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94:青島高等学校七不思議 その七 ???
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「道に迷うことは道を知ることだ……って言うけど、私はどこに向かっているのやら……ふぁ……眠い……午前二時だし……もう帰ろう……七不思議のうち、六つも生き延びたんだし、いいよね……」
(あれ? 正門の端にある桜の木に誰かいる……こんな夜更けに地面掘ってるけど何を……んん? 桜の木? 七不思議……う、嘘でしょ……まさか……まさか……)
「ミ~タ~ナ~~!」
「ひぃいいいいいいいいい! な、何も見てません! 見てませんから!」
「オマエ……フウキイインカ?」
「そ、そうですよ! 私に手を出したら先輩……藤堂正道先輩が黙ってませんから!」
「フジドウダト!」
「ひぃいい!」
「ナナフシギヲブジョクシタフトドキモノ! コロス!」
「七不思議を侮辱? どういう……」
「ちなみにそのドアを壊したの、藤堂だから。力込め過ぎちゃったみたい」
「それ、藤堂のせいだから」
「それはね、藤堂が喧嘩で人体模型を振り回したからだよ」
「ちなみにその板は藤堂正道が不良をぶちのめすために使った木の板だから」
「あっ、それ、女子更衣室を覗こうとした男子を藤堂正道が後頭部を掴んで叩きつけた跡だから」
「安心したまえ! 藤堂正道は『うんこ』と『うんち』の違いを明確に言える高校生だ」
「……ううん……そう言えなくもない……かも」
「ダカラオマエヲコロス! フウキイインヲコノヨカラクチクスル!」
「えええええっ! 私、関係ないし! それにこれ、絶対に七不思議じゃない! ホラーじゃない! リアルサスペンスやん! 後、私巨人じゃないし!」
「コロス!」
「きゃああああ! 追ってきた! 捕まったらマジで殺されるし!」
(と、とりあえず、どこに逃げよう? 正門は閉まっているし、よじ登っていたら捕まるかもしれない。この近くで安全なところ……プールにいこう!)
プール。
「オイツメタゾ!」
「ふん! あ、アンタなんか怖くないんだからね!」
(青島高校のプールの長さは五十メートル、レーンが十二ある。縦でも横でも対角線上にいれば絶対に捕まることはないし、追いかけてきたらぐるっと回って逃げ続ければいい! 横切って泳いできても、服着てるし、絶対に逃げ切れる! 明かりもつけたし、風紀委員の誰かが気づいてくれるかも! チャンスは絶対にくる!)
「んん? あれ? 水面から何かが……って! 手! 手が! きゃあああああ! 引きずり込まれる!」
(確かプールに落ちると異世界転移に……)
「あ、あれ? ここって……プールの入り口?」
「ミツケタゾ!」
「きゃあああああ! 直線上に人殺しが! どうせなら家に転移してよ! こうなったら、校舎に逃げなきゃ!」
校舎一階。
「マテ! マタナイトコロスゾ!」
「待っても殺すクセに! ひぃいいいいい! 助けて~~~先輩!」
タタタタタタタタタタタタ!
「あ、足音が前方から……あぁ、ああ! 走る人体模型! 人体模型が走ってくる! 挟み撃ちされた! た、たすけ……って、ええぇ! 素通りされた!
ピンポーン!
「伊藤ほのか。そのまま廊下を直進しろ! イーサンが殺人鬼を抑えている隙に屋上へ向かえ! そこに最強の護人がいる」
「お、屋上? 逃げ場がなくなるだけじゃない! それに人体模型の名前が無駄に格好いい! なんか、あのキチガイを倒してくれそう!」
「シネ!」
バキィイイイイイイイイ!
「ああっ! あっけなくやられた! プラスチック製だし、仕方ないとはいえ、ひ弱すぎる! とにかく、上へいかないと!」
階段の踊り場
「本当に上にいけば助かるの? お、追ってきた! 追ってきたよ!」
「ツカマエル! オマエヲカナラズコロス!」
「ひぃいい! どこぞやのガン○ムのパイロットだってそこまでコロスコロスって言わないし!」
ピンポーン!
「伊藤ほのか! そのまま上へいけ! 踊り場の鏡がキミを救ってくれるはずだ!」
「お、踊り場の鏡? 真実を映す鏡だっけ? だからなんなの! って、うぇえええええええ! 鏡の中に映っていた私が出てきた!」
「その鏡は映したモノをコピーできる能力があるんだ! コピーのキミが護ってくれる!」
「マジで! あっ、私のコピーが殺人鬼に向かって……いかずに、明後日の方向にいっちゃうし! 流石は私! けど、全然役に立たないし! 役立たずぅ!」
「……これは俺のせいじゃないだろ……」
三階トイレ
「ドコニイッタ……デテコイ」
(出て行けるわけないじゃない。三階までダッシュでのぼれたけど、もう体力の限界! 近くのトイレに逃げ込んだけど……どうしよう……)
ピンポーン!
