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八章
八話 真実への追求 その二
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青島西中。
その名の通り、青島の西地区にある中学で、白部達の母校である。
校門を抜けると、松の木が右斜め上に力強く伸びていて、その木の下には石碑が俺達を出迎えてくれた。
その先には校舎が、左側には運動場が広がっている。
日曜なので、運動場からは部活にいそしむ生徒の活気ある声が聞こえてくる。校舎は逆に物静かにただずんでいる。
白部や平村、井波戸達は懐かしさのあまり、いろんな思い出話に花を咲かせているが、なぜかその三人に姿に引っかかるものを感じた。
何に引っかかっているのか?
理由は分からないが、もしかするとこの引っかかりは三人の様子ではなく、自分の今の心境に思うところがあってのことかもな。
俺にとって、中学はあまりいい思い出がない。いや、楽しかった事なんて一つもなかったのかもしれない。辛い思いでだけが俺の心を占めている。
中学一年のときはイジメにあい、親友を失った。
中学二年のときはもうイジメられないよう、必死に武道に打ち込んだ。
中学三年のときは暴力沙汰を起こし、両親が離婚。中学にはいられなくなり、逃げるように転校した。転校先は何の思い出もつくれないまま、卒業した。
中学には苦い思い出しかないが、俺も母校に帰ったとき、白部達のように懐かしい気持ちになるのだろうか? まあ、母校は俺のことを絶対に歓迎はしないだろうがな。
「藤堂先輩、黄昏れていないでさっさといこうぜ。来客用のスリッパはこっちなんで」
いつの間にか、白部達は校舎の玄関口へと向かい、庄川は俺をせかしてくる。昇降口は全てのドアが閉まっていて、鍵が閉まっているみたいだな。
「藤堂先輩、何かあったんですか?」
上春は心配げに俺の顔色をうかがっている。
俺は今考えていたことを頭の片隅によせ、当たり障りのないことを口にした。
「中学の時のことを思い出していただけだ。上春はどうだ? 自分が中学にいたときのこと、思い出さなかったか?」
上春は目を細め、校舎を見上げる。
「思い出しました。まだ一年もたっていないのに、すごく懐かしい気持ちになります。三年も通っていたのに、かなり昔のことのように感じて……」
上春はいい思い出があるみたいだな。ここで否定するようなことを言えば、上春の表情が曇るので、俺は同意することにした。
「俺もそうだ。朝乃宮はどうだ?」
朝乃宮は肩をすくめ、何も語らない。
朝乃宮も、中学にはあまり思い出がないのだろうか?
そんなことを考えていたら、上春が慌ててフォローしてきた。
「ふ、藤堂先輩は中学校のとき、何の部活に入っていたんですか? それとも、中学も風紀員をしていたとか? 私はですね……」
上春はまるで何かを誤魔化すかのように話し出す。俺は特に口を挟まず、上春の話に耳を傾けながら、校舎の玄関口へと向かった。
校舎の中は大分時間がたっているせいか、少しさびれた感じがする。だが、その汚れがしみついた感が逆に生活の息吹を感じる。
毎年、多くの生徒がここに入学し、卒業していく。
何年も何年も繰り返し、蓄積され、しみついた雰囲気は新校舎では味わえない趣がある。
俺達は誰もいない廊下を歩き、職員室へと向かう。白部達はまず、恩師に挨拶に行き、校舎の中を移動する許可をもらいにいく。
昔の事件の調査をしたいとバカ正直に言ってしまっては、断れる可能性が高いからな。適当な理由をつけるのだろう。
俺達は白部達が許可をもらうまで特にやることがないので、上春と朝乃宮に今後について話をすることにした。
「藤堂先輩、これからのことですけど……」
上春は少し心配げに職員室に視線を向けている。これから話す内容は白部達には聞かれたくないからな。三人がいないうちに最終確認しておきたい。
問題なのは、井波戸と庄川。この二人をどうするのかだ。
ここに来る前、打ち合わせたことを再度確かめる。
「上春、打ち合わせ通りに頼む。いけるか?」
「……やってみます」
上春は無理矢理笑顔を作り、拳をぎゅっと握っている。
