藤堂正道と伊藤ほのかのおしゃべり

142:令和の米騒動

「てえへんだ！　てえへんだ！　先輩！　お米が不足してます！　令和米騒動です！」

　むしゃむしゃ。
　むしゃむしゃ。

「どうした、伊藤？　浴衣姿で走ってきて」
「藤堂先輩、雲丹しいたけ、マジ美味しいです！　ご飯と佃煮だけで箸が止まりません！　改めて日本人って実感できます！」
「そうだろ？　たんと食え」

「……」
「どうした、伊藤？　お前も食うか？」
「……どうして、先輩達は丼でご飯を山ほど食べてるんですか？」
「買いだめしておいたからな」
「い、いつですか！」
「南海トラフのときだ。巨大地震注意があっただろ？　そのとき、米や水といったモノを買いだめしておいたんだ」

「えええええ～～～！　先輩！　青島は警戒地域じゃないから慌てるな、買い占めするとマスクやトイレットペーパーの時のようになるから、やめろとか言ってたじゃないですか！」
「買い占めするなとは一言も言ってないけどな。それに米を買っておいた方がいいって提案してくれたのは楓さんなんだ」
「楓さんって先輩のおばあちゃんですよね？」

「そうだ。巨大地震注意に続いて、お盆が来ただろ？　流通が止まるし、台風シーズンだから更に流通が止まる可能性がある。新米がもうすぐとれるから、備蓄米を出すこともない。利権の問題もあるし、インバウンド客向けに米の消費が増えているから、一時的に米が不足するかもってことでな」
「すごいっすね、おばあちゃん。生活の知恵っすかね」

「本当に頭が下がるな。楓さんの知り合いに農家の人がいるから、米を分けてもらえたことも助かってる。伊藤も米で悩んでいたら言ってくれ。お裾分け出来るからな」
「あざっす！　そういえば、『奪い合えば足らぬ、分け合えば余る』って言葉がありますよね。まさにその通りっすね」

「そうだな。今更ながら繋がりって大事だと思う」
「ありがたや～ありがたや～ってことでお米の神様に感謝しながら食べましょう！」
「そうですね！　紫苑さん、私にもください！」
「自分でやってください」
「キビシー！」