「伊藤ほのか! 援護する! トイレの花人がキミを救ってくれるはずだ!」
(ハズって本当に役に立つの? また見かけ倒しじゃあ……)
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」
(ひぃ! なに? このお腹に響く雄叫びは! もしかして、トイレの花人さん? 絶対に化物だよね? これなら殺人鬼に勝てるかも! でも……)
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「……」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
(男子トイレからだよね? なんで、こっちに来てくれないの?)
「すまない、伊藤ほのか。トイレの花人君はシャイボーイで女子トイレに入れないんだ!」
「ばかぁああああああああ! 無駄に常識人!」
「ミツケタゾ!」
「ほのかぴんち! 援護! 援護を!」
~~~♪ ♪ ~~~~♪
「これって月光?」
「そうだ! これで殺人鬼をノックアウトできる! 四回演奏が出来るまで逃げろ!」
「はい! って、ちょっと待って! それ、私も四回聞いたら死ぬじゃん! 止めて! 止めて!」
十三階段
「はぁ……はぁ……はぁ……三回校舎を一周して、やっと殺人鬼から少し距離をとれたけど、足が震えて階段上るのしんどい……」
「オマエノシンゾウヲエグリトッテヤル!」
「怖い! でも、限界……」
「ツカマエタゾ! コロスゥウウウウウウウウウウオォオオオオオオ!」
「きゃあああああ……ああ……ああああれ? 階段がいきなり斜線になって殺人鬼が落ちていく! なにこれ? 昔コントで見た池田屋の階段落ちっぽい! はじめて七不思議が役にたった! ざまぁ!」
「コロスゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」
「ひぃいいい! 斜線をのぼってきたぁあああああ! もう、屋上に逃げるしかない! でも、屋上に何があるの? 最強の護人ってなに? ま、まさか!」
屋上
がちゃ!
「……」
「あれ? 伊藤さん。どうして、屋上に来たの?」
「伊藤、どうした? 息をきらして」
「た、橘先輩に……先輩! 最強の護人って、先輩のことだったの! せんぱ~~~~い!」
「どうした、伊藤……」
「ほのかパンチ!」
ぶん!
「何をする」
「あががががががががががが! あ、アイアンクロー反対! でも、これなら勝てる! 流石は私の王子様!」
「勝てる? 何のことだ? とりあえず、飴食うか?」
「久しぶりなのに塩対応とか! 飴はいただきますけど!」
「いや、昨日お前に森山屋のコロッケとミンチカツをおごって……」
「わー! わー! わー! 『藤堂正道と伊藤ほのかのおしゃべり』では久しぶりなんです! 余計な事を言わないでください! それより、私は先輩のせいでとんでもないことに巻き込まれているんですけど……先輩達は何をしているんですか?」
「「天体観測」」
「この非常時に!」
「非常時? どういうことだ?」
バン!
「ミツケタゾ!」
「なんだ? 伊藤の友達か?」
「ユニークな友達だね」
「んなわけないでしょ! マジボケはなしです、先輩! あのサイコ殺人鬼、やっちゃってください! ちょうど、望遠鏡がありますし、これで……」
「ダメだから。これ、百八十万はするから」
「ひゃ、百八十万! 高ぁ! どうして、そんな高価な物、もってくるんですか!」
「……よく分からないが、一応警告しておく。ここから立ち去れ。部外者は立ち入り禁止だぞ」
「先輩! そこじゃない! あの人、桜の木の下に死体を埋めていたんです!」
「誰だ?」
「えっ?」
「どこの誰の死体を埋めていたんだ?」
「そ、それは分からないですけど……」
「なら、勘違いじゃないか? いつもしっかりと確認しろと言っているだろ」
「えっ、ごめんなさい……ってちが~~~~う! 私を殺そうと追い回してきたんですよ! ほら、手にナイフが!」
「それは警察の仕事だね。縄張りは守らなきゃ」
「気遣うポイントが違います! 現在進行形で私達、ピンチなんですよ! 私達三人の命が百八十万ですむなら安いモノでしょ!」
「オマエラコロス!」
「きたぁあああああ! いやぁあああああああ!」
「正道」
「任せておけ」
「先輩! 水筒なんて持ちだして……って! ええええええ! 水筒を殺人鬼の股間に投げた!」
