか? 兄さんと千春をパパとママって……」
「……誰?」
「ワン! ワン! ワン! ワン! ワン!」
信吾はん、澪はん、咲、強はん、シュナイダーはんまで起きてきて、大騒ぎ。
全然泣き止まへんからウチが一緒に寝ようとしたんやけど……。
「パパもぉ! パパもいっしょじゃなきゃいやぁあああああああああ!」
これは流石に無理。
藤堂はんと一緒とか……ありえへん!
すっぴん、見られたくない!
女の子が泣いているんだからと説得しようとした信吾はんは全く分かってない!
いきなり現れた見知らぬ子の為に男と一緒に寝るとか……しかも、メイク落とした後とか、絶対に無理!
男はそういうこと鈍感やからウチが悪いみたいに思ってるし……最悪や……。
それに……い、一緒に寝たら……バレる……ウチの秘密が……そしたら、嫌われる……。
断固拒否する!
それと岸和田……選挙カー廃止を必ず市政に届けろ!
ええ迷惑や!
「マァマアァアアアアア!」
「はいはい、ここにいますさかい……」
「パァパァアアアアア!」
「……」
「藤堂はん」
「……ここにいるから」
藤堂はん、顔に出すぎ!
そんなに嫌なん? 何かムカッとくるわ!
「ちーちゃん! 不機嫌になっちゃダメ! 桜花ちゃんに伝わるから!」
「……よしよし」
はぁ……。
子供っていうんは親の表情に敏感で、ウチらが笑顔でないと不安になってしまう。
それは分かってるけど、ウチも不安なんよ……。
とりあえず、十分ほどかかって桜花ちゃんをなだめたけど、起きてしもうたからウチの膝で動き出してしまう。
ウチは桜花ちゃんをそっと抱きしめ、落ちないようにする。
もう! やんちゃな子やな。
けど……。
「マァマ♪」
笑顔は可愛えわ~。
「おほん! 桜花ちゃんが泣き出すとシュナイダーまでが吠えてしまい、騒ぎが大きくなる一方です!」
信吾はんは大げさに言っとるけど、要はやかましくて眠れないってこと。
昨日……いや、今日の深夜遅くまで桜花ちゃんが泣き止まんから、みんな寝不足気味やったわ。
ウチはあの出来事から眠りが浅いっていうか、あまり眠れなくなってるし、問題なかったんやけど。
何か信吾はんのTシャツに『最大多数の最大幸福』ってあるけど、何なん?
「そこで! 我々は、原因が桜花ちゃんとシュナイダーが近くにいることによる相乗効果が発生し、ご近所に迷惑をかけてしまうことを突き止めました! そして! 解決策も準備致しました!」
……なんやろ、嫌な予感しかせえへん。
その解決策は……。
「桜花ちゃんが我が家に滞在する二週間! 千春ちゃんのマンションで預かることが決まりました!」
はぁあああああああああああ!
聞いとらへんぞ、こら!
誰の許可得て、そんな勝手な事ぬかしとるねん!
「こ、これは我が家の大黒柱である義信さんにも許可を得ています!」
ウチの許可とらんかい! あのマンションはウチが大黒柱や!
この男! 厄介ごとをウチに押しつける気か!
おじさまは仕事のせいか、家開けとるし!
「待て。この子を朝乃宮のマンションに預けたとして、昨日のように父親について騒ぎ出したらどうするつもりだ? その度に俺は朝乃宮のマンションまで通わないといけないのか?」
預けたとして? 預かるな!
まあ、とにかく、藤堂はんは反対みたいやけど……それって、ウチのマンションまで来るんが面倒ってだけやないの!
これだから、男は! 無責任過ぎ!
藤堂はんには失望したわ!
「それも問題ない。正道君も千春ちゃんのマンションで過ごせばいいでしょ?」
はぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!
ざっけんなぁあああああああああああああああああああああああああああああ!
