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十一章
十一話 アネモネ -恋の苦しみ- その五
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私、どうしたらいいの?
私のとった行動は間違っていたのかな?
同性愛が認められないなんて、納得できないなんて、ただの私の我が儘。
先輩の劣化コピーでいい気になっていただけ。私のおめでたい恋愛論を古見君達にただ押しつけていただけで……全部、私の自己満足だったのかな……。
キズついた古見君に私は何も言えなかった。きっと、同性愛が間違いだったとしても、古見君には大丈夫だって自信を持って言うべきだったのかもしれない。
違う……同性愛は間違いなんかじゃない。嘘の言葉はきっと人の心を動かさない。
だって、言葉に想いがのせられないから……うわべだけの言葉なんてきっと二人は望んでいないはず。
だったら、どうしたらいいの? 何も始まらないまま、古見君達の恋は終わってしまうの? 恋人らしいこと何一つできずに終わってしまうの?
何度も何度も自分に問いかけるけど、答えはみつからない。正しい答えなんてあるのかな?
「ほのか、ほのかったら!」
「……何、明日香?」
「文化祭の出し物、決めるし。ほのかは何か意見ある?」
文化祭の出し物?
そうだった。今は文化祭の出し物を決めていたんだっけ。
体育祭が終わって、中間が終わったと思ったらいきなり文化祭とか、二学期に行事詰め込み過ぎでしょ、この学園!
一学期は、夏の大会に集中してもらう為に行事は全くなしにする配慮だって橘先輩にきいたけど、二学期は慌ただしすぎる。
ちなみに体育祭は九月の始めに終わっている。リレーで走っていた先輩、カッコよかったな。こっそり写メしたっけ。私のお気に入りの一枚なんだよね。
そういえば、寺前さん達はうまくいったのかな? 本当、大変だったよね、あの騒ぎ。
おおっと、寺前さん達って誰? そう思ったキミは『零章 藤堂正道の憂鬱』を読んでみてね♪
「誰と話してるの、ほのか?」
「ううん、お約束だから」
「?」
そんなことより、文化祭のことを考えないと。文化祭の出し物の候補を見てみる。
演劇、屋台、メイド喫茶店……ってメイド喫茶! なんてベタな! っというか現実で文化祭にメイド喫茶するなんてありえるの?
「ほのか、これ」
隣の女子から一枚の二つ折りの紙がまわってきた。紙を広げてみると、
『メイド喫茶なんてありえないと思わない?』
と書かれている。
あーっ、これって、メイド喫茶を阻止しろっておふれだよね。ボスの号令だ。逆らわない方が身のため。
それなら、違う出し物を提案してみようかな? やってみたい出し物あるし。
私は勢いよく手を上げる。
「はい! 執事喫茶がいいです! メイド喫茶なんて風紀が乱れるのでよくないと思います! 風紀委員として見過ごせません!」
「偏見だ! メイド喫茶はそんなけがわらしいものではない! メイドこそ至高の存在だ!」
私の意見に反対してきたのは、メイド喫茶を提案してきた男の子だと思う。
ボスじゃないけど、私だって見世物にされるのはイヤ。断固拒否させていただこう。
「そもそも、普通の喫茶店なんてインパクトが足りない! このクラスには美人が多いし、それで勝負するべきだ! 大体、執事が着る燕尾服なんてどこから仕入れるつもりだ? ちなみに、メイド服なら僕の裁縫スキルで作れるよ」
いや、男の子が夜なべして作ったメイド服なんて着たくないんですけど。メイド服作れるのなら、燕尾服も作れるでしょうに。
こうなったら、徹底抗戦あるのみ!
