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二十八章
二十八話 アンズ -疑惑- その二
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「……ってわけです。ぐすん」
「そう……それは大変だったね」
「馬淵せぇんぱ~い……」
やっぱり、馬淵先輩は優しい。私の話をしっかりと聞いてくれる。そして、慰めてくれる。イケメン~。
「ただ伊藤が藤堂よりも劣っていたって話だろうが。後から現れたヤツに負けるなんて、お前、今まで何をしていたんだ?」
「この正直者! 私はみんなの為に頑張っていたんです!」
やっぱり、二上先輩はキビシー! 私の話をしっかり聞いてくれる。そして、容赦ない一言で切り捨てる。でも、イケメン……。
はあ……嘆願書を出した時、みんなは私をよくやったって褒めてくれたけど、時が過ぎればただの人ってわけね。
本当、世の中は残酷。
「まあまあ、るい。いいじゃない。伊藤さんがいてくれるだけでみんなのテンションがあがるよ。勿論、僕もね。よかったら、見ていってくれないかな?」
「……すみません。本当は馬淵先輩に用があってきたんです」
まぶしい……馬淵先輩のピュアアイに優しいお言葉。自分が穢れてみえちゃう。スネているのは本当だけど、それを愚痴る為にここにいるわけじゃない。
私がここで馬淵先輩を待っていたのは、あることを伝える為。その前に確認したいことがある。
「僕に用? なにかな?」
「馬淵先輩の出し物は合唱でいいんですよね?」
私の問いに馬淵先輩はうなずく。当初、馬淵先輩達のグループは同性愛者を護る為に作られた集団と聞かされていた。
でも、本当は私を騙すための集まりだった。
だけど、私達の説得で馬淵先輩は自分の想い人、本庄先輩の為に何かできることをすると約束してくれた。それが合唱。
グループの名前も私の考えた『スターフィッシュ(仮)』から、『One for all, All for one』に変更。みんなで一人の女性、本庄先輩と友達である馬淵先輩の為に行動するという意味。
みんなが馬淵先輩の為に行動するのは、馬淵先輩がみんなの為に行動してきたから。馬淵先輩の親切に友情をもって応える。
格好いいよね。しかも、愛した一人の女性の為なんだもん。フラれても想い続ける。すごいことだと思う。
人からは未練がましいやストーカー等、後ろ指を指される可能性があるのに、それでも頑張れるのは覚悟がいると思う。
だって、自分の一方的な想いだし、好きな相手が迷惑だと思われたら腰が引けちゃうもん。
「うん。ゆずきは音楽が好きだから、歌で想いを伝えることができたらって。青島祭の出し物はビデオカメラで録画されるし、ネットでもアップされる。もし、ゆずきがこの学校のことを思いだした時、目に触れることがあれば、伝わると思って」
「まあ、可能性は低いだろうな。本庄にとって、この学校での出来事は思いだしたくはあるまい。だが、可能性がわずかにある以上、やってみる価値はある」
二上先輩、さりげなく馬淵先輩をフォローしているよね。私にもあの百分の一でもいいから優しくしてほしい。
本庄先輩は現在、パリに留学中。もちろん、この学校に戻ってくるつもりはない。
押水先輩の失恋からの行動らしいけど、一途な点では馬淵先輩と本庄先輩はお似合いだと思う。
間接的に二人を傷つけてしまった私に何ができるのか?
それを伝えよう。
「大丈夫ですよ、馬淵先輩。その想いは絶対に届きますから」
「ありがとう、伊藤さん。伊藤さんのおかげで僕は前へ進むことができる。いつ届くかなんて分からないけど、今やれることをやってみるよ。それが、この騒動に巻き込んだみんなへの贖罪と僕自身のケジメだから」
馬淵先輩って本当にやさしいよね。みんなは自分の意志で馬淵先輩に手伝うって決めた。
だから、馬淵先輩に責任はないのに。
最後はみんな、馬淵先輩に逆らっちゃったけど、それは馬淵先輩が人を騙す行為をしてほしくなかったから、人を騙すことで馬淵先輩が傷つくのを見たくなかったから止めた。
みんな、馬淵先輩が好きだから、友達だから止めるた。
そんな馬淵先輩に一つくらい、いいことがあってもいいよね?