「いや、流石にその子がいるとしても、男と女が同じマンションなのは……」
せやせやせやせやせやせやせやせやせやせやせやせやせやせやせやせや!
ウチもそんなベタな展開、ちょっとは憧れてたけど、現実では無理! 無理やから!
男の子と……藤堂はんと二人きりとかありえへん!
死ぬ! きっと、ウチ、恥ずかしくて死ぬわ!
「それも問題なし! 助っ人にお義母さんも一緒だから」
この人でなし!
あんさんが来いや! 言いだしっぺの法則、知らんのか!
冗談やな……。
「……それなら問題ないか」
問題大ありやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
えっ? えっ? えっ?
ウチ、さっぱり理解できへん?
なんで? なんで? 藤堂はん、正気?
同棲やで! 夫婦でもないのに!
「ちーちゃん。同居だから。それに恋人でもないから」
そんなこといってるんやない!
藤堂はんへの想いに翻弄されてるのに、絶対に無理! ハードル高すぎ!
もしかして、信吾はんのTシャツに書かれている『最大多数の最大幸福』はこのフラグアピールなん!
わかりにくいし、意味違わくない?
少数派のウチら助けて! 厄介払いするな!
ウチは大反対したけど、結局数の暴力で押し切られてしもうた……。
反対したのはウチと咲、強はんのみ。
藤堂はんは諦めていたけど……って、諦めって何なん! 失礼やと思わへんの!
そう思ってたんやけど……。
「朝乃宮、嫌なのは分かる。だが、こうなった以上、責任を持ってこの子を預かるつもりだ。だが、俺一人では無理だ。この子が朝乃宮を母親と認識してしまっているから、朝乃宮の助けが必要なんだ。一緒に俺達の子供を育てないか?」
俺達の子供!
「いえ、ウチらの子供では……」
「朝乃宮、俺は偽りの夫婦では我慢できないんだ。俺の嫁になってくれ!」
「よ、嫁!」
「俺には朝乃宮が必要なんだ! だから、頼む、千春!」
「千春!?」
そう言われてしまうと……その……なんと言いますか……もう! 知らん!
というわけで、桜花ちゃんはウチのマンションで、ウチと藤堂はん、おばさまの三人で面倒見ることになってしまいました!
そ、それにしても、千春って……ええわぁあああああああああああああああああああああああああああああ!
名前を呼び捨てとか~~~!
「ねえ、ちーちゃん。兄さんは俺達の子供なんて一言も言ってませんでしたよ? 妄想だよ? 兄さんは、一緒に桜花ちゃんの面倒を見ないかって言っただけですからね?」
午後五時。
おじさまを除くウチら全員、リビングに集まっていた。
ウチの膝には……。
「マァマ……」
小さな女の子がすやすやと眠っとる。ウチはそっと頭を撫でる。
宇佐美桜花。
昨日おじさまが連れてきた女の子。
この子の両親は交通事故にあい、意識不明の重体。
桜花ちゃんの父親はおじさまの警察学校の教え子で、桜花ちゃんの祖父母が引き取りにくるまで二週間ほどかかるみたい。
その為、二週間預かることになった。
気になるのは、教え子やからって、その子供を預かること。
どうして、血のつながりもないのに、この子を預かるの?
おじさまは何かを隠している。そんな気がする。
けど、今の問題はそこやなくて、桜花ちゃんはとんでもない爆弾を抱えていて……。
「すぴー」
こうしてみると天使のように可愛ええんやえけど……。
「マァマ……だいすき……」
「……」
ウチのこと、ママって呼ぶし……ウチに子なんておらん。
それだけでも大問題なのに……。
「パパァ……パパァ……」
「……」
藤堂はんのこと、父親と勘違いしてる……んやな? そうなんやな?
事もあろうに藤堂はんを父親と誤解するとか……これでは、その……ウチと……が……夫婦……。
ちゃうちゃう! 絶対にちゃう!