「別に燕尾服なくても、上半身裸のネクタイ姿でいいじゃないですか!」
「おいおい! 風紀の乱れはどこにいった! それにズボンはどうするつもりだ!」
「ズボンもなしで! ネクタイ一つで!」
これで問題なし! 私は何の迷いもなく堂々と提案する。
「男前すぎる! どこにネクタイをまくつもりだ! ま、まさか、股間にか!」
「サイテー! セクハラです! 左足の太ももにまくに決まっているじゃないですか!」
「マニアックすぎる! せめて前を隠させて!」
「男らしくないですよ! 女の子はみんな、全裸ネクタイで絡み合うイケメン執事がみたいんですよ! 受けはヘタレでも可! 風紀委員は私が抑えてみせます! 全裸ネクタイ喫茶を私は全身全霊、護ってみせる!」
悲鳴を上げる男の子に私は全裸ネクタイの良さを語ろうとしたとき、また手紙がまわってきた。
『お願い、これ以上は勘弁して』
あ、あれれ? ボス、メイド喫茶反対じゃなかったの? 素晴らしい代案を出してメイド喫茶をつぶそうとしたのに。
「ほのほの、すごいわ。ボスに懇願させるなんて、ひくわー」
な、なんでるりかがドン引きしちゃうのよ。
私は渋々、意見を取り下げた。
その後は何事もなかったように、みんながああだこうだと意見を出している。このクラス、七海○歌並にスルースキル高すぎでしょ。
高校生になってはじめての文化祭だから、みんな楽しそう。青春してるなって感じ。
私だって楽しみにしている。古見君達がうまくいっていたら、もっと楽しめたのに。
さっきはつい喫茶店を提案したけど、本当は劇をやってみたかったんだよね。劇をするとしたら、いろいろと考えていたんだけどな。
オリジナルの劇かお伽噺か……やっぱりシェイクスピアが無難かな? シェイクスピアなら、定番のロミオとジュリエットがいい。
でも、ハッピーエンドの物語がいいかな。劇くらいはどんな恋でも報われてもいいよね? 作り話だもん。ご都合主義、何の問題もなし!
ご都合主義? 作り話? ハッピーエンド?
これって、使えない? 劇なら、古見君達を恋人同士にできて、恋人らしいことも公然の目の前で出来る。
いいアイデアじゃない! 冴えてるよ、私!
今すぐ、古見君達に提案……しても、遅いかな。私は手にした携帯をぶらりと垂らす。もう、私にできることなんて……ないよね。
このまま、諦めて、目をつぶって、黙ってさえいれば、時が解決してくれる。また、新しい恋をはじめればいい。
そうだよね? 私、今度は間違っていないよね。
これでいいんだよね、先輩……。
私のとった行動は間違っていたのかな?
同性愛が認められないなんて、納得できないなんて、ただの私の我が儘。
先輩の劣化コピーでいい気になっていただけ。私のおめでたい恋愛論を古見君達にただ押しつけていただけで……全部、私の自己満足だったのかな……。
キズついた古見君に私は何も言えなかった。きっと、同性愛が間違いだったとしても、古見君には大丈夫だって自信を持って言うべきだったのかもしれない。
違う……同性愛は間違いなんかじゃない。嘘の言葉はきっと人の心を動かさない。
だって、言葉に想いがのせられないから……うわべだけの言葉なんてきっと二人は望んでいないはず。
だったら、どうしたらいいの? 何も始まらないまま、古見君達の恋は終わってしまうの? 恋人らしいこと何一つできずに終わってしまうの?
何度も何度も自分に問いかけるけど、答えはみつからない。正しい答えなんてあるのかな?
「ほのか、ほのかったら!」
「……何、明日香?」
「文化祭の出し物、決めるし。ほのかは何か意見ある?」
文化祭の出し物?
そうだった。今は文化祭の出し物を決めていたんだっけ。
体育祭が終わって、中間が終わったと思ったらいきなり文化祭とか、二学期に行事詰め込み過ぎでしょ、この学園!
一学期は、夏の大会に集中してもらう為に行事は全くなしにする配慮だって橘先輩にきいたけど、二学期は慌ただしすぎる。
ちなみに体育祭は九月の始めに終わっている。リレーで走っていた先輩、カッコよかったな。こっそり写メしたっけ。私のお気に入りの一枚なんだよね。
そういえば、寺前さん達はうまくいったのかな? 本当、大変だったよね、あの騒ぎ。
おおっと、寺前さん達って誰? そう思ったキミは『零章 藤堂正道の憂鬱』を読んでみてね♪
「誰と話してるの、ほのか?」
「ううん、お約束だから」
「?」
そんなことより、文化祭のことを考えないと。文化祭の出し物の候補を見てみる。
演劇、屋台、メイド喫茶店……ってメイド喫茶! なんてベタな! っというか現実で文化祭にメイド喫茶するなんてありえるの?