ぶっつけ本番だからな、不安はあるのだろう。だが、それを克服し、上春は頑張ってくれている。
こういった後輩の頑張りをみると、こっちも負けられない気持ちになるな。
「咲~。ほんま、けなげなお人やね」
「ちょ! ちーちゃん! 抱きつかないで!」
上春を後ろから抱きつく朝乃宮の姿を見て、脱力してしまう。きっと朝乃宮は上春の緊張と、上春は一人ではないことを分からせるためにわざとやっているのだろう。
本当に仲睦まじい二人だ。
「いや~いいっすね、藤堂先輩。目の保養になります」
「……庄川君は職員室にいかなくていいのか?」
今の話、庄川には聞こえないよう小声でやりとしたが、警戒することに超したことはない。
俺は慎重に対応する。そんな俺の気持ちとは裏腹に、庄川はおどけてみせている。
「俺はやんちゃばかりしてましたから。職員室って苦手で」
職員室が得意というヤツはいないとは思うが。
庄川の気持ちはなんとなく分かるので、俺もつられて笑ってしまった。
庄川と話していると、白部達が戻ってきた。
「藤堂先輩。校舎内での調査の許可をもらってきました。理由は懐かしいから校舎の中を歩きたいって言っただけなんですけどね」
平村がぺろっと舌を出す。俺はその理由で十分だと思う。昔の事件をほじくりかえすのは先生方にとって喜ばしいことではないからな。
さて、ここからが本番だ。
俺は事件の捜査を円滑に行うため、ある提案をここにいる全員にする。
「ここからは二手に分かれよう。俺と白部さん、平村さんで腕時計盗難事件のおさらいをする。当時の足取りから事件を見直し、何か新しい発見がないか捜査してみる。上春と朝乃宮、井波戸さんは、井波戸さんの調査内容を再度確認してくれ。井波戸さんの調査に何か見落としがないか検討してほしい」
「別に二手に分かれる必要なんてないと思うんですけど。そう複雑な事件ではありませんし、私がいたほうが確実に当時のこと、話せますよ? 時間の無駄だと思います」
俺の案に井波戸が反対してきた。
井波戸の意見は予測していたので、言い訳も考えてある。
「井波戸さんがいると先入観をもってしまうからな。なるべくなら、真新しい気持ちで調査したい。そっちの方が新たな事実を見つけることができる可能性が高いだろ? それとも、井波戸さんは自分の調査に自信がないのか?」
「相変わらず人の神経を逆なでするのがうまいですね。でも、いいですよ。その挑発、乗ってあげます。私はこの事件の調査に手を抜いたわけでも、見落としもないと確信しています。親友のために全力を尽くしましたから。結果、親友の無実を証明できませんでしたけどね、奏水、私のこと恨んでいる?」
白部は首を横に振り、井波戸の質問を否定する。
「美花里は私達のことで頑張ってくれた。だから、恨むことなんて絶対にない。でも、美花里に頼りすぎてた。今度は私達がしっかりと調査するから」
「……頑張ってね」
これで二手に別れて調査できるな。
問題は……。
「あ、あの……俺はどっちにいけば……」
そう、庄川をどっちに参加してもらうかだ。
もちろん、俺の中では決まっていて、上春と朝乃宮のは許可をもらっている。
庄川は……。
「俺達と一緒に来てくれ」
「えっ?」
俺の言葉に、上春と朝乃宮を除く全員が驚いていた。
平村は戸惑ったような目で、白部は非難するような目で俺を見つめている。
少し居心地が悪いが、その視線を無視し、庄川に問いかける。
「どうだ?」
「べ、別にいいっすけど」
これで決まったな。
俺と庄川、白部、平村の四人のグループと、上春と朝乃宮と井波戸の三人のグループで調査することになった。
上春達が去って行った後、早速、白部が俺に問いかけてきた。
「どうして部外者を呼んだの?」
「お、俺、部外者扱いっすか? キビシー」
オーバーアクションをとる庄川に、白部は鋭い目つきで睨んでいる。庄川は本気でビビっていた。
すまんな、庄川。
庄川がここに来た理由と確かめたいことがある。
俺は庄川をこっちのグループに入れた理由を、確かめたいとあわせて説明する。
「白部さん、庄川君をこっちに呼んだのは、彼から話を聞きたいからだ。庄川君、キミはこの学校の出身だな?」
