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九章
九話 サイネリア -いつも喜びに満ちて- その七
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「古見君! 次いくよ!」
「待ってよ、伊藤さん!」
私達はいろいろなゲームをプレイして遊んだ。
古見君も最初は余所余所しかったけど、途中からは笑ってくれた。喜んでもらえた。
それだけでもゲームセンターに誘った甲斐はあったよね。
靴箱の事や試合の事もあったし、気晴らしになればと思っていたけど、うまくいったみたい。あとは先輩とのデートでどう感じてくれたのかが気になる。
「ねえ、古見君。今日の記念にプリクラとっていかない?」
「いいの? プリクラって確か、男の子の出入りは禁止されていなかったっけ?」
「カップルなら大丈夫! 先輩もいるし!」
「ちょっと待って! カップルの意味、違わない?」
プリクラコーナーにいくと、店員さんが私達を見ていたけど何も言われなかった。
プリクラが男性禁制になっているのって、盗撮やナンパ防止だったと思う。カップルや親子なら問題ないはず。
「ほらね。私の言ったとおりでしょ? ナイスカップリング!」
「……絶対勘違いしているだけだと思うけどな」
悩んでいる古見君を引っ張って、私達は最新のプリ機に入る。
私と古見君、先輩、滝沢さんの四人でプリクラをとることにした。
操作、選択は私が選んでいく。
コース、撮影枚数とレイアウト等、画面をタッチしてっと……。
何回かフラッシュされ、そのたびにポーズを変える。
古見君は私と一緒にポーズをとってくれたけど、先輩は直立不動のまま。本当に真面目だよね。証明写真じゃないのだから、好きにポーズとっていいのに。
「えへへ、ハートとかいれよっか?」
「いろんな機能があるね」
写真を撮った後が楽しいんだよね。肌の色とか選んで、好きにラクガキしてできるこの瞬間が好きなんだよね。
滝沢さんの顔にラクガキしたら怒られたけど、滝沢さんも好きなのか、いろいろとラクガキしてきた。私も負けずにらくがきしていく。
プリント中と画面が表示され、できるのを今か今かと待っていた。
「伊藤、ちょっとトイレ」
「あ、僕も」
古見君と先輩が離れていく。私と滝沢さんが残される。お互い何も話さず、携帯をいじりながら時間が過ぎていく。
「ね、ねえ、ちょっといい?」
意外にも滝沢さんが話しかけてきた。
「何でしょう?」
「その、靴箱の件なんだけど」
まだ言いたいことがあるの? あれは真犯人も捕まって私じゃないのに、しつこいな……。
「疑ってごめんなさい。私が間違っていたわ」
「……」
あ、あれ? 予想していた答えと違う。急に態度が変わったことに驚きよりも不審な気持ちが強かった。
「なんで急に謝ったの?」
「本当はすぐに謝りたかったけど、ひなたの前だからつい意地をはっちゃって……ほら、ひなたにいろいろ言っちゃったから……」
前から思ってたんだけど、滝沢さんってやっぱり……。
「古見君の事、好きなの?」
「ばっ! 違うわよ! 誰があんな女々しいヤツなんか! 本当にやめてよね!」
分かりやすい。滝沢さん、顔を真っ赤にして否定しても、何の説得力もないですから。
つい、今までのお返しといわんばかりにいじめたくなっちゃう。
「へえ、そうなんですか」
「ちょっと! 絶対に勘違いしてるでしょ!」
「してませんよ~」
私の態度に顔を真っ赤にさせてムキになる滝沢さん。
あまり怒らせるのも悪いし、ここまでにしておこう。滝沢さんはそっぽ向きながら小さい声でつぶやく。
「伊藤さんはひなたの事、どう思ってるの?」
「友達だけど」
「そっか、今度の友達は伊藤さんか。いつまで続くのかな」
今度の友達? 古見君が前に女の子の友達はできても、すぐにダメになるって言ってたっけ。滝沢さんはそのことをいっているのかな?