「ほのか、これ」
隣の女子から一枚の二つ折りの紙がまわってきた。紙を広げてみると、
『メイド喫茶なんてありえないと思わない?』
と書かれている。
あーっ、これって、メイド喫茶を阻止しろっておふれだよね。ボスの号令だ。逆らわない方が身のため。
それなら、違う出し物を提案してみようかな? やってみたい出し物あるし。
私は勢いよく手を上げる。
「はい! 執事喫茶がいいです! メイド喫茶なんて風紀が乱れるのでよくないと思います! 風紀委員として見過ごせません!」
「偏見だ! メイド喫茶はそんなけがわらしいものではない! メイドこそ至高の存在だ!」
私の意見に反対してきたのは、メイド喫茶を提案してきた男の子だと思う。
ボスじゃないけど、私だって見世物にされるのはイヤ。断固拒否させていただこう。
「そもそも、普通の喫茶店なんてインパクトが足りない! このクラスには美人が多いし、それで勝負するべきだ! 大体、執事が着る燕尾服なんてどこから仕入れるつもりだ? ちなみに、メイド服なら僕の裁縫スキルで作れるよ」
いや、男の子が夜なべして作ったメイド服なんて着たくないんですけど。メイド服作れるのなら、燕尾服も作れるでしょうに。
こうなったら、徹底抗戦あるのみ!
「別に燕尾服なくても、上半身裸のネクタイ姿でいいじゃないですか!」
「おいおい! 風紀の乱れはどこにいった! それにズボンはどうするつもりだ!」
「ズボンもなしで! ネクタイ一つで!」
これで問題なし! 私は何の迷いもなく堂々と提案する。
「男前すぎる! どこにネクタイをまくつもりだ! ま、まさか、股間にか!」
「サイテー! セクハラです! 左足の太ももにまくに決まっているじゃないですか!」
「マニアックすぎる! せめて前を隠させて!」
「男らしくないですよ! 女の子はみんな、全裸ネクタイで絡み合うイケメン執事がみたいんですよ! 受けはヘタレでも可! 風紀委員は私が抑えてみせます! 全裸ネクタイ喫茶を私は全身全霊、護ってみせる!」
悲鳴を上げる男の子に私は全裸ネクタイの良さを語ろうとしたとき、また手紙がまわってきた。
『お願い、これ以上は勘弁して』
あ、あれれ? ボス、メイド喫茶反対じゃなかったの? 素晴らしい代案を出してメイド喫茶をつぶそうとしたのに。
「ほのほの、すごいわ。ボスに懇願させるなんて、ひくわー」
な、なんでるりかがドン引きしちゃうのよ。
私は渋々、意見を取り下げた。
その後は何事もなかったように、みんながああだこうだと意見を出している。このクラス、七海○歌並にスルースキル高すぎでしょ。
高校生になってはじめての文化祭だから、みんな楽しそう。青春してるなって感じ。
私だって楽しみにしている。古見君達がうまくいっていたら、もっと楽しめたのに。
さっきはつい喫茶店を提案したけど、本当は劇をやってみたかったんだよね。劇をするとしたら、いろいろと考えていたんだけどな。
オリジナルの劇かお伽噺か……やっぱりシェイクスピアが無難かな? シェイクスピアなら、定番のロミオとジュリエットがいい。
でも、ハッピーエンドの物語がいいかな。劇くらいはどんな恋でも報われてもいいよね? 作り話だもん。ご都合主義、何の問題もなし!
ご都合主義? 作り話? ハッピーエンド?
これって、使えない? 劇なら、古見君達を恋人同士にできて、恋人らしいことも公然の目の前で出来る。
いいアイデアじゃない! 冴えてるよ、私!
今すぐ、古見君達に提案……しても、遅いかな。私は手にした携帯をぶらりと垂らす。もう、私にできることなんて……ないよね。
このまま、諦めて、目をつぶって、黙ってさえいれば、時が解決してくれる。また、新しい恋をはじめればいい。
そうだよね? 私、今度は間違っていないよね。
これでいいんだよね、先輩……。
応援ありがとうございます!
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