234 / 531
十八章
十八話 ニゲラ -とまどい- その七
しおりを挟む
「はあ……やってしまった」
詩織達に八つ当たりをしてしまった後、なんとか愛想笑いで場をおさめたけど、先輩とのことは触れないようお互い気遣って、ぎくしゃくしてしまった。
本当に申し訳ないことをしてしまい、情けなくなる。
メールで謝って、返事もきた。これで明日からはまた元通りのはず。そう思いつつ、私は帰路についていた。
寒い……風が素肌に当たり、身を縮めてしまう。少し前まではまだこの時間帯は明るかったのにな……。
秋が終わり、冬がくる。
紅葉した葉が地面に落ち、次の春が来るまで大抵の花は咲かない。
秋と違って冬は寂しいイメージがあるけど、イベントは冬の方が多いと思う。
クリスマス、大晦日、お正月……楽しいイベントはあるんだけど……でも……恋人がいないと寂しい季節……。
はあ……この冬も一人確定。女の子だけのクリスマス会を企画しなきゃ……私も恋人と一緒に甘い時間を過ごしたかったな。
先輩と一緒……は無理だよね。
はあ……なんで、一人になると先輩の事ばかり考えちゃうの?
今は私も先輩も忙しくて、先輩の事を考える時間が少ないけど、青島祭が終わったらどうなるのかな?
これからは先輩と出会っても、目をそらして、顔も合わせることが出来ず、頭を下げて過ごさなきゃいけないのかな。そんなのイヤ……でも、どうしたらいいのか分からない。
もう、何度も自分に問いかけるけど、答えは見つからない。でも、見つかったとき、私と先輩の関係はどうなっているのかな?
想像もつかないまま、私はただ一日一日を生きている。希望もなく、ただ朝日が昇ったら起きて、学園に通って、学園が終わったら家に帰って、ご飯を食べて寝る。
これじゃあ、先輩と会う前の事の私に逆戻り。
毎日が同じことの繰り返しの日々。退屈な日々。作り笑いを浮かべる日々。
なんてつまらない日々なの。恋していた時は毎日が楽しくて、わくわくして、苦しくて、せつなくて……そんないろいろな感情が湧き上がってくる。
先輩のちょっとした仕草にどきどきして、勘違いして、あせって、ときめきを感じて……予測できないことばかりで楽しかった。充実していた。
けど、楽しかった分、失ってしまうと喪失感《そんしつかん》が半端ない。ぽっかりと穴が開いたような、そんな気分になる。
先輩と仲直りしたい。でも、できるの? どうやって? 元に戻ったとしても、私は先輩と恋人になれるの?
恋人になれないのに、先輩と仲良しになっても、想いを押し殺したままずっと先輩のそばにいることができるの? 無理だよ……。
何度も何度も同じことを考えてしまう。他の事に手がつかない。
苦しい……誰か助けてよ……答えを教えてよ……。
目に涙がたまるのを感じながら、必死にこらえる。
「ほのかクン?」
気が付くと、浪花先輩が私の目の前にいた。もしかして、泣いているところを見られた?
私は慌てて笑顔で取り繕う。
「なんですか、浪花先輩」
「いや、その……ほのかクンの麗しい姿が見えたから声をかけたんだけど……泣いてるのかい?」
「……泣いてませんよ」
泣いてなんかいない。それは浪花先輩に言いきかせたのか、自分に言いきかせたのか分からなかった。
ただ、泣いている姿を、情けない姿を誰もに見られたくなかった。
「ほのかクン、何がキミを悲しませているんだい? 僕ならきっとほのかクンの涙を止めることができるよ」
「……てよ」
黒い言いようのない感情がうまれる。
それを必死に歯を食いしばり、手をぎゅっと握り、押さえつける。
涙を止めることができる? 何様のつもり? 何も知らないくせに……何に悩んでいるかも知らないくせに……軽薄《けいはく》な浪花先輩に私の気持ちなんて分かるはずがない。
「恋の悩みかい? それなら、僕が相談にしてほしいな。僕ならほのかクンのこと、大切にするから」
「……めてよ」
相談してほしい? 何を? 私だって分からない。どうしていいのか。どうしたらいいのか。
この感情を押さえつけるには、消え去るには何をしたらいいのか。
「だから、僕とつき……」
「やめて!」
私は想いを吐き出すように浪花先輩に叩きつける。浪花先輩は悪くない。それどころか何の関係もない。
なのに、押さえつけられない。理性も外見も何もかも吹き飛んでしまった。
「浪花先輩に何が分かるんですか! 浪花先輩のようなきれいな人に私の気持ちなんて分かりませんよ!」
「ほ、ほのかクン! 落ち着い……」
「だったら教えてくださいよ! 私、どうしたらいいんですか! どうしたら……どうしたら……先輩の事、先輩の事……」
私はその場に座り込む。言えなかった。
あきらめることができるんですかって。
その一言を言ってしまえば、恋を諦めてしまったって認めてしまうことになる。そんなのはイヤ、イヤ!