私は古見君とずっと友達でいたいと思っている。せっかく仲良くなれたんだから、この縁を大切にしたい。
「きっと古見君とはいい関係が築けると思う」
「そっか。ねえ、伊藤さん。し、獅子王先輩とのことって本当なの?」
「本当って?」
「ひなたとつ、付き合ってるとか」
滝沢さんはぼそぼそと不安そうに尋ねてくる。
古見君と獅子王先輩は付き合っていることになってるんだ。噂ってあまりあてにならないよね。
私はちょっと複雑な気持ちになりながらも滝沢さんの質問に答える。
「二人は付き合ってないよ」
「や、やっぱりそうよね。男の子同士の恋愛っておかしいでしょ」
「そうかな? お互いが好きならいいと思うけど?」
滝沢さんは困った顔をしていた。
私は古見君の友達だから……古見君がもし、獅子王先輩の事が好きなら応援したい。
「ねえ、もし、もしもだよ? 伊藤さんが好きになった人が同性愛者で振り向いてもくれなかったらどうするの? 諦められるの?」
滝沢さんが私の事を責めるような口調で質問をしてきた。でも、それは不安の裏返しなんだよね。橘先輩にも尋ねられた質問だ。
それは仕方ないなんて強がりは言えない。性別は関係ない。先輩が私よりも他の人が好きってだけで嫉妬しちゃう。
だから、答えは決まっている。
「好きな人が同性愛者でも、振り向いてもらえるよう努力はしてみるかな。同性愛者だからって諦めるのは納得いかないから」
「そっか」
滝沢さんは複雑そうな顔をしている。でも、これが私の本音。好きな人の事をあきらめたくなんかない。
だって、私は四六時中、先輩のことを考えている。先輩のこと、誰よりも好きだから。絶対に報われたいと思っているし、先輩と恋人同士になれるって信じている。
「伊藤、待たせたな」
先輩と古見君が帰ってきたので、この話題は終了となった。
古見君の前では意地を張っているのか、滝沢さんは私に話しかけてこない。
できたプリクラを見てみると、みんな笑っている。きっと、大丈夫だよね。古見君達の事も、滝沢さんのことも。
そんなことはありえないと心のどこかで感じていながら、私は真実から目をそらしてはしゃいでいた。
「待ってよ、伊藤さん!」
私達はいろいろなゲームをプレイして遊んだ。
古見君も最初は余所余所しかったけど、途中からは笑ってくれた。喜んでもらえた。
それだけでもゲームセンターに誘った甲斐はあったよね。
靴箱の事や試合の事もあったし、気晴らしになればと思っていたけど、うまくいったみたい。あとは先輩とのデートでどう感じてくれたのかが気になる。
「ねえ、古見君。今日の記念にプリクラとっていかない?」
「いいの? プリクラって確か、男の子の出入りは禁止されていなかったっけ?」
「カップルなら大丈夫! 先輩もいるし!」
「ちょっと待って! カップルの意味、違わない?」
プリクラコーナーにいくと、店員さんが私達を見ていたけど何も言われなかった。
プリクラが男性禁制になっているのって、盗撮やナンパ防止だったと思う。カップルや親子なら問題ないはず。
「ほらね。私の言ったとおりでしょ? ナイスカップリング!」
「……絶対勘違いしているだけだと思うけどな」
悩んでいる古見君を引っ張って、私達は最新のプリ機に入る。
私と古見君、先輩、滝沢さんの四人でプリクラをとることにした。
操作、選択は私が選んでいく。
コース、撮影枚数とレイアウト等、画面をタッチしてっと……。
何回かフラッシュされ、そのたびにポーズを変える。
古見君は私と一緒にポーズをとってくれたけど、先輩は直立不動のまま。本当に真面目だよね。証明写真じゃないのだから、好きにポーズとっていいのに。
「えへへ、ハートとかいれよっか?」
「いろんな機能があるね」
写真を撮った後が楽しいんだよね。肌の色とか選んで、好きにラクガキしてできるこの瞬間が好きなんだよね。
滝沢さんの顔にラクガキしたら怒られたけど、滝沢さんも好きなのか、いろいろとラクガキしてきた。私も負けずにらくがきしていく。
