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92:青島高等学校七不思議 その五 転移の泉

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「堂々と十三階段から生還! やっと、一階まで戻ってこれた…………ちなみに十三階段を上ったところで冥界へ連れ去られるわけもなく、ただの徒労で終わっただけ。もう帰りたい」
「そこにいるのは誰!」
「きゃあああああああ!」
「きゃあああああああ!」
「真子、下がって!」
「で、でも、奏水が危ないよ!」
「真子? 奏水? もしかして、真子っちに白部さん?」
「真子っちって、その呼び方……ほ、ほのかちゃん!」
「ええっと……伊藤さんだっけ?」
「うわぁ……久しぶり! 元気だった、真子っち!」
「ほのかちゃんも元気そうだね!」

(目の前にいるのは中学の時、同じ図書委員だった平村真子と親友の白部奏水さん。なつかしいぃ~)

「真子っちは図書員続けているの?」
「うん! 私、本好きだし。ほのかちゃんは……もう、図書委員に戻らないの?」
「あははっ……本は好きなんだけど、今はやりたいことがあって、風紀委員に所属しているの」
「「風紀委員!」」

「えっ? 何?」
「ほのかちゃん、風紀委員だったの?」
「そ、そうだけど……」
「それなら、藤堂先輩って知ってる?」
「知ってるけど……藤堂先輩とはコンビを組んでるし」
「それ、本当なの? 私達、藤堂先輩と一緒に行動したことがあるけど、伊藤さんを見たことがないんだけど」
「むっ! 先輩は私のことを想って……」

「ねえねえ、ほのかちゃん! 藤堂先輩のこと、知り合いなら、会わせてくれない? 私、藤堂先輩に謝りたくて……」
「謝る?」
「私……藤堂先輩に助けてもらったのに……ひどいこと言っちゃって……だから、謝りたいんです。それに仲直りしたいし」
「仲直り……」
「真子、伊藤さんに頼ることない。会いにいけばいいじゃない。私も藤堂先輩には言いたいことが沢山あるし……」
「言いたいこと……」

(な、なに? この二人、絶対に先輩に会わせちゃダメな気がする。乙女の勘が告げている。この二人、危険だと……)

「ね、ねえ。二人はどうして夜の学校にいるの? 風紀委員としては見過ごせないんだけど」
「伊藤さんも夜の校舎の中にいるじゃない」
「わ、私は七不思議の調査でいるんです! 二人は早く帰ってください!(御堂先輩や朝乃宮先輩がいるってことは、ここに先輩がいる可能性が高い。ここはなんとしても、二人にはお帰りいただかないと)」
「あっ、それなら、ほのかちゃんにお願いしようよ」

「お願い?」
「うん。私、落とし物しちゃって……心当たりを探しているんだけど、後はプールだけなの。お願い、ほのかちゃん。一緒に来てくれる?」
「……真子っちのお願いだし、いいよ」
「ありがとう、ほのかちゃん!」
「足手まといにならないでね」
「奏水ちゃん!」
「真子っち、いいから(白部さんも私が先輩の事、好きって気づいたみたい。ううっ……突然の恋のライバルに胃が痛くなってきた……)」



 プール

「ねえ、真子っち。どこを探すの?」
「更衣室」
「そう……早くしてね。不気味だし」
「それなら早く帰りなさいよ」
「むっ! 白部さんは大丈夫なんですか? 怖くないんですか?」
「別に。それに七不思議とか信じてないから」

「? どうして、ここで七不思議が出てくるの?」
「ここって七不思議の場所でしょ?」
「そうなの? プールが七不思議ってことは、プールで泳いでいると無数の子供の手に引きずり込まれるって内容の七不思議なわけ?」
「違うわよ。確か……」
「転送の泉だよ、奏水ちゃん」
「転送の泉?」
「そう。午前零時にプールに飛び込むと異世界に転移できるって話し」
「ついに七不思議にまで異世界転移の影響が……けど、ここプールだよね?」

「じゃあ、私、更衣室、見てくるね」
「待って。真子一人だと心配だから私もいく」
「あ、あの~私もいっていいですか」
「「ちょっと、待ってて!」」
「……真子っちの忘れ物ってなに? 気になるんですけど……」

 ピンポン!
「現実から目をそらし、安易な考えで異世界転移でハーレムを気づこうとする愚かな生徒、伊藤ほのか。貴様に血の制裁を加える。だが、慈悲がないわけではない。伊藤ほのか、我が問いに答えよ。正解なら不問にとす」
「ものすごい言いがかりを言われた気がするんですけど……」

「では、問おう。プールに塩素を入れる理由は?」
「ええっと、疾病の原因となる細菌やウイルスを塩素で死滅させて、プール内での感染症予防と水質維持が理由でしたっけ?」
「50メートルプールの長さは?」
「50メートル2センチ!」
「アーティスティックスイミングの選手はプールの中でどうやって音楽を聴いているのか?」
「プールの中に水中スピーカーから聴いている!」
「よろしい! 汝の罪を許そう。それではこの場から去るがいい!」

「ふぅ……これで七不思議、第五までクリア。でも、これって調査になるわけ? 七不思議が消えるわけでもないし。とりあえず、もう帰ろう。真子っちと白部さんと合流しよう。真子っち! 白部さん! 捜し物は見つかりましたか~?」
「……」
「ど、ドア、開けますよ~って誰もいない! うそ! 入り口は一つしかないし、ここからしか出られないのに! こっちの方が七不思議じゃん! あれ? 更衣室の隣に……いやぁああああ! きゃ! きゃ! なにこれ! 顔? デスマスク? やだ! ものすごい顔してる! こっちのほうが七不思議!」
「あっ、それ、女子更衣室を覗こうとした男子を藤堂正道が後頭部を掴んで叩きつけた跡だから」
「先輩……これはグッジョブ!」
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