「頑張ってくださいね。本番当日、本庄先輩に格好悪いところ、見せちゃダメですよ」
「本番当日? 見せちゃダメ? どういうこと?」
「まさか……伊藤、説得に成功したのか?」
「はい。秋庭先輩のおかげです」
私は二上先輩に向かってVサインをしてみせる。あっ、二上先輩が笑ってくれた。
馬淵先輩が戸惑っているみたいだし、朗報は早く伝えなきゃね。
「馬淵先輩。青島祭に本庄先輩はこの学校に戻ってきます。本人から了承をいただきました!」
「……どうして」
「実はですね……」
私は事の顛末を話すことにした。
「……というわけで私と馬淵先輩達は和解したのでした。めでたしめでたし」
「すごいね、伊藤さん! 流石だよ!」
獅子王さんと古見君の劇の練習がひと段落つき、先輩と交えて休憩に入っていた。そのとき、話題になったのが馬淵先輩達の事。
獅子王さん達には馬淵先輩の事を話していたので、どうなったのか気分転換がてら話していたんだけど、古見君しか興味を持ってもらえない。
獅子王さんは基本、他人の事なんてどうでもいいスタンスだし、先輩はその場にいたから知っている。
園田先輩は演劇部に戻ったからここにいない。
ううっ、気分転換にならなかったかな? 古見君は喜んでくれているけど。
「馬淵先輩、ロマンチストですね」
「そうだよね! 一人の女性を想って歌うなんて、ちょっと憧れますよね~」
古見君はちゃんと分かっていらっしゃる! 私も先輩に想われたい。
ちらっと先輩を見ると、休憩時間中なのに小物を作っている。がっかりだよ。
「後ろ向きなだけじゃねえか。本人はその場にいない、録画されてHPにアップされても、いつ気付くかわからんものを待ってどうする? 意味ねえだろ?」
「もう、獅子王さん! 空気読めてない!」
男の子ってどうしてこう現実的なの! つまんない!
いいじゃない! 好きな女の子の為に頑張る男の子って私はいいと思う。素敵だよ。
「うせえな。ほのか、お前は詰めがあまちしげるなんだよ。そんなもん、ただの自己満足だろ? やるんならとことんやれ」
「で、でも……本庄先輩はパリにいますし、それにパリのどこにいるのか、連絡すら取れないんですよ?」
私だって、できることなら馬淵先輩と本庄先輩を会わせてあげたい。でも、どこにいるかも分からない、しかも外国ではお手上げ侍。
ヤダ、獅子王さんの死語がうつっちゃった。
「その言いようだと、本人と連絡が取れれば連れてこれると言いたげだな」
「い、いや、そこまで言ってませんけど……もう、獅子王さん、何が言いたいんですか! 分かるんですか? 本庄先輩の居場所」
分かるわけがない。意地悪ばかり言うんだから、もう! 獅子王さんだって何もできないくせに。
「分かるぞ」
「そうですよね、分かるんなら苦労……って! 今なんと!」
「だから、知ってるつーの。本庄ゆずきの居場所。俺様を誰だと思ってやがる」
うそ……えっ、なんで? 獅子王財閥ってどんだけすごいの! 信じられないんですけど!
獅子王さんの事だ。嘘じゃなくて本当に知っているんだ。
「獅子王さん、どうして、知っているんですか?」
「本庄恵梨菜って知ってるか?」
本庄恵梨菜? この流れからいうと……。
「本庄先輩のお母さん?」
「そうだ。本庄恵梨菜は世界的に有名なピアニストなんだが、ヨーロッパを拠点として活躍している。そいつが十二月のクリスマス公演で来日してるんだ。娘を連れてな」
「獅子王さんって意外とミーハーなんですね」
「あほたれ。スポンサーが獅子王財閥ってだけだ。金出してやってるんだ。娘と話くらいできるだろ」
「……」
きゅ、急展開すぎてなんてこたえていいのか分からない。
だって、不可能だって思っていたことがこんなにあっさりと……こんなのってあり?
