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106:紫苑の苦悩
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「橘先輩、肩凝ってますよね? 揉んで差し上げます!」
「……紫苑の苦情なら現在お断り……」
「はぁああああああああ~~~~~! 橘先輩! アナタ紫苑さん担当でしょ! なんとかしてくださいよ! あの女の敵を!」
「女の敵って……」
「あれは絶対! ぜぇええったいいい! 私が先輩の事好きだって知っててスキンシップしてるんですよ! あんな暴挙、許せません! それに、先輩も先輩です! 鼻の下伸ばしてちゃってさ! 格好悪い!」
「誰が鼻の下を伸ばしているって? 痛っぅ」
「げぇ! 先輩! って、どうしたんですか、腕を押さえて! 怪我ですか!」
「……ちょっとな」
「まさか……紫苑が突っかかってきた?」
「そうなんですか! あのアマ! 勿論、先輩はあのクソアアに天誅を下したんですよね!」
「……いや、負けた」
「えっ? うそ……先輩が……負けた?」
「……正道、そういうのいいから。本当は勝ったんでしょ?」
「なぜ分かった!」
「紫苑が勝ったなら、その腕、確実に折れてるから。痛んだ程度で済んだってことは力尽くで勝ったんでしょ?」
「……まあな」
「ちょっと! これって大問題ですよ! 風紀委員から破門しましょう!」
「伊藤、落ち着け。ちょっとした模擬戦だ」
「それも嘘だね。正道はともかく、紫苑は本気だから。ごめんね、正道。厄介ごとに巻き込んで」
「いや、喧嘩売ってくる度胸のあるヤツは歓迎するぞ」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「いやいやいやいや! おかしいでしょ! 脳筋なんですか! それより、どうして紫苑さんは藤堂先輩に喧嘩売ったんですか!」
「……紫苑は一言で言うと落ちこぼれなんだ」
「お、落ちこぼれ?」
「そう。成績も上の下だし、効率が悪すぎるんだよね」
「上の下って別に問題ないんじゃあ……」
「ちなみに左近は学年三位をキープしてるな」
「トップじゃないけど、すごいですね」
「いや、わざとだ」
「わざと?」
「左近は目立つのを防ぐために万年三位になるよう調整しているんだ。世界史のテスト以外は満点だからな。暗記問題ならある程度点数を調整できるのが理由だ」
「……すごいですね」
「紫苑は平均点八十点だし、暴力で相手を押さえ込むクセがあってね。ほら、映画や漫画で細身の女性が大男を倒すシーンがあるじゃない? あれに憧れててさ……」
「ううん……確かに力で挑むのは効率悪いですね。スタンガンとかエアーガンで奇襲するとかすればいいのに」
「それか弱みを握ればいい」
「お前ら……」
「とにかく、やり方はいろいろとあるのに、紫苑は正々堂々と挑むから負けるんだよ。だから、落ちこぼれってわけ。挽回したいって気持ちが焦って失敗ばかり。本家に見限られて、僕にしわ寄せがきたってわけ」
「……そういう言い方、好きじゃないんですけど。それに平均点八十点だってすごいじゃないですか」
「橘はプロフェッショナルを求めてるの。一つだけトップクラスになればいいのに、いろんな事に手を出すから効率が悪いんだよ。まあ、それだけ紫苑も必死なんだけど。正道、悪いんだけど……」
「別にいいぞ。青島はそういうヤツがわんさかいるからな。問題ない」
「いや、問題ありすぎでしょ? はぁ……先輩って妙に面倒見がいいというか……」
ガチャ。
「あっ、紫苑さんって……えええええ! どうしたんですか、その怪我!」
「……御堂さんにやられました」
「御堂に? なぜだ?」
「その……私が藤堂先輩を秒殺したって言いまわっていたら、いきなり現れて、喧嘩売られて……私も御堂先輩に挑戦したかったらお手合わせしたんですけど……秒殺されました」
「「「……」」」
「藤堂先輩、御堂先輩から言付けがあります。新入りに負けるとは情けない。鍛え直してやるって」
「世界一優しい嘘をついたのだけなのに!」
「いや、世界一って、先輩……」
「とにかく誤解を解いてくる!」
「……いっちゃいましたね」
「はははっ、ご愁傷様」
「「……」」
「な、なに?」
「あの……思ったんですけど、この状況の元凶って橘先輩ですよね?」
「はい?」
「少しは反省してくださいね。我関せずって顔してるのが許せないんですけど」
「痛たたたたたたたたたたたたた! 伊藤さん! 肩! 肩! 強く揉みすぎ!」
「あ、あにぃ! 貴様!」
「紫苑さんも普段お世話になってるでしょ? だったら、感謝の印にマッサージしてあげないと」
「……」
「痛い痛い痛い!」
「本当は認められたいんでしょ? 褒められたいでしょ? 実力はいきなりつきませんけど、いいことしたら褒めてもらえるかも。だから、マッサージです。それに合法的に触ること出来ますし」
「し、紫苑! 紫苑なら……」
「そ、それもそうですね。いつもお世話になってますから……これはマッサージ……マッサージ……マッサージ……」
「紫苑! 痛たたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた! なんで僕まで酷い目に! 痛ぁああああああああああああああああああああ!」
「ほら! あにぃが痛がってるじゃないですか!」
「これは押すな、押すなっのお約束ですから。好きな人に好かれたいんでしょ?」