「……そうっすけど、やっぱり分かっちゃいました?」
庄川はこの学校の玄関の場所を知っていて、先生方に苦手意識を持っていた。これだけでも、庄川がこの学校の出身者であることが推測できるが、他にも理由がある。
俺は庄川がこの学校の出身者であると思ったきっかけは……。
「まあな。前に掃除ロッカーの事で尋ねたとき、言っていただろ。『人ってあそこまで変われるのかと思うとぞっとするわ、マジで。信じられないっすよ』って」
「言いましたけど、それが?」
「人ってあそこまで変われるのか。この一言で俺は庄川君が白部さんと中学のときから知り合いだったと推測できたんだ」
「?」
頭に疑問符を浮かべている庄川に、俺は簡潔に自分の推理を庄川に話してみる。
「人ってあそこまで変われるというのはつまり、平村さんと仲良しだった白部さんが、裏切られたことで接し方が百八十度変化し、平村さんをいじめるようになった事を指していたんだろ? 態度が変わったとは、そういうことだよな?」
「そうっすけど……ああっ、そういうこと」
庄川は俺の言いたいことが分かってくれたようだ。
白部が平村をイジメだしたのは腕時計盗難事件の後だ。つまり、中学のときになる。
もし、庄川と白部が高校の時に知り合ったとなると、白部は平村をいじめているので、あそこまで変われるとは言えない。
態度が変わったと言えるのは、白部と平村の仲がよかった事を知っていなければ言えるはずがない。
だから、俺は庄川は白部と同じ中学の出身だと気づいた。
もちろん、俺の推理が間違っていないか、左近に頼んで裏はとってある。それに黒幕が庄川だってことも考えていたからだ。
その理由は……。
「それに庄川君の事はいろいろと調べさせてもらった。事件が起きたとき、庄川君も同じ体育だったこともな」
その名の通り、青島の西地区にある中学で、白部達の母校である。
校門を抜けると、松の木が右斜め上に力強く伸びていて、その木の下には石碑が俺達を出迎えてくれた。
その先には校舎が、左側には運動場が広がっている。
日曜なので、運動場からは部活にいそしむ生徒の活気ある声が聞こえてくる。校舎は逆に物静かにただずんでいる。
白部や平村、井波戸達は懐かしさのあまり、いろんな思い出話に花を咲かせているが、なぜかその三人に姿に引っかかるものを感じた。
何に引っかかっているのか?
理由は分からないが、もしかするとこの引っかかりは三人の様子ではなく、自分の今の心境に思うところがあってのことかもな。
俺にとって、中学はあまりいい思い出がない。いや、楽しかった事なんて一つもなかったのかもしれない。辛い思いでだけが俺の心を占めている。
中学一年のときはイジメにあい、親友を失った。
中学二年のときはもうイジメられないよう、必死に武道に打ち込んだ。
中学三年のときは暴力沙汰を起こし、両親が離婚。中学にはいられなくなり、逃げるように転校した。転校先は何の思い出もつくれないまま、卒業した。
中学には苦い思い出しかないが、俺も母校に帰ったとき、白部達のように懐かしい気持ちになるのだろうか? まあ、母校は俺のことを絶対に歓迎はしないだろうがな。
「藤堂先輩、黄昏れていないでさっさといこうぜ。来客用のスリッパはこっちなんで」
いつの間にか、白部達は校舎の玄関口へと向かい、庄川は俺をせかしてくる。昇降口は全てのドアが閉まっていて、鍵が閉まっているみたいだな。
「藤堂先輩、何かあったんですか?」
上春は心配げに俺の顔色をうかがっている。
俺は今考えていたことを頭の片隅によせ、当たり障りのないことを口にした。
「中学の時のことを思い出していただけだ。上春はどうだ? 自分が中学にいたときのこと、思い出さなかったか?」
上春は目を細め、校舎を見上げる。
「思い出しました。まだ一年もたっていないのに、すごく懐かしい気持ちになります。三年も通っていたのに、かなり昔のことのように感じて……」
上春はいい思い出があるみたいだな。ここで否定するようなことを言えば、上春の表情が曇るので、俺は同意することにした。
「俺もそうだ。朝乃宮はどうだ?」
朝乃宮は肩をすくめ、何も語らない。
朝乃宮も、中学にはあまり思い出がないのだろうか?
