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六章

六話 伊藤ほのかの再戦 勝率0パーセントのリベンジ編 その一

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「あぁ……あああああああああああああああああああああああああっ!」

 は、恥ずかしい! し、死ねる! マジ死ねる! 誰か介かいしゃくして! 今すぐ介錯してお願いぃいいいいいいい!
 私はベットの上でお気に入りのハートネット(テディベア)を抱いて足をバタバタしていた。
 先輩とキス、マウストゥマウス、接吻せっぷん、口づけ。何度も何度もしちゃった。
 途中で、先輩の祖母さんが来てくれなかったら……来なければ最後まで……ち、違う違うちがーーーーーう!
 思い出しただけで顔から火が出そうになる。

 先輩のキス、唇がふれたあのやわかい感触……先輩の吐息……獅子王先輩にされたキスなんかより、インパクトがあって、うわが……。
 な、何が、上書きしてください、よっ! ハズい! こんなの私のキャラじゃない! 知的なイメージが、キャラが音をたてて崩れていく。

 く、黒歴史だ……人生最大の汚点だわ! ターン○どこ! 月○蝶で全てなかったことにしてよ!
 心頭滅却しんとうめっきゃくよ、ほのか。
 何も考えないよう、心を落ち着かせて、瞼を閉じると、ふいにキスシーンをおもいだ……。

 いやぁああああああああああああああああああああああああああああ!

 セーブポイントはどこ! ロードさせて! ボス戦の前には必ずあるでしょ!

「姉ちゃん、うる……ぼが!」
うるさい! 消えろ! 部屋に勝手に入ってくるな!」

 ハートネットを剛に叩きつけ、布団を頭からかぶる。
 お願い……お願いだから、記憶を消して……マインドア○シンで消し去って……。



 あ、足が重い。
 ストレスでマジヤバいかも。登校するのがとてもつらい……。
 さわやかな朝なのに、気分はとても憂鬱ゆううつ……。
 私の華麗なる輝かしいキラキラな女子高生ライフはどこにいったの? ライフがつきかけてるんですけど?
 グレードのランクが1段階以上アップすれば回復するのかな? それは知恵袋か。

 辛い……。
 このことは、絶対に誰にも知られてはいけない。墓の中まで持っていくのよ、ほのか。
 慎重に行動しないと。慎重に、慎重に。



 お昼休み。

「ほのほの、先輩とヤっちゃったの?」
「ぶぶほっ!」

 私は飲んでいたお茶を吹き出してしまった。
 明日香たちとお昼を食べていたら、急にるりかが話を振ってきた。明日香も慣れているのか、私の吹き出したお茶をお盆でガードしている。
 るりか、お茶を飲んているときに話しかけてくるなんて、絶対に狙ってるよね。

「なななななな、何の事?」
「ほのか、足震えてるし、声裏返ってるし、手が震えてるし……」

 無理! 冷静でいるなんて無理!
 私の持っていたマグカップがかたかたと震えている。

「え、ウソ、マジで!」
「……黙秘権もくひけん行使こうしします」
「ほのか、ここは裁判所じゃないし、黙秘権なんて認められないし」

 私の権利はどこにあるの?
 ここ日本だよね? 日本国憲法知らないの? 憲法三十八条一項知らないの?
 こうなったら、三十六計……。

「逃がさないし」
「はいはい、本当は話したいんだよね? 分かってますって!」

 明日香に右手を、るりかに左手を同時に捕まれた。
 逃げられない!

「で、何があったし?」
「ナニモナイヨ?」

 ナニモナイナニモナイナニモナイナニモナイナニモナイナニモナイ。
 ゼッタイニハナシテハナラナイ。

「水臭いよ、ほのほの。教えてくれたら、お赤飯、用意したのに」
「るりかは私のおかんか!」

 お赤飯って、センスが昭和だよね?
 でも、出されたら美味しくいただくけどね!

「ほのかのお腹には藤堂先輩の子が出来たし。生命の神秘だし」

 藤堂先輩の子? 生命の神秘?
 なにそれ?

「何言ってるの、明日香?」
「だから、セックスしたし?」

 明日香が親指を中指と人差し指の間にいれて尋ねてきた。
 セッ! セセセセセ……。

「な、ななななななに言ってんの言っちゃってるの! そんなわけないし! 私、処女だし!」

 食堂が静まり返っていることに気づき、私は何をしでかしたのか、理解してしまった。
 あ、ああああああああああああああ!
 わた、わた、私、なんてことを!

「おいおい、聞いたか?」
「処女だってよ」
「ごくり」
「信じられん」
「ブラフでしょ? ヤリマンのくせにカマトトぶってんじゃねーよ」

 あまりの失態に頭を抱えてしまう。
 黒歴史だ……また、消せない汚点がうまれてしまった。なんで歴史は繰り返されるの!
 ター○Xはどこ! おにーさんが役立たずだからこんなことに……。
 消えたい……今すぐこの場から消え去りたい。後、ヤリマンって言った女、必ず地獄をみせてやる。

「まあまあ、気にするなし」
「生きてればいいことあるよ」
「あんたらのせいでしょうが!」

 なんなのよ、もう!
 そっとしておいてよ! でも、慰めてよ!
 机にうつ伏せになっている私にるりかが優しく頭を撫でてくれる。明日香が私に優しく話しかけてきた。

「ならキスしたし?」

 ビクッ!

「したんだ」
「……」
「ちっ、ビッチめ」
「ビッチ言うな!」

 え、今、舌打ちしたよね? なんで?

「落ち込んでたと思ったら、男とキスするとか何考えてるし」
「彼氏でもないのに」

 ええええっ! ここ、責められるところ? 祝福してくれるところだよね?
 それが友達ってもんだよね?
 私達、友達だよね?

「つまんないし。女の友情より男だし」
「ビッチだよね」
「おたくらに言われたくないわ!」

 何股してるのよ、あんたたちは!
 女の友情よりも彼氏のデート優先してきたくせに!

「うそうそ、冗談だし」
「私は冗談じゃないけどね」
「うわああああああん」
「うそうそ! 冗談だから!」

 本当に泣けてきた。
 一杯一杯なのに! 私のメンタル、湯豆腐並なの!
 頭にぶつけても、逆にこっちがつぶれちゃうレベルなの!
 二人になぐさめてもらい、なんとか立て直した私に待っていたのは、非情な現実だった。
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