「……いち、にぃ。いちぃ、にぃ」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!」
「……紫苑の苦情なら現在お断り……」
「はぁああああああああ~~~~~! 橘先輩! アナタ紫苑さん担当でしょ! なんとかしてくださいよ! あの女の敵を!」
「女の敵って……」
「あれは絶対! ぜぇええったいいい! 私が先輩の事好きだって知っててスキンシップしてるんですよ! あんな暴挙、許せません! それに、先輩も先輩です! 鼻の下伸ばしてちゃってさ! 格好悪い!」
「誰が鼻の下を伸ばしているって? 痛っぅ」
「げぇ! 先輩! って、どうしたんですか、腕を押さえて! 怪我ですか!」
「……ちょっとな」
「まさか……紫苑が突っかかってきた?」
「そうなんですか! あのアマ! 勿論、先輩はあのクソアアに天誅を下したんですよね!」
「……いや、負けた」
「えっ? うそ……先輩が……負けた?」
「……正道、そういうのいいから。本当は勝ったんでしょ?」
「なぜ分かった!」
「紫苑が勝ったなら、その腕、確実に折れてるから。痛んだ程度で済んだってことは力尽くで勝ったんでしょ?」
「……まあな」
「ちょっと! これって大問題ですよ! 風紀委員から破門しましょう!」
「伊藤、落ち着け。ちょっとした模擬戦だ」
「それも嘘だね。正道はともかく、紫苑は本気だから。ごめんね、正道。厄介ごとに巻き込んで」
「いや、喧嘩売ってくる度胸のあるヤツは歓迎するぞ」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「いやいやいやいや! おかしいでしょ! 脳筋なんですか! それより、どうして紫苑さんは藤堂先輩に喧嘩売ったんですか!」
「……紫苑は一言で言うと落ちこぼれなんだ」
「お、落ちこぼれ?」
「そう。成績も上の下だし、効率が悪すぎるんだよね」
「上の下って別に問題ないんじゃあ……」
「ちなみに左近は学年三位をキープしてるな」
「トップじゃないけど、すごいですね」
「いや、わざとだ」
「わざと?」
「左近は目立つのを防ぐために万年三位になるよう調整しているんだ。世界史のテスト以外は満点だからな。暗記問題ならある程度点数を調整できるのが理由だ」
「……すごいですね」
「紫苑は平均点八十点だし、暴力で相手を押さえ込むクセがあってね。ほら、映画や漫画で細身の女性が大男を倒すシーンがあるじゃない? あれに憧れててさ……」
「ううん……確かに力で挑むのは効率悪いですね。スタンガンとかエアーガンで奇襲するとかすればいいのに」
「それか弱みを握ればいい」
「お前ら……」
「とにかく、やり方はいろいろとあるのに、紫苑は正々堂々と挑むから負けるんだよ。だから、落ちこぼれってわけ。挽回したいって気持ちが焦って失敗ばかり。本家に見限られて、僕にしわ寄せがきたってわけ」
「……そういう言い方、好きじゃないんですけど。それに平均点八十点だってすごいじゃないですか」
「橘はプロフェッショナルを求めてるの。一つだけトップクラスになればいいのに、いろんな事に手を出すから効率が悪いんだよ。まあ、それだけ紫苑も必死なんだけど。正道、悪いんだけど……」
「別にいいぞ。青島はそういうヤツがわんさかいるからな。問題ない」
「いや、問題ありすぎでしょ? はぁ……先輩って妙に面倒見がいいというか……」
ガチャ。
「あっ、紫苑さんって……えええええ! どうしたんですか、その怪我!」
「……御堂さんにやられました」
「御堂に? なぜだ?」
「その……私が藤堂先輩を秒殺したって言いまわっていたら、いきなり現れて、喧嘩売られて……私も御堂先輩に挑戦したかったらお手合わせしたんですけど……秒殺されました」
「「「……」」」
「藤堂先輩、御堂先輩から言付けがあります。新入りに負けるとは情けない。鍛え直してやるって」
「世界一優しい嘘をついたのだけなのに!」
「いや、世界一って、先輩……」
「とにかく誤解を解いてくる!」
「……いっちゃいましたね」
「はははっ、ご愁傷様」
「「……」」
「な、なに?」
「あの……思ったんですけど、この状況の元凶って橘先輩ですよね?」
「はい?」
「少しは反省してくださいね。我関せずって顔してるのが許せないんですけど」
「痛たたたたたたたたたたたたた! 伊藤さん! 肩! 肩! 強く揉みすぎ!」
「あ、あにぃ! 貴様!」
「紫苑さんも普段お世話になってるでしょ? だったら、感謝の印にマッサージしてあげないと」
「……」
「痛い痛い痛い!」
「本当は認められたいんでしょ? 褒められたいでしょ? 実力はいきなりつきませんけど、いいことしたら褒めてもらえるかも。だから、マッサージです。それに合法的に触ること出来ますし」
「し、紫苑! 紫苑なら……」
「そ、それもそうですね。いつもお世話になってますから……これはマッサージ……マッサージ……マッサージ……」
「紫苑! 痛たたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた! なんで僕まで酷い目に! 痛ぁああああああああああああああああああああ!」
「ほら! あにぃが痛がってるじゃないですか!」
「これは押すな、押すなっのお約束ですから。好きな人に好かれたいんでしょ?」
「……いち、にぃ。いちぃ、にぃ」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!」
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