耐え難い痛みに、お腹が痛い。助けてよ。お願いだから……。
「ほのかクン、キミは……」
「これはどういうことだ?」
先輩……?
先輩の声に私は顔を上げる。先輩は怒っていた。真っ直ぐ浪花先輩を睨みつけている。私は唖然として先輩を見つめていた。
どうして……。
「浪花、どういうことかと訊いている。警告はしたはずだ」
怖い……。
先輩の本気の怒りに、浪花先輩は訳が分からないといったような戸惑いを見せている。
「ちょ、ちょっと待って! 僕はただ、愛するほのかクンを慰めようとしていただけだよ、ねえ、ほのかクン?」
「……」
「ちょっと、ほのかクン! その沈黙は洒落になっていないから!」
浪花先輩の声に我に返る。
い、いけない。先輩に説明しなきゃ。
「せ、先輩! 浪花先輩が言っていることは本当です!」
「だったら、なぜ、泣きそうな顔をしている?」
言葉が出てこなかった。
なぜ泣きそうな顔をしているのか? それを先輩が言うの?
頭を沸騰させるような怒りが、どうしようもない悲しみが抑えきれない。
言葉が自然と出てくる。
「先輩の……先輩のせいじゃないですか!」
私は先輩を睨みつけ、胸倉をつかむ。言いようのない怒りが、悲しみが私を突き動かしている。
ムリ……押さえつけることができない。
「先輩が! 先輩が! 先輩が……せん……ぱい……が……」
どうして分かってくれないの! どうして気付いてくれないの! どうして……どうして……私は……フラれたの……。
涙が目からあふれ、止まらない。心が痛い。痛い……痛いよ、先輩……。
先輩はあの日のように、私を戸惑っているように見つめているだけ……何も返事をしてくれない。
だから、どうして何も言ってくれないの……言ってくれないと分からないよ……先輩。
先輩の腕が私に差し伸ばされようとしていた。
先輩……?
先輩の手がゆっくりと私に……。
「ちょっと待ちたまえ!」
先輩の手を浪花先輩が振り払う。
浪花先輩が私と先輩の間に立ち、私を守るようにかばっている。
「さっきから見ていれば、藤堂。キミこそがほのかクンを悲しませている原因だろ?」
「……」
「図星か。醜い。自分でほのかクンを傷つけておいてボクに八つ当たりかい? 最低だと思わないのかな? それとも、キミはほのかクンのことを守っているつもり? だったらやめておきたまえ。間違いなく勘違いしているからね。キミでは誰もまもれない。傷つけるだけだ。一生ひとりで生きていけ」
「やめて!」
やめて……やめてよ……先輩を傷つけないで……お願いだから……。
先輩が悲しい顔をしている。少年Aのことを語ってくれたときのような後悔と懺悔に満ちた顔をしている。そんな顔をしてほしくない。
どうして……どうしてこんなことになっちゃうの? 恋愛って楽しいものじゃないの? 苦しいよ……イヤだよ……。
情けない……みっともない……ただ泣きじゃくることしかできないなんて……格好悪い……こんなの私じゃない……私じゃない……。
詩織達に八つ当たりをしてしまった後、なんとか愛想笑いで場をおさめたけど、先輩とのことは触れないようお互い気遣って、ぎくしゃくしてしまった。
本当に申し訳ないことをしてしまい、情けなくなる。
メールで謝って、返事もきた。これで明日からはまた元通りのはず。そう思いつつ、私は帰路についていた。
寒い……風が素肌に当たり、身を縮めてしまう。少し前まではまだこの時間帯は明るかったのにな……。
秋が終わり、冬がくる。
紅葉した葉が地面に落ち、次の春が来るまで大抵の花は咲かない。
秋と違って冬は寂しいイメージがあるけど、イベントは冬の方が多いと思う。
クリスマス、大晦日、お正月……楽しいイベントはあるんだけど……でも……恋人がいないと寂しい季節……。
はあ……この冬も一人確定。女の子だけのクリスマス会を企画しなきゃ……私も恋人と一緒に甘い時間を過ごしたかったな。
先輩と一緒……は無理だよね。
はあ……なんで、一人になると先輩の事ばかり考えちゃうの?
