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十章
十話 オキナグサ -告げられぬ恋- その八
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「またまた言い負かされたし」
「……」
「状況ってどんどん悪化していくよね。ほのほの、手を引いた方がいいんじゃない?」
「……」
橘先輩と別れた後、私は明日香とるりかと合流し、図書室で勉強していた。
一人で考えてみたけど、答えが出なかったから明日香とるりかに相談してみた。
結果はやっぱり芳しくない。
「ねえ、ほのほの。引き際も肝心だよ。下手したら風紀委員、敵に回すことになる。藤堂先輩と対立してもいいの?」
るりかの問いに私は即座に否定する。
「それはイヤ! そんなことになったら、私、先輩の弱み握って脅迫して味方になってもらう! 好きな人と対立なんてひどいよ!」
「ほのかは人としてひどいし」
そうかな? って何度目だろう、自分に問いかけるの。好きな人と対立したくないから行動するのが、どうして悪いの?
「真面目な話、どうするつもりなの?」
「どうするって?」
るりかの言いたいことが分かるのに、つい聞き返してしまう。
「獅子王先輩の事。将来の事まで絡んでくると、下手なアドバイスしたら取り返しのつかないことになるよ。相手は獅子王財閥の一人息子。ごめんなさいでは済まされないから」
ううっ、るりか。プレッシャーかけないで。怖くなってきたじゃない。でも、それでも、あきらめたくない気持ちがある。
だって、その気持ちは先輩からもらったものだから。あきらめずに初志貫徹を貫くこと。
それをみせてくれた先輩に私は恋したから。
否定したくない。ぎゅっと手を握り、私は自分の意思をるりかたちに伝える。
「私、できるところまで頑張ってみる! もちろん、風紀委員に迷惑をかけない範囲で! 私だって橘先輩に迷惑かけたくないし」
「できるし?」
明日香の気遣うような、心配げな姿に私は笑って頷く。
「やってみる! 明日香、るりか、ありがとう! 私、ヤル気が出てきた!」
やってみる! ここでやめたら納得いかない! ですよね、先輩!
橘先輩には申し訳ないけど、これが私の答え。
橘先輩だってアドバイスくらいならいいって言ってくれたし。
橘先輩と先輩が協力してくれたら、どんな困難にも立ち向かえるって思うのに。押水先輩のときみたいに、また三人で一緒で頑張れたら……。
私は首を横に振り、今考えたことを無理矢理かき消す。
「その前に、ほのほの、勉強しようね。中間テスト、もうすぐだから。ほのかの好きな夢○咲子先生も言ってたでしょ? 恋愛ばかりしてないで勉強しろって」
「……ですよね」
はあ……せっかくびしっときめたのに、るりかの一言で台無し。
私は黙って、英単語を覚える作業に入る。テストが終わってから対応すればいいかなって思ってたけど、獅子王先輩達を取り巻く状況は待ってくれなかった。
テスト三日前。
雨が降る中、今日も図書室で勉強していた。
連日の勉強会は、明日香とるりかには耐えられなかったみたい。
勉強を始めてから十分で、
「あきた」
「自分探しの旅に出るし」
そう言い残して帰った。早いよ。
私は一人静かに勉強していた。周りにも私と同じく勉強している生徒がいる。
その中にカップルがいた。カップルは肩を寄せ合い、仲良く勉強している。
それを見ていると、古見君達の事を思い出してしまう。最近古見君と獅子王先輩に会っていないけど、大丈夫かな?
そのことが気になってしまい、ペンが止まってしまう。ちょっと、休憩しようかな。
自販機でジュースでも買おうかなと思っていた時、窓に人影が見えた。
外にいる人物は、雨が降っているのに傘も差さず、空を見上げている。
あれ? あの人、古見君?
ランニングじゃ……ないよね?
それに古見君の様子がおかしい。
そう感じた私は荷物をまとめ、古見君の元へと向かう。
外に出てのはいいけど、古見君、どこにいるのかな? 窓から見た景色は確かここだったと思うんだけど。
地面を見ると、雨で土がぬかるんで足跡が残っている。古見君のもの?
たどってみると……いた! 古見君だ。
古見君は空を見上げたたまま、立ち止まっていた。
古見君、ふるえているの? 泣いているの?
この雨の中、寒くてふるえているのか、泣いてふるえているのか分からなかった。分かるのは古見君に何かあったことくらい。
どうしよう?
橘先輩の言葉が甦る。
なんだかんだで橘先輩は私のこと、気にかけてもらってる。それを裏切ってまで、うまくいくか分からないことに首を突っ込むの?
図書室ではやれるって思ったけど、一人になって、冷静になって考えてみると、無理ではないかと思っていた。
このまま黙って背を向けても、誰も私を責めないよね。
逃げても……いいよね。
あっ、雨が……雨がやんだ。空は晴れてないけど、それでも、雨はやんだ。
雨やんでーー。
なつかしい。
私が落ち込んでいたとき、先輩が雨をとめてくれたんだよね。あれで私、元気が出たんだ。
私にだって、できるはずだよね、先輩? 私にも古見君の事、元気づけられるよね?