獅子王さんにお願いしてみようかな? でも、私のお願いなんてきいてくれないよね。
前にお願いをきいてもらったことはあったけど、あれは偶然だったし。いきなりのことで獅子王さんと交渉できるものが何一つない。
でも、このチャンスはなんとかモノにしたい。
「獅子王先輩。本庄先輩に会わせていただくことはできませんか?」
今まで黙っていた先輩が、獅子王さんに頭を下げてお願いしてくれた。
先輩……ありがとう。でも、ただでお願いをきいてくれる獅子王さんではないから。気持ちはすごくうれしいけど……。
「いいぜ。特別に会わせてやる」
「ええええええええっ! うそでしょ? 獅子王さん、もうすぐ死んじゃうんですか? だから、お願いをきいてくれるんですか?」
「今すぐお前が死ぬか、ほのか?」
「申し訳ありません調子に乗ってしまいましただから私のお願いきいていただいてもよろしいでしょうか?」
私はすぐさま頭を下げてお願いした。
いったぁあああああああああああああああ!
下げた頭を鷲掴みしてきたよ、この人! 痛いよ!
「伊藤さんって前から思っていたんだけど、チャレンジャーだよね?」
「ただの自傷癖《じしょうへき》なだけだ。くれぐれもマネしないでくれ」
いや、違いますから! 古見君に変なことを教えないでください、先輩!
「それで? 会いにいくのか、いかねえのか。さっさと決めろ」
「いきます! いかせてください! でも、待ってもらえませんか? 本庄先輩に会わせたい人がいるんです」
「いいぜ。準備できたら言え。用意しておいてやる」
獅子王さん、本当に変わったよね。以前の獅子王さんなら絶対に考えられなかったよ。
やっぱり、古見君を好きになってからどんどんいい方向に変わってきてる。やっぱり、恋愛はいいよね。
「ありがとうございます、獅子王さん」
「いいってことよ。俺達、マブダチだろ?」
「……」
ううん……ドヤ顔で言う獅子王さんが格好悪く思えてきた。とにかく、獅子王さんの気が変わらないうちに、準備しなきゃ。
ちなみにマブダチとは本物の友達って意味だよ。
「そう……それは大変だったね」
「馬淵せぇんぱ~い……」
やっぱり、馬淵先輩は優しい。私の話をしっかりと聞いてくれる。そして、慰めてくれる。イケメン~。
「ただ伊藤が藤堂よりも劣っていたって話だろうが。後から現れたヤツに負けるなんて、お前、今まで何をしていたんだ?」
「この正直者! 私はみんなの為に頑張っていたんです!」
やっぱり、二上先輩はキビシー! 私の話をしっかり聞いてくれる。そして、容赦ない一言で切り捨てる。でも、イケメン……。
はあ……嘆願書を出した時、みんなは私をよくやったって褒めてくれたけど、時が過ぎればただの人ってわけね。
本当、世の中は残酷。
「まあまあ、るい。いいじゃない。伊藤さんがいてくれるだけでみんなのテンションがあがるよ。勿論、僕もね。よかったら、見ていってくれないかな?」
「……すみません。本当は馬淵先輩に用があってきたんです」
まぶしい……馬淵先輩のピュアアイに優しいお言葉。自分が穢れてみえちゃう。スネているのは本当だけど、それを愚痴る為にここにいるわけじゃない。
私がここで馬淵先輩を待っていたのは、あることを伝える為。その前に確認したいことがある。
「僕に用? なにかな?」
「馬淵先輩の出し物は合唱でいいんですよね?」
私の問いに馬淵先輩はうなずく。当初、馬淵先輩達のグループは同性愛者を護る為に作られた集団と聞かされていた。
でも、本当は私を騙すための集まりだった。
だけど、私達の説得で馬淵先輩は自分の想い人、本庄先輩の為に何かできることをすると約束してくれた。それが合唱。
グループの名前も私の考えた『スターフィッシュ(仮)』から、『One for all, All for one』に変更。みんなで一人の女性、本庄先輩と友達である馬淵先輩の為に行動するという意味。
みんなが馬淵先輩の為に行動するのは、馬淵先輩がみんなの為に行動してきたから。馬淵先輩の親切に友情をもって応える。
格好いいよね。しかも、愛した一人の女性の為なんだもん。フラれても想い続ける。すごいことだと思う。
人からは未練がましいやストーカー等、後ろ指を指される可能性があるのに、それでも頑張れるのは覚悟がいると思う。
だって、自分の一方的な想いだし、好きな相手が迷惑だと思われたら腰が引けちゃうもん。
「うん。ゆずきは音楽が好きだから、歌で想いを伝えることができたらって。青島祭の出し物はビデオカメラで録画されるし、ネットでもアップされる。もし、ゆずきがこの学校のことを思いだした時、目に触れることがあれば、伝わると思って」
「まあ、可能性は低いだろうな。本庄にとって、この学校での出来事は思いだしたくはあるまい。だが、可能性がわずかにある以上、やってみる価値はある」
二上先輩、さりげなく馬淵先輩をフォローしているよね。私にもあの百分の一でもいいから優しくしてほしい。
本庄先輩は現在、パリに留学中。もちろん、この学校に戻ってくるつもりはない。
押水先輩の失恋からの行動らしいけど、一途な点では馬淵先輩と本庄先輩はお似合いだと思う。
間接的に二人を傷つけてしまった私に何ができるのか?