プリント中と画面が表示され、できるのを今か今かと待っていた。
「伊藤、ちょっとトイレ」
「あ、僕も」
古見君と先輩が離れていく。私と滝沢さんが残される。お互い何も話さず、携帯をいじりながら時間が過ぎていく。
「ね、ねえ、ちょっといい?」
意外にも滝沢さんが話しかけてきた。
「何でしょう?」
「その、靴箱の件なんだけど」
まだ言いたいことがあるの? あれは真犯人も捕まって私じゃないのに、しつこいな……。
「疑ってごめんなさい。私が間違っていたわ」
「……」
あ、あれ? 予想していた答えと違う。急に態度が変わったことに驚きよりも不審な気持ちが強かった。
「なんで急に謝ったの?」
「本当はすぐに謝りたかったけど、ひなたの前だからつい意地をはっちゃって……ほら、ひなたにいろいろ言っちゃったから……」
前から思ってたんだけど、滝沢さんってやっぱり……。
「古見君の事、好きなの?」
「ばっ! 違うわよ! 誰があんな女々しいヤツなんか! 本当にやめてよね!」
分かりやすい。滝沢さん、顔を真っ赤にして否定しても、何の説得力もないですから。
つい、今までのお返しといわんばかりにいじめたくなっちゃう。
「へえ、そうなんですか」
「ちょっと! 絶対に勘違いしてるでしょ!」
「してませんよ~」
私の態度に顔を真っ赤にさせてムキになる滝沢さん。
あまり怒らせるのも悪いし、ここまでにしておこう。滝沢さんはそっぽ向きながら小さい声でつぶやく。
「伊藤さんはひなたの事、どう思ってるの?」
「友達だけど」
「そっか、今度の友達は伊藤さんか。いつまで続くのかな」
今度の友達? 古見君が前に女の子の友達はできても、すぐにダメになるって言ってたっけ。滝沢さんはそのことをいっているのかな?
私は古見君とずっと友達でいたいと思っている。せっかく仲良くなれたんだから、この縁を大切にしたい。
「きっと古見君とはいい関係が築けると思う」
「そっか。ねえ、伊藤さん。し、獅子王先輩とのことって本当なの?」
「本当って?」
「ひなたとつ、付き合ってるとか」
滝沢さんはぼそぼそと不安そうに尋ねてくる。
古見君と獅子王先輩は付き合っていることになってるんだ。噂ってあまりあてにならないよね。
私はちょっと複雑な気持ちになりながらも滝沢さんの質問に答える。
「二人は付き合ってないよ」
「や、やっぱりそうよね。男の子同士の恋愛っておかしいでしょ」
「そうかな? お互いが好きならいいと思うけど?」
滝沢さんは困った顔をしていた。
私は古見君の友達だから……古見君がもし、獅子王先輩の事が好きなら応援したい。
「ねえ、もし、もしもだよ? 伊藤さんが好きになった人が同性愛者で振り向いてもくれなかったらどうするの? 諦められるの?」
滝沢さんが私の事を責めるような口調で質問をしてきた。でも、それは不安の裏返しなんだよね。橘先輩にも尋ねられた質問だ。
それは仕方ないなんて強がりは言えない。性別は関係ない。先輩が私よりも他の人が好きってだけで嫉妬しちゃう。
だから、答えは決まっている。
「好きな人が同性愛者でも、振り向いてもらえるよう努力はしてみるかな。同性愛者だからって諦めるのは納得いかないから」
「そっか」
滝沢さんは複雑そうな顔をしている。でも、これが私の本音。好きな人の事をあきらめたくなんかない。
だって、私は四六時中、先輩のことを考えている。先輩のこと、誰よりも好きだから。絶対に報われたいと思っているし、先輩と恋人同士になれるって信じている。
「伊藤、待たせたな」
先輩と古見君が帰ってきたので、この話題は終了となった。
古見君の前では意地を張っているのか、滝沢さんは私に話しかけてこない。
できたプリクラを見てみると、みんな笑っている。きっと、大丈夫だよね。古見君達の事も、滝沢さんのことも。
そんなことはありえないと心のどこかで感じていながら、私は真実から目をそらしてはしゃいでいた。
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