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第五部 愛しいキミの為に私ができること 後編 二十四章
二十四話 ハクサンチドリ -誤解- その一
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お昼休みが始まってすぐ、私は風紀委員室に向かっていた。今朝の出来事について、先輩達と話し合う為に。
今朝、青島祭の出し物の練習をした後、古見君と昇降口に入ろうとしたとき、A4の紙が空から降ってきた。その紙には、『号外! BL学園の同性愛者について』と見出しが書かれていた。
その記事の内容は、この学園にいる同性愛者の名前とクラスが書かれていた。その内容には見覚えがあった。以前、橘先輩が差し止めした新聞部の記事そのものだった。
ちなみにBL学園とは、みなさんが想像するようなものではなく、BLUE ISLAND LIBERTYの略であり、青島の自由という意味で最近つけられた学校の名前。
BL学園は全国で有名になっているのをネットの記事で読んだ。本当にすごい名前だと思う。まるで漫画の世界のよう……ええっと、話がそれたから戻すね。
この新聞記事が露見した時、私は目の前が暗くなるのを感じた。
だって、この記事が出たら同性愛者である獅子王一さんと古見ひなた君に迷惑がかかるから。
獅子王一さん。
彫刻のような引き締まった体型と日本人離れした彫りの深い顔の二つ上の先輩。日本有数の財閥の跡取り息子で、ボクシング部のエース。その強さは全国三連覇と成し遂げた負け知らずのボクサー。
イケメンで金持ち、文武両道。でも、我儘大王で俺様で、人を傷つけることに何の躊躇もない人だった。
その性格は獅子王という財閥の重さと、誰も自分の事を見てくれない、獅子王としか認識されない辛さから形成されたものだった。
でも、そんな獅子王さんを獅子王というビックネームではなく、一個人として見てくれる人が現れた。
それが古見ひなた君。
ショートボブのサラサラヘアー。小顔でシミ一つないツルツルのたまご肌。細長い眉毛にぱっちり二重。女の子顔負けの美少年。
その容姿から男の子からも女の子からもいじめにあっていたんだけど、それを助けたの獅子王さんだった。
獅子王さんの圧倒的な強さに古見君は憧れて、弟子入りをしようとした。
最初、獅子王さんは古見君を相手にしなかったんだけど、古見君の真摯な姿に徐々に心を動かされていく。
だけど、獅子王さんは古見君に別れを告げてしまう。それはこれ以上、自分の心に踏み込んでほしくない獅子王さんの無意識の防衛だった。
それでも、古見君は諦めずに獅子王さんを待ち続けた。来る日も来る日も獅子王さんに教わったたった一つのこと、ジャブを練習しながら待ち続けていた。
梅が咲く季節になる頃に獅子王さんと古見君は再開し、お互いの気持ちを打ち明け、絆がうまれた。その絆は愛に変わっていくんだけど、その道のりはかなり険しかった。
同性愛。誰にも認められない愛。
嫌がらせは当人達だけではなく、何の罪のない猫にもふりかかった。それだけではない。
風紀委員も先生も獅子王財閥の人も同性愛者を認めずに、二人を別れさせようとした。
風当たりの厳しい中、古見君は同性愛に苦しみ、悩み、獅子王さんと別れる決意する。
獅子王さんも諦めてしまい、私も二人の仲を応援しないよう橘先輩に釘を刺されてしまい、完全に行き詰ってしまった。
それでも、私は諦めきれなかった。本気の恋が否定されるのは納得いかなかった。
そんな私を助けてれたのは風紀委員の御堂愛先輩だった。
ロングの金髪に、鋭い目つき、日本人離れしたプロポーション、同性でさえ惹ひき付ける男気を兼ね備えた一歳上の先輩。
喧嘩も強くて、ボクシング部のみなさんに連勝した記録を持っている。
御堂先輩のアドバイスの元、私は橘先輩に勝負を挑んだ。もし、私が勝てば、獅子王さん達の仲を取り持つことを手伝ってもらう。
負ければ、金輪際、獅子王さん達には関わらないという条件で。
私一人ではもう限界だった。だから、橘先輩に、先輩に助力を求めた。
始めは橘先輩は相手にしてくれなかったけど、御堂先輩と朝乃宮先輩の後押しのおかげで、勝負は受けてもらえることになった。
私の対戦相手は五人。風紀委員の武闘派である長尾先輩、御堂先輩、朝乃宮先輩、先輩の四人と橘先輩。
この五人に勝つ為に、私は明日香やるりか、獅子王さん達の力を借りて、策を練り、風紀委員に勝利していく。
その間に古見君を説得し、もう一度、獅子王さんと話し合うことになった。そして、獅子王さんと古見君はお付き合いすることになった。