私は一度目をつぶり、気持ちを落ち着かせた。ゆっくりと、力強く一歩を踏み出す。
私が古見君に声をかけなきゃ。
「……」
「状況ってどんどん悪化していくよね。ほのほの、手を引いた方がいいんじゃない?」
「……」
橘先輩と別れた後、私は明日香とるりかと合流し、図書室で勉強していた。
一人で考えてみたけど、答えが出なかったから明日香とるりかに相談してみた。
結果はやっぱり芳しくない。
「ねえ、ほのほの。引き際も肝心だよ。下手したら風紀委員、敵に回すことになる。藤堂先輩と対立してもいいの?」
るりかの問いに私は即座に否定する。
「それはイヤ! そんなことになったら、私、先輩の弱み握って脅迫して味方になってもらう! 好きな人と対立なんてひどいよ!」
「ほのかは人としてひどいし」
そうかな? って何度目だろう、自分に問いかけるの。好きな人と対立したくないから行動するのが、どうして悪いの?
「真面目な話、どうするつもりなの?」
「どうするって?」
るりかの言いたいことが分かるのに、つい聞き返してしまう。
「獅子王先輩の事。将来の事まで絡んでくると、下手なアドバイスしたら取り返しのつかないことになるよ。相手は獅子王財閥の一人息子。ごめんなさいでは済まされないから」
ううっ、るりか。プレッシャーかけないで。怖くなってきたじゃない。でも、それでも、あきらめたくない気持ちがある。
だって、その気持ちは先輩からもらったものだから。あきらめずに初志貫徹を貫くこと。
それをみせてくれた先輩に私は恋したから。
否定したくない。ぎゅっと手を握り、私は自分の意思をるりかたちに伝える。
「私、できるところまで頑張ってみる! もちろん、風紀委員に迷惑をかけない範囲で! 私だって橘先輩に迷惑かけたくないし」
「できるし?」
明日香の気遣うような、心配げな姿に私は笑って頷く。
「やってみる! 明日香、るりか、ありがとう! 私、ヤル気が出てきた!」
やってみる! ここでやめたら納得いかない! ですよね、先輩!
橘先輩には申し訳ないけど、これが私の答え。
橘先輩だってアドバイスくらいならいいって言ってくれたし。
橘先輩と先輩が協力してくれたら、どんな困難にも立ち向かえるって思うのに。押水先輩のときみたいに、また三人で一緒で頑張れたら……。
私は首を横に振り、今考えたことを無理矢理かき消す。
「その前に、ほのほの、勉強しようね。中間テスト、もうすぐだから。ほのかの好きな夢○咲子先生も言ってたでしょ? 恋愛ばかりしてないで勉強しろって」
「……ですよね」
はあ……せっかくびしっときめたのに、るりかの一言で台無し。
私は黙って、英単語を覚える作業に入る。テストが終わってから対応すればいいかなって思ってたけど、獅子王先輩達を取り巻く状況は待ってくれなかった。
テスト三日前。
雨が降る中、今日も図書室で勉強していた。
連日の勉強会は、明日香とるりかには耐えられなかったみたい。
勉強を始めてから十分で、
「あきた」
「自分探しの旅に出るし」
そう言い残して帰った。早いよ。
私は一人静かに勉強していた。周りにも私と同じく勉強している生徒がいる。
その中にカップルがいた。カップルは肩を寄せ合い、仲良く勉強している。
それを見ていると、古見君達の事を思い出してしまう。最近古見君と獅子王先輩に会っていないけど、大丈夫かな?
そのことが気になってしまい、ペンが止まってしまう。ちょっと、休憩しようかな。
自販機でジュースでも買おうかなと思っていた時、窓に人影が見えた。
外にいる人物は、雨が降っているのに傘も差さず、空を見上げている。
あれ? あの人、古見君?
ランニングじゃ……ないよね?
それに古見君の様子がおかしい。
そう感じた私は荷物をまとめ、古見君の元へと向かう。
外に出てのはいいけど、古見君、どこにいるのかな? 窓から見た景色は確かここだったと思うんだけど。
地面を見ると、雨で土がぬかるんで足跡が残っている。古見君のもの?
たどってみると……いた! 古見君だ。
古見君は空を見上げたたまま、立ち止まっていた。
古見君、ふるえているの? 泣いているの?
この雨の中、寒くてふるえているのか、泣いてふるえているのか分からなかった。分かるのは古見君に何かあったことくらい。
どうしよう?
橘先輩の言葉が甦る。
なんだかんだで橘先輩は私のこと、気にかけてもらってる。それを裏切ってまで、うまくいくか分からないことに首を突っ込むの?
図書室ではやれるって思ったけど、一人になって、冷静になって考えてみると、無理ではないかと思っていた。
このまま黙って背を向けても、誰も私を責めないよね。
逃げても……いいよね。
あっ、雨が……雨がやんだ。空は晴れてないけど、それでも、雨はやんだ。
雨やんでーー。
なつかしい。
私が落ち込んでいたとき、先輩が雨をとめてくれたんだよね。あれで私、元気が出たんだ。
私にだって、できるはずだよね、先輩? 私にも古見君の事、元気づけられるよね?
私は一度目をつぶり、気持ちを落ち着かせた。ゆっくりと、力強く一歩を踏み出す。
私が古見君に声をかけなきゃ。
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