今は私も先輩も忙しくて、先輩の事を考える時間が少ないけど、青島祭が終わったらどうなるのかな?
これからは先輩と出会っても、目をそらして、顔も合わせることが出来ず、頭を下げて過ごさなきゃいけないのかな。そんなのイヤ……でも、どうしたらいいのか分からない。
もう、何度も自分に問いかけるけど、答えは見つからない。でも、見つかったとき、私と先輩の関係はどうなっているのかな?
想像もつかないまま、私はただ一日一日を生きている。希望もなく、ただ朝日が昇ったら起きて、学園に通って、学園が終わったら家に帰って、ご飯を食べて寝る。
これじゃあ、先輩と会う前の事の私に逆戻り。
毎日が同じことの繰り返しの日々。退屈な日々。作り笑いを浮かべる日々。
なんてつまらない日々なの。恋していた時は毎日が楽しくて、わくわくして、苦しくて、せつなくて……そんないろいろな感情が湧き上がってくる。
先輩のちょっとした仕草にどきどきして、勘違いして、あせって、ときめきを感じて……予測できないことばかりで楽しかった。充実していた。
けど、楽しかった分、失ってしまうと喪失感《そんしつかん》が半端ない。ぽっかりと穴が開いたような、そんな気分になる。
先輩と仲直りしたい。でも、できるの? どうやって? 元に戻ったとしても、私は先輩と恋人になれるの?
恋人になれないのに、先輩と仲良しになっても、想いを押し殺したままずっと先輩のそばにいることができるの? 無理だよ……。
何度も何度も同じことを考えてしまう。他の事に手がつかない。
苦しい……誰か助けてよ……答えを教えてよ……。
目に涙がたまるのを感じながら、必死にこらえる。
「ほのかクン?」
気が付くと、浪花先輩が私の目の前にいた。もしかして、泣いているところを見られた?
私は慌てて笑顔で取り繕う。
「なんですか、浪花先輩」
「いや、その……ほのかクンの麗しい姿が見えたから声をかけたんだけど……泣いてるのかい?」
「……泣いてませんよ」
泣いてなんかいない。それは浪花先輩に言いきかせたのか、自分に言いきかせたのか分からなかった。
ただ、泣いている姿を、情けない姿を誰もに見られたくなかった。
「ほのかクン、何がキミを悲しませているんだい? 僕ならきっとほのかクンの涙を止めることができるよ」
「……てよ」
黒い言いようのない感情がうまれる。
それを必死に歯を食いしばり、手をぎゅっと握り、押さえつける。
涙を止めることができる? 何様のつもり? 何も知らないくせに……何に悩んでいるかも知らないくせに……軽薄《けいはく》な浪花先輩に私の気持ちなんて分かるはずがない。
「恋の悩みかい? それなら、僕が相談にしてほしいな。僕ならほのかクンのこと、大切にするから」
「……めてよ」
相談してほしい? 何を? 私だって分からない。どうしていいのか。どうしたらいいのか。
この感情を押さえつけるには、消え去るには何をしたらいいのか。
「だから、僕とつき……」
「やめて!」
私は想いを吐き出すように浪花先輩に叩きつける。浪花先輩は悪くない。それどころか何の関係もない。
なのに、押さえつけられない。理性も外見も何もかも吹き飛んでしまった。
「浪花先輩に何が分かるんですか! 浪花先輩のようなきれいな人に私の気持ちなんて分かりませんよ!」
「ほ、ほのかクン! 落ち着い……」
「だったら教えてくださいよ! 私、どうしたらいいんですか! どうしたら……どうしたら……先輩の事、先輩の事……」
私はその場に座り込む。言えなかった。
あきらめることができるんですかって。
その一言を言ってしまえば、恋を諦めてしまったって認めてしまうことになる。そんなのはイヤ、イヤ!