それを伝えよう。
「大丈夫ですよ、馬淵先輩。その想いは絶対に届きますから」
「ありがとう、伊藤さん。伊藤さんのおかげで僕は前へ進むことができる。いつ届くかなんて分からないけど、今やれることをやってみるよ。それが、この騒動に巻き込んだみんなへの贖罪と僕自身のケジメだから」
馬淵先輩って本当にやさしいよね。みんなは自分の意志で馬淵先輩に手伝うって決めた。
だから、馬淵先輩に責任はないのに。
最後はみんな、馬淵先輩に逆らっちゃったけど、それは馬淵先輩が人を騙す行為をしてほしくなかったから、人を騙すことで馬淵先輩が傷つくのを見たくなかったから止めた。
みんな、馬淵先輩が好きだから、友達だから止めるた。
そんな馬淵先輩に一つくらい、いいことがあってもいいよね?
「頑張ってくださいね。本番当日、本庄先輩に格好悪いところ、見せちゃダメですよ」
「本番当日? 見せちゃダメ? どういうこと?」
「まさか……伊藤、説得に成功したのか?」
「はい。秋庭先輩のおかげです」
私は二上先輩に向かってVサインをしてみせる。あっ、二上先輩が笑ってくれた。
馬淵先輩が戸惑っているみたいだし、朗報は早く伝えなきゃね。
「馬淵先輩。青島祭に本庄先輩はこの学校に戻ってきます。本人から了承をいただきました!」
「……どうして」
「実はですね……」
私は事の顛末を話すことにした。
「……というわけで私と馬淵先輩達は和解したのでした。めでたしめでたし」
「すごいね、伊藤さん! 流石だよ!」
獅子王さんと古見君の劇の練習がひと段落つき、先輩と交えて休憩に入っていた。そのとき、話題になったのが馬淵先輩達の事。
獅子王さん達には馬淵先輩の事を話していたので、どうなったのか気分転換がてら話していたんだけど、古見君しか興味を持ってもらえない。
獅子王さんは基本、他人の事なんてどうでもいいスタンスだし、先輩はその場にいたから知っている。
園田先輩は演劇部に戻ったからここにいない。
ううっ、気分転換にならなかったかな? 古見君は喜んでくれているけど。
「馬淵先輩、ロマンチストですね」
「そうだよね! 一人の女性を想って歌うなんて、ちょっと憧れますよね~」
古見君はちゃんと分かっていらっしゃる! 私も先輩に想われたい。
ちらっと先輩を見ると、休憩時間中なのに小物を作っている。がっかりだよ。
「後ろ向きなだけじゃねえか。本人はその場にいない、録画されてHPにアップされても、いつ気付くかわからんものを待ってどうする? 意味ねえだろ?」
「もう、獅子王さん! 空気読めてない!」
男の子ってどうしてこう現実的なの! つまんない!