最後の対戦相手、橘先輩との勝負の内容は、文化祭こと青島祭までに獅子王さん達が別れなければ私の勝ち、別れたら橘先輩の勝ち。
私は橘先輩との勝負に勝つ為に、青島祭で劇をすることを獅子王さん達に提案した。
本当の目的は、劇の中だけでも堂々と二人をつきあわせたかった事と、楽しい思い出を作って、二人の絆を強くしたかった。
二人は賛同してくれて、劇をやることになったんだけど、素人の私には劇をするにはどうしたらいいのか分からなかった。
そこで演劇部の園田先輩の力を借りて、劇に必要な事を教わった。
園田先輩は演劇には妥協を許さない人で、何度も何度も厳しい指導が続いた。
それでも、古見君と獅子王さんは頑張って劇を完成させようと努力し続けた。
橘先輩との勝負は順調に進んでいたんだけど、そこで問題が起きてしまった。
それが今回の新聞部の号外ってわけ。問題を解決するために今、私は風紀委員室に向かっている。
廊下には青島祭の出し物に使う備品がいろいろと置かれている。青島祭の日は近い。
獅子王さん達は劇の追い込みの時期に入っているのに、とんだ邪魔が入ってきた。
はやる気持ちを抑えて、私は風紀委員室にたどり着く。
「失礼します」
部屋に入ると、二人の風紀委員が座っていた。
一人は、私の相棒で片思いの相手、藤堂正道先輩。
身長百九十の大柄な体格で、鋭い目つき、短髪、二年生の男の子。『不良狩り』の異名を持つ武闘派の風紀委員。
先輩とはハーレム騒動で知り合い、私達は手を組んで一緒に問題を解決した。
その後も、私と先輩はコンビを組んで様々な事件を解決していった。
先輩とは一度、同性愛のことで意見が食い違い、コンビを解消したけど、なんとか仲直りして再結成。
今も私の想いは先輩に届かないけど、あきらめきれずに頑張っている。
もう一人は橘左近先輩。
中肉中背で整った顔立ちに眉の少し上までの前髪と耳が出るくらいの髪の長さ、優等生っぽく見えるけど、腹黒い風紀委員長。
私が風紀委員に関わるきっかけとなった人で、同性愛には反対の意見をもっている。
そのことで対立中だけど、また仲良くやっていきたいと思っている。橘先輩にはいろいろと迷惑ばかりかけてるし、ちゃんと謝りたい。
青島祭が終わり、同性愛問題に一区切りがついたとき、私達の関係はどうなっているのかな? また仲良くやっていきたいんだけど、流石にそれは厚かましいよね?
おっと、今は感傷に浸っている場合じゃない。
私はいつもの席についた。
今朝、青島祭の出し物の練習をした後、古見君と昇降口に入ろうとしたとき、A4の紙が空から降ってきた。その紙には、『号外! BL学園の同性愛者について』と見出しが書かれていた。
その記事の内容は、この学園にいる同性愛者の名前とクラスが書かれていた。その内容には見覚えがあった。以前、橘先輩が差し止めした新聞部の記事そのものだった。
ちなみにBL学園とは、みなさんが想像するようなものではなく、BLUE ISLAND LIBERTYの略であり、青島の自由という意味で最近つけられた学校の名前。
BL学園は全国で有名になっているのをネットの記事で読んだ。本当にすごい名前だと思う。まるで漫画の世界のよう……ええっと、話がそれたから戻すね。
この新聞記事が露見した時、私は目の前が暗くなるのを感じた。
だって、この記事が出たら同性愛者である獅子王一さんと古見ひなた君に迷惑がかかるから。
獅子王一さん。
彫刻のような引き締まった体型と日本人離れした彫りの深い顔の二つ上の先輩。日本有数の財閥の跡取り息子で、ボクシング部のエース。その強さは全国三連覇と成し遂げた負け知らずのボクサー。
イケメンで金持ち、文武両道。でも、我儘大王で俺様で、人を傷つけることに何の躊躇もない人だった。
その性格は獅子王という財閥の重さと、誰も自分の事を見てくれない、獅子王としか認識されない辛さから形成されたものだった。
でも、そんな獅子王さんを獅子王というビックネームではなく、一個人として見てくれる人が現れた。
それが古見ひなた君。
ショートボブのサラサラヘアー。小顔でシミ一つないツルツルのたまご肌。細長い眉毛にぱっちり二重。女の子顔負けの美少年。
その容姿から男の子からも女の子からもいじめにあっていたんだけど、それを助けたの獅子王さんだった。
獅子王さんの圧倒的な強さに古見君は憧れて、弟子入りをしようとした。
最初、獅子王さんは古見君を相手にしなかったんだけど、古見君の真摯な姿に徐々に心を動かされていく。
だけど、獅子王さんは古見君に別れを告げてしまう。それはこれ以上、自分の心に踏み込んでほしくない獅子王さんの無意識の防衛だった。