「!!!!!」
「やった! 殺人鬼が股間を抑えている間に先輩が殺人鬼の腕を掴んで、壁に叩きつけてナイフを落としたぁああああああ!」
「悪いが手加減はしないぞ。相棒を怖がらせた罪、たっぷりと味わえ!」
「で、でたぁあああああああああ! ナイフを足で蹴りつつ、大きく踏み出してからの! ボディーブロー炸裂! これで幾人もの不良をリバースさせた先輩の必殺技だぁああああ!」
「とどめだ」
「でぇ……でぇたぁああああああああああああああ! 先輩の力技、ラストライド、決まったぁあああああああああああ! 下はコンクリですけど、生きてますかぁああああああ!」
「……」
「し、死んでませんよね?」
「峰打ちだ」
「いや、嘘でしょ! あっ、胸が上下しているから大丈夫っぽい。よい子は絶対に真似しないでね。ほのかとの約束だよ」
「誰に言ってるんだ?」
「いえ、お約束ですので。ふぁ……安心したら眠くなってきちゃった……先輩達はまだ帰らないんですか? もう二時ですよ……」
「二時になるのを待っていたんだ」
「待っていた?」
「そうだよ。二時二十二分二十二秒になると、怪奇現象が起こるわけ」
「二時二十二分二十二秒? 怪奇現象?」
「そうだ。俺達は七不思議を調査していた」
「えっ? えっ? 桜の木の下に死体が埋まっていることじゃないんですか!」
「埋まっているわけないだろ?」
「『櫻の樹の下には』の影響の受けすぎだ」
「いえ、元ネタは知ってますけど……あの殺人鬼、マジモンのリアル犯罪者だったんですか!」
「だから、警察に任せろって言ってるだろ?」
「そ、それなら、七不思議の七番目は……」
「あっ、ちょうど二時二十二分二十二秒になったよ、正道」
「時間か……」
「えっ? えっ? 何が起こるんですか?」
「上を見ろ」
「上? 上って……うぇえええええええええええええええええ! つ、月が! 月が大きすぎる! 空の半分が月で覆われるし! スーパームーンってところの話じゃないですよ、先輩! って、先輩! どこですか! 橘先輩もいない! か、カムバ~~~ク! あ、あれ? 月が更に大きく……ち、違う! 月が落ちてくる! ひぃいいいいいいいいいいいい! 月が落ちてくるよ~~~~~~なにこれ! M○R? これもノストラ○ムスのご予言ですかぁああああああああああああ!」
(あれ? 正門の端にある桜の木に誰かいる……こんな夜更けに地面掘ってるけど何を……んん? 桜の木? 七不思議……う、嘘でしょ……まさか……まさか……)
「ミ~タ~ナ~~!」
「ひぃいいいいいいいいい! な、何も見てません! 見てませんから!」
「オマエ……フウキイインカ?」
「そ、そうですよ! 私に手を出したら先輩……藤堂正道先輩が黙ってませんから!」
「フジドウダト!」
「ひぃいい!」
「ナナフシギヲブジョクシタフトドキモノ! コロス!」
「七不思議を侮辱? どういう……」
「ちなみにそのドアを壊したの、藤堂だから。力込め過ぎちゃったみたい」
「それ、藤堂のせいだから」
「それはね、藤堂が喧嘩で人体模型を振り回したからだよ」
「ちなみにその板は藤堂正道が不良をぶちのめすために使った木の板だから」
「あっ、それ、女子更衣室を覗こうとした男子を藤堂正道が後頭部を掴んで叩きつけた跡だから」
「安心したまえ! 藤堂正道は『うんこ』と『うんち』の違いを明確に言える高校生だ」
「……ううん……そう言えなくもない……かも」
「ダカラオマエヲコロス! フウキイインヲコノヨカラクチクスル!」
「えええええっ! 私、関係ないし! それにこれ、絶対に七不思議じゃない! ホラーじゃない! リアルサスペンスやん! 後、私巨人じゃないし!」
「コロス!」
「きゃああああ! 追ってきた! 捕まったらマジで殺されるし!」
(と、とりあえず、どこに逃げよう? 正門は閉まっているし、よじ登っていたら捕まるかもしれない。この近くで安全なところ……プールにいこう!)
プール。
「オイツメタゾ!」
「ふん! あ、アンタなんか怖くないんだからね!」
(青島高校のプールの長さは五十メートル、レーンが十二ある。縦でも横でも対角線上にいれば絶対に捕まることはないし、追いかけてきたらぐるっと回って逃げ続ければいい! 横切って泳いできても、服着てるし、絶対に逃げ切れる! 明かりもつけたし、風紀委員の誰かが気づいてくれるかも! チャンスは絶対にくる!)