耐え難い痛みに、お腹が痛い。助けてよ。お願いだから……。
「ほのかクン、キミは……」
「これはどういうことだ?」
先輩……?
先輩の声に私は顔を上げる。先輩は怒っていた。真っ直ぐ浪花先輩を睨みつけている。私は唖然として先輩を見つめていた。
どうして……。
「浪花、どういうことかと訊いている。警告はしたはずだ」
怖い……。
先輩の本気の怒りに、浪花先輩は訳が分からないといったような戸惑いを見せている。
「ちょ、ちょっと待って! 僕はただ、愛するほのかクンを慰めようとしていただけだよ、ねえ、ほのかクン?」
「……」
「ちょっと、ほのかクン! その沈黙は洒落になっていないから!」
浪花先輩の声に我に返る。
い、いけない。先輩に説明しなきゃ。
「せ、先輩! 浪花先輩が言っていることは本当です!」
「だったら、なぜ、泣きそうな顔をしている?」
言葉が出てこなかった。
なぜ泣きそうな顔をしているのか? それを先輩が言うの?
頭を沸騰させるような怒りが、どうしようもない悲しみが抑えきれない。
言葉が自然と出てくる。
「先輩の……先輩のせいじゃないですか!」
私は先輩を睨みつけ、胸倉をつかむ。言いようのない怒りが、悲しみが私を突き動かしている。
ムリ……押さえつけることができない。
「先輩が! 先輩が! 先輩が……せん……ぱい……が……」
どうして分かってくれないの! どうして気付いてくれないの! どうして……どうして……私は……フラれたの……。
涙が目からあふれ、止まらない。心が痛い。痛い……痛いよ、先輩……。
先輩はあの日のように、私を戸惑っているように見つめているだけ……何も返事をしてくれない。
だから、どうして何も言ってくれないの……言ってくれないと分からないよ……先輩。
先輩の腕が私に差し伸ばされようとしていた。
先輩……?
先輩の手がゆっくりと私に……。
「ちょっと待ちたまえ!」
先輩の手を浪花先輩が振り払う。
浪花先輩が私と先輩の間に立ち、私を守るようにかばっている。
「さっきから見ていれば、藤堂。キミこそがほのかクンを悲しませている原因だろ?」
「……」
「図星か。醜い。自分でほのかクンを傷つけておいてボクに八つ当たりかい? 最低だと思わないのかな? それとも、キミはほのかクンのことを守っているつもり? だったらやめておきたまえ。間違いなく勘違いしているからね。キミでは誰もまもれない。傷つけるだけだ。一生ひとりで生きていけ」
「やめて!」
やめて……やめてよ……先輩を傷つけないで……お願いだから……。
先輩が悲しい顔をしている。少年Aのことを語ってくれたときのような後悔と懺悔に満ちた顔をしている。そんな顔をしてほしくない。
どうして……どうしてこんなことになっちゃうの? 恋愛って楽しいものじゃないの? 苦しいよ……イヤだよ……。
情けない……みっともない……ただ泣きじゃくることしかできないなんて……格好悪い……こんなの私じゃない……私じゃない……。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
私をもう愛していないなら。
水垣するめ
恋愛
その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。
私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。
街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
見知った女性と一緒に。
私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。
「え?」
思わず私は声をあげた。
なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
二人に接点は無いはずだ。
会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。
それが、何故?
ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。
結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。
私の胸の内に不安が湧いてくる。
(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)
その瞬間。
二人は手を繋いで。
キスをした。
「──」
言葉にならない声が漏れた。
胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。
──アイクは浮気していた。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる