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兄さんなんて大嫌いです! 朝乃宮千春SIDE

2/1 その六

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「白虎がやられてるぞ!」
「朱雀、玄武もだ!」
「だ、誰だ! 誰がやりやがった!」
「……」

 はいはい分かってました……また来るって……。
 今度は……九十くらい?
 ほんま、めんどい……。

「てめえか! これをやったのは!」
「絶対に許さねえぞ!」
「白虎、朱雀、玄武の仇討ちだ!」

 はぁ……ほんま、めんどい……。
 後、どうでもええんやけど、ジャケットにロゴ? でええんか知らんけど、龍のロゴがあるってことは……。

「この青龍隊が相手だ!」

 はぁ……四神が相手とか……めんどいわ……。
 それにしても、警察は……って、今、警察が来たらウチの事、どない思うんやろ?

 一.複数の男達に襲われている女性。
 二.五十人以上の暴漢を木刀で叩きのめしたクレイジーな通り魔。

 これって、ウチが逮捕される流れ?
 いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!
 おかしくない? 笑えん冗談やわ!
 と、とにかく、一応話し合いで解決を試みようとしました的な行動はしとかんと……。

「……一応言わせてもらいますけど、ウチは御堂でも藤堂でもないですから……」
「そんなこと関係あるか! 全員叩きのめして知らん顔とかないだろうが!」
「仇討ちだ!」
「俺達の拳は大切なモノを護る為にあるんだ! 絶対に負けねえぞ!」

 そうですよね~……って、ちょい待ち。
 もう護る対象者は全員地面に倒れとるし、そもそも無理矢理ホテル連れて行こうとした性犯罪者をウチは叩きのめしただけや。
 それにあんさんら、藤堂はん一人狙って青島に来たんやろ?
 言ってること、滅茶苦茶や。

 はぁ……。
 もうお腹いっぱいやねんけど。
 それに朱雀や玄武、白虎やっけ?
 ボスキャラ倒しているんやから、少しは実力差というか、臆したりせえへんの?
 ウチに勝てる根拠を教えて欲しいわ。

「ねえ、手伝ってあげようか?」
「いりません」

 あんさんがさっさと消えて。
 一番目障りで厄介なお人は誰か、少しは自覚して欲しいわ。

「年長者の厚意は素直に受けてるものよ。お嬢ちゃん」
「おばさんの手助けとか間に合ってますから」

 火花が飛び散りそうなくらいにらみ合う。
 この中で一番危険なのはこの女。背中を預けるとか、ありえへん!

「おい! 無視しているんじゃねえぞ!」
「面倒だ! 二人ともやっちまえ!」

 はぁ……なんでそうなるん?
 それに、大の男が複数人で女性を襲うとかプライドとかないの?

「仕方ないな。負けた方が身をひくってことにしない」
「身をひくって……ちょ!」

 なんやの、あの女!
 どうでもええんやけど! ほんま、興味ないんやけど!
 何かこの女に負けるのは癪やし、その挑発乗ったるわ!

 以下略!

「……おぇ……」
「つ、つえぇ……」
「に、人間か……コイツら……」
「あ、青島の不良は……女もバケモノなのか……魑魅魍魎じゃねえか……」

 お掃除終了。

「私の勝ち!」
「……その目、腐ってるとちゃいます。ウチの方が倒しました」

 絶対にウチの方が叩きのめした!
 年取ると数も数えられへんの?
 いっそ、この女もここで……。

「待ちやがれ!」

 はいはい、朱雀、玄武、白虎ってきたら、まだ一つ残ってましたな……。
 ほんま、どうでもええんやけど……。

「お前達、まさかこのまま帰れると思ってないだろうな?」
「はぁ……一応言わせてもらいますけど、ウチは自分の身を守るために……きゃああああああ!」

 えっ? なに! なんなん!
 いきなり上着脱いで上半身裸になったんやけど! 露出狂? これ完全に通報案件!
 警察! 警察!

「悲鳴上げるなんて可愛いじゃない」

 ちゃうちゃうちゃうちゃうちゃうちゃうちゃうちゃうちゃうちゃうちゃうちゃうちゃう!
 変態がそこにいるのに落ち着いていられへんわ!

「俺の名はレッドアーミー特攻部隊死神しじんの青龍! 昇り龍とは俺のことだ!」

 知らんがな~~~~~~~~!
 なんや、背中を見せてポーズとっとるけど、なんなん!
 もしかして、背中の入れ墨の龍を見せたかっただけ?

「ねえ、あれってシールじゃない?」

 タトゥーシールかい!
 なんやの、ほんま!

「……」
「……なんですの?」
「……服着ていいか? 寒いんだ……」
「……はよ着てください」

 あほちゃう!
 けど、大の男がこそこそと服を着る姿は、不覚にもちょっと可愛いと思ってしもうた。
 この四神って芸人なん? 何か目立った自己紹介せんと気が済まんの?

「俺は朱雀や玄武、白虎のような小細工はしねえ。この拳一本でのし上がってきた。準備が済んだらかかってこい!」

 ……何かもの凄い理不尽を感じるんやけど……なんでウチが挑戦するようなことになってるの、とか、女の子相手に大人げないとかいろいろとあるんやけど……。
 どうせ、ウチの話なんてスルーされるだけやし、速攻で倒す。

「いくぜぇ! おごぉ!」
「……」

 いや、ちょい待って。
 かかってこいと言いつつ襲いかかってくるのはなんで? 話し違うやん! 思わず、攻撃を躱して背中に木刀をたたき込んでしもうたわ!

「やるな! そろそろ本気でいかせてもらうぞ!」

 最初から出せばええやん。
 攻撃が大ぶりすぎ。
 隙だらけ。

 ブン!

 右ストレートからの返す刀で肘打ち。
 けど……。

「ばふぁ!」

 一つ一つの動作が遅すぎてあくびが出る。
 派手な攻撃は威圧感があるけど、喧嘩慣れ、もしくは武道をたしなんでいれば逆にチャンスでしかあらへん。

「はぁ……はぁ……はぁ……ここからだ……全力でいくぜ!」

 だ~か~ら!
 さっき、本気でいくって言ってたやん!
 本気と全力って同意義ちゃうん!

 右ストレート、ハイキックからの回し蹴りのコンボ。
 本人は流れるような動きで攻撃しているつもりやけど、動きが派手でたいしたことない。
 不良漫画やドラマの見過ぎちゃう? 実戦では役にたたへんし。
 攻撃してください、とご要望があるみたいやし、終わらせようか。

「おごぉ! がはぁ! ぶるはぁ!」

 一撃で倒れないのなら、こちらもコンビネーションで。
 木刀からの三連撃。

「ごほぉ! ばはぁ! いがぁ! おぉが! ぐるほぉ!」

 下段蹴り三連を膝の間接に、連続回り蹴り二回の五連撃。
 トドメ!

「ぶはぁ!」

 下から上の掌底の打ち上げで、青龍の顎を跳ね上げ、脳を揺さぶる。

「げほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 上段斬りはこれまでの全てのボケに対するツッコミや!

「……やられた……」

 バタン。

 ……。
 初めてや。やられた、とかいうお人。
 何のアピールやねん。
 けど、朱雀、玄武、白虎、青龍は叩きのめした。もう打ち止めやろ。

 パチパチパチ。

「すごいわね。一人で倒しちゃうなんて」
「……それはどうも」

 心にもないことを……。

「でも、レベル落ちたわね。最近の不良は。昔はもっと根性あったんだけどね~」

 この女……。
 多分、本当のことを言っている。

 今戦ったお人達のレベルは、一年前の御堂はんや長尾はん達が闊歩していた不良達にも劣る。
 数が多いのは辟易へきえきしてしまうけど。
 藤堂はん一人やったら危なかったかもしれへんけど、もう大丈夫……って、なんでウチ、喧嘩中の藤堂はんの身の安全ばかり考えてるん?
 ウチ、ほんま貧乏くじばかり……。
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