「んん? あれ? 水面から何かが……って! 手! 手が! きゃあああああ! 引きずり込まれる!」
(確かプールに落ちると異世界転移に……)
「あ、あれ? ここって……プールの入り口?」
「ミツケタゾ!」
「きゃあああああ! 直線上に人殺しが! どうせなら家に転移してよ! こうなったら、校舎に逃げなきゃ!」
校舎一階。
「マテ! マタナイトコロスゾ!」
「待っても殺すクセに! ひぃいいいいい! 助けて~~~先輩!」
タタタタタタタタタタタタ!
「あ、足音が前方から……あぁ、ああ! 走る人体模型! 人体模型が走ってくる! 挟み撃ちされた! た、たすけ……って、ええぇ! 素通りされた!
ピンポーン!
「伊藤ほのか。そのまま廊下を直進しろ! イーサンが殺人鬼を抑えている隙に屋上へ向かえ! そこに最強の護人がいる」
「お、屋上? 逃げ場がなくなるだけじゃない! それに人体模型の名前が無駄に格好いい! なんか、あのキチガイを倒してくれそう!」
「シネ!」
バキィイイイイイイイイ!
「ああっ! あっけなくやられた! プラスチック製だし、仕方ないとはいえ、ひ弱すぎる! とにかく、上へいかないと!」
階段の踊り場
「本当に上にいけば助かるの? お、追ってきた! 追ってきたよ!」
「ツカマエル! オマエヲカナラズコロス!」
「ひぃいい! どこぞやのガン○ムのパイロットだってそこまでコロスコロスって言わないし!」
ピンポーン!
「伊藤ほのか! そのまま上へいけ! 踊り場の鏡がキミを救ってくれるはずだ!」
「お、踊り場の鏡? 真実を映す鏡だっけ? だからなんなの! って、うぇえええええええ! 鏡の中に映っていた私が出てきた!」
「その鏡は映したモノをコピーできる能力があるんだ! コピーのキミが護ってくれる!」
「マジで! あっ、私のコピーが殺人鬼に向かって……いかずに、明後日の方向にいっちゃうし! 流石は私! けど、全然役に立たないし! 役立たずぅ!」
「……これは俺のせいじゃないだろ……」
三階トイレ
「ドコニイッタ……デテコイ」
(出て行けるわけないじゃない。三階までダッシュでのぼれたけど、もう体力の限界! 近くのトイレに逃げ込んだけど……どうしよう……)
ピンポーン!
「伊藤ほのか! 援護する! トイレの花人がキミを救ってくれるはずだ!」
(ハズって本当に役に立つの? また見かけ倒しじゃあ……)
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」
(ひぃ! なに? このお腹に響く雄叫びは! もしかして、トイレの花人さん? 絶対に化物だよね? これなら殺人鬼に勝てるかも! でも……)
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「……」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
(男子トイレからだよね? なんで、こっちに来てくれないの?)
「すまない、伊藤ほのか。トイレの花人君はシャイボーイで女子トイレに入れないんだ!」
「ばかぁああああああああ! 無駄に常識人!」
「ミツケタゾ!」
「ほのかぴんち! 援護! 援護を!」
~~~♪ ♪ ~~~~♪
「これって月光?」
「そうだ! これで殺人鬼をノックアウトできる! 四回演奏が出来るまで逃げろ!」
「はい! って、ちょっと待って! それ、私も四回聞いたら死ぬじゃん! 止めて! 止めて!」
十三階段
「はぁ……はぁ……はぁ……三回校舎を一周して、やっと殺人鬼から少し距離をとれたけど、足が震えて階段上るのしんどい……」
「オマエノシンゾウヲエグリトッテヤル!」
「怖い! でも、限界……」
「ツカマエタゾ! コロスゥウウウウウウウウウウオォオオオオオオ!」
「きゃあああああ……ああ……ああああれ? 階段がいきなり斜線になって殺人鬼が落ちていく! なにこれ? 昔コントで見た池田屋の階段落ちっぽい! はじめて七不思議が役にたった! ざまぁ!」
「コロスゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」
「ひぃいいい! 斜線をのぼってきたぁあああああ! もう、屋上に逃げるしかない! でも、屋上に何があるの? 最強の護人ってなに? ま、まさか!」
屋上
がちゃ!
「……」
「あれ? 伊藤さん。どうして、屋上に来たの?」
「伊藤、どうした? 息をきらして」
「た、橘先輩に……先輩! 最強の護人って、先輩のことだったの! せんぱ~~~~い!」
「どうした、伊藤……」
「ほのかパンチ!」
ぶん!