あかん! 頬が緩みそう!
我慢せな!
目をつぶって心を無に……。
「ママ……」
桜花ちゃんがギュッとウチに抱きついてきた。
可愛らしい反応に、我慢が……頬が緩むのが止められへん!
これって何の拷問なん!
「ええっ~議題は言うまでもなく、桜花ちゃんのことですが、このままだと、騒音でご近所との関係が悪化してしまう可能性があります! 至急対策を講じる必要があります!」
信吾はんはああ言ってるけど、本音は別のところにある。
それは……。
「皆様! 温かいご声援ありがとうございます! 岸和田、皆様の声を市政に必ず届けます!」
「ううっ……」
選挙カーから流れてくる声に桜花が目を覚まして……。
「あ~~~~~~~~~~~~ん!」
泣き出した。
「ワンワンワンワンワンワン!」
シュナイダーはんが吠え出す。
この二重奏にウチらは昨日の夜から苦しめられてる。
昨日の夜はとりあえず、おばさまが預かることになったんやけど、
「パァパァアアアアア~~! マァマアァアアアアア!」
「パパ? ママ? えっ、お父さんとお母さんの子供?」
「いやぁあああああああああ! パパァアアアアアアア! マァマアァアアアアア!」
「あ、あの……私の気のせいでしょうか? 兄さんと千春をパパとママって……」
「……誰?」
「ワン! ワン! ワン! ワン! ワン!」
信吾はん、澪はん、咲、強はん、シュナイダーはんまで起きてきて、大騒ぎ。
全然泣き止まへんからウチが一緒に寝ようとしたんやけど……。
「パパもぉ! パパもいっしょじゃなきゃいやぁあああああああああ!」
これは流石に無理。
藤堂はんと一緒とか……ありえへん!
すっぴん、見られたくない!
女の子が泣いているんだからと説得しようとした信吾はんは全く分かってない!
いきなり現れた見知らぬ子の為に男と一緒に寝るとか……しかも、メイク落とした後とか、絶対に無理!
男はそういうこと鈍感やからウチが悪いみたいに思ってるし……最悪や……。
それに……い、一緒に寝たら……バレる……ウチの秘密が……そしたら、嫌われる……。
断固拒否する!
それと岸和田……選挙カー廃止を必ず市政に届けろ!
ええ迷惑や!
「マァマアァアアアアア!」
「はいはい、ここにいますさかい……」
「パァパァアアアアア!」
「……」
「藤堂はん」
「……ここにいるから」
藤堂はん、顔に出すぎ!
そんなに嫌なん? 何かムカッとくるわ!
「ちーちゃん! 不機嫌になっちゃダメ! 桜花ちゃんに伝わるから!」
「……よしよし」
はぁ……。
子供っていうんは親の表情に敏感で、ウチらが笑顔でないと不安になってしまう。
それは分かってるけど、ウチも不安なんよ……。
とりあえず、十分ほどかかって桜花ちゃんをなだめたけど、起きてしもうたからウチの膝で動き出してしまう。
ウチは桜花ちゃんをそっと抱きしめ、落ちないようにする。
もう! やんちゃな子やな。
けど……。
「マァマ♪」
笑顔は可愛えわ~。
「おほん! 桜花ちゃんが泣き出すとシュナイダーまでが吠えてしまい、騒ぎが大きくなる一方です!」
信吾はんは大げさに言っとるけど、要はやかましくて眠れないってこと。
昨日……いや、今日の深夜遅くまで桜花ちゃんが泣き止まんから、みんな寝不足気味やったわ。
ウチはあの出来事から眠りが浅いっていうか、あまり眠れなくなってるし、問題なかったんやけど。
何か信吾はんのTシャツに『最大多数の最大幸福』ってあるけど、何なん?