それでも、古見君は諦めずに獅子王さんを待ち続けた。来る日も来る日も獅子王さんに教わったたった一つのこと、ジャブを練習しながら待ち続けていた。
梅が咲く季節になる頃に獅子王さんと古見君は再開し、お互いの気持ちを打ち明け、絆がうまれた。その絆は愛に変わっていくんだけど、その道のりはかなり険しかった。
同性愛。誰にも認められない愛。
嫌がらせは当人達だけではなく、何の罪のない猫にもふりかかった。それだけではない。
風紀委員も先生も獅子王財閥の人も同性愛者を認めずに、二人を別れさせようとした。
風当たりの厳しい中、古見君は同性愛に苦しみ、悩み、獅子王さんと別れる決意する。
獅子王さんも諦めてしまい、私も二人の仲を応援しないよう橘先輩に釘を刺されてしまい、完全に行き詰ってしまった。
それでも、私は諦めきれなかった。本気の恋が否定されるのは納得いかなかった。
そんな私を助けてれたのは風紀委員の御堂愛先輩だった。
ロングの金髪に、鋭い目つき、日本人離れしたプロポーション、同性でさえ惹ひき付ける男気を兼ね備えた一歳上の先輩。
喧嘩も強くて、ボクシング部のみなさんに連勝した記録を持っている。
御堂先輩のアドバイスの元、私は橘先輩に勝負を挑んだ。もし、私が勝てば、獅子王さん達の仲を取り持つことを手伝ってもらう。
負ければ、金輪際、獅子王さん達には関わらないという条件で。
私一人ではもう限界だった。だから、橘先輩に、先輩に助力を求めた。
始めは橘先輩は相手にしてくれなかったけど、御堂先輩と朝乃宮先輩の後押しのおかげで、勝負は受けてもらえることになった。
私の対戦相手は五人。風紀委員の武闘派である長尾先輩、御堂先輩、朝乃宮先輩、先輩の四人と橘先輩。
この五人に勝つ為に、私は明日香やるりか、獅子王さん達の力を借りて、策を練り、風紀委員に勝利していく。
その間に古見君を説得し、もう一度、獅子王さんと話し合うことになった。そして、獅子王さんと古見君はお付き合いすることになった。
最後の対戦相手、橘先輩との勝負の内容は、文化祭こと青島祭までに獅子王さん達が別れなければ私の勝ち、別れたら橘先輩の勝ち。
私は橘先輩との勝負に勝つ為に、青島祭で劇をすることを獅子王さん達に提案した。
本当の目的は、劇の中だけでも堂々と二人をつきあわせたかった事と、楽しい思い出を作って、二人の絆を強くしたかった。
二人は賛同してくれて、劇をやることになったんだけど、素人の私には劇をするにはどうしたらいいのか分からなかった。
そこで演劇部の園田先輩の力を借りて、劇に必要な事を教わった。
園田先輩は演劇には妥協を許さない人で、何度も何度も厳しい指導が続いた。
それでも、古見君と獅子王さんは頑張って劇を完成させようと努力し続けた。
橘先輩との勝負は順調に進んでいたんだけど、そこで問題が起きてしまった。
それが今回の新聞部の号外ってわけ。問題を解決するために今、私は風紀委員室に向かっている。
廊下には青島祭の出し物に使う備品がいろいろと置かれている。青島祭の日は近い。
獅子王さん達は劇の追い込みの時期に入っているのに、とんだ邪魔が入ってきた。
はやる気持ちを抑えて、私は風紀委員室にたどり着く。
「失礼します」
部屋に入ると、二人の風紀委員が座っていた。
一人は、私の相棒で片思いの相手、藤堂正道先輩。
身長百九十の大柄な体格で、鋭い目つき、短髪、二年生の男の子。『不良狩り』の異名を持つ武闘派の風紀委員。
先輩とはハーレム騒動で知り合い、私達は手を組んで一緒に問題を解決した。
その後も、私と先輩はコンビを組んで様々な事件を解決していった。
先輩とは一度、同性愛のことで意見が食い違い、コンビを解消したけど、なんとか仲直りして再結成。
今も私の想いは先輩に届かないけど、あきらめきれずに頑張っている。
もう一人は橘左近先輩。
中肉中背で整った顔立ちに眉の少し上までの前髪と耳が出るくらいの髪の長さ、優等生っぽく見えるけど、腹黒い風紀委員長。
私が風紀委員に関わるきっかけとなった人で、同性愛には反対の意見をもっている。
そのことで対立中だけど、また仲良くやっていきたいと思っている。橘先輩にはいろいろと迷惑ばかりかけてるし、ちゃんと謝りたい。
青島祭が終わり、同性愛問題に一区切りがついたとき、私達の関係はどうなっているのかな? また仲良くやっていきたいんだけど、流石にそれは厚かましいよね?
おっと、今は感傷に浸っている場合じゃない。
私はいつもの席についた。
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