そんなことを考えていたら、上春が慌ててフォローしてきた。
「ふ、藤堂先輩は中学校のとき、何の部活に入っていたんですか? それとも、中学も風紀員をしていたとか? 私はですね……」
上春はまるで何かを誤魔化すかのように話し出す。俺は特に口を挟まず、上春の話に耳を傾けながら、校舎の玄関口へと向かった。
校舎の中は大分時間がたっているせいか、少しさびれた感じがする。だが、その汚れがしみついた感が逆に生活の息吹を感じる。
毎年、多くの生徒がここに入学し、卒業していく。
何年も何年も繰り返し、蓄積され、しみついた雰囲気は新校舎では味わえない趣がある。
俺達は誰もいない廊下を歩き、職員室へと向かう。白部達はまず、恩師に挨拶に行き、校舎の中を移動する許可をもらいにいく。
昔の事件の調査をしたいとバカ正直に言ってしまっては、断れる可能性が高いからな。適当な理由をつけるのだろう。
俺達は白部達が許可をもらうまで特にやることがないので、上春と朝乃宮に今後について話をすることにした。
「藤堂先輩、これからのことですけど……」
上春は少し心配げに職員室に視線を向けている。これから話す内容は白部達には聞かれたくないからな。三人がいないうちに最終確認しておきたい。
問題なのは、井波戸と庄川。この二人をどうするのかだ。
ここに来る前、打ち合わせたことを再度確かめる。
「上春、打ち合わせ通りに頼む。いけるか?」
「……やってみます」
上春は無理矢理笑顔を作り、拳をぎゅっと握っている。
ぶっつけ本番だからな、不安はあるのだろう。だが、それを克服し、上春は頑張ってくれている。
こういった後輩の頑張りをみると、こっちも負けられない気持ちになるな。
「咲~。ほんま、けなげなお人やね」
「ちょ! ちーちゃん! 抱きつかないで!」
上春を後ろから抱きつく朝乃宮の姿を見て、脱力してしまう。きっと朝乃宮は上春の緊張と、上春は一人ではないことを分からせるためにわざとやっているのだろう。
本当に仲睦まじい二人だ。
「いや~いいっすね、藤堂先輩。目の保養になります」
「……庄川君は職員室にいかなくていいのか?」
今の話、庄川には聞こえないよう小声でやりとしたが、警戒することに超したことはない。
俺は慎重に対応する。そんな俺の気持ちとは裏腹に、庄川はおどけてみせている。
「俺はやんちゃばかりしてましたから。職員室って苦手で」
職員室が得意というヤツはいないとは思うが。
庄川の気持ちはなんとなく分かるので、俺もつられて笑ってしまった。
庄川と話していると、白部達が戻ってきた。
「藤堂先輩。校舎内での調査の許可をもらってきました。理由は懐かしいから校舎の中を歩きたいって言っただけなんですけどね」
平村がぺろっと舌を出す。俺はその理由で十分だと思う。昔の事件をほじくりかえすのは先生方にとって喜ばしいことではないからな。
さて、ここからが本番だ。
俺は事件の捜査を円滑に行うため、ある提案をここにいる全員にする。
「ここからは二手に分かれよう。俺と白部さん、平村さんで腕時計盗難事件のおさらいをする。当時の足取りから事件を見直し、何か新しい発見がないか捜査してみる。上春と朝乃宮、井波戸さんは、井波戸さんの調査内容を再度確認してくれ。井波戸さんの調査に何か見落としがないか検討してほしい」
「別に二手に分かれる必要なんてないと思うんですけど。そう複雑な事件ではありませんし、私がいたほうが確実に当時のこと、話せますよ? 時間の無駄だと思います」
俺の案に井波戸が反対してきた。
井波戸の意見は予測していたので、言い訳も考えてある。
「井波戸さんがいると先入観をもってしまうからな。なるべくなら、真新しい気持ちで調査したい。そっちの方が新たな事実を見つけることができる可能性が高いだろ? それとも、井波戸さんは自分の調査に自信がないのか?」