「そこで! 我々は、原因が桜花ちゃんとシュナイダーが近くにいることによる相乗効果が発生し、ご近所に迷惑をかけてしまうことを突き止めました! そして! 解決策も準備致しました!」
……なんやろ、嫌な予感しかせえへん。
その解決策は……。
「桜花ちゃんが我が家に滞在する二週間! 千春ちゃんのマンションで預かることが決まりました!」
はぁあああああああああああ!
聞いとらへんぞ、こら!
誰の許可得て、そんな勝手な事ぬかしとるねん!
「こ、これは我が家の大黒柱である義信さんにも許可を得ています!」
ウチの許可とらんかい! あのマンションはウチが大黒柱や!
この男! 厄介ごとをウチに押しつける気か!
おじさまは仕事のせいか、家開けとるし!
「待て。この子を朝乃宮のマンションに預けたとして、昨日のように父親について騒ぎ出したらどうするつもりだ? その度に俺は朝乃宮のマンションまで通わないといけないのか?」
預けたとして? 預かるな!
まあ、とにかく、藤堂はんは反対みたいやけど……それって、ウチのマンションまで来るんが面倒ってだけやないの!
これだから、男は! 無責任過ぎ!
藤堂はんには失望したわ!
「それも問題ない。正道君も千春ちゃんのマンションで過ごせばいいでしょ?」
はぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!
ざっけんなぁあああああああああああああああああああああああああああああ!
「いや、流石にその子がいるとしても、男と女が同じマンションなのは……」
せやせやせやせやせやせやせやせやせやせやせやせやせやせやせやせや!
ウチもそんなベタな展開、ちょっとは憧れてたけど、現実では無理! 無理やから!
男の子と……藤堂はんと二人きりとかありえへん!
死ぬ! きっと、ウチ、恥ずかしくて死ぬわ!
「それも問題なし! 助っ人にお義母さんも一緒だから」
この人でなし!
あんさんが来いや! 言いだしっぺの法則、知らんのか!
冗談やな……。
「……それなら問題ないか」
問題大ありやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
えっ? えっ? えっ?
ウチ、さっぱり理解できへん?
なんで? なんで? 藤堂はん、正気?
同棲やで! 夫婦でもないのに!
「ちーちゃん。同居だから。それに恋人でもないから」
そんなこといってるんやない!
藤堂はんへの想いに翻弄されてるのに、絶対に無理! ハードル高すぎ!
もしかして、信吾はんのTシャツに書かれている『最大多数の最大幸福』はこのフラグアピールなん!
わかりにくいし、意味違わくない?
少数派のウチら助けて! 厄介払いするな!
ウチは大反対したけど、結局数の暴力で押し切られてしもうた……。
反対したのはウチと咲、強はんのみ。
藤堂はんは諦めていたけど……って、諦めって何なん! 失礼やと思わへんの!
そう思ってたんやけど……。
「朝乃宮、嫌なのは分かる。だが、こうなった以上、責任を持ってこの子を預かるつもりだ。だが、俺一人では無理だ。この子が朝乃宮を母親と認識してしまっているから、朝乃宮の助けが必要なんだ。一緒に俺達の子供を育てないか?」
俺達の子供!
「いえ、ウチらの子供では……」
「朝乃宮、俺は偽りの夫婦では我慢できないんだ。俺の嫁になってくれ!」
「よ、嫁!」
「俺には朝乃宮が必要なんだ! だから、頼む、千春!」
「千春!?」
そう言われてしまうと……その……なんと言いますか……もう! 知らん!
というわけで、桜花ちゃんはウチのマンションで、ウチと藤堂はん、おばさまの三人で面倒見ることになってしまいました!
そ、それにしても、千春って……ええわぁあああああああああああああああああああああああああああああ!
名前を呼び捨てとか~~~!
「ねえ、ちーちゃん。兄さんは俺達の子供なんて一言も言ってませんでしたよ? 妄想だよ? 兄さんは、一緒に桜花ちゃんの面倒を見ないかって言っただけですからね?」
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