「何をする」
「あががががががががががが! あ、アイアンクロー反対! でも、これなら勝てる! 流石は私の王子様!」
「勝てる? 何のことだ? とりあえず、飴食うか?」
「久しぶりなのに塩対応とか! 飴はいただきますけど!」
「いや、昨日お前に森山屋のコロッケとミンチカツをおごって……」
「わー! わー! わー! 『藤堂正道と伊藤ほのかのおしゃべり』では久しぶりなんです! 余計な事を言わないでください! それより、私は先輩のせいでとんでもないことに巻き込まれているんですけど……先輩達は何をしているんですか?」
「「天体観測」」
「この非常時に!」
「非常時? どういうことだ?」
バン!
「ミツケタゾ!」
「なんだ? 伊藤の友達か?」
「ユニークな友達だね」
「んなわけないでしょ! マジボケはなしです、先輩! あのサイコ殺人鬼、やっちゃってください! ちょうど、望遠鏡がありますし、これで……」
「ダメだから。これ、百八十万はするから」
「ひゃ、百八十万! 高ぁ! どうして、そんな高価な物、もってくるんですか!」
「……よく分からないが、一応警告しておく。ここから立ち去れ。部外者は立ち入り禁止だぞ」
「先輩! そこじゃない! あの人、桜の木の下に死体を埋めていたんです!」
「誰だ?」
「えっ?」
「どこの誰の死体を埋めていたんだ?」
「そ、それは分からないですけど……」
「なら、勘違いじゃないか? いつもしっかりと確認しろと言っているだろ」
「えっ、ごめんなさい……ってちが~~~~う! 私を殺そうと追い回してきたんですよ! ほら、手にナイフが!」
「それは警察の仕事だね。縄張りは守らなきゃ」
「気遣うポイントが違います! 現在進行形で私達、ピンチなんですよ! 私達三人の命が百八十万ですむなら安いモノでしょ!」
「オマエラコロス!」
「きたぁあああああ! いやぁあああああああ!」
「正道」
「任せておけ」
「先輩! 水筒なんて持ちだして……って! ええええええ! 水筒を殺人鬼の股間に投げた!」
「!!!!!」
「やった! 殺人鬼が股間を抑えている間に先輩が殺人鬼の腕を掴んで、壁に叩きつけてナイフを落としたぁああああああ!」
「悪いが手加減はしないぞ。相棒を怖がらせた罪、たっぷりと味わえ!」
「で、でたぁあああああああああ! ナイフを足で蹴りつつ、大きく踏み出してからの! ボディーブロー炸裂! これで幾人もの不良をリバースさせた先輩の必殺技だぁああああ!」
「とどめだ」
「でぇ……でぇたぁああああああああああああああ! 先輩の力技、ラストライド、決まったぁあああああああああああ! 下はコンクリですけど、生きてますかぁああああああ!」
「……」
「し、死んでませんよね?」
「峰打ちだ」
「いや、嘘でしょ! あっ、胸が上下しているから大丈夫っぽい。よい子は絶対に真似しないでね。ほのかとの約束だよ」
「誰に言ってるんだ?」
「いえ、お約束ですので。ふぁ……安心したら眠くなってきちゃった……先輩達はまだ帰らないんですか? もう二時ですよ……」
「二時になるのを待っていたんだ」
「待っていた?」
「そうだよ。二時二十二分二十二秒になると、怪奇現象が起こるわけ」
「二時二十二分二十二秒? 怪奇現象?」
「そうだ。俺達は七不思議を調査していた」
「えっ? えっ? 桜の木の下に死体が埋まっていることじゃないんですか!」
「埋まっているわけないだろ?」
「『櫻の樹の下には』の影響の受けすぎだ」
「いえ、元ネタは知ってますけど……あの殺人鬼、マジモンのリアル犯罪者だったんですか!」
「だから、警察に任せろって言ってるだろ?」
「そ、それなら、七不思議の七番目は……」
「あっ、ちょうど二時二十二分二十二秒になったよ、正道」
「時間か……」
「えっ? えっ? 何が起こるんですか?」
「上を見ろ」
「上? 上って……うぇえええええええええええええええええ! つ、月が! 月が大きすぎる! 空の半分が月で覆われるし! スーパームーンってところの話じゃないですよ、先輩! って、先輩! どこですか! 橘先輩もいない! か、カムバ~~~ク! あ、あれ? 月が更に大きく……ち、違う! 月が落ちてくる! ひぃいいいいいいいいいいいい! 月が落ちてくるよ~~~~~~なにこれ! M○R? これもノストラ○ムスのご予言ですかぁああああああああああああ!」
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