「相変わらず人の神経を逆なでするのがうまいですね。でも、いいですよ。その挑発、乗ってあげます。私はこの事件の調査に手を抜いたわけでも、見落としもないと確信しています。親友のために全力を尽くしましたから。結果、親友の無実を証明できませんでしたけどね、奏水、私のこと恨んでいる?」
白部は首を横に振り、井波戸の質問を否定する。
「美花里は私達のことで頑張ってくれた。だから、恨むことなんて絶対にない。でも、美花里に頼りすぎてた。今度は私達がしっかりと調査するから」
「……頑張ってね」
これで二手に別れて調査できるな。
問題は……。
「あ、あの……俺はどっちにいけば……」
そう、庄川をどっちに参加してもらうかだ。
もちろん、俺の中では決まっていて、上春と朝乃宮のは許可をもらっている。
庄川は……。
「俺達と一緒に来てくれ」
「えっ?」
俺の言葉に、上春と朝乃宮を除く全員が驚いていた。
平村は戸惑ったような目で、白部は非難するような目で俺を見つめている。
少し居心地が悪いが、その視線を無視し、庄川に問いかける。
「どうだ?」
「べ、別にいいっすけど」
これで決まったな。
俺と庄川、白部、平村の四人のグループと、上春と朝乃宮と井波戸の三人のグループで調査することになった。
上春達が去って行った後、早速、白部が俺に問いかけてきた。
「どうして部外者を呼んだの?」
「お、俺、部外者扱いっすか? キビシー」
オーバーアクションをとる庄川に、白部は鋭い目つきで睨んでいる。庄川は本気でビビっていた。
すまんな、庄川。
庄川がここに来た理由と確かめたいことがある。
俺は庄川をこっちのグループに入れた理由を、確かめたいとあわせて説明する。
「白部さん、庄川君をこっちに呼んだのは、彼から話を聞きたいからだ。庄川君、キミはこの学校の出身だな?」
「……そうっすけど、やっぱり分かっちゃいました?」
庄川はこの学校の玄関の場所を知っていて、先生方に苦手意識を持っていた。これだけでも、庄川がこの学校の出身者であることが推測できるが、他にも理由がある。
俺は庄川がこの学校の出身者であると思ったきっかけは……。
「まあな。前に掃除ロッカーの事で尋ねたとき、言っていただろ。『人ってあそこまで変われるのかと思うとぞっとするわ、マジで。信じられないっすよ』って」
「言いましたけど、それが?」
「人ってあそこまで変われるのか。この一言で俺は庄川君が白部さんと中学のときから知り合いだったと推測できたんだ」
「?」
頭に疑問符を浮かべている庄川に、俺は簡潔に自分の推理を庄川に話してみる。
「人ってあそこまで変われるというのはつまり、平村さんと仲良しだった白部さんが、裏切られたことで接し方が百八十度変化し、平村さんをいじめるようになった事を指していたんだろ? 態度が変わったとは、そういうことだよな?」
「そうっすけど……ああっ、そういうこと」
庄川は俺の言いたいことが分かってくれたようだ。
白部が平村をイジメだしたのは腕時計盗難事件の後だ。つまり、中学のときになる。
もし、庄川と白部が高校の時に知り合ったとなると、白部は平村をいじめているので、あそこまで変われるとは言えない。
態度が変わったと言えるのは、白部と平村の仲がよかった事を知っていなければ言えるはずがない。
だから、俺は庄川は白部と同じ中学の出身だと気づいた。
もちろん、俺の推理が間違っていないか、左近に頼んで裏はとってある。それに黒幕が庄川だってことも考えていたからだ。
その理由は……。
「それに庄川君の事はいろいろと調べさせてもらった。事件が起きたとき、庄川君も同じ体育だったこともな」
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