いいじゃない! 好きな女の子の為に頑張る男の子って私はいいと思う。素敵だよ。
「うせえな。ほのか、お前は詰めがあまちしげるなんだよ。そんなもん、ただの自己満足だろ? やるんならとことんやれ」
「で、でも……本庄先輩はパリにいますし、それにパリのどこにいるのか、連絡すら取れないんですよ?」
私だって、できることなら馬淵先輩と本庄先輩を会わせてあげたい。でも、どこにいるかも分からない、しかも外国ではお手上げ侍。
ヤダ、獅子王さんの死語がうつっちゃった。
「その言いようだと、本人と連絡が取れれば連れてこれると言いたげだな」
「い、いや、そこまで言ってませんけど……もう、獅子王さん、何が言いたいんですか! 分かるんですか? 本庄先輩の居場所」
分かるわけがない。意地悪ばかり言うんだから、もう! 獅子王さんだって何もできないくせに。
「分かるぞ」
「そうですよね、分かるんなら苦労……って! 今なんと!」
「だから、知ってるつーの。本庄ゆずきの居場所。俺様を誰だと思ってやがる」
うそ……えっ、なんで? 獅子王財閥ってどんだけすごいの! 信じられないんですけど!
獅子王さんの事だ。嘘じゃなくて本当に知っているんだ。
「獅子王さん、どうして、知っているんですか?」
「本庄恵梨菜って知ってるか?」
本庄恵梨菜? この流れからいうと……。
「本庄先輩のお母さん?」
「そうだ。本庄恵梨菜は世界的に有名なピアニストなんだが、ヨーロッパを拠点として活躍している。そいつが十二月のクリスマス公演で来日してるんだ。娘を連れてな」
「獅子王さんって意外とミーハーなんですね」
「あほたれ。スポンサーが獅子王財閥ってだけだ。金出してやってるんだ。娘と話くらいできるだろ」
「……」
きゅ、急展開すぎてなんてこたえていいのか分からない。
だって、不可能だって思っていたことがこんなにあっさりと……こんなのってあり?
獅子王さんにお願いしてみようかな? でも、私のお願いなんてきいてくれないよね。
前にお願いをきいてもらったことはあったけど、あれは偶然だったし。いきなりのことで獅子王さんと交渉できるものが何一つない。
でも、このチャンスはなんとかモノにしたい。
「獅子王先輩。本庄先輩に会わせていただくことはできませんか?」
今まで黙っていた先輩が、獅子王さんに頭を下げてお願いしてくれた。
先輩……ありがとう。でも、ただでお願いをきいてくれる獅子王さんではないから。気持ちはすごくうれしいけど……。
「いいぜ。特別に会わせてやる」
「ええええええええっ! うそでしょ? 獅子王さん、もうすぐ死んじゃうんですか? だから、お願いをきいてくれるんですか?」
「今すぐお前が死ぬか、ほのか?」
「申し訳ありません調子に乗ってしまいましただから私のお願いきいていただいてもよろしいでしょうか?」
私はすぐさま頭を下げてお願いした。
いったぁあああああああああああああああ!
下げた頭を鷲掴みしてきたよ、この人! 痛いよ!
「伊藤さんって前から思っていたんだけど、チャレンジャーだよね?」
「ただの自傷癖《じしょうへき》なだけだ。くれぐれもマネしないでくれ」
いや、違いますから! 古見君に変なことを教えないでください、先輩!
「それで? 会いにいくのか、いかねえのか。さっさと決めろ」
「いきます! いかせてください! でも、待ってもらえませんか? 本庄先輩に会わせたい人がいるんです」
「いいぜ。準備できたら言え。用意しておいてやる」
獅子王さん、本当に変わったよね。以前の獅子王さんなら絶対に考えられなかったよ。
やっぱり、古見君を好きになってからどんどんいい方向に変わってきてる。やっぱり、恋愛はいいよね。
「ありがとうございます、獅子王さん」
「いいってことよ。俺達、マブダチだろ?」
「……」
ううん……ドヤ顔で言う獅子王さんが格好悪く思えてきた。とにかく、獅子王さんの気が変わらないうちに、準備しなきゃ。
ちなみにマブダチとは本物の友達って意味だよ。
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